二年後のあなたへ   作:natsuki

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第三話 初陣と少女メイ

 そして、キョウヘイはジム最奥部に辿り着いた。そこでは待ち兼ねていたチェレンがいた。

 

「……意外と早かったね」チェレンは読んでいた本に栞を挿して、しまった。「……もう少し遅くなるものかと」

 

「待たせちゃとんでもないですからね! ドドンと倒しちゃいましたよ!」

 

「……なるほど、面白い」

 

 チェレンの唇が微かに歪んだ。

 

「ならば――始めよう。サンギタウンジムの、このバッジをかけたジムバトルを!!」

 

 そう言ってチェレンはポケモンを繰り出した。

 

 

 

 ところ変わって、ここはサンギタウン近くの砂浜にベズという少年はいた。……ここにいる理由は簡単な事で、レベルアップのためだ。

 

「ミジュマル、『あわ』!!」

 

 ベズの言葉を聞き、ミジュマルは口から泡を吐く。

 

 しばらくはそれを繰り返していたのだが……。

 

「……少し、休憩にしよう。戻れ、ミジュマル!」

 

 そう言ってモンスターボールをミジュマルに向けてボタンを押す。そしてミジュマルは自らのモンスターボールへと戻っていった。

 

「……疲れたな。それに、」

 

 ぐぅ。

 

 と、ベズのお腹が平和なサイレンを鳴らした。

 

「腹もペコペコだしな……」

 

 そう言ってベズは目の前にあった小さな海の家へと向かった。

 

 

 

 その頃、ヒオウギシティジム。

 

「ミネズミ、『しっぽをふる』!!」

 

 チェレンのミネズミは駆けて、背中を向いて楽しそうに尻尾を一定のリズムで揺らす。それを見て、ポカブは慌ててしまった。

 

「慌てるな、ポカブ!! 『ひのこ』!!」

 

 キョウヘイのポカブもそれに応じて頭を振り、そして火の粉を放った。

 

「よけるんだ!」

 

 しかしながら、ミネズミはそれを華麗に避けていく。

 

「まだまだ! 今度は『たいあたり』!」

 

「よけて、『はたく『んだ!」

 

 行動は、ミネズミの方が早かった。

 

 ミネズミはポカブの攻撃を避け、そして不意をつかれたポカブに攻撃を与えた。

 

「……なんてね」

 

 キョウヘイは攻撃を食らって、落ち込んでいるようにも見えた。――しかし、そんなことはなかった。

 

 ポカブはミネズミの手を捕まえた。その行動にはミネズミも驚いたようだった。

 

「?!」

 

「今だ、ポカブ。『ひのこ『!!」

 

 そしてポカブから火の粉が放たれた――!!

 

「なんてこった……」

 

 チェレンは落ち込んでいた。まけたのだ。

 

「まさか初陣が黒星とはね……まあ、仕方ないさ」

 

 チェレンはそう言ってキョウヘイの方に向かう。

 

「キョウヘイ、これがベーシックバッジ。ポケモン協会公認ジムを制覇した証だ」

 

 そう言って長方形のバッジを差し出した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 再び場面はベズへと移る。

 

「お隣空いてるかしら?」

 

 ベズが一人で焼きそばを平らげていると、そこに一人の少女がやって来た。

 

 少女は、ベズにそれだけを聞いて返事を待たずに隣に座った。

 

 綺麗な少女だった。

 

 彼女は座ると持参していた紙パックのドリンクを飲みながら、Cギアで何かを調べているみたいだった。

 ベズは何をしているのか正直気になったが他の人間のCギア画面を見るなどまずいのだ。

 

「……ねぇ、あなた名前は?」

 

 少女は急にベズの方を見て尋ねた。

 

「俺は……ベズだ」

 

「いい名前ね。……私はメイっていうの」

 

「そっちだっていい名前じゃないか、何より覚えやすい」

 

 ベズはメイに小さく微笑んでみせた。それを見てメイも小さく笑った。

 

「……そう言ってくれると嬉しいな」

 

「ところで……ここには何しに来たんだ?」

 

「旅行みたいなもんだよ。こっちに来るのは初めてかなぁ。あっちには何があるの?」

 

「あっちにゃヒオウギっていう田舎街しかないよ。どうせならタチワキから巡航船乗ってヒウンに出てみたら?」

 

「うっそ、巡航船なんてあるの?」

 

「……え、どうやって来たの?」

 

「ポケモンのなみのりで」

 

「それもそれですげぇな」

 

 ベズはそう言って割り箸を元の位置に戻した。

 

「はい、ちょっとごめんよー」

 

 黒ずくめの男たちが海の家に入ってきたのはその時だった。

 

「おい、誰だよお前ら!」

 

 海の家の店主が来て肩に手をかける。

 

 すると。

 

「邪魔だ」

 

 そう呟いて。

 

 刹那。

 

 いつの間にかボール外に飛び出ていたグレッグルが店主に『どくづき』を食らわせていた。

 

「……なんてやつだ……!!」

 

「おや、メイさん。男性をお連れで?」

 

 その男たちはまっすぐメイの方へ行き、言った。

 

「ええ。あなたには関係ないでしょう?」

 

「関係なくはないのですよ。あなたには我々に捕まっていただかなければ」

 

「断る、と言ったら?」

 

「そりゃ、全力で」

 

「……へえ、あんたアクロマから何も聞いてないのね」

 

「……アクロマ様を侮辱するつもりで?」

 

 男の眉間は少し震えていた。それでもメイは続けて。

 

「……ま、あんたたちに私を捕まえられるとは到底思えないわ」

 

 そう言って彼女はポケモンを繰り出した。

 

 出てきたのは――ウィンディ。

 

 カントー地方に住む炎ポケモンだ。

 

 それを見て――男は――何も言えずただ怯えて走っていった。

 

 

 

 

「いやあ、驚きました……」

 

「ごめんなさい……、大丈夫でした?」

 

「まあ、なんとか」

 

「なら、よかった」

 

 メイはチラリと海の方を見る。

 

「行かなくてはならないです」

 

「また、会えたらいいですね」

 

「きっと会えますよ。だから、その印に」

 

 そう言ってメイはモンスターボールをベズに差し出した。

 

「……これは?」

 

「これは、プテラというポケモン。遠いとおいカントー地方にある化石から孵したポケモンです。是非……大事にしてください」

 

「もちろんです!」

 

「では……さよなら」

 

 そう言って、メイは立ち去っていった。ベズはそれをただ眺めるだけだった。

 

 

 

 

 

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