キョウヘイはアクロマと別れ、フリゲート内を探索していた。
「フリゲートは着陸した……ならばもう団員は殆どいないはず……!」
デウスはキョウヘイとベズの隣に並んで走り、早口に述べる。
「なら嬉しいけどな。むやみやたらに戦闘してPPを消費するよりマシだ」
ベズはそう言っていた。が、その心中は戦いたくてウズウズしているに違いなかった。
(……目が輝いているしな)
キョウヘイはベズの事を一番知っているつもりだった。
だが、チョロネコが奪われていたことを知り、彼はそれを助けたくなった。傍で寄り添ってあげたくなった。
「……に、しても何処が出口なんだ……」
キョウヘイが疲れたので少し立ち止まり、カバンの中にあるおいしいみずを取り出した時だった。
「キョウヘイ、静かに……っ」
「ベズ……、どうした?」
「何か、聞こえる」
ベズが耳をすまし……音を立てずゆっくりと歩いていく。一先ずベズについていくこととした。
「……なんだ?」
キョウヘイは聞こえるか聞こえないか怪しいくらいの小声で訊ねた。
「ポケモンの鳴き声」
「は?」
「……微かにそう聞こえるか、ってくらいの感じ。普通のくさむらとかだったら特には不思議に思わない。だがここはプラズマ団のアジト、怪しくも思えてしまうだろ?」
「……耳、いいな」
キョウヘイが訊ねるとベズは笑って答えた。
「生まれつきだ」
その頃、ポケモンジムリーダーズ。
「……船……だよな?」
「にしてはでかい気がするが……。ふむ、あまり我々の規格では考えては行けぬか」
ホミカとシャガがそれぞれ会話を交わした。
「……出てこないね」
「こちらの出方を伺っているのかしら」
「まさか」
アーティは肩を透かして笑った。
「まるで僕らの中に敵との共謀者が居るみたいな言い方じゃないか」
「おい、その言い方はよくないだろう!」
「あくまでも、だ。可能性を述べた迄に過ぎない」
アーティとシャガの会話は続く。
「……しかし、何故ここだと解ったんだ?」
「アララギ博士の研究データをアロエ姉さんから聞かせてもらったことがあってね。それで、ジャイアントホール周辺の温度が非常に下がっていると聞いた。二年前にもあったからね……、気になったまでだ」
「なるほど。つまりは……データがここにいる、と告げていた、か」
「あのあとまさかソウリュウがあんな目にあうとは思わなかったけどね」
アーティはそう言って、一歩足を踏み出す。
同時にフリゲートの入口も開かれ、中から大量のプラズマ団員が姿を現した。
「……どうやら奴らも本気らしいな……」
「さぁ、ジムリーダーの意地と奴らの意志、どちらが強いか戦おうじゃないか」
そしてそれぞれがポケモンを繰り出した――。
その頃、謎の空間。
少年は眠っていた。
「……目を醒ませ、少年」
その声を聞き、少年はゆっくりと起き上がった。
不思議な感じだった。自分が自分でない……生きている心地がしない、そんな感じだった。
隣には自分によく似た少女がちょうど起き上がったところだった。
「……トウコ?」
彼は名前を言うと、トウコはまだ寝惚けているのか、辺りを見渡す。
「……あ、トウヤ。どうしたの?」
「解らない。そもそも何でこんなところにいるんだ?」
「起きたか」
トウヤとトウコはその声のする方に振り返った。
そこに居たのは――アルセウスだった。
「あ、この前はどーも」
「……そう軽く挨拶出来るのは大したものだと言っておこう。二年、お前達が起きるのにかかった時間だ」
「二年?!」
トウコは驚いた様子でもう一度アルセウスに訊ねた。
「……本当に?」
「あぁ、本当だ。ジムリーダーもチャンピオンも変わった。ポケモン図鑑も進化したらしいな」
「……それで、俺達に何の用だ?」
訊ねるトウヤにアルセウスは返す。
「なぜかは解るんじゃないか?」
「……なんだと?」
「まぁ、用はもう一つある。実はだな……」
アルセウスは後ろを一回振り向くとそこからポケモンが飛び出てきた。
「メロエッタという。かつては歌で神に祈りを捧げたポケモンだ。それが転じて今はある特定の場所で歌うことで気候を操れる」
「……そのポケモンを使い気候を操れ、と?」
「正確には荒れたイッシュの気候を元に戻して欲しい。お前達が“眠っていた”二年で様々な変わり様になってな……。どうするか考えていた。ならば、気候を調整していた神殿を用いればいいだろうと思ってね。序でに遺伝子の楔のエネルギーを全て変換してもらい、使い物にならなくする」
「……遺伝子の楔?」
「まぁ、その辺は解放されてから解るはずだ」
そう言ってアルセウスは更に一歩二人に近付いて、
呟いた。
「――生きたいなら、目を醒ませ」