百式観音を背負いて。 作:ルール
油女シノとカンクロウの戦いは原作通りです。
強化はされても毒対策は事前知識がないと無理ですし、医療忍術まではカバーしてませんから(あとカラスのギミックが初見殺し)。
完全尾獣化した人柱力と妙木山の親分の戦いはあまりにもスケールが違い過ぎた。
「しっかりつかまっとけーよ!」
HUNTER×HUNTER原作を知る転生者である千手狭間がこの戦い、というかガマブン太を見たら「妙木山って暗黒大陸なの?」と冷や汗をかきながら呟くであろう。
「蝦蟇ドス斬!!」
蛙の強靭な後ろ足による加速からの跳躍突撃斬撃。それは守鶴の巨大な塔や巨大ビルのような手足を一つ切り飛ばした。
ガマブン太の一刀、吹き飛ぶ守鶴の肉体。ただそれだけの戦闘の一場面で木々はへし折れ大森林に破壊の爪痕が作られる。
「(なんてえ野郎じゃ、重とーてドスを振り抜くのがやっとじゃ・・・・・・!)」
百戦錬磨の大親分であるガマブン太が、一振りで握りしめたドスを手放してしまうほどの硬さ。
その身をチャクラや肉ではなく砂で構成されているためか守鶴の身体は硬い。絶対防御の異名はオートで発動する砂の盾を使う我愛羅ではなく、一尾の尾獣守鶴こそが相応しいのかもしれない。
「す・・・・・・すっげーー!」「ぐわっ!」「きゃっ!」「うおお!」
遊園地の如何なる絶叫系アトラクションでも体験できない振り回され感。
命綱も安全レバーも、毛のない蛙の肉体の表面にある筈もなく、ナルト達はチャクラ吸着を用いてなんとか必死にしがみつく。
「(さっさと殺らんと地形が変わってしまうのォ)」
ガマブン太の内心での呟きは、今までの忍界大戦で何度もこんなことがあったことを示していた。
忍界の頂きとは災害を操る領域なのだ。
「面白い!面白いぞ!!
うずまきナルトォ!!うちはサスケェ!!春野サクラァ!!」
砂隠れでは四代目風影以外では抗うことすらできない完全尾獣化。
それに臆さず対等の力をもって相対する者達に興奮した我愛羅は遂に本気をだす。
守鶴の狸のような額からズズズと我愛羅の肉体が現れる。
「アレが霊媒か」
ガマブン太はその弱点を剥き出しにするような行いの意図を悟る。
「ここまで楽しませて貰った礼だ。
砂の化身の本当の力を見せてやる」
我愛羅は印を結び、その恐怖から避けてきた一手を打つ。
「あの霊媒も守鶴に取り憑かれて不眠症の症状がでとんのォ」
我愛羅の目の周りのクマは化粧による隈取りではない。
その身に宿す守鶴に対する恐怖から満足に眠れなくなりクマができてしまったのだ。
砂隠れが保有する一尾は、仙法を極め渦巻き一族の封印術を修めた初代火影柱間が分配したものではない。
ゆえにその封印術は不安定であり他里より劣っている。
他の人柱力にはない、睡眠時に守鶴に自らの人格を食われてしまい自分が自分でなくなる、という伝承もそれが理由で発生した。
普段眠れない霊媒(人柱力)は寝不足から人格が不安定になっていく傾向があるとのこと。
人柱力の意識の喪失が尾獣の暴走に繋がる、ゆえにその意識を意図的に絶った時こそ守鶴は真の力を発揮する。
「狸寝入りの術!!」
これはまさにその為の術。
如何なる場所や状況であっても眠りにつけるこの術は、何気に忍以外にも需要がありそうである。
眠りについた我愛羅。
意識をなくし身体はブランブランと揺れる。
「シャハハハハアァ!!やっと出てこれたぜェ!!ひゃはぁ〜〜!いきなりぶち殺したい奴発っけ〜〜〜ん!!」
本来の姿で意識を取り戻した守鶴。
溜まりに溜まった鬱憤が破壊殺戮衝動となって溢れだす。
「風遁」
「跳ぶぞ!!」
チャクラの高まりを察したガマブン太は動く。ここからが本番、ここからが真の戦い。
「練空弾!!」
守鶴の腹鼓から打ち出される風の大球。
大森林が無惨に強制開拓されて道ができる。如何なる重機すら太刀打ちできない破壊工法。
「(水遁)」
上空に飛び跳ねて直進する練空弾を回避したガマブン太。遠距離攻撃(というには規模がおかしいが)には遠距離攻撃、印を結び術を発動。
「鉄砲玉!!」
練空弾に劣らぬ巨大水球が地上の守鶴へと発射される。しかし守鶴は再度練空弾を放ち迎撃。
巨大水球と巨大風弾、上空でぶつかり合い辺り一帯に雨のように水が降る。
戦いが嵐となる桁違いの領域。
「ヤバいってオヤビン!!一発残ってる!!」
制したのは守鶴、相殺しきれなかった一発がガマブン太に直撃。
「キィエーイ!やりィー!
