百式観音を背負いて。 作:ルール
ダンゾウの理想的な火影の成り方って、ヒルゼン直々に「次はお前の番だ」と火影の座を託されることだったんですかね?
ヒルゼンが若い頃に肉体欠損して三忍やミナトがいなければあるいはあり得た未来なのかな?
しかし、愛煙家なヒルゼンに対して嫌煙家なダンゾウ。いちいち張り合うとこなんかは微笑ましいのこの人はなあ。
戦いから二日後。
木ノ葉崩しが終結し、安全を確保し来賓を送り届け、里内の遺体の片付けが終了した後に、
木ノ葉の人々は犠牲者の葬儀を行う。
天気は雨。
火影邸の屋上の顔岩の下で、俺達は英雄達を見送る。
天までも泣いてるかのように降る雨。
喪服で並ぶ忍達。
葬儀の中央にあるのは三代目火影猿飛ヒルゼン様で、他の犠牲者達も彼と共に送られる。
三代目火影猿飛ヒルゼン。
彼は歴代で一番長く火影を務めた御方だった。
彼は歴代で一番木ノ葉の民と接した火影だった。
歴代で一番アカデミーへと足を運んだ火影だった。
歴代で一番、抱きしめてくれた火影だったんだ。
参列する忍達に彼との記憶がない者などいない。
アカデミーで声をかけてくれた。
慰霊碑の前で慰めてくれた。
身内の死の際に寄り添ってくれた。
些細なことで褒めて頭を撫でてくれた。
ナルトが火影を目指しだしたのもヒルゼン様の言葉があったからだという。
彼自身は己を至らぬ火影と揶揄することもあったが里人はそう思わないだろう。
彼との日々がそう思わせることなどない。
父、千手谷間の葬儀の際に撫でてくれた掌の感触。かけてくれた暖かい言葉を俺は生涯忘れることはないだろう。
「イルカ先生」
隣に立つナルトが木ノ葉丸に寄り添うイルカ先生へと問いかける。
「なんで人は、人のために命をかけたりするのかなぁ」
見上げたその先には三代目の顔岩がある。
「人間が一人死ぬ、亡くなる、無くなる。過去や今の生活そしてその未来と一緒にな。
たくさんの人が任務や戦争で死んでゆく。
それも死ぬ時は驚くほどあっさりと簡単にだ」
散った者達にも夢や目指すものが、同じくらい大切なものがある。
両親、兄弟、友達、恋人、里の仲間。
互いに信頼し合い助け合う、大切な人達と彼ら彼女らとを結んだ繋がり。
年月を経るごとに太く力強くなり、何があろうと失いたくないと思うモノ。
だから守る為に、理屈を利益を計算を打算を超えて、命を懸けるのだ。
大切だから。
大切だから。
「うん、なんとなくはオレにも分かるってばよ。でもさ、死ぬのは辛いよ」
そう、辛い。
あの人達が居ない木ノ葉は寂しい。
あの人達と共に歩めない今が悲しい。
「三代目だってただで死んだわけじゃないよ」
そうカカシ先生が続ける。
「ちゃんとオレ達に大切なものを残してくれている。
ま、いずれお前にも分かるようになるさ」
「うん!それもなんとなく分かるってばよ」
二人の師の言葉に沈んでいたナルトは前を向きだす。おそらくは内心で理解していた。
けれど言葉にされることで整理がつき、納得できたのだろう。
「百式観音」
葬儀の最期。
木ノ葉上役である相談役の御二方に頼まれたことを俺は行う。
木ノ葉崩しの戦線で猛威を振るい侵略者を撃退した百式観音は里人に見られ、その存在を知られた。
見た人々から百式観音で犠牲者を見送って欲しいと要望があったそうなのだ。
この世界に宗教と呼べるモノはほぼ無い。
この葬儀だって僧侶や神父が取り仕切るものではなく、里人達で行った。
三代目の世代にとっては深く思い入れがある、幾度も里を里人を忍を守り続けてくれた、初代火影柱間様の術を想起させるこの百式観音にヒルゼン様達に祈りを捧げて欲しいと乞われたのだ。
拒否する理由などない。
俺は両掌を合わせ、百式観音を顕現し、祈る。
犠牲者らには魂の冥福を、死神の腹におさまってしまったヒルゼン様達には安寧を。
それ以上に感謝を。
光輝く百手の観音の祈りに、里人達は拝み続けた。
瞬間的な顕現しかできなかった百式観音だが、今はずっと維持できるようになっていた。
俺が上手く立ち回ることができれば、救えたのだろうか?
そんな思いは生涯拭えない。
同じ想いを抱く自来也様とは顔を突き合わせ、涙ながらに語り合った。
その時の彼は、託されたのにすまない、と謝罪してくれた。
参戦した自来也様は自らが犠牲となっても戦った三代目様を止めることができなかったと。
だが死の間際、抱えられた三代目様は自来也様に告げたそうだ「綱手を頼む」と。
駆けつけた自来也様に安心し、大蛇丸に罰を下した三代目様の心残りが三忍最後の一人である綱手様なのだろう。
未だ失われた過去を見続ける彼女に前を向かせること、それが三代目様が自来也様に遺した頼みだったのだ。
綱手様の捜索。
それは次の火影にするためだけではない。
彼女に前を向いてもらうために行われるのだ。
葬儀の後。
なんとなく同期の皆は俺の家、千手邸へと集まっていた。
ナルトやサスケなどは一人になりたくない気分だったのだろう。
おにぎりに汁物。
簡単な食事をしながら、俺達はひたすら三代目様とのエピソードを語り合った。
おいろけの術で撃退したと誇るナルト、うちはの里跡地を共に歩いたサスケ、花壇を一緒に世話をしたサクラといのさん、一緒におやつを食べたチョウジ、共に将棋を指したシカマル、妹の生まれた時に祝いに来てもらったヒナタ、犬の散歩に付き合ってもらったキバ、取った虫を褒めてもらったシノ、任務達成を称賛されたネジさん、修行中に差し入れしてもらったリーさん、忍具屋で話を聞いてもらったテンテンさん。
修行を見守られていた、俺。
三代目様とのエピソードはいくらでもあった、知らない三代目様の姿を今日知った。
そんな語り合いの中、
「♪〜♫〜♬〜〜」
俺はつい、とある前世の歌を口ずさむ。
君がいる限り、命は続くのだ。
生とはなにか。
生きるとはなにか。
霧深き世界でそれに向き合い進み続けた者達の物語。
シリーズで一番好きだったナンバー。
ファイナルファンタジーⅨ。
そのエンディング曲を。
これから先、出会う人々にも三代目様達のことを語ろう。
知る者が居る限り、あの人達は、どこまでも命は続くのだから。
補足・説明。
今話は葬儀となります。
短めです。
葬儀の際に里人の要望で百式観音に祈らせました。その冥福のために。
アニメでは焼香する皆がそれぞれ三代目とのエピソードを思い出していました。
あの人は本当に祖父だったのです。
葬儀後に同期組+ネジ達は狭間の家に集まり語り合います。
ファイナルファンタジーでは9が一番好きです。だからつい絡めました。
この曲は、ビビの出した答えは、命の在り方に対する回答の一つかなと思います。
歌詞はぼかしましたが大丈夫ですかね?全文はだしてないし、やり方がわからないので。
やり方がわかれば歌詞全部載せたかもしれません。