キョウヘイたちはソウリュウシティにたどり着いた。過去と未来が混ざり合う街、まるで二匹の龍のように、しかし相反することもなくそれは街の中で『共存』という選択肢を取った。
共存、とはいえそう簡単に出来るものではない。それは明らかである。しかし、この街にはそれが出来てしまった。多大な努力をかけたに違いない、その街にはポケモンジムもある。
「……ついに着いた……!!」
その街に着いて、キョウヘイが先ずしたかったこと、それはポケモンジムに挑むことだ。実はヤマジタウンに着いたあと、フウロから六つ目のバッジは貰っているため、ここが七つ目になる。考えると、彼はあとジムバッジ二個でポケモンリーグへの挑戦権を手にすることが出来るのだ。
ポケモンリーグは、ジムバッジを八つ集めた人間が、四天王と呼ばれる実力者+チャンピオンと戦う勝ち抜き式のバトルシステムで構成されている。ポケモンリーグに挑戦するには自ずとバッジを集めなくてはならず、しかもバッジを所持するジムリーダーもかなりの実力者であるから、そう簡単には八つのバッジを集められないのが現状だ。
しかし、ポケモンリーグを制覇しチャンピオンになる――そのことはどの地方のポケモントレーナーにとっても夢にすることで、今やポケモントレーナーになろうと毎日千を超える少年少女が自らの街を旅立つ。
ポケモントレーナーになり、各地を旅する――『可愛い子には旅をさせよ』とはよく言うものだ。ポケモン協会はそれを狙い子供の体力をつけることも考え、現在のようなポケモントレーナー支援制度が始まったものとも考えられる。
「ここが、ポケモンジム……?」
そこにあったのは、巨大な建造物だった。眼前にでかでかとポケモンジムの証があったので、恐らくここがポケモンジムなのだろう。
「おっ、キョウヘイじゃんか!」
不意に後ろから声がかかったので、キョウヘイは振り返った。
「……ベズ! 久しぶりだなぁ、どうしてここに?」
「ジムに挑んで勝ったからこれからセイガイハの方に向かおうとしたんだが……なんでもマリンチューブの工事がまだ終わらないんだとよ。陸路も色々あって通れないからどうしようか考えていたんだが……」
「そうだったのか……。俺もこれからソウリュウのジム戦に臨もうとしたんだが……」
「あぁでも地下鉄が走ってるからなんとかそれで行くつもりだ。明日には出発するさ」
「地下鉄なんて走ってるのか? ……初めて知ったぞ」
「何でも出来たばっからしいぞ。さっきオープニングセレモニーやってたし」
「……そりゃ気付かないわけないよな」
それを聞いてひとつため息をついたキョウヘイだった。
「まぁ……暫く要るんだろ? 俺がちゃちゃっとジムバッジ手に入れてくるから久々にバトルでもしようぜ」
「あぁ、そうだな」
そしてベズとキョウヘイは会話を終え、ソウリュウジムの門を潜った。
ちょうどそのときだった。
耳をつんざく程の轟音が、キョウヘイの背後で響いた。
「……ッ!! なんだ……?!」
キョウヘイは振り返って――そしてその光景に絶句した。
「どういうことだよ、これ……」
そこに広がっていたのは先程まで眺めていたソウリュウシティではなかった。建物や道路はすべて氷が覆い尽くし、温度すらも寒く感じるほどだった。
「ベズ……、さっきいたよな……!」
彼が最初に思ったことはベズが居ないことだった。彼もかなりの実力者、やられるがままに凍結させられるとは到底思えない。
「……ここにいるさ」
その刹那、空間が切り出され、そこに次元の安定していない不親和空間が生まれた(姿を現した、のほうが表現が正しいが、何しろ初見に近いくらいあまり見たことがない)。
「ふぅ……危なかったぜ。あと一歩遅れてたら俺も氷漬けだった」
「そうだな。……にしてもこりゃ一体なんなのだろうな……?」
「……おや、まさかまだ人間が居るとは」
不意に第三者の声がかかり、キョウヘイとベズはその方向を見た。
そこにいたのは黒ずくめの三人組の男だった。決して話をしなさそうな寡黙な男たちに見えた。
しかし、男の話は続く。
「……わたしたちはこの街にあるというあるものを取りに来た」
「……あるもの?」
「何かは言えぬ。だがそれを手に入れねばならない。邪魔をするというのなら……こちらも然るべき手段を取るが?」
「上等だ」
そして男たちとキョウヘイ・ベズの戦いの火蓋が切って落とされた――!!
