百式観音を背負いて。 作:ルール
ナルト棒。
流石のサクラも影分身体ならともかく本体ではやりません。
影分身体なら間違いなく投擲してましたが(オイ)。
なんかユリアポジになりつつあるサスケの明日はどっちだ(今の大蛇丸がシンかな?ユダっぽいのに)。
まずいなこりゃ。
奈良シカマルは明らかに格上であろう君麻呂に運ばれていったサスケを追わせる為に、音の四人衆多由也と一人で対峙していた。
最初から勝算のない戦いであるとは覚悟していたが、多由也が口寄せの術で三体もの異貌の大男(この外見で女性体だったら驚く)を喚び出したのを見て内心でそう零した。
幸いなのはその大男達が意思なき人形らしきことだろう。意思のある口寄せ獣であれば一対四になったところだが、笛の音で操られた三体との戦いですんでいる。
救出チームで一番体術スキルが劣っているシカマルが対処できているのも、笛の音が聞こえたら動くというわかりやすい行動の前兆があるからだ。
どう動くかまでは把握できてなくとも先んじて回避行動は取れる。
そうやってどうにか凌いでいるが、多由也の操作技術と笛を奏でる腕前はかなりのもの、上手いタイミングで三体をバラして攻撃させてくるので術を使うタイミングも一体ずつ対処することもできない。
「(笛、か。あの複雑な曲を奏でることで操るなら演奏を邪魔すればなんとかなるか?琴や琵琶なんかの弦楽器ならともかく笛なら呼吸を妨害すればいい。花粉や粉塵、煙玉の類を当てれば息は乱れるよな)」
音を振動波の塊として扱う物理攻撃タイプとは違い、奏でた音色で効果を齎す操作洗脳タイプは演奏を邪魔すれば効果を発揮しない。
(だがヤツもそれを警戒して大男達を操っている。接近するには曲の中にある特定の制御パターンを分析してその行動を読めればなんとかなりそうだが)
オレはおたまじゃくしが全くわかんねェ。
と分析以前の問題があった。
音色を聞き分けようにも、どの音がどれを指し示すのか分類すらできない状況なのだ。
いくら多芸な忍といえども音楽の分野まで修めている者は稀である。
一族が祭祀や催事や芸能に携わっていたり、秘伝忍術に音楽が絡んでいたり、密偵としてそういった関係する場所に潜り込まない限りは身につける機会はないだろう。
「くたばれよ、クソネズミ」
(となれば見るべきものは演奏する指。
けど分析しきるにはまだ情報が足りねえ)
音符から分析が出来ないのであれば指の動きを観察する。
幸いなことに多由也は砂隠れの傀儡師とは違い、大男達の動きを把握するためか身を潜めてはいない。
(アレで動きを見極めるか)
肉人形とでも言うべき三体の連携攻撃が振るわれる。棍棒、鈎爪、体当たりと蹴撃、どれか一つでもくらえば体術スキルの低いシカマルには致命的。
奈良一族の秘伝忍術である影真似の術の特別なチャクラを作る余裕はない。
ゆえにシカマルが取る手段は、
「なっ!?」
大男達が攻撃した瞬間、シカマルの影がヌルリと動きだした。三つに分かれたその影は実体があるかのように素早く走り刃のように大男達の身体を斬り裂いた。
「忍法・影斬の術。ってな」
影とは光が遮られて暗くなってる箇所に過ぎない。その物理現象を奈良一族秘伝忍術は特別なチャクラで操っている。
しかし特別なチャクラであるがゆえに発動には集中が必要で消耗が激しいのだ。
だからあの連携による猛攻では術を使う隙すら多由也は与えることはなかったのだ。
「なんだその術は?聞いたこともないぞ」
奈良一族は木ノ葉隠れで高名な旧家。
その秘伝忍術は知り尽くされているほどに知れ渡っている。
知れ渡っているにも関わらず、秋道一族と山中一族とのコンビネーションでそれを弱みとしない点があるいは一番恐ろしいのかもしれない。
「さてな、テメェが知らない術なんていくらでもあるだろ」
そしてこの術。
発動の速さ、消耗の少なさ、影の特性がない点から、当然のことだが奈良一族の秘伝忍術ではない。
(バレても問題ねえ小技だが、脅威に感じたら儲けもんだ)
千手狭間がシカマルに提案した、とある漫画作品に登場した技である。
そうこれは、忍術と呼ぶのも微妙な技なのだ。
龍狼伝という作品に登場した黒瘴虎という黒衣の人物が使用した暗殺技。
実際に影を操ってるわけではなくタネはシンプルなもので、影に見せかけた鋭い刃が先端に付いた黒い薄布を黒い糸で操ってるだけなのだ。
手品とはタネの複雑さではなく演出や魅せ方で客を驚かす。
異様な外見から、影を操るというあり得ないことが出来るかもしれないと思い込ませれば既に術中なのだ。
シカマルはそれに加えチャクラを微量に用いることで自在に影を操ってるように見せかけている。