殺した殺したァーーー!!」
大興奮する守鶴。
しかし妙木山の親分は術の一発で散るほどやわではない。
血だらけになりながらも耐え、背に乗るナルト達をガマブン太は守りきった。
「なんぼワシでもそう何発も食らっとられんぞ!」
一発で里や都市を破壊できる一撃に耐えられるガマブン太にも限界はある。
ドスは手放してしまい、術のぶつけ合いは尾獣随一の多様さを誇る守鶴相手では勝てない。
ゆえにやるべき手段は一つ。
「あの霊媒のガキをどつき起こせ!!」
我愛羅を覚醒させ守鶴の出力を下げる、あわよくばそのまま倒せば決着だ。
「どうやって!?」
「近づいてあのバカダヌキの動きを止めるんじゃ!その隙をついてじゃ!」
「動きを止める術があるのか?」
「それとも力尽くで?」
我愛羅を起こす。
その作戦に出来ることがありそうだとサスケとサクラも身を乗り出す。
「守鶴と術合戦は無謀じゃ!
そんで蝦蟇のワシにゃ奴の牙を封じる牙も爪もねーけんのォ!!変化の術でそれらを持っとるもんに変化する!!」
蛙ならば舌はどうかとサスケは思ったが、あの巨体を縛りつけるのは無理があるかと察した。
「ワシは変化が得意じゃねェーけんのォ!ナルトがワシの意思になって印を結べ、ワシがチャクラを貸しちゃる!!コンビ変化じゃ!!」
いつだかの集まりで犬塚キバが忍犬と共に出来ると語ったその技をガマブン太は出来るようだ。
「変化はお前の得意技、やってくれナルト」
「我愛羅は私達が叩き起こすわ!!でもおいろけの術をしたらしばくから!!」
性別まで変えるおいろけの術のみならず、影分身体すらも変化させることが得意なナルト。
アカデミー時代は失敗ばかりで笑われたソレが今では戦局を左右する必殺忍術にまでなっていた。
「え!?牙と爪のあるヤツって・・・・・・ブチギレたサクラちゃん・・・・・・じゃなくて赤丸は駄目で、えーと!えーと!」
そんな急に言われてもと焦るナルト。
「いくでェ!!」
「あ〜〜!も〜〜!」
口寄せの術を介した繋がりからガマブン太の膨大なチャクラが流れ込み、ナルトは本能のまま思い浮かんだ形へと変化する。
その姿は巨大な狐。
尾こそ一つだが、ナルトは無意識にこの姿を選んでいた。
ナルトの中に封じられた九尾ははたしてどのような気持ちでこれを見ていたのだろう。
狐の牙で噛みつき、狐の爪をめり込ませる。
「行くぞサクラ!!」「はい!!」
木ノ葉の顔岩のようにデカい守鶴の顔が間近に迫る。崖登りよりも不安定な足場だが忍である二人には十分。サスケはサクラを背負い駆ける。
身体能力が飛躍的に向上したサクラ。
だが機動性ならばまだサスケが上だからだ。
「しゃーんなろー!」
八門を開いてない渾身のサクラの拳が我愛羅の頬を強打。
下手したら永遠に眠るのでは?とサスケが内心焦るが、人柱力である我愛羅の肉体は常人とは違い頑丈。死にはしないが狸寝入りの術は解けた。
「よしっ!」「まだだサクラ!」
勝利したと思ったサクラ。
確かに狸寝入りの術は解け、守鶴本来の力は再び封じられた。
だが終わったわけではない。
「なめるな・・・・・・」
守鶴の身体を構成する砂が、我愛羅本来の戦法の時のように襲いかかってきた。
「させるか!!」
サスケが左手に雷遁を発動してその砂を弾きサクラを守る。
足場となる守鶴の身体すら流砂のように呑み込もうとしてくる状況。
守鶴とはその身全てが武器であり防具なのだ。
「お前らはオレに殺される。
オレの存在は消えない」
否定され続けた我愛羅の唯一の生きる術。
死にたくないから殺す。
生物として当たり前で、悲しい姿。
「殺るしか、ねえ!!」
千鳥発動。
稲光る左手をサスケは構える。
だが、動いたのはサスケだけではない。
「うおおおお!!」
コンビ変化を解いたナルトがその勢いのまま飛び出してきたのだ。
「!! サクラ、やれ!!」「合点!!」
飛び出したナルトにサスケが触れ残りのチャクラを纏わせる。そしてサクラがナルトの身体を掴み、全力でぶん投げた。
「ちくしょうがぁあ!!」
頭突き。