黒ずくめが繰り出したのはコマタナだった。対して、キョウヘイが繰り出したのはルカリオだった。――相性としては若干キョウヘイの方が有利といえる。
「コマタナ、『シャドークロー』!」
「ルカリオ、『はっけい』!」
コマタナがシャドークローをルカリオに命中させる前に、ルカリオのはっけいがコマタナに命中した。効果は抜群、さらにマヒ状態の追加攻撃、利はルカリオにあるのはそこにいる誰もが見ても同じだった。
しかし。
「くくく……」
「何がおかしい……?」
「貴様は攻撃の相性もよく勝てると思っているのだろう」
「それがどうした」
「……コマタナ、『からげんき』」
一瞬のことだった。
コマタナの攻撃は先程の物とは大きく違った。何が違うか、目に見えて解るものは威力だろう。
「なにが……?!」
「ポケモンバトルの真髄、何も解っていない。ポケモンバトルはタイプだけを見るものじゃないんだよ。……技、特性、性格……すべてを理解し、フルに使う! それこそが……ポケモンバトルというものだ!」
キョウヘイはその言葉を聞き、一瞬狼狽えた。
ポケモンバトルの真髄? 性格? 特性? あまりに聞き慣れない単語ばかり出て、キョウヘイの頭の中はいろんなものがごちゃ混ぜになりつつあった。
「落ち着け、キョウヘイ!」
同じくあの黒ずくめとバトルをしているはずであろうベズの声を聞き、キョウヘイはなんとか正気を取り戻した。
「しかしまぁなんというか……」
「……なんだ?」
「機械的過ぎやしないか?」
「は?」
キョウヘイはベズに言われたその一言がよく解らなかった。難しいことは言ってないのだろうが、それでも解らないことには変わりない。
「つまりだ……なんだか生きている心地がしないというか、なんというか……」
「なるほど……つまり、」
「どうした! 仕掛けて来ないならば……こちらから行くぞ!!」
黒ずくめはそんな話を待ってくれていたらしい。なんとも優しいことだ。
「ルカリオ、『インファイト』!!」
ルカリオの一撃は今までよりも素早かった。
強いて言うなら、技名を完全に言い終わる前にコマタナにインファイトを喰らわせていた。
「……なに?」
黒ずくめは何が起きたのか……解らないまま、コマタナはゆっくりと倒れていった。
しかし。
黒ずくめはポケモンがやられたにも関わらず、一切動じることもなかった。
寧ろ、真逆の行動を取った。
高らかに笑い出したのだ。
「なにが可笑しい!」
「いやぁ……目的は達成したからな……」
「待て、プラズマ団!!」
黒ずくめが話しているとその後ろから壮年の男性が走って来た。ジムから出てきたからにはジムの関係者だろうか?
「ジムリーダーシャガよ。遺伝子の楔、確かに頂いた」
そう言って黒ずくめは一瞬のうちに消えてった。
「……にしても、奴らは一体何者なんだ……?」
キョウヘイとベズはシャガの家に居た。シャガ曰く話すこともあるがこんな場所では風邪をひくだろう、とのこと。
「奴らはダークトリニティ……。プラズマ団のゲーチスの個人部隊だと云われている。だが、それはあくまでも想像だからその範疇を出ない」
「ダークトリニティ……!」
キョウヘイは先程の戦いを思い出していた。
ダークトリニティの一人が言っていた、ポケモンバトルの真髄キョウヘイらはまだ解っていない。
彼らはその真髄を理解していた……のだろうか。
「……少年」
シャガはキョウヘイの表情に気付き、呟いた。
「強さに不安を覚えているのか」
「……」
キョウヘイは頷いた。
「ならば、あの街に行くといい。セイガイハシティ。あの街こそ、最強のジムリーダーのいる街だ。彼と戦えば……きっと何もかもが解るはずだ」
次の日、結局一泊したキョウヘイは出立する準備をしていた。
「キョウヘイ早いな」
「最強のジムリーダーなんて聞いたら戦いに行くしかないじゃん。そうだろ?」
「まぁ、確かにな」
ベズは笑って言った。
「さあ、行くかルカリオ!」
キョウヘイの言葉にルカリオも大きく頷き、走っていった。
向かうは――セイガイハシティ!!