二年後のあなたへ   作:natsuki

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第二話 初めてのジム戦

 

 ベルとトウヤは北にある街、サンギタウンへと向かおうとしていた――。

 

「……ところでキョウヘイくん。ジムって解るよね?」

 

「解りますよ。ジムバッジを八つ集めればポケモンリーグに挑む事が出来るってのも」

 

「まぁ、それくらいは解って当たり前、ってところもあるけれど。そこまで言うならリーグ制覇する気も?」

 

 ベルの言葉に、キョウヘイは頷く。その目は真っ直ぐと透き通っていた。

 

「さっすが、博士が見込んだ子だねっ! ……やっぱりすごいなぁ。まるで二年前のトウヤみたい!」

 

「トウヤって」キョウヘイはその単語に烈火の如く反応した。「プラズマ団を倒したっていうあの?!」

 

「そ、そうだよ!」

 

 ベルはなんとなく「しまった」とでも言わんばかりの困った表情を見せた。

 

 しかしそんなことはキョウヘイには解っていないようだった。

 

「と、トウヤさんって凄いですよねっ!! プラズマ団を倒して四天王を瞬殺しちゃって、二年前に急に行方不明になっちゃうまで世界一のポケモントレーナーって呼ばれて!!」

 

「……彼が好きなんだね?」

 

「はい! もうサイコーですっ!!」

 

「そうか、ならば僕も全力をもって戦わなくちゃな」

 

 不意に隣から声がかかった。

 

 そこにいたのは――

 

 

 

 

 ネクタイをつけた、まだあどけなさが残る少年だった。

 

 少年は、驚くキョウヘイの顔を見て――笑った。

 

「なるほど、確かに似ているね。彼に」

 

 少年は呟いて、小さく頷いた。その光景にキョウヘイはまだよく解らない状況でもあった。

 

「……久しぶりね、チェレン。実際に会うのは……二年ぶりかな?」

 

「あぁ。眼鏡……僕と同じカラーリングだね。一瞬気付かなかったよ」

 

 チェレンとベルは短い会話を交わす。

 

「えっ、もしかして……チェレンさんとベルさんって……?」

 

「二年前……トウヤという少年がイッシュに蔓延っていた組織『プラズマ団』を解体させた。そこまでは知ってるだろう?」

 

 チェレンの言葉にキョウヘイは頷く。

 

「……その彼と共に一緒に戦ったのが僕らさ。……尤も彼よりかはあまり注目こそされなかったけどね」

 

「……、」

 

「さて、キョウヘイ。僕はこの前にジムリーダーになったばかりだ。しかも……君が初めての挑戦者。ジム制覇の厳しさ……僕が教えてあげよう」

 

 そう言ってチェレンは踵を返し、ジムの形には似つかわしくない小さな建物へと入っていった。

 

「……よし、」

 

 そして――キョウヘイもそれを追って入っていった。

 

「……え?! もう入っちゃっていいの、キョウヘイくん?! 準備とかは?」

 

「準備なんていりませんよ、このポカブだけで充分です」

 

 そう言って、キョウヘイはジムの扉を思い切り開け放った。

 

 ジムの中は外見通りの広さだった。

 

 しかもジムトレーナーが一人いるだけ。

 

 さすがは最初のジム、簡素である。

 

「さぁさぁ、一気に行っちゃうか!!」

 

 キョウヘイは先程の感じとは異なって張り切っていた。

 

 その光景を見て、ベルは少し可笑しくなってしまった。

 

「オース、未来のチャンピオン! ヒオウギシティジム初挑戦者ってわけだな!」

 

 ジム入口の脇にある『イッシュ地方公認ジム』の証である石像の脇に眼鏡をかけた細身の男がいた。

 

「はい!」

 

 キョウヘイは男の言葉に答える。

 

 男は、キョウヘイのその声に少しだけ押されてしまったようだった。

 

「おぉ、威勢がいいねぇ! それじゃ色々教えてやろう! このヒオウギシティジムはノーマルタイプのジムだ! 格闘タイプがいれば楽勝だが……、生憎このあたりでは格闘タイプは見つからない。ノーマルタイプは万能だが、特殊技で攻めるんだ!」

 

「特殊技、なるほど」

 

 男の言葉にキョウヘイは短く呟き、そしてまた進んでいった。

 

 すると、目の前にいたのは――今までのトレーナーとは明らかに目の色が違う短パン小僧の姿があった。

 

「ここを通すわけにはいかないのさ。……目と目を合わせたポケモントレーナーがお互いにする事……、なんだか解るよね?」

 

 その言葉にキョウヘイは頷いて、モンスターボールを投げ出した。外から出てきたポカブも元気一杯な様子だった。

 

「君のポケモン、やる気満々だね! ……だけど、僕だって負けないよ!」

 

 そう言って短パン小僧はマリルを繰り出した。

 

「マリル……水タイプだから……炎タイプのキョウヘイくんのポカブには相性が悪い……!!」

 

 脇で傍観していたベルは二人の状況を観察していた。

 

 確かにマリルは水タイプ。しかもその特性『あついしぼう』は炎タイプには苦しいものだ。

 

「そんなこと…… 解ってる!!」

 

 そしてその言葉とともにポカブはマリル向かって駆け出した。

 

 短パン小僧は考えていた。

 

 いきなり、キョウヘイのポカブが突っ走ってきたからだ。

 

 無計画なのか。それともなにか作戦があるのか。

 

 だが、短パン小僧はそんなことを考えるのはやめた。

 

「マリル! 『まるくなっ』て、『ころがる『!!」

 

 マリルはトレーナーの指示通り、丸くなり――そして転がった。

 

 ポカブは走る。マリルは転がる。

 

 そして――ただキョウヘイは笑うだけ。

 

「今だ、ポカブ。ジャンプするんだ!!」

 

 その言葉通り、ポカブはマリルを超すほどのジャンプをする。

 

「な、なんだって?!」

 

「――そして、『ひのこ『!!」

 

 ポカブはその命令どおりに火の粉を放った。

 

 マリルは予想外の場所からダメージを貰ったためか、混乱に陥っていた。

 

「そして、ポカブ、『たいあたり『!!」

 

 

 

 ドカッ!!

 

 

 

 

 衝撃と共に、マリルは倒れた。戦闘不能。戦いの終了を意味していた。

 

「は、ははっ。つえーな、あんた」

 

「いやーまさかうまくいくとは」

 

「えっ?! まさか今のって」

 

「ノープランだよ。何にも考えてなかった」

 

「……、」

 

「ま、うまくいった。それはよかったよ。んで? ジムリーダーってどこにいるの?」

 

「ここの……突き当たり」

 

「そっか。ありがと!」

 

 そう笑ってキョウヘイはジムの奥へと走っていった。

 

 

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