やっとリクエストのあったキャラクターを出せそうです。
ちなみに、本文を書いているとき私は酩酊しています。
でないと書けない。
注意:
今回はかなりキャラ崩壊要素強めです。頭痛、めまい、吐き気、私に対する殺意の発現などの症状を感じたら、直ちに読むのをやめてブラウザバックしてください。
「なんれ戦車道はよくてぇ~!? 艦これはダメなんですか~!」
「ブッキーちゃん飲みすぎですぜ」
歓楽街の裏路地。ぐちり屋の暖簾を掲げる屋台で、セーラー服姿の少女がヤジロベーの様に体をグラつかせながらくだを巻く。ブッキーちゃんと呼ばれた彼女は焦点の合わない目をこの屋台のオヤジが居る方向へ向ける。
「そりゃねっ! 色々やらかしましたよ! 無傷轟沈やら急なギャグパートにご都合主義展開! けどね! そんなクソアニメでも主人公張っている人だっているんですよオオオオオオ!!」
「そうですよねェ。ブッキーちゃんも精一杯がんばりやしたもんねェ」
「おまけにニコ動で? 出来のいい艦これMMDやら手書き作品のコメでも『アニメ二期息してるwww?』とか煽ってきて! 息してる訳ないよ! 心肺停止だよ! バイタルゼロだよっ!!」
カウンターに突っ伏して泣き出すブッキーちゃんの肩をオヤジはやさしく叩く。ブッキーちゃんはカウンターを叩きながら、訳のわからない言葉を発しながらひとしきり泣くと気が済んだのか青っ洟を拭う。
「でもどうしようオヤジさん。こけると分かっていてもアニメ二期やんなきゃダメなのかな? あのスーツ着た金の亡者共の言うこと聞くしかないのかな?」
「う~ん難しいねェ。一期とは丸々世界観変えちゃえば楽なんだけどねェ」
「はぁ~。じゃあいっそキャラも変えちゃおうかな……どこぞのリンガみたいにゲスかわ系とか」
「ブッキーちゃん。流石にそいつはいけねェ」
半ばやけっぱちになっているブッキーちゃんにオヤジは諭す。だが、画期的な解決策も思い浮かばないためブッキーちゃんは再び自分の腕枕に顔をうずめる。
(別にいいんじゃないかなぁ……にゃし~って言わない睦月ちゃんでも放送出来たんだから、あって無いような私のキャラなんて……)
アルコールでぼんやりした頭で取りとめのないことを考えていたその時、背後から声が飛んできた。
「こんばんは」
「あの~、席空いてます?」
二人分の女性の声だった。どこか儚げな様子を漂わせる声音にブッキーちゃんは身を竦ませる。
(え? この声って……)
オヤジはそんなブッキーちゃんの変化に気づくことなく接客する。
「すいやせんね。ウチはちょいと特殊な店でねェ。この通り一人で来ることってルールで決めてるんです」
そう言いつつオヤジは申し訳なさそうにいつものプラカードを掲げる。
『・好きなだけグチってください。
・一人で来て下さい。
・知り合いに会っても、知らぬフリをしてください。
・ここで聞いたことは、他言しないでください。』
それを見た二人組は揃ってため息をつく。
「こんな店にも入店を拒否されるなんて」
「不幸だわ……」
どこぞのラノベ小説の主人公のように不幸だと嘆く女性二人組。その物憂げな声を聞いた瞬間から、ブッキーちゃんの頭の中でけたたましく危険信号が鳴り響く。
(やばいやばいやばい! マジでやばいってこれ! この二人知ってる! 私の憧れってことになってた二人組だよ!! なんでこんなところうろついてるの!? メッチャ気まずいよォォォ!)
