艦これ -ぐちり屋シリーズ-   作:mangan

5 / 5
まえがき
本当は冬イベ前に投稿したかったのですが、ちょっと入院してたら遅れてしまいました。
肝臓には問題はないのでご安心ください。

さて、前話を書いていた時にどうにも違和感がぬぐい切れなかったんですよね。
おかしーなー? なんでだろうなー? と考えに考えて気付きました。


圧倒的下ネタ不足!!


というわけで、今回は下ネタマシマシです。


第伍夜

『ゴーヤの日記』

 

―1日目―

 

 鎮守府からこんにちは! ゴーヤだよ! ゴーヤもやっと鎮守府に着任しました! 今日からゴーヤも怖い深海棲艦をやっつけるお仕事がんばるでち! そう思ってたらてーとくに艦隊の旗艦を任されて、オリョール海ってところに行ってきたでち! せんぱいさんに手伝ってもらってなんとか勝ってきたよ! 途中で燃料を拾ってきたらてーとくすごく喜んでくれたでち! ゴーヤもうれしいな! そんな感じで今日から鎮守府生活始まるよー!

 

 

―7日目―

 

 この鎮守府に来て一週間がたったでち! だいたいここの生活にも慣れてきたかな? 今日もゴーヤはオリョールでがんばったでち! 他の海域にも行ってみたいけど、まだレベルが低いって、てーとくに止められちゃった。ゴーヤのこと心配してくれてるんだね? うれしいな! 今日は弾薬も拾ったでち!

 

 

―8日目―

 今日出撃する前に他の艦娘達が「オリョクルだ」ってヒソヒソしていたのを聞いたんだ。「オリョクルってなに?」って先輩に聞いたらオリョールクルージングの略って教えてくれたでち。ゴーヤも使お! そういえば、説明してた時の先輩の目、虚ろな感じだったなー。なんでだろう? 今日も変わらずオリョクルに行ってきたでち。

 

 

―12日目―

 気付いたらここに来てオリョクルしかしてない。てーとくも相変わらずオリョクルの指示しかしてこないでち。今日も変わらずオリョクルに行って燃料と弾薬を拾ってくるだけの作業でち。ボスマスに行ったら雷巡チ級と目が合ったから、そいつに魚雷をぶつけたでち。けど小破したでち。

 

 

―15日目―

 今日出撃する前に「オリョクルお疲れ様っすwww」ってピンク髪のツインテにめっちゃ煽られたでち。クルージングなんて優雅なもんじゃないでち。爆雷に当たったらメチャンコ痛いでち。このまま、オリョクルしかしないのかなー? そんな気持ちを振り払うように今日も魚雷を空母ヲ級にぶつけた。けど中破したでち。

 

 

―20日目―

 あ号任務が終わったと思ったら次はろ号でちかそうでちか。毎日毎日同じことばかりで昨日と今日の区別がつかなくなってきたでち。なんでもいいから変化が欲しくて「魚雷を敵艦にシュウウウウウウッ!! 超!エキサイティン!!」って言いながら魚雷を撃ってみたでち。そしたら「楽しそうだね……」って先輩さんが言ってきて、久しぶりに会話が成立してうれしかったでち。他の子たちはこんなことしなくても、もっと変化に富んで刺激的な日々を過ごしてるんだろーな。そんなことを考えながら今日も魚雷を戦艦ル級に叩きつけた。

 

 

―22日目―

 もうオリョクルはイヤでち。いつになったらオリョクルは終わるんでちか? いつになったらオリョクルの呪縛から解放されるんでちか? 夢でもオリョクルしだしたでちよ! 任務を消化したら終わりじゃダメなんでちか!? そんな願いを込めてゴーヤは、魚雷を軽巡ヘ級にむけてスパーキング!!

 

 

―23日目―

 

輸送ワ級にむけてスパーキング!!

 

 

―24日目―

 

重巡リ級にむけてスパーキング!!

 

 

―25日目―

 

あきつ丸ちゃんにむけてスパーキング!!!!

 

 

―28日目―

 目が覚めると入渠ドックの中だったでち。体中が痛い。これで休めるかなと思ったら、バケツをぶっかけられてまたオリョクル。世の中そう甘くはないでち。いつもと同じくオリョクルに行きオリョクルを拾いオリョクルにオリョクルをぶつける。オリョクルをオリョクルしたらオリョクルをオリョクルしてまたオリョクル。オリョクルにオリョクルでオリョクルがオリョクルをオリョクルだオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクル……

 

 

―30日目―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクルオリョクル

 

 

「ギャアアアアアアアアアッ!!」

 

 叢雲は悲鳴を上げると読んでいた日記を窓の外に投げ捨て、真新しい高角砲で夜の鎮守府に花火を上げる。

 

「ハァハァ……び、びっくりした……」

 

 上がった息を整えると叢雲は机にバンッと手を付き、鋭い視線を机を挟んだ提督にぶつける。

 

