マリンチューブとはこの前完成したばかりの海底トンネルだ。リゾート地のサザナミとまた同じリゾート地のセイガイハを繋ぐもので、全面ガラス張りのトンネルでは運がよければホエルオーも見れるという。
その場所にベズとキョウヘイはやって来た。
「やっぱ『そらをとぶ』はラクチンだな。あっという間に着いちまう」
「やっぱり空ってのは見晴らしがいいなぁ。しかし空からセイガイハに行っても良かったんじゃないか?」
「その辺は困ったものでさ。一度も行ったことのない場所は鳥ポケモン……いや、飛べるポケモン共通の習性らしいな。そういうのがなけりゃさっさと次のジムにも行けるんだけど……。ま、こういうのもありじゃん?」
ベズはそう言ってマリンチューブの入口に入り、窓口へ向かった。
「いらっしゃいませ。当マリンチューブは観覧料無料でございます。海底の世界をゆっくりとお楽しみくださいませ」
窓口のお姉さんは恭しく笑いながら言った。キョウヘイとベズは笑って答えて、そばにあったパンフレットを一部づつ受け取っていった。
マリンチューブ内は出来たばかりにも関わらず、人が少なかった。しかし半分観光目的で来たキョウヘイたちにとってそれは好都合だった。
「すごいなぁ……けどバスラオしかいねぇ……」
「そろそろホエルオーとか見えてもいい気がするんだけどなぁ……。まぁ、運が悪いってことで諦めるしか……どうした、キョウヘイ?」
ベズはキョウヘイが上を見上げていることに気付いたので、訊ねた。
「ほら…………上見てよ……」
その言葉の通り、ベズは上を見た。
「こいつは……」
そこにはホエルオーが雄大な泳ぎを見せていた。
ホエルオーは世界で一番大きなポケモンだ。しかしあまりにも巨大過ぎて、見れたら運がいい、非常に幸運なものなのだ。
人間すらちっぽけに見える。二十メートル近い体長の身体を潮に任せ雄大に泳ぐその姿は圧巻だった。
暫くして――正確にはホエルオーがマリンチューブから見えなくなって――キョウヘイたちはようやく首を元に戻した。周りにはギャラリーができていて、恐らく彼らもあの雄大な姿を眺めていたに違いなかった。
「さあ、行くかー!」
「そうだな。セイガイハまでもうすぐだ」
そう言ってキョウヘイたちはマリンチューブを北に向かっていた。
最後のポケモンジムの街、セイガイハシティはもう目と鼻の先まで迫っていた。
セイガイハシティはつい数年前までは隠れたリゾート地として人気を博していたがマリンチューブの開通により更に人気を博すものだと言われている。
そんな街にキョウヘイたちはやってきた。
「静かな街だよなぁ……。こんなところでジム戦って大分のほほんな感じになりそうにしてならないんだけどな」
「そうは言っても最後のジムだぜ? やっぱりある程度の気合いは必要になるわけだ。張り切って行かなきゃ逆にやられちまうんじゃねぇか?」
「アハハ、まさか」
そんな話を交わしながら二人はポケモンジムに入った。
ジム内は水が水路をなし、浮島の間を進む仕組みになっているらしい。しかし……肝心のジムリーダーが見当たらない。いったいどこに行っているのだろうか?
「オーッス! 未来のチャンピオン! ……と言いたいとこだが、今セイガイハジムは休業中だよ」
「休業中?」
「なんでも、海のカミサマが荒れてるから確認しに行くとかどうとか。だけど、二日経ってもまだ帰ってこない……。まぁ、あの人……シズイさんはかなり時間にルーズな人だからね」
それでいいのだろうか。
キョウヘイたちが最初に思った、感想だった。
「いつ頃帰って来るとか……解んないんじゃなぁ……」
キョウヘイがそんなことを呟いた、その時だった。
轟音が轟き、爆ぜた音が響いた。交響曲のような喝采、爆発! 初めキョウヘイは何があったか解らなかったが、直ぐに彼はジムの外から飛び出た。
「……なんだよ、あれ……!」
そこには巨大な飛行艇が浮かんでいた。それはあるものを無理矢理に持ち上げていた。
「……あれは、海底神殿!」
「海底神殿?」
「イッシュ伝説に数えられる古代王国の城の遺跡……だといわれていた場所です、何をするつもりなんだ……?!」
その言葉を聞き、キョウヘイはモンスターボールを手に持った。
「キョウヘイ」
「行くに決まってるだろ」
その言葉にベズは無言で頷き、バルジーナを繰り出した。
そして二人は空へ向かった――!!