百式観音を背負いて。   作:ルール

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 話が進まない。 
 でも書きたいことは書きたい、という葛藤。



原作21巻③

 

「何だって!そりゃホントか!?」

 

 執務机に突っ伏して寝ていた綱手様を起こして事情を説明。

 本人は寝てないと誤魔化そうとしたが爆睡しているところをはっきりと目撃したから無駄である。

 

「「?」」

 

 綱手様の驚きようから、そこまでのことかとイズモさんとコテツさんは首を傾げる。

 忍が里抜けするのは何も珍しいことではない。ぶっちゃけ三代目火影の子息である猿飛アスマさんが火の国で守護忍十二士になったのだって、半ば抜け忍みたいなものだからだ(自来也様と綱手様が里に寄り付かなかったのも他里なら抜け忍判定される)。

 また、中忍であるがまだ若いこの二人ではうちは一族の血継限界の恐ろしさをよく知らないのだろう。

 

「(まさか、もう動いて来るとは)」

 

 綱手はつい先日の大蛇丸との対話を思い出していた。綱手に腕を治療されたら、欲しいものを頂くついでにやりたいことがある、という言葉を。

 

「(欲しいものはうちは一族の能力だったのか、姉さん)」

 

 一応説明しておくが大蛇丸は男性である。

 ただ幼少期、同じ担当上忍の猿飛ヒルゼンの班となってから、身嗜み化粧家事料理恋愛進路など様々なことの相談にのってくれたオカマ口調のオネエ系である大蛇丸を綱手は姉のように慕っているのである。

 

「イズモ、コテツ。

 呼んできて欲しい奴がいる。

 狭間とサクラは来るまで詳細の説明を頼む」

 

 綱手がそう指示を出しイズモ達が急ぎ火影執務室から退出し、説明を求められた二人は知る限りの情報を語るのであった。 

 五代目火影綱手はうちはサスケを知らない。姉の如く慕うオネエ系が欲する次の身体の詳細を知らなければと思ったのである(里を長く離れすぎて下手したらうちはイタチすら面識がない)。

 

 

 その日、奈良シカマルにとってはいつも通りの朝であった。

 母手製の朝食をゆっくりと欠伸をかきながら食べていたら注意をされ、朝からガミガミめんどくせーな、とげんなりする。

 ピンポーンとチャイムが鳴り、母が離れた隙に父親であるシカクに何であんなキツイ性格の母と結婚したのかと問いかける。

 恋愛やら結婚やら、かつてのシカマルなら気にもしなかった。モテる同期や女に夢中な同期(某忍犬使いは男の娘に夢中)もいたが、感情よりも理論から考えるシカマルは面倒くさいと考えてしまっていたからだ。

 しかし同期女性陣の本気ぶり(某一族は一族総出)や、まだ十二歳ながらも中忍に昇格したことから最近は気になるようになったのである。

 というか、大戦時はともかく木ノ葉崩しはあれど平和なご時世に分類される今の時期に十二歳で中忍昇格はエリートの証。中忍試験での活躍もあり、同世代辺りの女性から興味をもたれる、いわゆるモテ期になったのだ。

 今まで同期で女子にキャーキャー言われモテたのは狭間とサスケ。

 そこに自分も加わってしまったことで流石のシカマルも異性について考えるようになったのである。

 

「・・・・・・そだな、あんな母ちゃんでも優しく笑う時がある。それでかな」

 

 息子の質問に父は短くそう答えた。

 時期的に忍界大戦期だろう恋愛及び結婚。過去の出来事や妻への想いを語りだせばおそらくきりがない。

 未来のシカマルにも劣らぬエピソードがシカクにもあるのだろう。

 しかしそういった長い話を面倒くさいと好まぬ息子に、父親はシンプルに一番の理由を告げたのだ。

 

「それだけ?」

 