「どうしてこうなるまで放っておいたのよ!?」

「いやーこの前のイベントで掘りをしてたら、燃料が危険水準まで行っちゃってさァ。その分を取り戻そうとしたら――」

「だアアァァァもう! 計画的に運用しろとあれほど言ったでしょ!!」

「うっせー! しゃーねーだろ! グラーフ出てこねーんだからよ!」

「言い訳なんて聞きたくないわこのグズ!」

 

 叢雲は提督の言い訳を一喝して退けたのち一つため息をつく。

 

「で? ゴーヤはどうしてるの?」

「ああ、実はその日記残して消えちまったんだ」

「はぁ!?」

 

 提督からの衝撃発言に叢雲はまたもや柳眉を逆立てた。提督はドウドウと手で制しつつ説明する。

 

「艤装は置いてあるから海には出てねェんだが、鎮守府中を探しても見つからねェんだ。で、悪ィんだけどゴーヤ探すの手伝って」

「こんんんんのクズ! 3話目で艦娘守るとか抜かしてたのはどの口よ!?」

「面目次第もございません……」

「だああああもおおおお! 仕方なわね。探してくるから、帰ってきたらちゃんと労ってあげなさいよ!」

「全力を尽くす所存です……」

「あとこれは貸しにしておくからね! 覚えてなさいな!」

 

 己の提督の不甲斐なさに頭痛を感じながら、叢雲は執務室を後にしたのだった。艤装を置き、鎮守府庁舎から外に出ると既に日がとっぷり暮れていた。叢雲は進めていた足を止め顎に手をやる。

 

「艤装は持って行ってない。鎮守府では見つからない……だとすると街かしら? 変なことに巻き込まれてなければいいけど」

 

 叢雲は鎮守府正門を出てネオンが彩る街へと繰り出していった。

 

 

 

 

 

 一方その頃

 

「デチクショォォオオオォァァアアアあァァァんまりでちィィイィッ!!」

 

 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、スク水にセーラー服の上のみという奇妙な出で立ちをした少女がカウンターにこぶしを叩きつける。

 ここはとある路地裏の屋台飲み屋。暖簾には『ぐちり屋』と銘打たれている。店の中は先ほどから叫んでいる少女と、人の良さそうな笑みを浮かべて相槌を打つこの店のオヤジしかいなかった。

 

「相当辛かったんですね~」

「もう一生懸命ほんとに、オリョクル、ブラァァアア鎮ッハアアアァアーー!! ブラ鎮問題はー! ウチの鎮守府だけじゃウワッハッハーーン!! ウチの鎮守ッハアーーーー! ウチの鎮守府だけじゃなぐで! DMMみんなの、日本中の問題じゃないでちか!! 命がけでイェーヒッフア゛ーー!!!」

「アレ? 嬢ちゃん? どっかの市会議員みたいになってやせんか?」

「この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッア゛ーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ!」

「……」

 

 グチを聞くことに関しては百戦錬磨のオヤジでも、目の前の少女の様子には顔を引き攣らせるしかなかった。もはやグチというより魂の叫びに近いものを感じたのだ。

 そのまましばらく少女による泣き叫ぶようなグチが続くがやがて終りを迎える。

 

「フゥ……スッキリしたでち」

「そういつはなにより。にしても嬢ちゃんも相当グチが溜まってたみたいだねェ。俺が見てきた中で過去最大級だよ」

「あんまり嬉しくないでち……でも、ありがとオジさん。ごちそうさま」

 

 思いのたけをぶちまけた少女は賢者モードの顔でお礼を言うと、会計をしようとポケットを弄る。

 しかしすぐに顔を青ざめさせる。

 

「ヤバイ……サイフ忘れたでち」

 

 必死にポケットの奥底に手を突っ込むがないものはない。散々飲み食いした酒とおでんを数える少女の指が震える。

 そんな少女にオヤジは手を振りながらにこやかに告げる。

 

「ああ! お代はいいよ嬢ちゃん。サービスでさァ」

「でちぃ!?」

 

 金は要らないというオヤジの言葉に、少女は思わず驚きの声を上げる。サービスにするにはあまりにも金額が大きすぎるのだ。

 

「で、でも……」

「いいんですよォ。大方朦朧としてて財布忘れたんでしょ? それに目の前をゾンビみてェにフラフラ歩いてたから、ほっとけなかっただけでさァ。だから早く家に帰んなさい。家族が心配してやすよ」

「家族……」

 

 少女は家族という単語を聞いた瞬間、苦楽を共にしてきた仲間たちの顔が真っ先に浮かび視界がぼやける。

 少女は潤む目を拭うと立ち上がる。

 

「オジさん! また来るね!」

「あいよ。いつでも来てくだせェ。待ってやすよ」

「うん! ありがとう!」

 

 また来ると言う少女は先ほどとは打って変わって、弾けるような笑顔で走り去って行った。

 オヤジがカウンターの皿やコップを片づけていると、一人の少女が静かに暖簾を潜る。

 

「これでよかったのかい? ぬいぬいちゃん」

「ええ、ご協力感謝します。冷酒を頂けますか?」

 

 席に着いたのはぬいぬいちゃんと呼ばれる少女だった。白手袋を制服のポケットに仕舞いながら酒を注文すると椅子に腰を落ち着かせる。

 

