六番道路を突き進むキョウヘイは、ふと空を見上げた。
ぽつり。
ぽつ、ぽつ、ぽつ……
「……やばっ、雨じゃねぇか!」
キョウヘイは急いで駆け出して、近くの家へと走っていった。
息を切らせながら、キョウヘイは一緒に歩いてきたルカリオの体を丁寧に拭いていく。
「大丈夫だったか?」
キョウヘイの言葉にルカリオは確りと頷いた。
「にしても……ここはなんなんだ?」
キョウヘイは不思議に思い、近くにあった(恐らくその施設の説明と思われる)看板を見た。そこにはこう書かれていた。
「『季節研究所』……? とりあえず誰かいるのかな……、雨宿り出来ればしたいんだが……」
とりあえずキョウヘイは、その扉をノックした。直ぐにノックの答えは返ってきたので、キョウヘイは入ってみることとした。
中は結構な広さだった。そして、そこで働いているのか、数人の白衣を着た研究員と思われる人間、そして……。
「やあ、キョウヘイ。遅かったね」
「チェレンさん……、さっき会ったばかりじゃないですか……?」
「いやぁ、確かにそうなんだけど」チェレンは笑って、話を続けた。「君に言ってなかったことがあってね」
「……なんです?」
「イースト・イッシュって聞いたことあるかい?」
「……名前だけなら」
「それだけでいいよ。……実は、イースト・イッシュでね、−50℃もの温度を一瞬だけど観測したらしいんだ。それだけじゃない。ヒウンやホドモエでもだよ。このイッシュに……何かが起きているんだ」
「……イースト・イッシュでいったいなにが……?」
「それが解ってたら僕だって苦労しないよ。……ただ、これだけは言える。イースト・イッシュには……昔話で伝わっていった一匹のポケモンがいるんだ。レシラムとゼクロム……二匹の遺伝子を持つ、最強のポケモン……」
「……その名前は?」
「その名は……キュレム」
その言葉を聞き、キョウヘイは身震いした。聞いたことがなかったとしても――それを無意識に行ってしまう。
「……どうした、キョウヘイくん?」
「いや……、急にちょっと……」
「そうか……。何もないなら大丈夫だが、」
チェレンがそう言うと奥から眼鏡と白衣を装備した美人が現れた。
「チェレン、終わったわよ」
「ありがとう、姉さん」
「……姉さん?」
チェレンから飛び出た意外な解答にキョウヘイは驚かずにはいられなかった。
「そう、僕の姉さんさ。名前はクーチェ。この季節研究所で主任をしているんだよ」
「はじめまして。……キョウヘイくんだったかな?」
クーチェはチェレンの言葉に次いでキョウヘイに浅く礼した。それにつられて、キョウヘイも礼を返した。
「……そうだ、姉さんさっき今終わったって?」
「うん。完璧よ。……この子が何れくらいの能力を持つかは解らないけどね」
クーチェはチェレンにそう言ってモンスターボールを差し出した。それを受け取ってチェレンは小さく頷いた。
「あのー……なんのことかさっぱり見当つかないんですケド?」
キョウヘイはなんとなく自分が置き去りにされていることに気が付いて、チェレンに訊ねた。
「……君にこれを渡したくてね」
そしてチェレンはモンスターボールをひとつ差し出した。中に入っているのは――?
「シキジカ、というポケモンだ。なんでも時期に応じて姿を変えるとても珍しいポケモンだよ。……それを君に差し上げようと思ってね」
「いいのか?」
「ポケモンチャンピオンを……目指す君のことだから、様々なポケモンを捕まえるんだろうし」
「……ありがとう」
そしてキョウヘイはシキジカの入ったモンスターボールをしっかりと受け取った。
「……と、」
キョウヘイが外に出ると、雨は止んでいた。
ふとキョウヘイはチェレンが言ったことを思い出した。
「フキヨセシティで、君を頼りにする人が待っている」
「……それって誰なんだろうな」
そう言ってキョウヘイは再び歩き出した。
向かうは――フキヨセシティ。