百式観音を背負いて。   作:ルール

55 / 80

 ナルトサイド。
 我愛羅追跡組です。



原作14巻①

 

 担当上忍であるはたけカカシの命令により、中忍試験での負傷が原因で撤退する我愛羅達を追跡するうちはサスケの後を追うナルト達。

 砂隠れの人柱力である我愛羅はまさに生きた爆弾。その身に尾獣が一角、一尾の守鶴を宿す彼は情緒が不安定でいつ爆発するかわからない。

 五影かそれに準ずる実力者しか抑えることのできない尾獣の暴走は周辺一帯の壊滅とその場にいる者達の死を意味する。

 ゆえに放置することは危険だが砂隠れに撤退するならそれもまた良しなのだ。

 そんなカカシの考えを彼の口寄せ獣である自称可愛いワンちゃんであるパックンが木々を跳び進みながら説明した。

 

「んなやべーヤツだったのかよアイツ」

 

 木ノ葉病院で遭遇したシカマルは我愛羅の強さと溢れ出る狂気、その境遇の理由を理解した。

 そして、ナルトの事情を知るがゆえに哀れにも思ってしまった。

 ナルトも酷い目にあっていた、だが我愛羅はより里内に事情が知れ渡っていて、さらに危険だと暗殺者まで差し向けられていたのだから。

 

「狭間君が救ってくれと言うわけね」

 

 サクラは一般家庭出身者。

 ゆえに我愛羅の事情を聞いても実感することはあまりにも生きてきた環境が違い過ぎてできない。

 それでもそれが、我愛羅の生きた環境が最悪で、彼が可哀想だとは思ってしまう。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 そしてナルトはただ押し黙る。

 我愛羅の気持ちが、憎しみが、誰よりも理解できてしまうから。

 そして呟いた。

 

「・・・・・・・・・アイツにはオレと違って、皆がいなかったんだってばよ」

 

 あちらとこちら。

 境界線の向こうで背を向ける人々と自分。

 ずっと続いていた地獄のような景色。

 それを変えてくれた、

 生まれた時から一人ぼっちだったこちら側に歩み寄ってくれる人が。

 

「ナルト・・・・・・」

 

「急ぐってばよ。とにかくサスケだ、あの馬鹿を止めねえと」

 

「サスケもお前だけには馬鹿って言われたくないだろうよ」

  

 我愛羅とどうなるかはまだわからない。

 交戦するかすら定かではない。

 だがもし戦うことになるならば、どのような思いで戦うのか。

 三人は深く考えながら進む。

 

 

 その途中、パックンが忍犬の嗅覚で追跡する音隠れの忍九人の存在に気づく。

 木ノ葉一帯の地形を教えこまれた追跡術をマスターした中忍以上の実力の二小隊+1名。

 数の差はナルトがなんとか出来なくもないが、あまりにも絶望的な状況である。  

 

「くっそー!こうなったら待ち伏せでやっちまうか!?」

 

 速度的に追いつかれるのは時間の問題。ならば倒すしかないとナルトが提案する。

 

「駄目に決まってんだろ!

 待ち伏せは有利な戦法だがあまりに不確定要素が多すぎる!」

 

 だがその提案をシカマルが一蹴する。

 その理由は待ち伏せを有利な戦法とする必要条件が満たせないからだ。

 先手を打つことはパックンがタイミングを見計らえば可能。

 しかし不意打ちを必殺とする地の利が得られないからだ。

 そもそも追跡部隊は待ち伏せを警戒しながら進んでいるとパックンは伝えた。

 警戒してる時点で完全な不意打ちは不可能で、二小隊と共に来る九人目が不意打ちの対処要員であることは明白なのだ。

 

「・・・・・・・・・となればオレ達にできることはたった一つ」

 

「一つ?」

 

「待ち伏せに見せかけた陽動だ。

 一人が残り・・・・・・待ち伏せのように見せかけて足止めする」

 

 熟慮の末にシカマルが提案したのは忍らしい厳しい策であった。

 

「つまり・・・・・・囮」

 

「ならさ、ならさ、オレの影分身にその役をやらせんのはどうだ?」

 

 そこでナルトが囮の別案をだす。

 それならば誰も犠牲になることはなく、追跡部隊を撒けるだろう。

 

「悪くない提案だが、お前だけじゃ務まらねえよ」

 

 そう言ってシカマルはナルト達とは別ルートになるように身を翻す。

 