ブッキーちゃんがカウンターの上で身じろぎもできずにいると、二人組の囁くようなボヤキが続く。
「今日は調子がいいから、たまには気分を変えて外で飲もうとしたことが間違いだったのかしら?」
「入った店はどこも満席で」
「趣向を変えて屋台を探そうと路地に入ったら道に迷い」
「30分歩き続けてようやく見つけたと思ったらこの有様、ハァ……不幸だわ……」
「ハァ……空はあんなに……あ、今は夜だわ」
「ルールでは仕方無いです姉様。他を探しま――」
「ちょいと待って下せェ!」
オヤジがカウンターから身を乗り出して待ったをかける。二人のボヤキを聞くうちに居た堪れなくなり、だんだんと顔色が悪くなっていたのだ。
「今回だけ! 今回だけは特別ルールでOKにしときやす!」
「え? ホント!? 姉様、特別ルールですって!」
「まあ。運が向いてきたのかしら?」
超法規的措置により暖簾を潜ることを許された姉妹は、互いに手を取り合い喜びを分かち合う。しかし、それとは裏腹にブッキーちゃんは心の中で抗議のシャウトを上げる。
(オヤジイイイイ!! 何してんのオオオオ!? 自分で決めたルールでしょうが!? ちゃんと守りなさいよオオオ!!)
隣に座られては二人の目を盗んで逃げることは事実上不可能である。かといって顔を合わせた瞬間どんな惨劇が待ち受けるか分かったものではない。
ブッキーちゃんは仕方なく
「ZZZ……」
「あれ? ブッキーちゃん寝ちゃいやした? 風邪引きやすよォ」
寝た振りをすることにした。オヤジが体を揺すってきても無視。カウンターに顔を伏せていてよかったとブッキーちゃんは心底安堵した。
すると、二人組の女性は授業中居眠りスタイルのブッキーちゃんを見て首をかしげる。
「あら、この子見覚えが……」
「誰かしら?」
(気付くな気付くな気付くな気付くな気付くな気付くなっ!!)
二人分の視線が突き刺さる中、ブッキーちゃんは心の中で全力をもって祈祷した。その必死さ具合はイベント海域終盤における羅針盤の妖精に祈る提督のごとく鬼気迫るものであった。
「うーん、ダメね。イモっぽい後姿で全然思いだせないわ」
「そんなことより呑みましょう姉様」
(イモっぽい後姿ってなんだあああああ!? イモっぽいはよく言われるけど、後姿まで言及されたことはねーよ!! あとし○ふ先生に謝れ!!)
神様に祈りは届いたようだが、サラッと一番気にしていることを言われてしまった。ご対面よりは遥かにマシではあったが心に傷跡を残す結果となった。
「とりあえず、お二人さんのあだ名でも考えやすかね?」
「あだ名?」
「ええ。さっきプラカードで見せた通り、ここでは顔見知りと会っても知らねェフリをするのが通の呑み方なんで。それで本名じゃマズイんで、お二人さん何かあだ名みたいなもんありやせんか?」
オヤジは店の説明をするが、奇怪なルールのため二人とも思案顔になる。
「そんな急に言われても……姉様どうしましょう?」
「分かったわあなたは山ちゃんにしましょう」
「分かりました姉様! 私山ちゃんになります!」
「私はジェンガで行くわ」
「……自虐していくのはどうかと思います。ジェンガさん」
姉の機転であだ名は決まった。二人はおのおの注文し、オヤジは慣れた手つきで品を出していく。
「じゃあお二人さん。何かグチがあったら好きなだけこぼしていってくだせェ」
「グチねぇ。どこから話せばいいのかしら山ちゃん? 多過ぎてどれから話せばいいのか迷うわ」
「そうですね姉s……ジェンガさん。とりあえず、アレいっときますか?」
山ちゃんがアレと促すとジェンガさんはそうねと頷くとオヤジに向き直る。
「実はウチの公式主人公の憧れの人がもともと私だったんですけど、最近やったアニメ版では他の人に移っていたんです」
「ヘ、ヘェ……そりゃあ気の毒にねェ……」
(あああああああ!! やっぱりだ! やっぱり気にしてた!)
