転生したらスライムだった件 〜鋼鉄の飛竜〜 作:空軍系AC乗り
日常ってやつは、いとも容易く崩れる脆いものなんだって、今日まで知る由も無かった。
父さんは自衛隊員だった。詳しい事は機密だからって聞かなかったし、何年も家に帰らない時だってあった。
母さんはいつも寂しそうにしてて、子供ながらに父さんが許せないなって思ったこともあって。
自分が成長していくと、父さんが帰れないのは仕方のないことなんだって納得できるようになって、父さんのこともそれほど嫌いじゃなくなって。
一時期日本が異世界に転移したとかで、すごく生活が大変になった事もあった。
それでも、日常は崩れなかった。
母さんと2人きりの家、時々父さんが帰ってくるような日常。
少なくとも、2人が老人になって死ぬまでは続くんだろうって思ってた日常。
壊れるのはあっけなかった。
…街にバケモノが現れて、避難しろって放送がスマホからひっきりなしに流れる。
すぐに母さんを連れて、車を出した。けど、渋滞に引っかかって、歩いて行く事になったんだ。
沢山の人が歩いて避難所に向かってる。
「…なぁ、あれ。」「もしかして、あの
その言葉につられて空を見ると、剥き出しの筋肉みたいな見た目の、ゲル状の何かが隣の建物に向かって落ちて、建物が崩れ始める。
咄嗟に下敷きになりそうだった母さんを向こう側に突き飛ばした。
「母さん大丈夫!?」
「私は無傷よ。あんたこそ大丈夫なの!?」
「大丈夫、傷は無いよ。でもこの状態だと…そっち側には行けそうにないや。」
倒れた建物が、ちょうど僕と母さんの間に崩れ落ちて、母さんと分断されてしまった。
「僕は迂回して避難所に向かうよ。だから母さんも早く避難して!」
「っ…怪我するんじゃないわよ!」
行ってくれた…僕も、早いところ避難所に向かわないと…
迂回しようと、他の封鎖されてない道を探して移動する。
「クソッ…ここも封鎖されてる…どんどん避難所から離れてく…迂回ルートは無いのか…?」
その時、近くで重い何かがコンクリートに激突するような音がした。振り向いてそっちを見ると、自衛隊の歩兵支援パワードスーツを着た自衛隊員だった。
『報‥:シー‥‥再‥開ま ‥、‥0秒』
『パ‥ロ‥‥の生‥反応、極‥。ト‥アージ黒‥‥断。』
「そ‥か…俺は…‥‥のか…」
『‥告:民‥人‥‥体反‥を‥認。デー‥べ‥‥を‥認、深‥新樹、‥イロ‥トの‥縁‥す。』
「な‥で‥‥な所‥…アキ‥…な‥か!‥」
『ど‥し‥‥か、パイロ‥‥?』
「…な‥、ア‥ラを守‥‥やっ‥く‥な‥‥…?」
『…了解。最優先命令とします。』
「…あり‥とう。」
パワードスーツから隊員が降りてくる。あれは…父さん!?
「父さん!?どうし………」
それを見た瞬間、頭が真っ白になった。
父さんの胸の中央に……紅い血を垂れ流す、向こうの景色が見えてしまうほどの大きな穴が空いていたから…
吐き気と心配と恐怖と動揺が混ざり合って、固まってしまった。それがいけなかったのだろうか?
『民間人:深山新樹の保護を開始。避難所までの護送を行います。』
僕はパワードスーツに無理やり乗り込まされ、父さんは血を口から垂らしながら、苦痛を感じているとは到底思えない笑顔で言った。
「先に避難しててくれ。俺は…後から追いつくから。」
「父さん!?父さんッッッ!!!?!?」
「…ごめんな」
「待って、離せよ!!このっ、父さん!!?どういう事だよ!!?!?いやだ、まっ」
『オートパイロットを起動。』
そこからは、パワードスーツが空を飛ぶ加速Gで気絶してしまって、何も覚えていない。
次に目が覚めたのは…何処とも知れない森の中だった。