百式観音を背負いて。   作:ルール

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 木ノ葉崩し終結です。



原作16巻② 木ノ葉崩し終結。

 

 歴代火影として一番長く火影を務めた英雄、猿飛ヒルゼン散る。

 己は己であると、弟子に情を抱いたままその生涯を終えた。

 その亡骸に浮かぶのは笑み。

 

「・・・・・・何が可笑しいのですか猿飛先生」

 

 魂の一部を死神に封じられた大蛇丸はその死に様にただ吐き捨てるしかなかった。

 

「グウウウウッ!!」

  

 焼けるような痛みが腕に走る。

 魂の喪失が肉体にこのような影響を与える。穢土転生から転生術まで魂の研究を行う大蛇丸からすれば貴重なデータではあるが、実体験するとは思いもしなかった。

 

「大蛇丸様!!」

 

 結界を任せた音の四人衆の一人左近が叫ぶ。三代目火影を殺し、そこからは木ノ葉を潰すまでが計画。その瓦解に指示を仰いでいるのである。

 

「グウゥ・・・・・・作戦はここまでよ。結界はもういい・・・・・・引き上げるわ」

 

 木ノ葉崩し。

 停滞する時代という止まった風車を動かす風。四代目風影を討ち、三代目火影もやった今、目的は達したと言って良い。

 何よりもこの腕をなんとかしなければならない。早急に対処しなければ最悪【暁】の連中に襲われてしまうだろう。

 

「止めないのかしら、自来也?」

 

 己の行動を聞いたにも関わらず、現木ノ葉最強の忍は三代目火影の遺体の側に佇むだけである。

 今ならば自分を殺せるにも関わらず動かない異仙忍者に大蛇丸が問いかけるが、

 

「今は何もする気はねぇのォ。

 お前の罰は師が下した。

 予言にかまけて友に寄り添わなかったワシが今更何かする資格はねえ」

 

「・・・・・・木ノ葉から責められるわよ(ダンゾウはコレをネタに火影就任を邪魔するでしょうに)」

 

「だからワシは木ノ葉から距離を置いた。

 大蝦蟇様の予言は何も木ノ葉に益があるとは限らんからのう」

 

 三忍自来也。

 三代目火影猿飛ヒルゼンの弟子が一人。

 その視野は里に留まらず忍界全体に及ぶ。

 忍の世を救うために生きる彼は、もはや木ノ葉の忍とは言い難い存在なのである。

 

「・・・・・・自由人め」

 

「テメェにゃ言われたくねえわい」

 

 もう行け。

 その屈んだ小さな背中はそう語っていた。

 

「・・・・・・・・・谷間の遺体は心臓を抉り抜かれていたそうよ」

 

「!?!?」

 

「私達が戦争に参加していた時も、そんな死体って結構聞いたことあるわよね」

 

「・・・・・・大蛇丸、お前」

 

「・・・・・・あとは自分で調べなさい」

 

 自分が調べた情報、これを明かすことで【暁】の一角を敵に回す情報を伝えた大蛇丸。

 そこに意図があるかは本人もわからない。

 ただ今の自来也のようにそうしたいからそうしただけなのだろう。

 何者かに雇われた角都が千手谷間を殺したという事実を伝えることは。

 

「いくわよアンタ達」

 

「「「「はっ!」」」」

 

 四紫炎陣を解除。

 音の四人衆の次郎坊と多由也の肩を借りて運ばれる大蛇丸。

 追撃しようとする暗部らは鬼童丸の忍法蜘蛛縛りで捕らえ妨害。

 そのまま撤退していく。

 事態の急変に試合会場のカカシやガイが気づき、ガイが罠があろうとなかろうと敵を見逃すわけにはいかないと言うが、

 

「・・・・・・止めといた方が良いですよね」

 

 木ノ葉の暗部姿の音隠れの忍が面を外した瞬間にその考えは改まる。

 

「・・・・・・お前は」

 

「木ノ葉下忍の、中忍試験にも参加していた薬師カブトだったか」  

 

「音のスパイだったとはな」

 

 原作とは違い、このタイミングで明かされた真実。それにより木ノ葉の忍達は動けなくなる。

 中忍選抜第三の試験予選が終了してすぐに発覚したのならば一ヶ月の期間で内部のスパイを調査できたが(実際はダンゾウの手引きだから無駄だが)、この状況でそれができる筈もない。

