その頃メイはジャイアントホールにある小さな洞穴にいた。
「兄さん……」
彼女の目の前には氷像が二つあった。二年前、ともにイッシュのため戦ったトレーナーだ。
「……今、助けてあげるからね。バシャーモ、“ブレイズキック”!!」
メイが技を命じた――その時だった。
確かに、まだ一撃も加えていないはずだった。
なのに。
氷の表面にヒビが生まれた。小さなものだったが、それが広がり、広がり、広がり……。
最終的に、氷像を二分した。
「な、なにが起きた……の?」
メイには何が起きたかわからなかった。
だが目の前の光景は……嘘じゃないと確信出来た。
そして氷像の中身が……ゆっくりと動き出した。
メイはもう涙を流すことしか、そしてその言葉をかけることしか、出来なかった。
「……兄さん、おかえり」
その頃、キョウヘイ。
「……ここだ」
ベズの耳を頼りにポケモンの鳴き声がするという場所までやってきた。
「確かに……微かに聞こえてくるな。しかもこの鳴き声は……」
「チョロネコの進化系、レパルタスだ」
気付くと目の前には一人の人間が立っていた。
「ダークトリニティ……!」
「今は一人だがな。あとの二人は準備を進めるためゲーチス様と共にいる」
そう言ってダークは笑う。
「……ところで、少年。見つかったか? “お前なりのポケモンバトル”キョウヘイらを」
その言葉にキョウヘイは頷く。
「そうか……。ならば、試してやろうか」
そう言いダークはコマタナを繰り出した。
その頃ナチュラルは笑っていた。
氷像を破壊されたからか?
否、氷像は壊されていない。“そもそも氷像なんてそこにはなかった”。
「……ボクが果たして何にも考えずにここまで来ると思っていた?」
「まさかあの氷像は……!」
確かにはかいこうせんにより破壊されたはずだった氷像は砕けることもなく、ゾロアークに戻った。
「特性……イリュージョンですね……?」
「その通りだ! ゾロアークの特性イリュージョンを使い、僕は時間を稼いだまでだ」
「時間……だと?」
「勘の良い父さんならば何と無く解りそうだけど」
ゲーチスがその結論を出さないまま。
ナチュラルの後ろから三人のトレーナーが現れた。
「これが……答えだ」
彼らの名前はトウヤ、トウコ、そしてメイといった。
時は少しだけ遡り、ジムリーダーズ。
「アーティさん! これで最後だ!」
ホミカがそれを言ったと同時にプラズマ団員を全員倒したのだとアーティは悟った。
「……みんな、ありがとう」
「イッシュを救うためなら……寧ろそれは当然だ」
アーティの言葉にシャガは答えた。
「あとは……任せるとしよう」
シャガはそう言って空を見上げた。
「……勇気あるトレーナーたちに」
その頃、キョウヘイ。
「いけ、ルカリオ!」
その言葉とともにルカリオは高く飛び上がった。
「また同じことを使うつもりか……! 芸がないやつめ」
ダークはそう言った。
予兆はなかった。
コマタナがその自らにある剣を構え、更に高く飛び上がった。
「重力に加えて『きりさく』の打撃ダメージ……一発で戦闘不能にさせてやろう」
しかし、キョウヘイの顔色が変わることはなかった。
「……なぜ俺が同じ戦い方をしたか、解るか?」
「……まさか?!」
ダークが空を見上げた時はもう遅かった。
ルカリオは『はどうほう』を放ち――そしてコマタナに命中した。
その頃、トウヤ。
「とんでもない時に目醒ましちまったみたいだな……」
トウヤはその現状を把握するため、周りを眺めやった。
二年という時が経過していても、ジャイアントホールは未だその姿のままだった。
まるでこの場所だけ時が止まっているような錯覚を覚える。二年という年月が嘘のようだった。
「……で、相変わらずゲーチスが悪役なわけだ」
「ぐぬぬ……!」
「まぁ、いいさ。この一撃で……」
そう言ってトウヤはモンスターボールを持ち、投げた。
「そうはさせません!」
そう言ってゲーチスは杖を構えた。
「何をしようと……無駄だ!!」
そしてモンスターボールからポケモンが……
……飛び出なかった。
「……な、なんだ、これは?!」
「簡単なこと。モンスターボールに特殊な波長を送り、開閉ボタンを無効にしたまでです……! これであなたたちは手の出し様もない……!」
そしてゲーチスが手を掲げた。
「……消え去りなさい」
「……させるかぁっ!」
ゲーチスの直ぐ横から、キョウヘイが飛び出て来た。
「……させません!」
しかし、ゲーチスは杖でキョウヘイを叩き飛ばした。
「ぐはっ……!」
「……ほう、貴様らも着いたか」
ゲーチスは笑みを溢して、
「好都合だ。……私に邪魔した人間潰して差し上げましょう」
ブラックキュレムの口にエネルギーが溜められていく。
「死になさい」
ひどく、冷たい声だった。
その声とともにブラックキュレムから咆哮が発射された――!!