「追跡部隊を引き寄せて別ルートに進ませる囮役を十分にこなせて生き残る可能性がある奴といったら、こん中じゃオレだけだ(まあチョウジを倒した時の画風違ったサクラなら返り討ちにできそうな気もするが、今は元に戻っちまったし)」

 

「シカマル」

 

「とっとと行け!あとナルト、チャクラに余裕あるなら影分身体を二体は頼むぜ」

 

「片方はサクラちゃんに変化させておくってばよ」

 

「なんでアンタは女体変化が得意なのよ(影分身の変化って高等技能じゃないかしら?)」

 

 

 こうしてシカマルは囮役として別れた。

 意図的に枝を折って進み、足跡を木々に残し、下忍風情と舐めてかかる追跡部隊を引きつけた。

 逃げ腰No.1を自称し、面倒臭がりのやる気なし。しかし彼は、奈良シカマルは仲間の為ならば命を賭けることのできる友人想いの男なのである。

 ナルト達から引き離し、待ち伏せからの影真似の術で音隠れの二小隊を拘束。

 影を繋いだ相手に自身と同じ動きをさせる影真似の術。足止めや拘束にしか使えないように見えるこの術だが装備の位置が異なれば必殺の忍術となる。

 手裏剣をこちらが投げても相手が持っていなければ一方的に当てることができるからだ。

 シカマルがそうしたのは音忍を仕留めるのではなく後方に控えた護衛役の九人目の位置を探るため。

 その九人目を影分身ナルト二体が倒せればこちらの勝ちなのだ。

 

「「オラオラ死ねやこらっ!!」」

 

「オレは違うだろうがっ!!」

 

「ん?」

 

 そのシカマルの起死回生の一手は、なんとも微妙な騒ぎで終わりとなった。

 

「ったく。敵味方の区別くらいつけろよナルトめ。谷間のヤローかっての」

 

 ガサガサドタバタバキメキボンボン。

 樹上からそんな音が聞こえたかと思うと、音忍を脇に抱えた一人の忍が現れた。

 

「アスマ!!」

 

「ようやく追いついた」

 

 タバコを咥えたその男の名は猿飛アスマ。

 三代目火影猿飛ヒルゼンの実子で元守護忍十二士が一人。

 木ノ葉隠れ上忍でも上位の実力者にしてシカマル達の担当上忍である。

 彼は脇に抱えた音忍を放り捨てると影真似の術で動けぬ音忍達を右手に装着したメリケンサックのような刃で即座に処理した。

 たとえ拘束されてなくとも造作なく殺れるだけの実力差はあったが。

 

「良くやったな、シカマル。

 あとはナルト達を追わなきゃならんが、大分離されちまったな」

 

 シカマルの誘引ぶりが見事過ぎて感知タイプではないアスマが追いつくのは困難な距離となっている。

 仮に追いつけて我愛羅と戦闘になっても、尾獣化する前の人柱力であれば猿飛アスマならば勝算はある。

 ナルト達を守りながらだと厳しいだろうが。

 

「フーー、悪いしばらくは動けそうにない」

 

「中忍試験でチャクラを使いすぎたんだ仕方ないさ。むしろネジとやり合ってまだ影分身が使えるナルトが異常なんだよ」

 

 さっき勘違いで襲われたことといい、狭間よりナルトの方が谷間のヤローの息子らしいわと猿飛アスマは呟くのであった。

 

 

 同時刻、サスケは我愛羅達とついに接敵するもカンクロウが足止め役となり進ませまいとする。

 テマリもまた中忍試験でチャクラを消耗している、ならば自分がとカンクロウが残ったのだ。

 

「いやサスケ、お前は追わずに戻れ」

 

 そこに追跡していた油女シノが現れた。

 ナルト達より後に出発した筈の彼だが、サスケの服に蟲を張り付けて居たため最短距離で追うことができたのだ。

 

「どういうことだ?」

 

「我愛羅は人柱力という強大な存在をその身に宿す忍らしい。

 下手に刺激し暴走させぬために戦わずに退き下がれという命令だ」

 

 シノはそうカカシからの命令を伝えた。

 退き下がる、その言葉にカンクロウは戦わずに済むかと安堵しかけるが、

 

「駄目だ、ヤツは追って倒すべきだ」

 

 サスケはその命令を跳ね除けた。

 

「なに?」

    

 我愛羅の中にナニカが居る。  

 その言葉で試合中に見たあの目の正体がソレだとサスケは察した。

 そして、

 

「もういつソレが目覚めてもおかしくない。我愛羅は今の段階で倒さないといけない」

 