(もっとこう、凄え強化案を教えて欲しかったぜ)
自分好みの詐術であるとはいえ、そんな不満を千手狭間に対して思う。
しかし如何にあらゆる作品(偏りはある)を網羅している千手狭間といえど奈良シカマルの強化は難しいものがあった。
それはシカマルのチャクラ量が少ないから、正確にはシカマルがエネルギーを別のことに消費し続けているから無理だったのだ。
奈良シカマルのエネルギーの消費先、それは思考である。
脳とは意外とエネルギーを消費する器官である、戦略を練る・分析することが膨大なエネルギーを使用するのは将棋棋士や囲碁棋士を見れば明白だろう。
ましてや奈良シカマルの思考速度は並大抵ではない、ゆえにエネルギー消費も本人は無自覚だったが膨大なものだったのだ。
忍の世界で指揮官と最高戦力が両立できないのはこれも理由の一つかもしれない。
頭脳労働でエネルギーを消費してしまうから必然的にチャクラ量が少なくなってしまうのだ。
だから千手狭間は、影を用いた夢のような他作品ネタを奈良シカマルにやってもらうことを断念したのだ。人柱力になって貰えればワンチャンと考えもしたが、それはあまりにリスクが高すぎる。
そうして選ばれたのが、この手品のような影斬の術。龍狼伝原作ですらタネさえ知れば柳の体術にすら劣ると評された技である。
(ま、なんでも使いようだ)
影使いの奈良一族ならばこの手品はいくらでも応用が利く。
戦力的に欠けていた攻撃力は一応補ってくれているし、この黒布が影を作り出し範囲を広げることができるからだ。
触れたら斬れる影。
その脅威があるだけで敵の動きも制限できる。
「チィッ」
(さあて、どう詰むかね)
盤上はまだこれから、シカマルの一手は続く。
「しゃーんなろー!!」
「直線的な動きだ」
草原で激突する二人。
八門を二門まで開けたサクラによる【凝】の拳を君麻呂はいなし躱し逸らす。
少女離れした剛拳を一撃も喰らうことのない君麻呂の体術。純粋に速いガイとリー、白眼と柔拳による円運動を駆使するネジ、【円】で察知し反応する狭間達とは異なる、舞のように流れる動きである。
「「「「「うおらあああ!!」」」」」
ナルトの影分身達も隙をみては突撃しているが君麻呂はサクラを相手取りながら小蝿を払うかのように刺し貫いて消す。
「足止めすらできないのかよ」
凄い忍術を使うことが忍の強さであると思われがちであるが、その忍術も体術で差があれば当てることすらできない。
「存外にやる。しかしあの狭間ほどではないな」
役立たずの四人衆よりはマシかもしれないが。
そう吐き捨てる君麻呂にサクラは幻術を発動してから殴りかかる。
幻拳。
体術の技量差を埋めることの出来る戦闘法。これならばと思ったその技も。
「惑わされないよ」
君麻呂には通じない。
「クソッ、どうして!?」
複雑で効果の強い高度幻術であるならば成功すれば決定打になるが先ず相手にかけることが難しい。
しかし単純な少し認識を歪める程度の低位幻術に一切惑わされないなどあり得ないことなのだ。
「幻術とは精神の揺らぎからなる術だ。
大蛇丸様に絶対の忠誠を誓うボクの精神が揺らぐことなどありえない」
地の君麻呂。
死をも恐れぬこの狂信者に幻術は通用しない。
「まいったわね」
「こうなりゃガマオヤビンを口寄せするしか」
我愛羅以上の脅威に、サクラとナルトは歯を食いしばるのであった。
そしてその背後に置かれた棺桶からチャクラが煙の如く立ち昇りつつあった。
補足・説明。
今話はシカマルとサクラ達の戦闘です。
それぞれの成長を書きながらだと話が進まないのが悩みですね。
シカマルのチャクラ消費。
頭脳労働にかなり消耗してるかなと予想しています。プロ棋士とか対局でかなり疲れるらしいので。
まあ多由也の演奏もそこは一緒かなと。
音楽家の方々もやつれるくらい疲れるそうです。
なお作者は多由也対策に毒霧やら毒煙玉はどうかなとちょっと考えました。
笛に呼吸は必須だからそれだけで彼女は止められるのではないかと。
ギターや琵琶などの弦楽器は弦が切れたらそれまでなので、やはり最強はマラカスですね零崎曲識の少女趣味です。
影斬の術。
ネタが古すぎですね、二十年以上前の術です(作品は続いている)。手品みたいですが、四大行を併用したら普通に強いです。
燃費も、影真似の術よりはかなりマシです。
なおこちらもテンテンさん謹製です。
シカマル強化案として、尾獣的なアレをシカマルにぶちこんでヒロアカの常闇君化したかったですが都合よくそんな存在いないし、やはりテマリさんの尻には敷かれて欲しいとと思っています。
まだまだ続きますがあと五、六話でなんとかサスケ奪還編は終えたいです。