ところはかわり、ここはヒウンシティ。
「ルッコのジムリーダーご訪問! やってまいりました! 今日はこのヒウンシティジムをご訪問!!」
今をかけるアイドル、ルッコがヒウンシティジムにいた。
「はいオッケールッコちゃん今日もかわいいね!」
「えへへ……ありがとうございます」
会釈をして、ヒウンシティを歩くことにする。
いつもの格好で、おしゃれを控えめに。
それでなんとかバレない程度。有名人は大変である。
「どっこに行こうかな~」
街を見る。
ルッコは彼女のニックネームで、今はルリと名乗る。
彼女は正直アイドルなんて柄じゃなかった。
彼女の学生時代、暗い印象が強くとてもアイドルになんてなれるものではなかった。
だから、彼女は今の現実を未だに信じられない。
だって、彼女はもとこそ暗い人間だったんだから。
「……そこのお姉さん?」
ルリはふと声をかけられた。
そこにいたのは――ルリだって見覚えのある人間。
プラズマ団。
逃げなくてはならない……! ルリはそう思って駆け出そうとした。
しかし。
「あれれー。もしかしてルッコさんじゃないですかー?」
後ろにも、いた。しかも、彼女の名前を知っていた。
「……えっ」
思わず、声をだしてしまった。
「いやあ、やっぱりそうだ。まさかこんなところで会えるなんて……あれ? ポケモンをお持ちで?」
「悪いですか」
ルリは思わず語気を強めた。
しかし、逆に。
「……怒ってます?」
「申し訳ないですねえ。こいつちょっと馬鹿でして」
「まあ、わかると思うんですけどポケモンの解放をしてましてね? あなたのイーブイ、戦わせるのとてもかわいそうじゃないですか……?」
ルリは三人のプラズマ団員に詰められ、少しだけ後退る。
誰も助けてくれることも……ない。人がたくさんいるからかもしれない。
「おい」
そんなときのことだった。
そこにいたのは、ひとりの少女だった。
「……まさか、メイ」
「やっほ」
どうやら相手の方は名前を知っているらしい。
ところで、彼女は敵か? 味方か?
「うりゃあああっ!」
メイと呼ばれた彼女は驚くべき力でプラズマ団員をなぎ倒していった。
そして、わずか少しもかからないうちにプラズマ団員はいちもくさんに逃げていった。
「……大丈夫?」
残ったのは、メイとルリだけ。
「……ええ、あなたは?」
「私はメイ。いろいろ旅してるの」
「そうなんだ……私はルリ」
「大丈夫? 怪我してない?」
「……まあなんとか」
ルリはメイと少ししか会話をしていないが、それでも彼女に何かを感じたらしかった。
「……ねえ、」
「どうした。やっぱりどっかケガでも」
「また、会えるかな」
「え?」
その言葉に思わずメイも驚いた。
「……むり?」
「いや、またあえるよ。きっとね!」
「そうだよね……。あ、私用事があるんだ! じゃあね!」
「うん! またね!」
そして、二人の少女は別れを告げた――。
「ランドロス?」
メイはほうじょうのやしろにきていた。
ほうじょうのやしろはイッシュの東、イーストイッシュにあり昔は何らかの集落があったとされているが、今はそんなものもない。寂れた場所となっていた。
「……待ち合わせにも時間が微妙だしなぁ」
メイは時計を眺める。時間は十五時。まだ二十分ほど時間はあった。
「仕方ないからちょこっと眺めてみるかなあ」
仕方がないので、散歩をすることにしたメイだった。
「だから、ランドロスは豊穣の神様なんじゃよ。あの社があるじゃろ? あそこは昔からランドロス様を祀っとる。わしゃここの管理を任されておる、というわけじゃ」
社を眺めていたメイに一人の男性が話しかけていた。彼は自らを管理人と名乗っていた。
「……なんでも古代じゃ神殿の力を利用して天候を操っていたらしい。それでも、神様たちは自らの意志でここに舞い降りた。そして……ここをずっと豊穣の地として認めた。これが、ここの由来となっているわけだ」
「へえ」
「……ところで、お主、なぜここに?」
「少し待ち合わせをしていて……」
メイが振り返ると、
「いやあ、待たせた。すまなかったな」
そこにはアララギ博士の父親が立っていた。
「お久しぶりです。アララギ博士」
「今は博士も引退して趣味でポケモン研究をしている身だがね」
「ところで、どうして私をここに?」
「イッシュ地方が危険に晒されていることは知ってるかな?」
「エクス・プラズマですか」
「そうだ」
アララギ博士は笑ってさらに話を続ける。
「ジムリーダーたちおよびポケモン協会は再びその対策に追われることになった。しかし……私はそれで済むとは思えないんだよ。君にもわかるだろう。……二年前、兄を失ったキミにとっては」
メイは二年前、兄トウヤを失った。
その憔悴さは誰もが心配したほどだった。
しかし、それを助けたのがポケモンだった。
アララギ博士は彼女に一匹のポケモンを与えた。
彼女はメキメキとその力を上げ、今やイッシュ、いや世界に名を轟かせるトレーナーへとなったのだった。
しかし、その目的の全てが、兄を救うためだった。
まだ生きているであろう兄を救うため、力をつける。
今まで守られていた自分が、兄をまもりたい。そう思うようになったのだった。
「……そして、私はついにその場所を突き止めた。プラズマ団の目的の場所――」
「それは?」
「……それは、ジャイアントホール」