そして、キョウヘイはジム最奥部に辿り着いた。そこでは待ち兼ねていたチェレンがいた。
「……意外と早かったね」チェレンは読んでいた本に栞を挿して、しまった。「……もう少し遅くなるものかと」
「待たせちゃとんでもないですからね! ドドンと倒しちゃいましたよ!」
「……なるほど、面白い」
チェレンの唇が微かに歪んだ。
「ならば――始めよう。サンギタウンジムの、このバッジをかけたジムバトルを!!」
そう言ってチェレンはポケモンを繰り出した。
ところ変わって、ここはサンギタウン近くの砂浜にベズという少年はいた。……ここにいる理由は簡単な事で、レベルアップのためだ。
「ミジュマル、『あわ』!!」
ベズの言葉を聞き、ミジュマルは口から泡を吐く。
しばらくはそれを繰り返していたのだが……。
「……少し、休憩にしよう。戻れ、ミジュマル!」
そう言ってモンスターボールをミジュマルに向けてボタンを押す。そしてミジュマルは自らのモンスターボールへと戻っていった。
「……疲れたな。それに、」
ぐぅ。
と、ベズのお腹が平和なサイレンを鳴らした。
「腹もペコペコだしな……」
そう言ってベズは目の前にあった小さな海の家へと向かった。
その頃、ヒオウギシティジム。
「ミネズミ、『しっぽをふる』!!」
チェレンのミネズミは駆けて、背中を向いて楽しそうに尻尾を一定のリズムで揺らす。それを見て、ポカブは慌ててしまった。
「慌てるな、ポカブ!! 『ひのこ』!!」
キョウヘイのポカブもそれに応じて頭を振り、そして火の粉を放った。
「よけるんだ!」
しかしながら、ミネズミはそれを華麗に避けていく。
「まだまだ! 今度は『たいあたり』!」
「よけて、『はたく『んだ!」
行動は、ミネズミの方が早かった。
ミネズミはポカブの攻撃を避け、そして不意をつかれたポカブに攻撃を与えた。
「……なんてね」
キョウヘイは攻撃を食らって、落ち込んでいるようにも見えた。――しかし、そんなことはなかった。
ポカブはミネズミの手を捕まえた。その行動にはミネズミも驚いたようだった。
「?!」
「今だ、ポカブ。『ひのこ『!!」
そしてポカブから火の粉が放たれた――!!
「なんてこった……」
チェレンは落ち込んでいた。まけたのだ。
「まさか初陣が黒星とはね……まあ、仕方ないさ」
チェレンはそう言ってキョウヘイの方に向かう。
「キョウヘイ、これがベーシックバッジ。ポケモン協会公認ジムを制覇した証だ」
そう言って長方形のバッジを差し出した。
◇◇◇
再び場面はベズへと移る。
「お隣空いてるかしら?」
ベズが一人で焼きそばを平らげていると、そこに一人の少女がやって来た。
少女は、ベズにそれだけを聞いて返事を待たずに隣に座った。
綺麗な少女だった。
彼女は座ると持参していた紙パックのドリンクを飲みながら、Cギアで何かを調べているみたいだった。
ベズは何をしているのか正直気になったが他の人間のCギア画面を見るなどまずいのだ。
「……ねぇ、あなた名前は?」
少女は急にベズの方を見て尋ねた。
「俺は……ベズだ」
「いい名前ね。……私はメイっていうの」
「そっちだっていい名前じゃないか、何より覚えやすい」
ベズはメイに小さく微笑んでみせた。それを見てメイも小さく笑った。
「……そう言ってくれると嬉しいな」
「ところで……ここには何しに来たんだ?」
「旅行みたいなもんだよ。こっちに来るのは初めてかなぁ。あっちには何があるの?」
「あっちにゃヒオウギっていう田舎街しかないよ。どうせならタチワキから巡航船乗ってヒウンに出てみたら?」
「うっそ、巡航船なんてあるの?」
「……え、どうやって来たの?」
「ポケモンのなみのりで」
「それもそれですげぇな」
ベズはそう言って割り箸を元の位置に戻した。
「はい、ちょっとごめんよー」
黒ずくめの男たちが海の家に入ってきたのはその時だった。
「おい、誰だよお前ら!」
海の家の店主が来て肩に手をかける。
すると。
「邪魔だ」
そう呟いて。
刹那。
いつの間にかボール外に飛び出ていたグレッグルが店主に『どくづき』を食らわせていた。
「……なんてやつだ……!!」
「おや、メイさん。男性をお連れで?」
その男たちはまっすぐメイの方へ行き、言った。
「ええ。あなたには関係ないでしょう?」
「関係なくはないのですよ。あなたには我々に捕まっていただかなければ」
「断る、と言ったら?」
「そりゃ、全力で」
「……へえ、あんたアクロマから何も聞いてないのね」
「……アクロマ様を侮辱するつもりで?」
男の眉間は少し震えていた。それでもメイは続けて。
「……ま、あんたたちに私を捕まえられるとは到底思えないわ」
そう言って彼女はポケモンを繰り出した。
出てきたのは――ウィンディ。
カントー地方に住む炎ポケモンだ。
それを見て――男は――何も言えずただ怯えて走っていった。
「いやあ、驚きました……」
「ごめんなさい……、大丈夫でした?」
「まあ、なんとか」
「なら、よかった」
メイはチラリと海の方を見る。
「行かなくてはならないです」
「また、会えたらいいですね」
「きっと会えますよ。だから、その印に」
そう言ってメイはモンスターボールをベズに差し出した。
「……これは?」
「これは、プテラというポケモン。遠いとおいカントー地方にある化石から孵したポケモンです。是非……大事にしてください」
「もちろんです!」
「では……さよなら」
そう言って、メイは立ち去っていった。ベズはそれをただ眺めるだけだった。