百式観音を背負いて。   作:ルール

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 火影サイドです。



原作14巻③

 

「どうするジジイ?」

 

 分身した如意棒で組まれた金剛の防壁。

 木遁忍術の巨木の蹂躙すら防ぐ簡易シェルターの中で自来也は三代目火影へと問いかけた。

 いくら弱体化しようとも穢土転生された火影達は強過ぎる。

 なんとか凌げている自来也と三代目が異常なだけで他の忍ではなす術なくやられてしまうだろう。

 どうするか?

 三代目火影の中でそれは大蛇丸が穢土転生を使用していた時点で決めていた。

 自来也の援軍という予想外の事態こそあったが、最初からこの戦いを生きて終える気などなかったのだ。

 

(悪意と野望を秘めた瞳。

 そういう素質があったのは気付いておった。

 気付いていて知らぬふりをしてきた。

 まだ戦乱の時代に、強く満ち溢れた天才。

 まさしく数十年に一人の逸材だったから。

 自分の意思と力を受け継いでくれる存在。

 そう思いたかった)

 

 三代目火影は過去を思い返す。

 愛弟子と過ごした日々を。

 自らの甘さゆえに作りだしてしまった今を。

 

「自来也よ。儂は四代目のあの術を使う」

 

「・・・・・・・・・どうしてもか」

 

「他の封印術では爆破されて解けてしまう。

 お前が仙人モードになれば或いは勝てるやもしれんが、時間がかかり過ぎるだろう?」

 

「・・・・・・まあの」

 

 自然エネルギーを体内に取り込み身体エネルギーと精神エネルギーと混ぜ合わせ仙術チャクラへと練り上げる。

 その膨大なエネルギーの制御を両肩に口寄せした妙木山二大仙人御夫婦にお願いして戦う自来也の最強形態。

 しかし欠点として発動までに時間がかかり過ぎてしまうのだ。

 この金剛の防壁に囲まれた状態ならば発動まで籠もることが可能かもしれない。

 だが、今は三代目火影を殺すことに躍起になっている大蛇丸であるが、きまぐれを起こして自分だけ結界からでて木ノ葉を蹂躙しださないとも限らないのだ。

 三代目火影を討つ。

 それが木ノ葉の忍達に与える衝撃は尋常ではないだろうが、四紫炎陣と穢土転生がある以上は閉じ込めたまま封殺することも可能なのだから。

 戦い続けること。

 それは大蛇丸をこの場に留めるために必要なことだったのだ。

 

「影分身で三人に増え、そこから屍鬼封尽を使う。自来也よ、発動までの時間稼ぎを頼む」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・承知した」

 

 師と弟子が同じ術で死ぬ。

 この時の自来也の気持ちは語りきれるものではない。

 だが、止めることなどできない。

 こうなるまで何もできなかったのだから。

 

「・・・・・・最後の花道。見送らせてもらう」

 

「・・・・・・スマンな自来也。お前にはいつも辛い道ばかり歩ませる」

 

 三代目火影の甘さの被害者である愛弟子に、この決断を止めずにいてくれる愛弟子に、猿飛ヒルゼンは深く感謝した。

 巳、亥、未、卯、戌、子、酉、午、巳。

 三代目火影が印を結ぶ。

 生涯最期の術を使う。

 発動後にその背後に契約した者のみが見える短刀を咥えた死神が現れた。

 その腹の中には四代目火影と九尾のチャクラが封じられているのだろう。

 

「・・・・・・征くぞ」

 

 自来也が駆ける。

 チャクラを漲らせ、鬼気迫る勢いで、もはやなにもさせぬと、初代火影の金剛力も二代目火影のするどい水遁も大蛇丸の草薙の剣と毒蛇も、唯一人でものともせずに戦う。

 木遁を螺旋丸で打ち砕く。

 水遁を乱獅子髪の術で凌ぐ。

 蛙組手で大蛇丸の猛攻を捌く。

 

「やるじゃない自来也」

 

「儂などただの、前座に過ぎぬわ!!」

 

 この攻防をできる忍が忍界にどれだけ居るのか。三忍自来也、その実力はまさに天下無双。

 自らが傷つくことも厭わずに忍界一の傾奇者はその武を魅せる。

 

「でも無駄よ。

 いくら踊って魅せようと、アナタでは私に届かない。もはや戦えぬ三代目と木ノ葉諸共滅びなさい」

 

「・・・・・・なんでこうなっちまったんだろうなあ。なんで師匠にあんな術を使わせるほどに、テメェは堕ちてしまったんだっ!!」

 