 あのキツイ性格はそれじゃ釣り合わないのではとシカマルは思うのであった。

 奈良シカマル、十二歳。

 彼は父親と大差ない言葉を自らの息子に答える未来が来ることをまだ知らない。

 

「シカマル!五代目の使者の方々がお見えよ」

 

  

 

 奈良シカマルが使者から火影の呼び出しを受け、まだ着慣れぬ中忍装束を纏って執務室へと向かった。

 書類と資料散乱する執務室で、新たな火影から聞かされたのは信じ難い話だった。

 

「サスケが、里を抜けた!?」

 

「ああ、ほぼ間違いなく音隠れの里に向かっているだろう」

 

 同期メンバーの一人であるうちはサスケ。

 奈良シカマルにとって彼は、アカデミー時代はその容姿とクールな性格と優れた成績からいけ好かない人物だった。

 同じ里の出身ではあるが秋道チョウジのように幼い頃からの友人というわけでもない。

 しかし、千手狭間の家に同期が集まるようになってから印象は変わり、その心に面倒なモノを抱えているが情の深い仲間想いの良いやつと今では思っている。

 そんな仲間がなぜ里抜けなど、と疑問に思ってしまうのは当然だろう。

 

「姉さ、あの大蛇丸に誘われちゃったからだよ!」

 

「ちょい待って下さいよ!何であんなヤバい奴にサスケが誘われなきゃいけないんスか!?」

 

 姉さ?

 気になる単語が聞こえた気がしたシカマルだが、大蛇丸が三忍の一人で木ノ葉の抜け忍にして最高ランクの賞金首、そして先日の木ノ葉崩しの首魁であることくらいしか知らない。

 ゆえに仲間と関わりがあることと結びつかないのだ。大蛇丸と遭遇した第七班からも詳細を聞いていないという事情もある。

 

「そんな理由はどうでもいい。とにかく時間が惜しい、とりあえずシカマル・・・・・・だっけか?これから初任務をやってもらう」

 

 シカマルがサスケの同期で親しいことは、執務室にいる狭間とサクラから聞いた綱手だが、大蛇丸の転生忍術については伝えない。

 存在そのものを秘すべき忍術だからだ。

 

「サスケを連れ戻すだけっスか?」

 

 仲間を連れ戻すだけのことが正式に任務になる、その重大さにシカマルは冷や汗をかいた。

 敵さえいなければ見つけてしまえばめんどくせーことにはならない、そう見積もるシカマル。

 

「ああ、目的はそうだ。

 ただしこの任務は急を要する上に厄介な事になる可能性が高い」

 

「え?」

 

「この手の話は初めてじゃなく前例があってな。大蛇丸の手の者がサスケを手引きしている可能性が高い」

 

「(ダチを勧誘しに音の連中が来やがったのか。侵入を許すとか警備隊は何をしてやがる)」

 

 そう内心で悪態をつくシカマル。

 いくら大蛇丸が元は木ノ葉の忍とはいえ、木ノ葉崩しの後にあまりにも簡単に侵入されすぎだからだ。

 

「だったらこの任務。オレみたいな新米じゃなく上忍と中忍の四人小隊にすべきじゃないっスか?」

 

 敵の実力は未知数。

 だが今の木ノ葉に侵入できる手練れなのは確定で人数も不明。

 ならばベテランの実力者でやるべきではと進言した。

 

「・・・・・・それが出来ないんだよ」

 

「なんで!?」

 

 急を要する重大な事態なのにか、とシカマルが疑問から叫ぶ。

 

「分かってるだろう。アスマや病み上がりのカカシ、お前の親父、今殆どの上忍達は必要最低限の人数を残して任務で里外に出ている」

 

 やらないのではなく出来ない。  

 それが木ノ葉の現状なのだ。

 

「これより三十分以内に、お前が優秀だと思う下忍を集めるだけ集めて任務に当たれ!」

 

 無理難題。

 シカマルの中忍最初の任務は厳しいものになりそうだ。

 