ジェンガさんがグチをこぼすと、オヤジは引きつった笑みを浮かべる。
「確かに私達をアニメに出演させるのはすごく難しいわ」
「イマジンブレーカーもないのに不幸不幸言い続けるネガティブキャラな上、史実通りの欠陥戦艦じゃ扱いづらいですしね」
「かと言って航空戦艦状態で出ても、紺○の艦隊に引けを取らない架空戦記(笑)になってしまう」
「そういった製作者側の都合に存在ごと抹消されるだなんて……! ハァ……やっぱり不幸だわ……」
「それにホイホイ尻尾を振ったあの子は……ハァ。どこで道を間違えたのかしらあの子」
二人ともアニメ版において、完全にハブられていたことを酷く根に持っている様子だった。そしてその恨みは確実に公式主人公の方へと向いていた。
そんな二人にオヤジはブッキーちゃんの方をチラチラ見ながらフォローを入れる。
「で、でもものは考えようじゃないですか? ほら、あー、あの……爆死アニメの余波に? 巻き込まれずに済んだとか……ね?」
「確かに……言われてみればそうかも……」
「ジェンガさん! 私達やっぱり運が向いてきてたんですよ!」
(オヤジイイイイイイ!! 爆死アニメの主人公目の前だぞオオオオ!! 後で覚えてろチクショオオォォォッ!!)
オヤジの一言に二人組は気を持ち直すが、反比例するようにブッキーちゃんの気は沈んでいく。
「これもあの人形のおかげかしら?」
「人形?」
「ええ。この人形の足を撫でると幸運を呼び寄せるそうで、同僚から安く譲っていただいたんです」
そう言うとジェンガさんがコトリとカウンターの上に何かを置いた。気になったブッキーちゃんがちらりとのぞき見ると、そこには木彫りのまるゆの人形が置いてあった。座った姿勢で足の裏を正面に出しており、足がやたら大きくデフォルメされていた。
「この人形の足の裏を撫で続けると幸運が巡ってくるらしいの」
「一日千回撫でるのが私達のデイリー任務ですもんね? ジェンガさん」
「ヘ、ヘェ。そういうのがあるんですねェ」
(いやこれ……完全に詐欺だよね?)
ジェンガさんと山ちゃんは人形のおかげで運が向いてきたというが、オヤジとブッキーちゃんは詐欺だろうなと薄々気づいていた。
するとジェンガさんはオヤジに人形を差し出した。
「オヤジさん。私達の数少ない幸運を見つけてくれたあなたに出会えたのも何かの縁……お礼にお一ついかがですか?」
「い、いえ! そんな頂けやせんよ! 大事なものなんでしょ!?」
「大丈夫。3つセットで買ったからまだ2個あるわ。心配しないで」
「ジェンガさんからの贈り物ですよ。黙って貰いなさいよ……!」
「エェ……」
ジェンガさんは幸運を見つけてくれたお礼としてまるゆ人形を渡そうとするが、オヤジはそんな怪しげなものなど受け取りたくない。なんとか言い訳をしようとするが、山ちゃんもさっさと受け取れと視線を鋭くする。
いよいよ断れなくなり受け取ろうとしたその時、豪快に暖簾がかき分けられる。
「オヤジ! 邪魔するぞ!」
「おや! たけぞうさんじゃあないですか? しばらくぶりですねェ。元気でしたか!?」
「ああ! この通りピンピンしているぞ!」
渡りに船とばかりに、オヤジはたけぞうさんを出迎える。ブッキーちゃんは自分の隣に座るたけぞうさんを盗み見る。
たけぞうさんは実に特徴的な女性だった。一度見れば忘れられないであろう褐色肌と白髪を持ち、眼鏡をかけた赤眼の奥には自信と力強さを感じさせる眼力があった。男らしさすら感じさせるその言動とは裏腹に身体つきは女性らしく、豊満な胸を包むのはさらしのみという奇抜な出で立ちをしていた。
たけぞうさんは適当に注文を済ませると、ブッキーちゃん越しにジェンガさん達を捉える。
「ほう。お二人は相当グチが溜まっているとみえるな。よかったら私にも聞かせてくれまいか?」