 嫉妬した存在だった。

 羨んだ存在だった。

 憧れた存在だった。

 友だった。

 親友だったのだ。

 あの予言に自来也が没頭できたのは、里に大蛇丸がいたからだ。

 悲劇に潰れた綱手が里を離れた後も、大蛇丸が居たから自来也は予言の答えを追い求められたのだ。

 自分には向かぬ暗部の役割をこなしてくれる大蛇丸に感謝していたのだ。

 ミナトという光を谷間と共に支えてくれると信じていたのだ。

 その勝手な押し付けが、忍界の闇に浸る親友がどう変質してしまうのか考えさせなかったのだ。

 

「・・・・・・今更過ぎるのよ」

 

 自来也の叫びに大蛇丸は寂寥を籠もった呟きを零す。三忍が別の道を往かずに共に過ごしていれば、こうはならなかったかもしれない。

 だがあの戦乱の世は、この三者ほどの実力者達が共に歩み続けることを許さなかった。

 その才覚ゆえに道は別れてしまった。

 

「自来也、後は儂がやる!!」

 

 屍鬼封尽の準備は、自来也の尽力で終わった。

 時は来た。

 来てしまったのだ。

 死神の数珠纏わせた手は人形を、贄たる三代目を貫いた。

 後はこの手で捕らえるのみ。

 

「なあ、大蛇丸よ。

 この木ノ葉の里ではな、毎年多くの忍が生まれ育ち。

 生き、戦い、里を守るため、そして大切な者を守るために死んでいく。

 そんな里の者達は、たとえ血の繋がりはなくとも、一族は違えども、

 ワシにとって大切な、大切な、

 家族じゃ」

 

 三代目自身の至らなさゆえに滅ぼさざるを得なかった一族が脳裏に過ぎる。

 その責を負わせてしまった少年の姿が思い浮かぶ。

 闇を担わせてしまった友を思う。

 救えなかった恩師の孫を思う。

 押し付けてしまう愛弟子を思う。

 里のために命散らした英雄達を思う。

 命散らした若き夫婦を思う。

 里を繋げていた快男児を思う。

 恨まずに感謝の拳を振るう少年を思う。

 九尾を封じてしまった少年を思う。

 

「お前もその一人じゃったのになあ」

 

 大切な家族。

 しかしもう、自分ができるのはこれだけなのだ。

 自来也と戦っていた初代火影、二代目火影を影分身体が捕まえ、その腹から死神の手が生える。

 その腕は穢土転生の身体を貫き、降ろされた魂を握り掴んだ。

 

「すまぬ・・・・・・猿飛よ」

 

「世話をかけたな」

 

「お許しくだされ。初代様!二代目様!

 封印!!」

 

 穢土転生の術が大蛇丸によって木ノ葉の外に流出してしまった。

 だからこの火影達の魂は二度と利用されぬように封じるしかなかった。

 それが無限の地獄に恩師らを叩き込むと知りながらも。

 魂を抜かれ穢土転生は崩壊。

 崩れた塵の中から現れた贄は、中忍試験に参加した音隠れの下忍。

 

「自分の部下の命までも弄びおって」

 

 自分が言う資格などないと理解しつつも三代目はそう零した。

 悲しくて、哀しくて、涙が溢れてしまっていた。

 

「大人しくせえ大蛇丸!!

 あれが師から下される引導じゃ!!」

 

「くっ!!」

 

 両火影が散り、自来也は大蛇丸を抑えつける。

 

「終わりじゃ!!」

 

 駆け寄った三代目。

 そしてその腹から生えた腕が大蛇丸を捕らえるのであった。

 

 





 補足・説明。

 大蛇丸戦です。
 原作との差異の無さから書いてて飛ばそうか悩んだシーンですが、なんとか書きました。
 ただ書いてて思ったのは、
 三忍できちんと忍をしてたのは大蛇丸だったな、ということです。
 綱手も貢献しましたがダンの死でリタイア。
 自来也は長門達育成など、予言関連でかなり里を離れていたようです。
 というか、第三次忍界大戦後半に綱手と自来也は下手したら不参加かもしれません(汗)。
 里内に残っていて、ダンゾウの下にいたから大蛇丸はああなってしまったのかも?
 なんというか、綱手と自来也って何をしてたか不明な期間が長すぎなんですよね(綱手はある意味はっきりしてますが)。

 三代目と自来也の後悔の戦い。
 原作でもこれは、未来の関係を気づいたナルトとの戦いとの対比だったのかもしれません。
 
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