 どこに潜むかわからないスパイ達が一斉に動く危険を抱えたまま追撃に最強戦力であるカカシとガイが動けるわけがないのだ。

 

「おい・・・・・・どうする?」

  

 砂隠れの上忍バキの問いにカブトは、

 

「そろそろ退きましょうか」

  

 と、撤退を提案。

 どうなって大蛇丸が撤退を決めたかカブトには判断できないが、これだけ時間がたって木ノ葉を陥落できないならば戦力が足りなかったということなのだから。

 

(ダンゾウ様との取引内容は砂隠れの資金源である風影の暗殺と戦力の間引き、木ノ葉はあくまで三代目火影の暗殺か三代目火影の声望を下げる為に里の破壊程度。

 これ以上は名声と手柄目当てに御本人が動きかねませんしね)

 

 それで得るものが写輪眼を持つ少年との接触と、いくつかの検体(砂隠れ比率高し)なのだから割に合わないのでは?とカブトは少し思う。

 木ノ葉崩し。

 しかしその実態が砂隠れ崩しであったことは、限られた者達しかわからないだろう。

 

(守鶴はどうなったのやら。

 アレがあればまだマシだったでしょうに)

 

 真実を知らぬ木ノ葉と砂の者達に憐れみの視線を向けてから、薬師カブトはその場を後にした。

 

 

 

 場所は変わり、火の国と風の国国境付近の大森林。完全尾獣化守鶴とガマブン太の決戦跡地。

 第七班(カカシ狭間抜き)との戦いに敗れ、倒れ伏す我愛羅。

 チャクラを使い果たし同じく倒れそうなナルトにはサスケが肩を貸していた。

 

「・・・・・・オレの存在は消えない。

 消えないのだ!!消えてたまるか!!」

 

 間近に迫る死への恐怖から我愛羅は叫ぶ。

 ナルトは動けないがサスケとサクラは健在。その身を守ってくれていた砂の盾。嫌悪すらした絶対防御すらもう側には居ない。

 ザッ、と足音がする。

 ナルト達が近寄るたびに、

 

「くっ・・・・・・来るな!!」

 

 と声を上げる我愛羅。

 その姿をザマァと見下す感性を三人は持ち合わせていない。

 当然の報いだと嘲笑う気もない。

 原作とは異なり我愛羅が相手をしたのは音隠れのドス。木ノ葉崩しには未参戦であることも相まって、恨みを抱くには足り無さ過ぎたのだ(むしろテンテンにやらかしたテマリの方が上)。

 

「なあ我愛羅。

 一人ぼっちの、あの苦しみはハンパじゃねーよなぁ。お前の気持ちはなんでかなぁ・・・・・・痛いほど分かるんだってばよ・・・・・・」

 

 悲痛な表情のナルトの言葉にサスケとサクラも俯きだす。

 一族を奪われたサスケ、アカデミー時代に山中いのに助けられなければ苛められっ子だったサクラ。

 境遇に差はあれど理解はできてしまうのだ。

 

「・・・・・・」

 

 本心からの分かるという言葉が我愛羅の心に染み渡る。

 

「けど・・・・・・オレ達にはもう大切な人達が出来たんだ・・・・・・。オレ達の仲間は、傷つけさせねえ」

 

 乾いた砂に水をかけられた時のように。

 

「身内に命狙われる恐怖は知っている。オレもそうだった。寄る辺を無くした絶望は、言葉にできるもんじゃねーよな」

 

 サスケにとってのイタチは、我愛羅にとっての夜叉丸である。

 皮肉なことに両者はその真実、里のために実行したことも含めて同じ境遇であった。

 まだ本人達も知らぬその真実を知った時、どうなるかはまだわからないが。

 

「私にはアナタ達の境遇を実感できない。私は恵まれているから。

 だからこそ言いたい。

 アナタの置かれてる境遇はおかしいって。ナルトの事を知った今ならそう思うの」

 

 一般人であるサクラはだからこそ里の歪みを認識できてしまう。

 里のためという大義のために踏み躙られる子供達。そんな扱いはおかしいのだ。

 