 相対したサスケだからこそわかる感覚。

 あの砂の殻は覚醒前の繭だったのだ。

 強引に破ったから中断はされたが、今この瞬間にも進行しているのだろう。

 我愛羅の中のナニカ。

 それがどれだけの大きさかはわからない。

 しかし現在の場所からならば、木ノ葉隠れの里で決着がつく前に襲撃しにいくことが可能だ。

 そうなれば木ノ葉に取り返しのつかない被害がでてしまう。

 

「・・・・・・・・・そうか」

 

 油女シノは葛藤する。

 サスケの直感からの言葉にも筋が通っているからだ。忍ならばそれでも上役の命令に従うべきと理性が訴えるが、油女シノは蟲使いであるがゆえに生物の本能や直感を軽んじない。

 

「行かせるわけ・・・・・・・・・ないじゃん!!」

 

 悩むシノだが、そこへカンクロウが繰る戦術人形【烏】が襲いかかる。

 

「・・・・・・仕方ない、行けサスケ。

 だが、オレはお前の直感を信じるが、ナルト達がどう判断するかは知らないぞ」

 

「任せたぞシノ」

 

 袖から蟲を溢れ出させたシノは烏の攻撃を防ぎ、サスケに行くように促した。

 木ノ葉の蟲使い、砂隠れの傀儡師。

 特異忍術のぶつかり合いが始まった。

 

 

 

 結界に囲まれた屋根の上。

 土壁に樹海生えたその場所で、旧友二人は顔を合わす。

 

「久しいのォ大蛇丸」

 

「ふん、人をあれだけ付け回しておいて、今更久しぶりも何もないでしょう」

 

「ストーカーみたいに言うんじゃないわ!!

 儂だってお前みたいなオカマだかオネェ系なんぞより綱手の胸を追い回したいわいっ!!」

 

 同じ師の下で肩を並べ学び。

 共に小国の雄に三忍と称された者達。

 しかし三人はいつしか別の道を歩んでいた。

 自来也は予言に。

 綱手は過去に。

 大蛇丸は永遠に。

 異なる道を進んだ者達は再び道を交えるのであった。

 

 穢土転生により喚び出されさらに頭に札を埋め込み殺戮人形と化した初代火影二代目火影を従えた大蛇丸と口寄せ獣猿猴王・猿魔の変化した金剛如意を構えた三代目火影の戦いに、三忍自来也参戦す。

 

 なお侵入方法は下の階から屋根を突き破ってである。 

 ド派手に参戦するつもりだった自来也だがちょうど発動した初代火影の秘伝忍術木遁・樹界降誕に巻き込まれるという醜態をさらしてしまったとか。

 ちなみに結界忍術である四紫炎陣は底面を除いた五面を覆っているだけに見えるが、触れたら焼ける効果こそないが底面にも結界は張ってある。

 空間の封鎖だけあって抜かりはないのだが、上方五面には強度が劣るため自来也は螺旋丸で強引に突き破ったのだ(そして突き抜け飛び出したところで樹海に呑まれた)。

 

「自来也・・・・・・」

 

「手を貸すぞジジイ。いくらアンタでも流石に三対一は厳しかろう」

 





 補足・説明。

 今話は我愛羅追跡の話です。
 一気に我愛羅戦までやり切るか悩みましたが、ここまでとします。
 今のところは原作にブラスあれこれですが、ここから変わるかと思います。

 悩んだのは我愛羅達の移動距離です。
 守鶴とガマブン太が殺り合って、木ノ葉の里から見えないくらいの距離なのはわかりますが、我愛羅達はいったいどこまで駆け抜けたのか。
 その移動距離と速度が悩みました。
 なにせ、我愛羅との戦いに猿飛アスマが参戦したら守鶴化しなければ殺せた筈ですから(守鶴状態でも我愛羅の身体を出した状態なら殺れたかも?)。
 なので我愛羅達はかなり頑張ってめっちゃ移動した設定です。

 シカマルの足止め。
 ナルトが影分身すれば良くね?
 と書いてて思いついてしまいまして、危うく我愛羅戦がシカマル参戦で守鶴化せずに終わるとこでした。
 影真似の術で足止めして千鳥とサクラ百裂拳とナルト連撃で勝ててしまいますから(汗)。
 原作より強い第七班は異形化我愛羅とは戦える実力があります。
 なおシカマルに付けた影分身体はアスマとバッティングしてしまい戦って消されました。
 記憶がフィードバックしたナルトはなんでアスマ先生とやり合ってんだ?と首を傾げたそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。