百式観音を背負いて。 作:ルール
音の四人衆がまだ十代という恐ろしさ。
大蛇丸様の人材発見能力と育成能力高すぎ。
うちはサスケ救出任務。
ついに音の四人衆に追いついた救出チームであるが、音の四人衆が一人次郎坊に足止めをくらう。
土遁とチャクラ吸収能力に筋力を誇る次郎坊。その実力は先の中忍試験に参加した各里の忍の比ではない。
救出チーム数人がかりで戦うべき強者に対し、秋道チョウジは一人残ることを選んだ。
うちはサスケを救う為にここで足止めをくらうわけにはいかない。
上忍クラスかそれ以上の強敵を相手に秋道チョウジは我が身を省みずに立ち向かう。
どんな痛みも友を失うことに比べたら耐えられる。三代目火影の時のような喪失感などもう味わいたくないのだ。
重心を下げてのぶつかり合い。
両者の体型もありそれは相撲のワンシーンのように見えた。
いくら身体を鍛え、四大行を学んでいるとはいえまだ十二歳である秋道チョウジが巨大土球を持ち上げて投げれる怪力の次郎坊と組み合えるのは理由がある。
先ほど口にした青い丸薬、それは秋道一族秘薬中の秘薬。飲めば爆発的なパワーを得ることができる三色の丸薬なのだ。
(馬鹿な、オレの力に)
音の四人衆一の怪力を誇る次郎坊。
忍としての総合的な技能、忍術、殺傷力などでは他の三人には劣るもののことパワーでは負けることはない。
そんな己と対抗できることに次郎坊は驚愕するが、さらに驚いたのは押し切られたことだ。
まさか自分がパワー負けするとは、驚愕が気の緩みを招きそれを察知したチョウジは次郎坊を持ち上げ腰の縄を掴み振り回し投げる。
「ウオオオオ!!」
その腕力は凄まじくさながら重機に振り回されたかのように吹き飛び、水切りのように地面を砕きながら激しくバウンドする。
跳ね転がる次郎坊は木に直撃しようやく止まる。
荒く呼吸するチョウジ。
同時にホウレン丸の副作用なのか腹部から痛みが走った。
強力な効果をもたらす薬は同時に人体に副作用を与える。
短期間の強化の代償はあまりにも重い。
けれどそうでもしなければ戦えぬ相手。そうまでしないと勝てない敵なのだ。
(態勢を立て直されるまえに追撃!)
紐を通された沢山の苦無を全身に巻き、そこから倍化の術。
内側から膨れ上がる肉に苦無が固定され刃物付き肉団子となる。
【肉弾針戦車】。
ウニか栗が転がってくるように見える。しかし見た目とは裏腹に苦無をスパイクにした結果、回転力と破壊力は増大し、苦無により生身で受け止めるには危険な代物と化していた。
同じ回転であっても、犬塚キバの通牙より破壊力があり、日向ネジの八卦掌回天とは異なる攻撃的な回転。
喰らえばただではすまないこの技を、次郎坊は忍術【土遁・土陸返し】による土壁で防ごうとする。
しかし大概の攻撃を受け止めるだろう土壁も圧倒的な破壊力の前には意味を成さずあっさりと粉砕。
「ぐっ!!」
次郎坊は回転し重量のある肉団子とそこから突き出た苦無を生身で受け止め身体をズタズタにされた。
並の忍ならばこれでお終い。
棘付き肉団子に押し潰され戦闘不能になる。
だが、
音の四人衆次郎坊はそこで終わらない。
大蛇丸の護衛役のエリートである彼らは、同時に大蛇丸の器候補。
必殺の肉弾針戦車を呪印を開放することで耐えきり、回転の止まったチョウジを重量の乗った掌底【崩掌】で弾き飛ばす。
状況に応じて強化しながら戦える。
それが呪印を制御できる者達の強み。
呪印を刻まれた実験体の多くが制御できずに暴走し獣同然と化す中で、呪印を制御し扱える音の四人衆はまさに天才集団。
「フン、知ってるか?人間五人も集まれば必ず一人はクズがいる。そういうやつはいつも馬鹿にされてよ。いざという時にゃ真っ先に捨て駒扱いがお決まりだ」
ゆえに自身を特別だと驕り他者を見下す。
同じように呪印を刻まれ、命を落とし、化け物へと墜ちて監獄行きとなった者達を見続ければそうもなるだろう。
「お前のことだよ」
フッ。
次郎坊の言葉にチョウジは笑う。
こんなに強いのにそんな考えしか出来ない次郎坊が哀れになったのだ。
自分は捨て駒なんかじゃない。
自分の周りの皆は見下しも馬鹿にもしていない。
千手狭間は言っていた。
周囲の人間は鏡でもあると。
自分の内面を写す鏡面なのだと。
見下され馬鹿にされているように感じるのは、自分が自分をそう思っているからなのだ。
だから他者に誠実であれば、他者は誠実で居てくれる。
それをチョウジは、親友であるシカマルを見て知っていた。
(まだカレー丸を飲む必要はない)
まだボクはやれる!!