「ええ、実はアニメ版の主人公が――」
「すまない、アニメの話はやめてくれ」
「何この人? 自分から話題振っといて遮ってきたんですけど」
二人のグチを聞くと言ったたけぞうさんだが、ジェンガさんがアニメと口にしたとたん話を遮った。山ちゃんはジェンガさんの話を遮られたことにあからさまに機嫌を悪くする。
「お二人さん。気ィ悪くしねェでやってくだせェ。たけぞうさんはアニメにあまりいい印象をもってないんでさァ」
訳知り顔でオヤジが話すとたけぞうさんも事情を話しだす。
「実は私の姉のことなんだがな。宇宙戦艦になって活躍するアニメがあるんだ」
「ああ、アレのことよね?」
「おじさん世代なら知らない人はいませんよね」
「でだ、別にアニメ化することに関して私は何とも思わない」
ただな、とたけぞうさんは表情を険しくして続ける。
「さらばだの永遠にとか完結編などと言っておきながら、しれっと新たなる旅立ちをしたり、堂々と復活してみせたり。最近では新訳だったか? 全く、いつまで視聴者の財布を付け狙うつもりだあの拝金主義者は!?」
「それお姉さん全く関係ないわよね? 原作者とアニメ監督のせいよね?」
グチを聞くはずが零す側になったたけぞうさんは姉への思いをぶちまける。話を聞いた山ちゃんは呆れ顔で突っ込みを入れるが、たけぞうさんは気にした様子もなくフッフッフと肩を揺らす。
「だがあいつの時代も終わりだ。私も艦娘となりこの姿としてデビューする際に、世の男達が夢中になるような属性をかなり取り入れたからな」
「属性?」
「ああ、かなりの量だから下に箇条書きしといた」
「下とかメタ発言はやめなさい」
たけぞうさんは姉の天下を終わらせるべく、多くの属性を取り入れたらしい。下にまとめたものがそれである。
・長身イケメン
・獣耳ツインテヘアスタイル
・白髪
・褐色肌
・赤眼
・眼鏡
・さらし半裸
・巨乳
・妹
・絶対領域
・武人キャラ
「これだけあればどんな方面からの要求にも対応できるはずだ。はずなんだが……私が実装されてから暫く経つが、爆発的にフィーバーしているように感じられない。もっとこう大ブームを巻き起こしてもいいと思ったんだがなぁ? ちょうど私の本体も見つかり、ナマコとのカラミも見せたというのに。何故だ?」
「オイ、世界観崩壊させかねない発言は慎みなさい」
たけぞうさんは様々な属性を盛り込むことで、多様なニーズに応えられるキャラを目指した。にもかかわらず、予想よりも世の中の反応が薄いことに疑問を持っているらしく、手に顎をついて思案顔になる。
そんなたけぞうさんにジェンガさんがやれやれという顔でたしなめる。
「ふぅ、あなたキャラクターというものがどういうものか分かっていないわね」
「なに? どういうことだ?」
「キャラとして中途半端になっているのよ。混ぜれば良いというものではないわ」
いつになくキリッとした様子でたけぞうさんに話しかけるジェンガさん。
分かりやすい例で説明しましょうとジェンガさんはたけぞうさんに向き直る。
「あなた好きな食べ物は?」
「大体何でも食うが、故郷の皿うどんに佐世保バーガー、カステラは特に好きだな」
「じゃあ、それを全部大盛りにした上でひとつの食卓に並べてみなさい。どう? あなた食べきれる?」
「……いや、普通にいけるぞ」
「ジェンガさんだめよ。この人ジロリアンだわ」
ジェンガさんは例え好きなものでも、提供される量が多すぎるということを伝えようとしたのだ。しかし、食べ物を使って説明しようとしたのが間違いだったようだ。大食いのたけぞうさんには全く伝わらなかった。
とにかく、とジェンガさんは続ける。
「一般人は次郎に行っていきなり大ラーメン麺マシマシ野菜ニンニクチョモランマ油カラメオオメなんて頼まないでしょ? そんなことをしたら胃が受け付けずに食あたりを起こすわ。それと同じことが起きているのよ」
