……なに?
ゲーチスは思わずそんな呆気ないそんな声を出してしまった。
「……なぜ、私の攻撃が効かない……?! ポケモンはもう出せないはずなのに!!」
一方で、なぜゲーチスが激昂しているかキョウヘイたちにも解らなかった。
そして土煙が晴れて……氷の壁の後ろには一匹のポケモンが立っていた。
「ケル……ディオ?」
キョウヘイは力ない声で呟いた。
キュレムと闘うことにより、あるポケモンは“聖剣士”という称号を獲得することが出来た。
そのポケモンは……既に聖剣士になっていた三匹のポケモンと行動を共にし、自分もそうなりたいと願った。
伝説では聖剣士になるには、既に聖剣士になっているポケモンとともに修行する必要がある。
しかし、彼がそれを目指したとき、既に聖剣士は居なかった。
何故だ? ポケモンはそれをいろんな場所を旅して調べるようになった。
リザードン橋の袂にポケモンと話せるお爺さんがいるらしい、と情報を掴んだポケモンはその場所へ向かった。
「……聖剣士が何処に行ったか、か……」
その質問をすると悲しげな顔をした。
そして、ポケモンはある情報を聞き出した。
二年前にプラズマ団による攻撃で聖剣士は凍らされてしまったのだと。
それを知り、ならば自分はどうすればいいのかと訊ねた。
「……おまえがどうかは知らないが、聖剣士キョウヘイらを自分の力のみでなるのはどうなんだ?」
ひどく、正しいことだった。
だが、聖剣士になるにはある一つの条件が必要だった。
イッシュに眠るキュレムと戦い、勝つこと。
だから、ポケモンは倒すため、何度も何度も戦った。
ただ、キュレムを狙おうとする組織がいることが解り、彼の考えは変わった。
かつて聖剣士がその誓いを立てたという誓いの岩は特別なトレーナーしか入ることが出来ない。それを彼は利用した。
そして一人のトレーナーがそこにやってきた。
彼はキョウヘイというらしい。彼が行く場所に待機し、見守り続けた。
そして彼はここまでやってきた――というわけだ。
ケルディオは高い遠吠えの後、ゲーチスに突っ込んだ。
ゲーチスにとっても想定外のことだったらしく、杖を攻撃され、破壊されてしまった。
「つ、杖を……!」
今だ!!
キョウヘイたちにはケルディオの叫びが聞こえたような気がした。
「ルカリオ、『れいとうパンチ』!!」
「エンブオー、『かえんほうしゃ』!!」
キョウヘイとトウヤ、それぞれのポケモンによる攻撃がゲーチスのサザンドラに命中する。
「サザンドラ……!」
二人のポケモンの攻撃に反撃出来ぬまま、サザンドラは地面に突っ伏した。
「さぁ、戦いを続けようじゃないか」
「……きさまっ」
ゲーチスがもう一度杖を振ろうと手を伸ばし……
……その直前に何者かに杖を奪われた。
ゲーチスはその姿を見て――溜め息をついた。
「ハンサム……! たしか貴様は国際警察……!」
「今度こそ捕まえさせてもらうぞ、絶対に逃がすまい!」
その言葉にゲーチスは諦めたのか、大地に突っ伏した。
「……私の、夢が……。野望が……!」
ゲーチスは泣いているようだった。
獣の遠吠えに近い泣き声にただ周りは立ち尽くすだけだった。
ただ一人、ナチュラルだけがゲーチスに近付き、ゲーチスの肩を優しく撫でる。
「父さん……僕も前は自分の夢が出来ず悩んだ。だけど、」
ナチュラルはゲーチスの肩を撫でるのをやめた。
「……夢なのに、人に迷惑をかけるのはどうなのかな……って思うようになったんだ。父さん、もうやめにしよう。僕も一緒に……罪を償う。何時までも許してくれないと思うけど……みんなが許してくれるまで……」
そう言ったナチュラルの目から一筋の涙が零れ落ちていった。
「……バケモノが……中途半端にヒトになろうだなんて……、この……馬鹿息子……。この父(わたし)にナチュラルが親子だというのは……かけがえのない事実ということを……私は解っていたのに……」
ジャイアントホールにナチュラルとゲーチスの泣き声が響いた。
それは一つの大きな戦いの終了を意味していた。
「……終わったのか」
アーティは空を眺めた。シャガの質問に、笑って応える。
「恐らくそうだと思う。……なんせ寒くなくなったからね」
「……あとは国際警察がなんとかしてくれるだろう。まったくいいところを持っていきおって……」
「まあ、警察ってそういうもんですからねえ」
そうだな、と言ってふたりは笑った。
こうして――イッシュを巻き込んだ戦いはここに幕を閉じた。