「しつこいぞ、デブが!!」
「ボクはぽっちゃり系っ!!デブってのはデカくて無能なヤツを言うんだよっ!!」
流石のチョウジも自分が少し身体が大きい人と言い張る気にはならなかったようである。
木ノ葉崩しが終わり、ナルトが綱手捜索と螺旋丸修行を行っていた頃のこと。
『強くなりたい?』
いつもの千手邸で秋道チョウジは強くなりたいと千手狭間に頼みこんだのだ。
倍化の術とかいうトンデモ忍術を使えて指導してくれる先達だらけの一族の当主の息子が何を言ってんだと千手狭間は思った。
『うん、ボクは中忍試験でサクラさんに負けたじゃん。だからなんか、強くなる方法を教えて欲しくて』
『(あの拳王サクラオウにはナルトもネジもサスケも我愛羅も厳しいと思うが)。とりあえずサクラ[さん]呼びは止めてやれよ。同い年だろうが』
『そうしたいけど、屈伏したんだ魂が』
『式神かなんかかお前。
つっても、秋道一族って体型もとい術式体系が完成されてるだろ。
一族伝来のやり方を極める方が良いと思うんだが』
というか、そういった引き継いだモノが無いからこそ春野サクラは魔改造し放題なのだと狭間は言う。
才能あるまっさらな素体。
パーツをつけ放題のティンペットだ。
『つーか、四大行はそれら秘伝忍術の邪魔しない点も便利だよな』
だからこそ流派として確立しろと千手狭間は上層部からせっつかれている。
『うん、全身倍化が出来たのも四大行のおかげなんだと思う。けど、皆もやってるからボクだけの強みにならない。
シカマルは中忍になった。
その指揮に従うなら、ボクはボクにしか出来ないことを身につけるべきだと思うんだ』
盤上の歩ではなく香車か桂馬になりたい。
狭間にはチョウジがそう言ってるように感じた。
『・・・・・・わかったよ。
とにかく考えて見るが、なんかリクエストというか方向性はないか?』
『デブ、じゃなくてぽっちゃり系が格好良く見えるかんじで』
『実はシカマルがモテだしたの気にしてるだろお前』
世界一格好良いデブを参考にするか?と狭間は思うがあまりにも方向性が違い過ぎたので断念。
あの少佐は世界一格好良いデブだが、戦闘者ではなく戦争屋で扇動者だ。
となれば、
『・・・・・・これ読んでみ?
どっちかというとデブもといぽっちゃり系じゃなくチビ系が活躍する漫画だが』
『チビ系ならナルトじゃない?』
『言ってやるな、ナルトは食生活が原因だっての』
そう言って狭間が差し出した自作前世記憶からのコピー漫画のタイトルは【火ノ丸相撲】。
秋道一族はその巨大化させた身体を駆使する前衛タイプの忍だが日向一族の【柔拳】のような武術流派がないように感じたからだ。
巨大化した四肢を振り回す、それだけで十分必殺技となる。
しかし型に嵌めることで無駄を無くし、より強力になるだろう。
また【火ノ丸相撲】は火や水や雷に例えた動きや型が多い。将来的にはそこにチャクラ属性を加えることもできるかもしれない。
『・・・・・・相撲か。ぽっちゃり系だからからかわれて避けてたけど、体型的に向いてるよね』
『機動力を重視されがちな忍だが、秋道一族は表の護衛を務めることが多い。適性は活かすべきだろ』
デカい護衛の需要は多い。
裏社会の人間なら強面が人気だが、大名や貴族はデカくて頼りになる護衛を好むのだ。
『うん、そうだね』
身体の太ましさを肯定されたように感じたチョウジは嬉しくなり笑うのであった。
『・・・・・・あっ、倍化の術なんだが』
その後に狭間が思いつきで言ったアイディア、それもまた秋道チョウジに大きな影響を与えることになる。
「突肩!!」
呪印開放状態の体当たり。
それは先ほどまでとは速度も威力も桁違い。肉弾戦車すら真正面から弾き返せる威力を秘めていた。
「は?」
・・・・・・直撃すれば、であるが。
「(よし、出来た)」
突撃した次郎坊はチョウジに当たることはなく腰の縄を捕まれ投げ転がされた。
【上弦之月】。
火ノ丸相撲の登場人物である国宝三日月宗近こと沙田美月が得意とした上手出し投げ。
三日月を描くような足流しで勢いをつけ片手で相手を投げる技である。
土俵で向き合う相撲でこその技と思ったが、存外に実戦でも有効。
突っ込んでくる敵を受け流しつつ投げて転がすことができる。
大地に足をつけず飛び跳ねるのが忍だが、踏ん張りが効かない敵の方が投げやすいだろう。
「て、テメェッ!!」
まだまだ粗が多く、本物の相撲取りには通じないだろうが格下と舐めてかかる忍には通じるようだ。
「まだだ!!」
先ほどは突撃する次郎坊の力を利用した投げ、次はホウレン丸で増したチャクラを四大行の【凝】で両掌に集めて放つ連続張り手。
大典太光世こと日景典馬の【万雷】。