纏わりつこうとする砂をサスケのチャクラが弾き、勢いで額当ての取れたナルトが頭部同士を激突させた。
その衝撃は凄まじく、我愛羅の額と意識、守鶴の身体と繋げていた砂を砕き割った。
「ワハハハハハ!!突っ込んで投げられて頭突きたぁ、ドタバタした忍者じゃあ!!久しぶりにぶっ飛んだガキ共じゃのう。
おう、お前ら!ワシはもう限界じゃけえ!!最後まできっちりやり抜けよォ!!」
守鶴の身体が砂へと還り、砂塵舞う森の中で愉快そうに笑う大蝦蟇の声が響いていった。
「「お疲れ様です!!」」
ボンッと口寄せ解除で空気が弾け、宙に投げ出される四人。
そこはガマブン太のドスが落ちた場所で、木の上に満身創痍の四人が立つ。
場所は変わり木ノ葉。
中忍試験本選会場は木ノ葉隠れの忍達により制圧。担当上忍として会場にカカシとガイが居り、さらに日向ヒナタの護衛役に日向一族の精鋭が居たことが大きい。
幻術で眠りについた観客達の傍らに討ち取られた砂隠れと音隠れの忍達の死体が転がっていた。
幻術返しにより意識を保っていた下忍達はその光景に吐き出しそうになるも、必死に耐えて動き続けた。
「音だけじゃなく、まさかこれほど砂の上忍共が入ってこようとはな・・・・・・!」
「ま、そりゃそうだろ。こりゃいわゆる戦争だ」
打ち倒したガイ達の顔に喜びはない。
削られた心が剥き出しになったような無表情で現実を見据えていた。
四紫炎陣で囲われた観客席の屋根。
土壁に木々が絡みつく奇怪な空間で、木ノ葉崩し首謀者大蛇丸は三代目火影猿飛ヒルゼンに肩を捕まれ拘束されていた。
術の発動まで大蛇丸の身体を押さえつけていた自来也はもはや後方に下がり、師とかつての友の最期の時を見守っていた。
加勢した身でありながら、これは邪魔してはならないとそう考えたからだ。
「フッ、本当にワシは老いた。
どうやらお前の魂を全て引きずりだすだけの力は残っていないようじゃ」
「あのミナトですら、三人同時封印なんてできなかったんでしょう。あの二人を封印できただけでも神業ですよ」
ヒルゼンの腹から伸びる大蛇丸の魂を掴む死神の腕、その動きは止まっていた。
原作では草薙の剣を操り背後からヒルゼンの身体を貫いていた大蛇丸。
しかし自来也に押さえられた大蛇丸にそれをする余裕などなかった。
であれば致命傷負ってないヒルゼンならば大蛇丸を完全に封印できそうなものだが、そうはならなかった。
千手谷間との日々で鍛えられた大蛇丸は原作よりも強かった。
そんな理由で。
「しかし、お前の野望はここまでじゃ!!」
死神の腕が罪人を連行するように大蛇丸の魂の腕を掴む。ゆえに大蛇丸は忍にとって忍術を使うために必要な印が結べない。
「私の野望が終わる?
私を封じきれず力尽きようとしているアナタが何をほざく。
死神が痺れを切らすか、アナタの命が尽きて術が消える方が早いでしょう」
既にヒルゼンが食われたのは影分身。
しかし影分身というチャクラの塊が食われただけで済むなら屍鬼封尽は禁術ではない。
それが可能ならば影分身のみに屍鬼封尽をさせれば良いのだから。
食われたのは影分身だけではなく自らの魂も。
もはやヒルゼンは意識を保つことすら厳しい。
「老いた長に寄りかかり頼る里なぞ、アナタが倒れたらおしまい。
木ノ葉崩し、ここに成る!」
荒く息をつき大蛇丸は己の勝利を宣言した。
だが、
「分かっておらぬのォ、大蛇丸よ。
この里の忍を甘く見るな」
自らの子。
その実力を誰よりも知るヒルゼンは、木ノ葉が敗れぬと確信していた。
木ノ葉特別上忍である月光ハヤテが刃を振るう、その傍らには恋人である卯月夕顔が暗部装束で並び立っていた。
娘達を部下に預けた日向ヒアシが日向ネジの数倍の大きさの回天で砂隠れの忍達を一掃する。
秋道、奈良、山中、旧家当主にして一族最強の三人が一族秘伝忍術で侵略者を葬る。
油女一族当主は、カンクロウとの一騎打ちにより毒に蝕まれた息子を救い猿飛アスマと共に下忍達の保護を行っていた。
犬塚家が女傑二人は愛犬と共に敵へと爪牙を突き立てる。
中忍試験会場に残る敵は息を荒げた砂隠れ上忍のバキと暗部姿の大蛇丸の右腕薬師カブト。