「なん……だと……?」
たけぞうさんはようやくジェンガさんの言わんとしていることを理解し、目が驚愕に見開かれる。
「では、私は初手から間違っていたというのか……?」
前提から間違っていれば、その後どのようなことをしても悪手にしかならない。これは戦においても同様のことだ。当然、戦艦娘であるたけぞうさんもそのことは理解しており、取り返しのつかない事態に打ちひしがれる。
しかし
「まだ間に合うわ」
まだ間に合うとジェンガさんがこぶしを握りズイと顔を寄せる。いつもの儚げな様子は微塵もなく、目標に向かって突き進むと決意を固めた。そんなような顔で口を開く。
「今からでも良いわ……いくつかキャラを捨てなさい……!」
「「(えええええ!?)」」
ジェンガさんのトンデモ提案にオヤジと山ちゃんは驚愕の声をあげた。すぐ隣で聞いてたブッキーちゃんも、リアクションを取らないようにするのに必死になる。
するとたけぞうさんは
「あーじゃあ髪を染めるのやめようか?」
「「(えええええええ!!?)」」
怒涛のトンデモ発言。キャラを捨てろと言われたたけぞうさんが真っ先に捨てにいったのは白髪キャラだった。しかも染めていたというのだから驚きだ。
「それ染めてたの!? わざわざ染めてたの!?」
「姉の黒髪を見てみろ。そこからどうして白髪が生まれる? あ~週一で染めるの面倒くさかったんだよな~」
山ちゃんが盛大に突っ込むが、しれっとした顔で毛先を弄ぶたけぞうさん。さらに、たけぞうさんはメガネを外しながら続ける。
「あと赤眼もやめよう。コンタクトしてると目が乾く」
「「(えええええええええ!?)」」
周囲の驚愕をよそにカウンターにメガネを置き、両目に入っていたカラーコンタクトをケースに仕舞いだす。
「あああああ!? 茶色ッ!? 普通に光彩茶色いじゃん!!?」
「あーすっきりした」
(ヤッベェ! 超見てぇ!! でも動けないっ!!)
突っ込みまくる山ちゃんや動くに動けないブッキーちゃんには目もくれず、たけぞうさんによるキャラの断捨離祭りはまだまだ終わらない。
「あと日焼けマシーンで肌を焼くのもやめよう」
「「(アイエエエエエエエ!!?)」」
たけぞうさんはおそらく髪以上に外見上重要なパーツを捨てにいった。想像すると全くの別人になりかねない発言の数々に、周囲は悲鳴に近い声を上げる。
「白髪に合うと思ってやっていたが、機械の中でじっとしているのは好かん」
「じ、じゃあ、たけぞうさん! 松○茂みてェなことしてたって言うんですかィ!?」
「だから姉を見ろ。姉妹の身体的特徴などだいたい似るもんだぞ。ああ、そういえば姉との差別化を図ろうという意図もあったんだよなコレ……」
「そ、そんな……アレ? ジェンガさん? ジェンガ…姉様!? ちょっと姉様!? 反応ないと思ったら白目剥いてますよ姉様!!?」
「アバババババ!!?」
たけぞうさんの秘密が自らの口で次々と暴露されていく。原因を作ってしまったジェンガさんも気絶してしまい屋台は混乱状態に突入する。
とここで、フゥとたけぞうさんがため息をつく。
「とまぁ、勢いで言ってみたが……やはりだめだな。今のキャラは捨てられん」
「え?」
「というと?」
捨てるキャラを選んでいたたけぞうさんだが、ここにきて出来ないと言う。オヤジと山ちゃんが促すと、たけぞうさんはゆっくりとワケを語りだす。
「いやなに。一人の駆逐艦を思い出してな」
たけぞうさんはクスリと笑うとグラスを傾けてから続ける。
「そいつは駆逐艦の身でありながら、将来は私のような戦艦になりたいとのたまうのだ。おかしな話だろう? だがそいつの目はまっすぐでキラキラしていた」
