頂上には博士の言う通り、大きな鐘があった。それは堂々としてかつ荘厳で、その峻厳な雰囲気を放っていた。
「すげぇ……」
キョウヘイは思わずぽつりと呟いていた。
「……さぁ、鳴らしてみて。キョウヘイくん」
「僕がですか?」
「そうよ。さぁさ、さっさと鳴らしてみて、よ!」
そう言って博士はほぼ強制的に鐘の目の前にキョウヘイを連れていき、鐘を鳴らす紐を(こちらもほぼ強引に)持たせた。
「……解りましたよ」
キョウヘイはもう観念したらしく、小さく呟いて鐘の紐を大きく振った。
そして鳴ったのは荘厳な雰囲気を醸し出す鐘の音だった。
「いい鐘の音ねぇ……」
「おーい! 博士ー!」
不意に上を向くとそこにはエアームドに乗ったフウロの姿があった。
「あら、フウロちゃんどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないです! いったいいつになればヤマジタウンの飛行場まで行けるんですか?! これ以上ジムは休みに出来ないんですよ!」
「……あら、そうだったわね」
「直でソウリュウには行けないんですか?」
「それがね、行こうとしても飛行場がないのよ」
博士が言ったのはその通りではあるが、至極現実的なことだった。
「それだからまずはヤマジタウンまで行って東回りに向かうのよ。……なんでもネジ山が土砂崩れで通れないらしいからね」
「なるほど、それで」
「キョウヘイくんも一緒に来たらどうかしら? イーストイッシュはまだ未開の土地だから研究しがいもあるの」
博士が言った言葉はあまりにも突然過ぎた。
「いや、でもやろうと思えばネジ山を越えられるんじゃ?」
「……それならいいんだけどね。ネジ山の山頂は夏でも冬みたいな寒さだし雪もちらついてる。そんな場所を行くなんて結構厳しいものなんじゃないかしら?」
「まぁ……確かにそうですけど」
キョウヘイは一先ず頷いたが、それでも腑には落ちなかった。簡単にいえば、最終的には博士によって丸め込まれただけである。
「それじゃ、行きましょう。イーストイッシュへ!」
フキヨセシティにはイッシュ一ともいわれる飛行場が存在する。そこに持ち場を構えるのは同じくイッシュ一の規模を誇るフキヨセカーゴサービスだ。かつてはそこも荷物のみを取り扱う貨物機だけを運搬させていた。しかし今ではそれは昔。今やイーストイッシュにあるヤマジカーゴサービスと業務提携を結び、以後フキヨセ飛行場は貨物機だけでなく旅客機も取り扱うようになったのだという。
「それじゃ、行きますよ〜!」
操縦席に座るフウロの声を聞き、三人はシートベルトが確りしまっているか確認をとった。別にフウロを信用していないわけではないが、念には念をというものがある。あくまでも応急措置に過ぎない。
「それじゃ……ヤマジタウンに向けて……」
フウロが操縦捍を持つと――まるでそれ自体が魔法にかかってるかのように――ふわりと浮き上がった。
こうして、キョウヘイの旅はイーストイッシュへと向かうことに――!!
そのころ。
「……おや、」
アクロマはある洞窟を歩いていた。氷に包まれているからか、ひんやりとしていた。
「なんですか、これは……氷像?」
アクロマは“ちょうどキョウヘイのような少年ほどの大きさの”氷像を二つ発見した。その隣にもそれより大きなものがあるが……どうやら中身は回収したらしく大きくくり貫かれていた。
「純度があれなのか……中身は見えませんね……」
そう言いながら、アクロマは氷像を何回か叩いてみた。
しかし、反応などくるわけもなかった。
「……まぁ、当たり前ですか……。氷に行動を示されても困るだけですし」
そう言ってアクロマは何かを思い出したのか足早に元来た道を歩いていった。
「みなさん、もうすぐヤマジタウンですからもう一度シートベルトを締めて下さい」
フウロの声が聞こえ、キョウヘイはシートベルトを締めて、窓から外を眺めてみた。
そこにはまわりが山に囲まれた小さな村があった。
「ここが……ヤマジタウン……」
「昔はこの飛行機で行かない限りは山を越えるしかここに行く方法はなかったんだけど……、今はその山がサザナミタウンと繋がったからサイクリングをしによくトレーナーがやってくるのよね。結構いい場所だし」
アララギ博士の言う通り、その村は盆地に出来ていた。しかし、よく見ると村の外れに随分と大きい(飛行機から目視出来るのだから相当な大きさであることは頷ける)家が建っているのに気が付いた。
「……あの家は?」
「どれ? ……あんなところに家なんてあったかしら……ちょっとベル、探索してみたくならない?」
「ええっ?! 私がですか!! ……嫌ですよぅ、ぜったい」
「……もうすぐ着きますよー」
ベルと博士の絡みにフウロは呆れて最終通告を差し出す。
そして飛行機はゆっくりと――着陸した。