百式観音を背負いて。 作:ルール
千鳥って決め技やら必殺技ならわかりますが、暗殺用かと言えばツッコミどころ満載ですよね。
もしかしたらあの音が気にならないくらいの戦場で暗殺するとか、千の鳥の地鳴きが響き渡る戦場で使用したのかもしれません。
まあ暗殺といったらマスク外すだけで毒殺できる山椒魚の半蔵さんが最強な気もしますね。
蛹とも繭とも殻とも言える砂の球体をサスケの左腕が貫いた。
はたけカカシが編み出した必殺技【千鳥】、それは絶対防御の砂の装甲すらも穿つ。
この技の恐ろしさと凄まじさが一番よくわかってしまうのは高速体術の使い手であるリーさんだろう。
この高速一点突きは同じような戦闘スタイルであるリーさんですらできないものだからだ。
突きとは剣術においても死に技とされる。
それは一撃必殺の威力を誇る反面、外したら体勢は崩れていて隙だらけだからだ。そして急所狙いの直線的な攻撃であるがゆえに相手はカウンターを狙いやすい、打つ側はそのカウンターを見切る必要があるのだ。
これはかつて開発者であるはたけカカシが失敗した欠点であり、後に友から託された写輪眼により千鳥は完成した。
柔拳と白眼のように、千鳥と写輪眼も合わさって完成する必殺技なのである。
「嘘だろ!」「有り得ない」「バカな」
砂隠れの忍達が焦りだす。
砂瀑の我愛羅は砂隠れの切り札。
敗北などありえない。
そうでなければいけない存在。
その常識に等しい思考は、絶対防御が穿たれた程度で焦らせてしまうほど。
だが確かに砂隠れの忍術であの絶対防御を破るのは厳しいだろう。風影の砂金磁遁でもあの球体を穿てるかどうかは微妙なところである。
ならば砂隠れにおいてあの防御はまさに絶対なのだろう。
「つかまえた」
砂の殻を貫いたサスケの左手が我愛羅の身体を捉えた(意外と手前に居たんだなと思う、中央に居たら肘までめり込んだ程度では届かない)。
だがいくら千鳥であっても砂の殻を突き破り左手を触れさせるのが精一杯で我愛羅の命までは届かなかったようだ(サスケに殺す気まではなかっただろうし)。
雷遁を纏った左手は、我愛羅の身体に触れて血を流させる程度の傷を作った。
砂の殻が破られてこの絶対不可侵領域に他者が侵入するのは我愛羅本人も想定外だったのか「うわああ!!血がぁ・・・・・・オレの血がぁ!!」と今まで見てきた彼らしからぬ悲鳴をあげた。
同時に左手に痛みを感じたサスケ。
突き刺した先の内部を彼が把握する術がなく、急ぎ引き抜こうとするが固まった砂と絡み引っ張る力がそれを妨げる。
「ハァアアア・・・・・・ラァ!!」
「ぎゃあああ!!」
その抵抗にサスケは雷遁を発動。
バチチリと光が爆ぜ、我愛羅にダメージを与えることでなんとか腕を引き抜いた。
その際に腕に纏わりついていた異形の腕。
その腕が引き戻った後に空いた虚のような隙間を写輪眼で覗き見たサスケはゾクリと震えた。
それはサスケだけではなく、尾獣との交戦経験がないと思われる不知火ゲンマ特別上忍もビリビリとプレッシャーに似た感覚を受けていた。
砂の殻にヒビが走る。
崩れた砂から左肩から血を流す我愛羅が現れた。
木ノ葉崩しにおいて砂隠れが打つ筈だった一手。大名及び各里の忍び頭と観客溢れる会場で一尾の守鶴を暴れさせる作戦は失敗に終わったのである。
というかコレが成功したら成功したで大問題ではないだろうか。各国から訪れた大名に被害がでては主催している木ノ葉もだが砂隠れもおしまいなのではないだろうか、それとも風の国の大名は不参加だったのか?
あの守鶴(ついでに我愛羅)に大名の命を狙わないなんて器用な真似はできないだろうに(その気もないだろうし)。
そんな結局原作ではどうする気だったのかと考えだしたところで、視界を埋め尽くすように会場全体に白い鳥の羽が舞い降った。
(始まった)
NARUTO原作が始まってから木ノ葉隠れに最初に起きた厄災。
【木ノ葉崩し】の始まりである。
この幻術は大蛇丸の右腕である、十九歳にしてカカシ先生と同格とされる実力と、医療忍者として忍界屈指の技術力を誇る薬師カブトによるもの。
涅槃精舎の術。
白い羽を見た者を安らかな眠りへと誘う幻術で、幻術返しを使わない限りは抵抗できずに意識を失う。
会場の幻術返しを使える者、襲撃者達以外は意識を失う中、俺は駆け出していた。
目的の場所は火影様の居る観戦席。
どう対処したら良いか見当もつかない結界術である四紫炎陣に三代目が囲われる前に最速で風影に成り代わっている大蛇丸に百式観音を叩き込む!!