思い出すように目を瞑るたけぞうさんの口元は自然と緩んでいた。
「その綺麗な目を裏切るようなマネはしたくない」
だからキャラ捨ては無しだ、とたけぞうさんはオヤジたちに向き直る。その顔はいたずらをした後の子供のような笑顔だった。
「いいの? 世の男共を振り向かせるんじゃなかったの?」
「構わんさ」
山ちゃんの問いかけにたけぞうさんは、竹を割ったような快活な口調で答える。
「今のこの私に憧れてくれたのだ。それがたった一人のファンだとしても、私はそいつの夢だけは守ってやりたい」
そう見得を切るたけぞうさんには、堂々とした
「流石は世界最大級……言うことが違うわ……」
「姉様!? 起きてたんですか!?」
気絶していたと思っていたジェンガさんがムクリと起きた。心配する山ちゃんを手で制し、たけぞうさんに向き直る。
「誰が何と言おうと、媚びず、曲げず、己を貫く。あなた案外意地っ張りなのかしら?」
「ハッハッハッ! そうとも言うなぁ!」
「そう……聞いてたでしょ?」
突然、誰に対してでもなく空に向かて話しだすジェンガさん。
「あなたも。こんなところでうじうじしてないで、シャキっとなさい。あなたにも主人公としての意地があるのでしょ?……じゃあ、帰りましょうか?」
「……そうですね。姉様」
「フッ、そういうことか……よかったら送るぞお二人さん」
ジェンガさんと山ちゃんそして何かを察したたけぞうさんの三人が店を去ると、毎度ありと言うオヤジとブッキーちゃんだけが残された。ブッキーちゃんは身じろぎもせずカウンターに突っ伏していたが、しばらくするとのそのそと起きだした。
「……いつから気づいてたんですか? あの二人」
「入ってきてすぐですねェ。誰かしらとか言いながら二人してハンドサインしてたんで、もう一度プラカードを見せたら芝居し始めたんでさァ」
そう言うとオヤジはいつものプラカードを取り出し、三行目を指さす。
『・好きなだけグチってください。
・一人で来て下さい。
・知り合いに会っても、知らぬフリをしてください。
・ここで聞いたことは、他言しないでください。』
それを聞きブッキーちゃんは、最初から自分に聞かせるために話していたんだと納得し、一つため息をつく。
「で、そのあと爆死アニメってオヤジさん言ってたよね?」
「うぐっ……す、すやせん。他にフォローのし方が思い浮かばなくて……」
「私、もうそのことで悩むのをやめようと思います」
「え?」
先ほどの爆死アニメ呼ばわりしたことで、てっきりオヤジは怒られるものと思っていた。しかし、ブッキーちゃんは金輪際気に病むのをやめるというのだ。
「付けられた評価は今更どうしようもないです。それに私自身が否定されたわけじゃない」
だから、とブッキーちゃんは立ち上がる。
「どんな困難にもめげずに、一生懸命立ち向かう主人公として! 私、これからも頑張ります!」
「……へへ、どうやら調子を取り戻したみてェですね。それでこそ主人公だブッキーちゃん」
胸を張りまっすぐ前に目を据えた姿は、主人公としての堂々たる決意表明であった。それを見たオヤジもいつもの人の良さそうな笑いで祝福する。
その時である。
「オヤジさ~ん。元気~?」
また新たな客が暖簾を潜る。
「あらむっちゃんじゃないですか? また不幸ネタで弄られやしたか?」
「そうなのよ! しかも今度は世界クラスよ!? G○○gleで『艦娘 運が低い』で検索すると私のwikiが一番上に出るってどういうことよ!?」
ブッキーちゃんが声の主に目をやると、むっちゃんと呼ばれる女性が席に着こうとしていた。露出度の高い服装や栗色のショートカットの髪、角の様に前方に突き出した艤装を見た瞬間、ブッキーちゃんは自分の頬が引きつるのを感じた。
(アレ? この人が来るってことは……?)