「(サスケみたいに雷遁を纏えたらもっと凄いのにな)」
火花散る程の勢いで打たれる張り手はバチバチバチバチと雷の如く爆音を鳴らす。
「ググッ。ふざけんなぁー!!カスがぁ!!」
投げ飛ばされ、さらに滅多打ちにされ、激昂した次郎坊は怒りでダメージを無視して突っ込みチョウジの身体を宙へとカチ上げる。
「(ここだ!!)」
四大行【練】からの、
「食らえ【超倍化の術】!!」
原作のチョウジでは秘薬のカレー丸を服用してようやく出来た超巨大化。
しかし四大行を学び、仲間達と訓練を繰り返したチョウジならばホウレン丸のドーピングのみで可能にした。
顔の大きさだけで木々の高さを超える超巨体。次郎坊は尾獣に引けを取らない重量に押し潰されてた。
違和感。
腹に感じる突き上がるような感触にチョウジはもしやと焦る。
「こんな奴を相手に【状態2】になるとはな」
ここまでして倒しきれないのかと驚愕する。
超倍化の術による超巨体をあろうことか次郎坊は片手で持ち上げ、
「【昇撃掌】!!」
もう片手による一撃で突き上げ飛ばした。
その衝撃で超倍化の術は解ける。
【練】による一時的なチャクラの増大あってこそできる超倍化の術は、全身倍化の術のように維持はできないのだ。
落下し地面に叩きつけられるチョウジ。
痛む身体で見た先には異形と化した次郎坊。
白髪となり長く生え、皮膚は色が変わり突起物が幾つも盛り上がっていた。
そして何より感じる力は呪印が全身を走ってる時よりも強くなっていた。
化け物。
このように外見が変わる術や力の存在をチョウジは初めて見た。
「こうなったら終わりだ。
今のオレはさっきより十倍は強い」
【状態2】。
千手狭間、うちはサスケですら勝てなかった大蛇丸配下の切り札である。
「この状態はやたらとチャクラを使うがな!!」
必死に起き上がり痛む身体を駆使して力を技で捌こうとするチョウジ。
しかしいくら技を極めようと、象の突撃を投げ飛ばせる力士は存在しない。
生物としてのフィジカルの差が、未だに未熟であるチョウジの技を効かぬと蹴散らす。
「(やるしかない)」
仲間のもとに追いつくにはホウレン丸のみで勝つ必要があった。
けれど副作用で動けなくなる可能性があっても、
「コイツはここで倒す!!」
信じてくれる仲間の為に。
友人を助け出す為に。
チョウジは黄色のカレー丸を飲み込んだ。
「!?」
その瞬間、秋道チョウジの背中にチャクラの翅が生えた。
本来であれば赤のトンガラシ丸を服用して発動できるカロリーのチャクラ化。
生命エネルギー操作技法である四大行を学ぶことでチョウジはその感覚を掴みかけていた。
だが今までできなかったその技術をこの瞬間に使えるようになったのは、命が懸かった戦場であることと怒り。
次郎坊は自分だけではなく大切な仲間達を愚弄していたのだ。
怒りという感情こそが、本人の箍を外す。
「なんだ!?その力はっ!?」
次郎坊は感じ慣れている筈の恐怖の気配に焦り、やみくもに拳を振り回す。
「終わりだ(狭間のアイディア、使わせてもらうよ)」
次郎坊の足掻きを躱し、チャクラを集めた拳を振りかぶり叩きつける。
「【衝撃倍化の術】!!」
直撃した瞬間に印を結び発動。
残っていたカロリーは変換され、次郎坊への衝撃を増幅させる。
これが狭間の思いついたアイディア。
装備の巨大化から、倍化の術は身体だけを倍化させる術ではないと考えた。
そこで倍化の術はカロリーを消費する陽遁の類ではと仮定して、身体や装備以外の認識している物質やエネルギーも倍化できるのではと推察。
チョウジや秋道一族が倍化の術の基本で胴体が膨らむのは、腹が膨れるというイメージのしやすさからだったのだろう。
そしてチョウジは先日の中忍試験でこれでもかとサクラに殴られ続け衝撃を受けまくった。
身体の次にイメージしやすいモノだった。
術式の拡大。
結果、倍化の術に新たな在り方が増えたのである。
蝶を模したチャクラの集められた左拳の一撃、その衝撃をさらに倍化させた。
そんなものを食らっては音の四人衆次郎坊が状態2であろうとも耐えきれるわけがなかったのである。
「勝ったよ、皆」
秋道チョウジ、大金星。
補足・説明。
今話はチョウジと次郎坊戦です。
色々と狭間の影響加わったパワーアップチョウジです。
原作との差異により、カレー丸でなんとか勝てました。
個人的には原作でのキモであるシカマルとの友情にも触れるべきかと思いましたが、そこは原作とも変わらずしっかりとあります。
原作ではそれがメインでしたが、この作品ではそれだけではないので。
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