この先の未来を原作知識から知ってはいる。
三代目火影が屍鬼封尽を使うことが重要な布石となることはわかっている。
でもそれは、それはつまり、
三代目火影が死ぬということなのだ。
父の死に涙を流す俺を優しく撫でてくれたあの人を、血は繋がらないが祖父のように思うあの人を失うということなのだ。
だから俺は原作知識など知るものかと駆け出した。誰かに伝えられないこの知識、されど起こったこの瞬間ならば俺は動けるのだから。
だが、
ヤツは、大蛇丸は、
俺以上に千手谷間という予定外想定外意味不明な展開を引き起こす達人を知っており、
それゆえに息子である俺を軽視などしていなかった。
軽視していないから手を打っていたのだ。
「行かせぬ」
カブト、あるいはダンゾウの手引きで潜んでいた音隠れの忍達が俺の足止めに現れたのだ。
まだ大蛇丸は百式観音の攻撃圏外。襲いかかる忍達は実力としては中忍試験で見た中忍以上(育成能力どうなってんだ大蛇丸)だろう。
「邪魔だ!!」
まだ未完成の虚刀流奥義鏡花水月で音忍の一人を叩き飛ばす。
虚刀流最速の技である鏡花水月は奥義に恥じぬ威力を誇る。その掌底はこの世界の実力ある忍にも拙い模倣ながらも通じた。
「下忍風情が」
「百式観音 八ノ掌」
見下してる存在に仲間をやられた音忍の呟きなど知るものか。両掌を合わせ最速最大威力の術を振るう。
突如出現した百手の観音像は型に合わせて八手を動かし音忍達を叩き潰した。
ただの一手で戦闘不能となる音隠れの忍達。今までコレを使用した対戦相手である大蛇丸と君麻呂が耐えられたのが異常なだけで、百式観音は一手で敵を倒せる必殺技なのだ。
時間にして数秒にも満たない戦闘。
しかしそれを見ていた者達は衝撃を受ける。
一人の下忍が幻術発動と同時に煙幕が撒き散らされた観戦席へと駆け出し、現れた音隠れの忍達を見たことのない術で叩き潰したのだから。
足止めを破り火影様の席を見ると、煙から抜け出した五つの影が屋根の上に登り立つ。
「大蛇丸っっっ!!」
「見事よ狭間君。でも谷間の変態なら間に合っていたでしょうね」
俺への警戒から大蛇丸達の動きは原作よりも速い。原作では木ノ葉暗部達が火影様を抱える大蛇丸を追えていたが、もう既に音の四人衆は四紫炎陣の発動に入っていた。
血を流し倒れ伏す火影様の護衛役だった並足ライドウ特別上忍の姿を見つけてしまい俺は叫ぶ。
まだ百式観音が届かない遠い距離は、火影様との距離は、完全に断絶されてしまった。
「まさか、風影殿に成り代わっておるとはの。砂隠れまで敵に回す気か大蛇丸?」
「いえいえ猿飛先生。
それはまだ先ですね・・・・・・・・・。まあこの戦場での間くらいは愚かな砂隠れは私の手駒ですよ」
風影の姿のまま火影様の首に手を回し苦無を向けながら火影様と何やら会話している大蛇丸。
もう、どうすることもできないのか。
「千手谷間さんの子である下忍の千手狭間か」
「はい」
木ノ葉の暗部達が大名様達の護衛などに分かれながら走る俺に並びながら声をかけてきた。
「暗部である俺に君へ命令する権限はないが告げておく。火影様の元へは暗部が向かう、君は木ノ葉の忍として里を襲う者達を討て」
どうやら俺は素性すら秘す木ノ葉の精鋭から見ても戦力になると判断されたようだ。
「そして出来るならば木ノ葉に居るだろう三忍の自来也様を探し呼んできてくれ。
あの結界、あの方でもなければどうにもできまい」
「わかりました」
周囲から一段と高い試験会場の屋根の上に上がると里内の状況が見えてしまう。
里の外壁を破り現れた何匹もの巨大な蛇の口寄せ獣、そして侵攻してくる他里の忍。
「影分身の術」
火影様を救えないならば俺がやるべきことは一つ。百式観音であの口寄せ獣と忍達を撃退することだ。
そう、原作で自来也様が火影様の元に加勢しに来れなかったのはあの巨大蛇のせい。
今の木ノ葉にアレらを対処できるのは自来也様だけだったからだ。
ならば俺がそちらに行けば、自来也様はこちらに参戦できる。
試合の舞台では動けない我愛羅を抱えたカンクロウとテマリが撤退しサスケがそれを追っていた。
ナルト達同期の皆が心配だが、影分身体に伝言を任せ俺は木ノ葉の里へと飛び出した。
「間に合ってくれ!!」
それは三代目火影が討ち取られるか、屍鬼封尽を使用するまでか、木ノ葉の住人が他里の忍に害される前か。
俺は全力で今自分ができることを行う。
補足・説明。
今話は木ノ葉崩し開始となります。
狭間は三代目の元に駆け出しますが、間に合わず木ノ葉の里へと対処に周りました。
四紫炎陣。
これを破る見通しが立たなかったからです。
我愛羅は原作より深手なのであっさり撤退となりました。
サスケはそれを追います。
我愛羅を追うことになるナルト達は心配ですが、それよりも原作で亡くなった三代目のことで頭がいっぱいです。
ちなみに原作より早く四紫炎陣が発動したので原作でぶつかって焼け死んだ暗部は無事です。
とりあえず木ノ葉崩しは、火影サイド、我愛羅サイドと分けて書く予定です。
なお狭間は原作自来也役となります(つまり出番なし)。
どのように変わるのかは、お楽しみに。
ゴールデンウィーク中には終わるかなあ。