リバースマウンテン。
イッシュの東に位置する休火山で、シンオウ地方にあるハードマウンテンと同じ性質を持つと言われているが、現在のところそれがどういう意味を持つのかはっきりとしていない。
「ここを抜ければサザナミタウンっていう超一流リゾート地よ。セイガイハも雰囲気はいいけど、やっぱりサザナミに住みたい! って人が未だに多いと聞くわ。……まぁ、簡単に言えば、住むならサザナミ泊まるならセイガイハ……と言ったところかしら」
にしてもこの博士よく喋るよなぁ、とキョウヘイは思っていたが正直そんなツッコミをしてはどう返されるか解らないのでしないことにした。余計なところで危険な橋を渡らないのが、彼の本音である。
「……んで、ここに何か用があるんですか?」
「いや? 別にここを調査する予定もないし、さっさと通過しちゃうだけよ」
「そうですか」
キョウヘイはその言葉に安堵のような表情を浮かべた。いつになったらソウリュウシティキョウヘイらに行けるんだろうかと、それしか頭にはないようだった。
「……ソウリュウに行きたいなら、まだまだ我慢した方がいいわよ? ここを抜けて、サザナミに、さらにそこから北西に進んでカゴメ、ビレッジブリッジを抜けてようやくソウリュウシティに着くの。……ネジ山さえ開通してれば楽なんだけどね……」
ネジ山を通るルートも最初は考えられていたが、この前の地震で土砂崩れが起き、山を抜けるルートが埋まってしまったのだという。まぁ、そうでなければ今キョウヘイたちは此処に居ないだろう。
「……あれ?」
そこで、アララギ博士は何かを発見した。
「野生の……ブースター?」
「おかしいわね……。ブースターはこの辺には根付かないはずなのに……」
アララギ博士とベルはそれぞれ言葉を交わしたが、そんなもので解決するわけもなく、ただ立ち尽くすだけだった。
「……野生じゃない、ってことですか?」
「……そういうことになるわね」
キョウヘイの問いに、アララギ博士は一言で答えた。それが何を意味するのか、キョウヘイにも解ることだった。
つまり、このブースターは……
「その通り。野生じゃない」
その考えを遮るように、何者かの声が聞こえた。そして、遅れてそれの姿も暗闇からうっすらと見えてきた。
「……やはり権威あるポケモン博士だ。そういうのはあっという間に解ってしまうのだな」
その声の主に、キョウヘイは見覚えがあった。
「……エクス・プラズマ……!!」
「我々を知っているとなると……貴様はキョウヘイだな?」
その言葉にキョウヘイは静かに頷いた。
「……厄介な奴に出会ったが、まあいい。ここで倒して褒賞を貰えばいいだけのことだ」
「……どういうことだ?」
「貴様は知らんだろうが、プラズマ団では貴様を特別手配している。生死に関わらず……本部まで連れてくれば褒賞として幹部への昇格が約束されるわけだ」
「……まためんどくさいことを……」
「ならばさっさキョウヘイられろ!!」
エクス・プラズマはそう言ってブースターに指示を与えた。
「ブースター、『オーバーヒート』!!」
刹那、地獄の業火にも似た炎がキョウヘイに襲い掛かった。
「……不意打ちとは、やはり汚いな」
キョウヘイはその攻撃を避けていた。
だけではなかった。
「……そのチカラ、そのままお返しするよ」
キョウヘイはあの一瞬でルカリオを繰り出し、“はどうほう”のエネルギーで、“オーバーヒート”のエネルギーを押さえ付けたのだ。並大抵のポケモントレーナーに出来ることとは思えない。
「……ま、待て……待てってば……」
「ルカリオ、『はどうほう』」
そしてルカリオは――そのエネルギーを解放した。
「さてと……、これでいいかな」
ベルはエクス・プラズマを動かないように縄で縛り、手を叩いた。
「……ここには何の用できた? 貴様らが居るということは何か理由があるんだろう……?」
「……シンオウ地方にハードマウンテンという火山がある。その深奥部は今まで解析されることはなかった。……しかし、つい数年前とある学者がこの火山から現れ、こう言ったそうだ。
『私はシンオウからやってきた!』とな。
でも、考えれば解る話だ。心の空洞っていう洞窟も噂じゃシンオウと繋がってるっていうくらいだ。……なにか、この火山にもあるのだと直ぐにお偉方は確信し、ここを集中的に捜索した。――そして、あるポケモンに出会った。その怒りで火山を噴火させることをも出来るポケモンだ。その名は――ヒードラン」
「ヒードラン……」
「まぁ、今そこに行っても無駄だろうけどな。俺の仲間が、既にヒードランを捕らえ、ある場所へと運んだはずだからな……」
そしてエクス・プラズマは高らかに笑い出した。気が狂ったのか、はたまた作戦成功による喜びからか――その区別はキョウヘイたちにはつくことはなかった。