二年後のあなたへ   作:natsuki

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第八話 バトルサブウェイ、ダブルバトル!

 キョウヘイはライモンシティへ到着した。ライモンシティは娯楽の街として有名である。例えば、遊園地。ジェットコースターに観覧車、更にはコーヒーカップにメリーゴーランドまである。次いでミュージカル、野球やテニスの試合が行われるライモンドームなどその種類は幅広い。

 

 しかし、彼が初めにこの街に来たとき、行きたかった場所がひとつだけあった。

 

「……これがバトルサブウェイ……!」

 

 ライモンシティの中央に位置する美術館のような荘厳な雰囲気を放つ建物、それがバトルサブウェイの発車場所であるギアステーションの特徴である。

 

 彼の父親は二年前、ここに訪れていた。そしてとある少年のバトルを撮影していた。

 

 トウヤ。

 

 その名前以外はエンブオーを使っていた事しか解らない。たった一人(とされてはいるが実際にはチェレンやベルやジムリーダー達もいたのだがそこまで報道はされなかった。報道は有名なジムリーダーよりも無名なトレーナーの方が記事が面白くなると判断したのだろう)でプラズマ団を解体した伝説のトレーナーで、二年前にはこのギアステーションにも赴き、バトルサブウェイで戦ったのだという。

 

 キョウヘイはそんな彼のバトル映像を見て、彼に憧れを覚えた。

 

 そしていつかはその地へ行きたいとも思っていたのだった。

 

「やっと……着いたんだぁ……!!」

 

 なので、その場所へ辿り着いた時の感動も段違いになるだろう。もしかしたらそれを感じることが出来るのは彼だけなのかもしれない。しかし彼にとってここへ辿り着いた事は、夢である。それには違いないのだ。

 

「どこから入るのかな……。いや、先ずはジムかな?」

 

 そんな感じで自問自答していたのだが。

 

「あっ、そこの少年! 凄いいいところにいた!」

 

 不意に声をかけられ、キョウヘイは振り返った。

 

「あーいたいた! ペアを探してたんだけど、見つからなくてさぁ……!!」

 

 ……紛う事なき女の子である。問題はなぜその女の子がキョウヘイに話しかけたということなんだが……。

 

「まぁいいや、ちょっと一緒にきて。私とイイコトしよっ?」

 

「え……はひっ?!」

 

「あんたが想像してる系じゃないから安心して……、ってほい! とーちゃーく!!」

 

 キョウヘイは少女に半ば強引に引っ張られ、ギアステーション入口に辿り着いた。

 

「やれやれ。……まさかほんとに探してくるとは?」

 

「……これで戦えるのよね?」

 

「わぁいっ。ノボリ兄さん久しぶりにバトルが出来るねっ。楽しみ楽しみ〜!」

 

「クダリも少しは緊張感を持ったらどうですか。……まぁ、今はこのバトルに集中することと」

 

 その言葉と同時に。

 

 ノボリとクダリ、そして少女とキョウヘイはモンスターボールを持つ手を放した。

 

「――しましょうかっ!!」

 

 

 ――四人のモンスターボールは地面へと落下、開閉ボタンが押されモンスターボールからポケモンが出現した。

 

 

 少女が繰り出したのはジャノビー、キョウヘイはチャオブーだった。

 

 それに対しサブウェイマスターの二人が繰り出したのはガントルにフローゼル。何れも彼女たちのポケモンの方が相性的に見れば完璧だった。

 

「フローゼル、『りんしょう』!!」

 

 その言葉とともに、フローゼルは歌い出した。

 

(なぜその技なんだ……? フローゼルならこおりタイプの技でもみずタイプの技でも使えばこちら側に致命的なダメージを与えられるのに?)

 

 キョウヘイはノボリが命じた技に疑問すら覚えた。……しかし、その疑問は直ぐに解消されることとなる。

 

「……ジャノビー、『リーフストーム』!!」

 

「ガントル、『りんしょう』!!」

 

「チャオブー、『つっぱり』だ!!」

 

 三種三様の命令を下し、それぞれのポケモンが行動を開始する。初めに動き出すのはジャノビー――

 

 であるはずだった。

 

 先に動き出したのは他でもない、クダリが繰り出したガントルだった。

 

「もしかして……りんしょうの効果……?!」

 

「ご名答。そうです、その通りなのです。りんしょうの効果は“他のポケモンがりんしょうを使う場合は優先的に行動”できること!! 即ち、今やあなたたちのポケモンは虫の息ってわけなのです!」

 

「……そう、なめてもらっちゃ困るんだけどね」

 

 しかし、少女は笑っていた。

 

 初めは何が起きたのか、キョウヘイには解らなかった。

 

 しかし、これだけは言えた。

 

 サブウェイマスターの二人のポケモンが目を瞑っていたほんの数秒間で戦闘不能に陥っていたことだった。

 

「どっ、どういうことだいノボリ兄さん、これは?!」

 

 クダリはこの事実を受け入れられないようだった。良く考えてみれば仮にこのバトルが通常トレーナー同士だったとしても、この事実には理解出来ないことだろう。

 

「……なるほど」

 

 それに比べると兄(あくまでもクダリによる他称だが)は冷静にこれを分析していたようだった。

 

「そこにいるジャノビー……正体はゾロアークですね?」

 

 ノボリがその言葉を言うのを待っていたかのように、少女は笑った。

 

「その通りっ。ゾロアークの特性“イリュージョン”を用いたのさっ。……まぁまさかここまで巧くいくとは思わなかったけれど」

 

「……ククッ。ハハハハハ、完敗です。あなたたちの勝利ですよ。……それではあなたの望み通り『バトルサブウェイ』を再開させます」

 

「まじで?! よっしゃ、やりぃ!」

 

 少女はそう言って悔しそうな表情すら見せないノボリたちについていった――ところで何かを思い出し、キョウヘイの元に近付いた。

 

「いやあ、急にバトルやろうなんて言ってごめんね!」

 

 キョウヘイはそれにうまく対応出来なかった。見ず知らずの女性に優しい対応ってのはかなり難易度が高い。それはキョウヘイを含む世の男子は知っていることだ。キョウヘイもその例には漏れず、あのところで、と言いかけるのに若干秒を要した。

 

「あぁ、もしかして私の名前を聞いてたりしてる? ……そりゃそうだよね。名前も知らない女性とダブルバトルだなんてね……」

 

 どうやらキョウヘイの思考は読まれていたようだ。

 

「私の名前はメイっていうの。あなたの名前は?」

 

「……俺はキョウヘイ」

 

「そっか。じゃあ、また会えたらいいね!」

 

 そう言ってメイはバトルサブウェイに入っていった。キョウヘイもそれに倣おうとしたが――諦めて、ジムの方へ向かった。

 

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