「優秀な下忍、ってことは。

 そこの春野サクラは大丈夫で、千手狭間特別上忍は駄目っスよね?」

 

 執務室に居る同期二人を見ながらシカマルはそう尋ねた。

 

「ああサクラは平気だ。

 しかし狭間が里外に出るには相談役の承認がいる。この後に私が説得しにいくが、とりあえずは下忍での編成でやってくれ」

 

「同期メンバーが優秀な連中ばかりなのが救いっスよ」

 

「推薦したいヤツにうずまきナルトがいるんだが、どうだ」

 

「最初から確定してるっス」

 

 アカデミー時代ならともかく今のナルトをドベと思う者などいない。

 あの多重影分身は頼りになりすぎるのだ。

 

「じゃあ、行くぞサクラ」

 

「はい、班長!!」

 

 シカマルはサクラを引き連れて執務室を後にした。

 

 

 

「さて、狭間」

 

「はい、綱手様」

 

 シカマルが去った後に綱手は狭間へと声をかける。

 

「うちはサスケの事情はお前らの話でわかった。呪印を含めて姉さんのもとで強くなりたいという本人の希望もな」

 

「はい」

 

「だが、里はそれを許すわけにはいかないし、サクラやあのシカマルのように納得できないヤツもいる」

 

「・・・・・・わかっています」

 

 うちはサスケの事情を知った上で綱手が命じた連れ戻すという任務。

 それは大蛇丸が三代目からの罰から脱却し自由になる恐れとうちはサスケという人物を失わないためにだ。

 

「確かに個人で里一つ造りあげ人員を育て揃えたヤツの育成手腕は凄まじい、その教育があれば強くなれるだろう」

 

 いくら強者であろうとも里一つを造りあげるのは尋常ではない。

 三忍大蛇丸、邪悪であれ傑物であるのは間違いない事実なのである。

 

「だがな姉さ大蛇丸を知る私からしたらいくらうちは一族でもヤツに抗えるとは思えないんだ」

 

 木ノ葉に居ればサスケの望みは、強くなることは叶わないだろう。しかし死ぬとわかっている場所に送り出すわけにはいかないのだ。

 

「ですが、サスケなら」

 

「そんな保証はないだろうに。

 ま、そこまで同期を信頼できるのは好ましいがな」

 

 そこまで話したところで、綱手はこれからの方針を告げる。

 

「まずはお前が追うことを相談役に承認させる。それから緊急用の通信忍術で砂隠れに連絡し援軍を要請する」

 

「砂隠れにですか?」

 

 シカマルの呼び出しに電話ではなく使者を向かわせるくらいに通信技術が発展していないこの世界の、数少ない遠方への連絡手段を使用すると綱手は言った。

 

「ああ、アイツらでも足りない可能性があるからな」

 

 砂隠れも人員などいないが、それでも手を借りずにはいられない状況なのだ。

 

「そしてそれだけやってなお、サスケが大蛇丸のもとに到着したのなら」

 

「なら?」

 

「ヤツは大蛇丸への密偵扱いとする」

 

「!?」

 

「当人も密偵と知らなければ、疑われる心配はなく音隠れの機密を探れるだろう?」

 

 当人も密偵だと知らなければ密偵ではないだろうに。

 これはサスケの事情を知った綱手のせめてもの気遣い。帰る場所を残そうとする配慮なのだと狭間は悟るのであった。

 

「ありがとうございます、綱手様」

 

「なんのことだい?」

 

 綱手は彼女らしいニヤリとした力強く優しい笑みを浮かべるのであった。





 補足・説明。

 今話はシカマルへの任務命令です。
 途中でシカマルは実はモテ期になってることが判明します。

 サスケ、密偵認定。
 まあ途中で連れ戻されたらそこまでです。  
 カブトを退けたナルトを信頼してる綱手は念の為の準備はしますが、実は連れ戻せる方に賭けています(ゆえに結果はお察し)。
 

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