「なんで、お前らは他人の為にそこまで」

 

 我愛羅がはじめて向けられた感情。 

 敵である自分へとかけられた言葉にただただ戸惑う。ナルト達のその行動が理解できずに問いかける。

 

「一人ぼっちのあの地獄から救ってくれた。オレの存在を認めてくれた大切な皆だから」

 

 ナルトの言葉に二人は頷くのであった。

 

「愛情」

 

 自分の身近にいる、大切な人達に尽くしてあげたいと慈しみ、見守る心。

 かつて唯一の味方だった、大切な人の言葉を我愛羅は思い出した。

 そんなモノなんてないと、諦めて消え去ったその感情を、抱えている者達を我愛羅は見つけたのだ。

 

「だから、お前らは強いのか」

 

 そう納得したのだ。

 

「なあ我愛羅、生の実感得たいなら狭間の家に来い」

 

 サスケは我愛羅へとそう提案する。

 

「?」

 

「ダチと鍋を囲えば、そんなもん自然と実感するさ」

 

 敵である自分が参加できるわけがない。

 けれどそれが照れくさそうにそっぽ向きながら言うサスケの気遣いであることを我愛羅は悟り、嬉しくなった。だから、

 

「砂肝とタン塩が好きだ」

 

「え?」

 

「羊羹とマロングラッセは嫌いだ」

 

 憧れて無理だった、友人の家に行くという夢をまた彼は見ようと思ったのだ。

 

「・・・・・・へへ、狭間に伝えておくってばよ」

 

 本人に頼まれたことをやり遂げたのだ、これくらいの要望はありだろうとナルトは笑いながら思うのであった。

 

「「我愛羅!!」」

 

 そこへテマリとカンクロウが現れた。

 ナルト達との間に立つ彼らは驚いたことに弟を守ろうとする兄と姉に見えた。 

 今の自分ならば殺せるのに、見捨てて逃げれば良いのに、そうしない二人になぜか我愛羅は泣きたくなっていた。

 泣きたくなる感情と再会することができたのだ。

 

「もういい・・・・・・ヤメだ」

 

「わかったよ」「あ・・・・・・」

 

 我愛羅に肩を貸すカンクロウ。追わないのか捕らえないのかと視線を向けるテマリに第七班は無言で行けと促す。

 

「・・・・・・我愛羅を、私の弟を殺さないでくれてありがとうっ!!」

 

 せめてそれだけは言わなければとテマリは去り際に叫ぶ。

 

「忍としては駄目な行いだな」

 

「サスケは命令違反しまくりだってばよ」

 

「あーあ、罰とか受けちゃうかしら」

 

 里の状況をまだ知らぬ彼らは、今は仲間達とやり遂げたのだと笑い合うのであった。

 

 

 木ノ葉崩し終結。

 火影と風影を亡くしたこの争乱。

 木ノ葉には新たな英雄が立ち。

 砂隠れは大きすぎる被害を受けた。

 

 闇の中、地の下で、

 自分が手引きしながらも友の死に腸煮えくり返りながら、笑みを浮かべる老人が居た。

 

「全ては世のため、木ノ葉のため」

 

 





 補足・説明。

 今話は木ノ葉崩し終結です。
 読者の皆様から心配されていた大蛇丸は無事逃亡に成功しました。
 自来也はやらかしましたが、仮に追いかけたら砂隠れに偽装した根に妨害を受けました。
【暁】対策にも大蛇丸はまだ必要なので。
 ですが、【暁】には大蛇丸弱体化の情報をきっちり流すダンゾウ様です。
 カカシ達が追えないのはスパイのせいです。いるかもしれないから動けなくなりました。
 木ノ葉崩し。
 しかし砂隠れの方が被害は遥かに大きいです。
 砂隠れは実は磁遁適性ある(公式設定)我愛羅に砂金採取を縋らないとガチで詰みます。
 
 原作とは違うナルト達。
 このシーンをやりたくて書きました。
 
 あー谷間を出し過ぎとか、主人公モブとか感想で言われてますが、作者は好きに書きます。
 谷間に関しては一度出した以上は出さないと不自然な立ち位置なので消せません。
 綱手編もでますからコイツ。
 サスケ奪還編とサソリ編では出しませんが(チヨバアは無関係)。
 
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