不知火ゲンマとはたけカカシとマイト・ガイは砂隠れ音隠れ最強戦力と相対していた。
「・・・・・・・・・これで最後だ」
観音像の百手に貫かれた巨大蛇は断末魔の叫びを上げて自ら住処へと還る。
千手狭間、大蛇丸が与えた巨大蛇を全て駆逐し、それを防ごうと襲いかかる忍らも返り討ちにした。
千手の末裔にして観音像を操る者。
初代火影を連想する脅威に砂隠れの忍達は集中して襲いかかってきた。
だが、風遁も毒も傀儡も血継限界である灼遁と磁遁も狭間の【堅】と百式観音を打ち破ることはできなかった。
全ての巨大蛇と五十を超す砂隠れの精鋭。
下忍ではありえない戦果を千手狭間は叩き出したのである。
無論それは千手狭間だけのものではなく、警備隊長である特別上忍森乃イビキとその部下達、また忍を引退して店を営んでいた(やたらとテンションの高い)老忍達のサポートあってのことである。
「木ノ葉の忍は皆、里を守るため、命懸けで戦う!」
「・・・・・・!」
「此の世の本当の力とは忍術を極めた先などにありはしない。
大切な者を守る時、真の忍の力は現れるのだ」
愛弟子への最期の教えをヒルゼンは告げた。
だが、
「・・・・・・それが谷間を殺したんですよ」
とある真実を知る大蛇丸はそれに納得ができない。戦乱の世に生まれ落ちた天才はあまりにも失い過ぎた。
戦乱の世が終わってからも・・・・・・失ってしまった。それがなければこうはならなかったかもしれない。
どうせ失われるだけの世であるならば、永遠を求めよう、忍術の先へと到るのだ。
どんな手段に手を染めようと、どれだけ命を奪おうと、そこに辿り着き、再び出会うのだ。
いつか転生する、あの人達に。
「その名をお前が口にするとはな。
そうじゃの、アヤツならばお前をどうしたであろうか」
千手谷間。
猿飛ヒルゼンにとっても彼は特別な存在であった。四代目火影波風ミナトの親友にして、自来也を想起させる変人奇人のド変態。
火影を託すには奇行が過ぎたが、彼が里に居ればなんとかなると思うことができた。
独特な感性で、他里とも縁を結び、絆を育んでいた存在だった。
その喪失はあまりにも大きい。
「きっと、こうしてっ!!」
「何? やめろォ!!」
猿飛ヒルゼンは最期の力を振り絞り大蛇丸の身体から魂の一部である両腕を引き摺りだし、背後の死神にその腕を断ち切らさせた。
「貴様に罰を与え、許したんじゃろうな」
「くっ!(腕が動かない)」
腕の魂が死神の腹へと封じられた大蛇丸。腕は形あるが死んだも同然、力は入らず変色し激痛を生み出す。
「木ノ葉崩し。破れたり」
師の矜持は示したぞとヒルゼンは笑う。
「罰だと!!未だに私の師であるつもりか!!猿飛先生!!」
断ち切ったと思った関係は、切れなどしていなかったのだ。
「ワシは最期の最期まで甘いだけの忍よ。
どうやらこうなっても貴様への情を捨てきれなんだわ。
だが、それがワシよ。猿飛ヒルゼンよ。
それで良いと、お主はワシを殴ってから笑って言いおったな谷間。
お主の繋いだ縁は、お主の子が引き継ぎ、より大きく広げてくれるだろう」
過去を悔やむ己を殴り飛ばした快男児。
その息子の先を見れぬことが心残りではある。
けれどそれでいい。
やりたい事がまだあった、生に未練ある生涯のなんと幸福なことか。
惜しむほどに世界は光輝いている。
「猿飛先生・・・・・・」
「木ノ葉舞うところに・・・・・・。
火は燃ゆる・・・・・・。
火の影は里を照らし・・・・・・。
また・・・・・・木ノ葉は芽吹く」
先人は散ろうともその魂の輝きは次代を照らして新たな命となる。
個の永遠ではない、繋がりが紡ぐ永遠が此処にあった。
同時刻。
うずまきナルトが我愛羅に飛びかかり殴り倒していた。
似たもの同士二人は拳を交わし合ったのだ。
木ノ葉崩し、決着である。
補足・説明。
今話は我愛羅戦決着と屍鬼封尽です。
木ノ葉崩し終結まで書ききるか悩みましたが、ここで切ります。
原作とは違う点、原作と同じ箇所がそれぞれありました。
次で決着です。