あのあと、キョウヘイたちはポケモンセンターに移動し、この街のジムリーダーでありボス、ヤーコンに話をした。今日あったこと全てを、だ。
「……俺が居ない間にそんなことがあったのか……、非常に申し訳なかった」
ヤーコンの他にもチェレンにベズもいた。彼等は多くは語らなかった。今日あった全てを彼等なりに理解することしか、出来なかったのだ。
「俺がもうちょい早く来れりゃ良かったんだが……」
何も出来なかった自分を悔やむベズ。
「……いや、恐らくあの場にベズがいたとしても、無理だったろうな」
冷静に分析したのはチェレン。
「しかし……やつらは一体何処に? プラズマ団のアジトはトコトン潰したはず」
「……本当にそうなんだろうな?」
ロットの言葉を聞き、ベズはロット向かって言葉を投げた。
「何を言っているんだ? ベズ」
「話を聞けばあんたもプラズマ団だったらしいじゃねぇか。……実はグルなんじゃないのか?」
その言葉を聞き、ロットよりもチェレンよりも先に動いた人間がいた。
ヤーコンだった。
「……ベズと言ったな。言ってもいいことと悪いことがあるぞ」
ヤーコンはそれしか言わなかった。ベズはただ何も言わず、立ち尽くしたままだった。
「あれ? あの少年は?」
次の日、ロットがホドモエジムを訪れると、チェレンとベズがいた。ロットはチェレンに訊ねた。
「キョウヘイなら、今日の朝一番でヤーコンさんとジムバトルして勝ってフキヨセの方に行っちゃいましたよ。……あぁ、話すこともあったのにさっさと行っちゃうんだもんなぁ」
「そうか……では私はもどることとしよう。少年、昨日はすまなかった。確かに……我々は悪いことをした」
「……、」
「だが、信じてはくれないだろうが、我々も変わりつつあるのだ。そして……それはこのホドモエの人たちに伝わっている。我々がここに住んでいるのを認めているのも、それがあるんだ。――出来れば、君にはそれがわかってもらいたい」
そして、何も言わないベズに背を向け、ロットはジムから出ていった。
「で、どうするんだいベズ?」
ロットが居なくなってから、ずっと項垂れていたベズは、チェレンの言葉を聞いて、初めて上を向いた。
「おれ……小さい時にポケモン盗まれちゃったんですよ、妹の大事なポケモンで……妹が一晩泣いてたのが辛くて……でも、俺には力が無くて。奴ら……プラズマ団がポケモンを奪っていくのを見ることしか出来なくて……」
「……君も色々あったんだな」
チェレンはそれしか言わなかった。
「僕の友人の……話をしてもいいかな?」
チェレンの言葉に、ベズは確りと頷いた。
「……実は彼女も同じような経験をしそうになったんだよ」
「えっ……?」
「プラズマ団に蹴られ、殴られ……。あの時の現場を見てなかったけど、きっと彼女はあれから変われたんだと思う」
チェレンの顔はどこかひどく悲しんでいるようにも見えた。ベズはそれを見て――漸く自分なりの結論をまとめた。
「おれ、今から戦ってきます。ヤーコンさんと、拳で語ってきます」
「そうか。……それは良かった」
そして、ベズはジムの奥へと駆け出していった。
「さて……、僕もそろそろ仕事しなくちゃな」
そう言ってチェレンはポケットから紙切れを取り出した。そこには、たったひとつの言葉しか書かれていなかった。
『イースト・イッシュ』と――。
話は少しだけ戻る。
「キョウヘイ……だったか。お前にポケモンの話をしてやろう」
ヤーコンとのジム戦も終わり、帰ろうかとしていた時のことだった。
「……なんです?」
「ケルディオ……ってポケモン知ってるか?」
「ケルディオ?」
「ああ、なんでも海や川など水面を走り世界中を駆け巡っていて、その中でも美しい水辺に現れるそうだ。冒険者のお前なら、いつかは会うんじゃないか?」
「……へえ、あってみたいですねえ」
「ま、そういうことだ。自分を貫いてもいいが、頑固にはなりすぎるなよ」
そう言って、ヤーコンはジムの奥へと向かっていった。
そして、キョウヘイも次の街へと向かい始めた。
目指すは――フキヨセシティ!