ブッキーちゃんはちらりと画面右端にあるスクロールバーを見る。
(ヤッバイ! ほとんど無いじゃん! え? じゃあ今回のオチって……)
「アラ? オヤジさんそれはなにかしら?」
むっちゃんがそれと指さしたのは、鍋をいじっていたオヤジが菜箸でつまみあげている物体であった。円筒と半球状のもので構成されており、半球体にはやる気のなさそうな目のようなものが描かれている。一見するとこけしのような形状をしているが、胴体部からは腕に見立てた細い棒状のものが斜めに突き出しておりこけしとは違う。だがここで一番の問題は、その物体が鍋の中から出てきたことであった。明らかに食材ではないそれを、一体どのような用途でおでん鍋に沈めていたのかということである。
「エッ? えーっとねェ……ヘヘヘ、これはねェ……あっ」
目を泳がせながらオヤジがしどろもどろに説明しようとすると、手が滑り摘まんでいた物体を取り落とした。
その瞬間、ブッキーちゃんの脳裏に様々な映像が浮かぶ
――サービス開始
――パンチラ
――期間限定イベント
――改二
――アニメ化
――パンチラ
――はまぐりさん
(あ、私これ知ってる)
ブッキーちゃんはやけにゆっくり落ちていく物体を目で追いながら、自分の状況を理解した。
(これ、走馬灯だ……)
ブッキーちゃんの考えがまとまるのと、物体が鍋の縁にぶつかったのはほぼ同時だった。
『――次のニュースです。昨夜未明、繁華街の裏路地で爆発事件が発生しました。すぐに消防が呼ばれ火は消し止められましたが、一時現場は騒然となりました。警察の調べによると現場の状況から、爆発は事件直前まで現場で営業していた屋台が原因であると見られています。警察は現在も行方の分っていない店主が、何らかの事情を知っているものとみて捜索を行っております。この事件でのケガ人は現在確認されておりませんが、警察は引き続き情報の提供を呼び掛けて――』
ラジオのローカルニュースの音で吹雪は目を覚ますと、シミの付いた天井が目に飛び込んできた。知らない天井だなどということはなく、よく見慣れた入渠ドックの天井だ。そこから今、自分が入居ドックの風呂に仰向けに浸かっていることを理解する。
「気が付いたのね?」
隣からした声に首を向けると、同じように湯船に浸かった陸奥がそこにはいた。太ももからふくらはぎにかけてマッサージしている様子が色っぽいなぁと、まだ覚醒しきっていない頭で考えていると陸奥が再び口を開く。
「損な役回りだと思わない? 爆沈しただけで爆発落ちキャラとか?」
マッサージを終えた陸奥がお湯をかき分けて近寄る。腕で胸を寄せないでください。大変けしからん光景です。
「ねぇ? 今からでもキャラ捨てとかできるかしら?」
「……いいんじゃないですか?」
吹雪は陸奥の胸から目を離し、適当に相槌を打ちながら目を瞑る。
(神様。確かにどんなことがあってもめげずに立ち向かうとは誓いましたよ。でもね、初っ端からこれって流石にキツ過ぎでしょ?)
早くも心が折れそうになった公式主人公吹雪は、乾いた笑い声をドックに響かせるのであった。
あとがき
誤解のないように言わせていただくと、武蔵さんは結構タイプです。
最初こそビビりましたけど、今ではあれじゃなければ武蔵さんじゃないって感じです。
さて、書けば出ると聞いて書いたぜ武蔵さん!
まだ見ぬ武蔵さん! カモォォォン!! 大型建造の時間だぜェェッ!!
…………山城さんでした。
それでは皆さん。さよなら
さよなら
さよなら ハァ、不幸だ……