「ヘイ、お待ち! にしても随分と回りくどいことをしやしたねェ? わざわざウチに誘導してあの子を呑ませてくれって言ってきた時ャ驚きやしたよ。あ、これ嬢ちゃんの飲み代ね」

「脱柵などということが明るみに出れば、我々のイメージダウンに繋がりかねませんから。それに彼女のストレスも発散させないといけなかったので丁度よかったです」

 

 オヤジから酒と伝票を受け取りながら説明したぬいぬいちゃんは、ふと屋台を見まわしながらつぶやく。

 

「……ところでオヤジさん。屋台を新調したんですか?」

「え? ええ、しやしたよ。ひと月ぐらい前に。前のはいい加減ガタが来てたもんでねェ」

 

 ぬいぬいちゃんは屋台が新しくなっていたことに気付いたようだ。オヤジもおでん鍋を弄りながら答える。

 ふーん、と言いながらコップを傾けるぬいぬいちゃんが再度口を開く。

 

「そういえば、このあたりで爆発事件がありましたよね?」

「あー、そういえばあったねェ。そんなことも……」

 

 ぬいぬいちゃんの突然の話題転換に驚くでもなく、オヤジはおでんダネを追加しながら口を動かす。ただ、力加減を間違えたのか、はんぺんを真っ二つにしてしまいボチャンと鍋に落とす。

 いけねェいけねェと言いながら箸をせわしなく動かすオヤジ。それを見ながらぬいぬいちゃんは話しかけ続ける。

 

「それ、いつのことだったか覚えてますか?」

「……ひと月くらい前でしたかねェ」

 

 鍋を弄るオヤジの手が止まる。おでん鍋を見たまま顔を上げずに手で箸を弄ぶ。そんなに鍋が気になるのか。それともオヤジを凝視するぬいぬいちゃんと目を合わせたくないからなのか。

 そんなオヤジに、コップをカウンターの上に置いたぬいぬいちゃんが話しかける。いや、この場合は尋問する(・・・・)という方が的確な口調であった。

 

「オヤジさん。もう一ついいですか?」

 

 オヤジの了解を得る前にぬいぬいちゃんは、静かにそして鋭く質問を繰り出す。

 

「前の屋台はどうしました……!?」

「……」

 

 オヤジは顔を上げない。いつもの人の良さそうな笑みも心なしか強張っているように見える。表通りの喧騒は遠く、鍋の煮える音だけが裏路地に響く。引き絞られた弦の様な張りつめた緊張感が二人の間に立ちこめる。

 どれほどの時間が経っただろう。オヤジの口がついにゆっくりと開かれる。

 

「……ぬいぬいちゃん、がんも好きでしたよね?」

「いただいておきます」

 

 間髪いれぬ応酬。ぬいぬいちゃんはすばやく皿を差し出すと、オヤジはがんもどきを多めに盛り付ける。当然飽きないように、他のタネも載せる。

 

「まあまあね」

「ありがとうごぜェやす」

 

 屋台にいつもの空気が戻った瞬間だった。

 

「ところで、こんなところに誰かの伝票が置いてあったのですが?」

「ああ! それ前のお客さんのだね! すぐに捨てやすよ」

「流石に気分が高揚します」

 

 ぬいぬいちゃんが前の客(・・・)の伝票をヒラヒラさせると、オヤジはひったくるようにして受け取る。額面を見て蒼い顔をしながらカウンター下のゴミ箱に捨てる。

 

「一応、ウチのものが二人ほど巻き込まれていますので、これで手を打ちましょう」

「いや~その節はどうもすいやせん」

「ここに居たのね!?」

「?」

 

 オヤジとぬいぬいちゃんが話していると新たな客がやってくる。その様子からするとオヤジを探していたようだ。

 

「おや! むらむ……アレ? むらむらちゃん雰囲気変わりやした?」

「イメチェンよ。オヤジこそどうしたのよ? 屋台変えちゃったりして?」

「イメチェンでさァ」

「……まあいいわ。そんなことより、ここにスク水にセーラー服のシャツだけ着たピンク髪のでちでち言ってる子が来なかった?」

 

 むらむらちゃんと呼ばれる少女は軽くオヤジと世間話をするが、すぐさま本題の人探しに移る。

 するとぬいぬいちゃんがむらむらちゃんに向き直る。

 

「その方なら、先ほど自宅に帰りましたよ」

「え?」

 

 むらむらちゃんはぬいぬいちゃんを見て目を丸くする。思いがけない場所で思いがけない人と出会ったこともそうだが、思いがけない情報がもたらされたことに驚いたのだ。

ぬいぬいちゃんがウィンクしてアイコンタクトすると、むらむらちゃんは察したように軽く頷く。

 

「そういうことね? じゃあ用事は済んだわ……どうしようかしら? 一気に暇になっちゃったわ」

「折角ですし飲んでいったらどうです?」

 

 用事が済んだことを確認したむらむらちゃんは空いた時間をどうしようかと考えていると、オヤジから飲んで行けと誘われる。

 むらむらちゃんは逡巡した後ひとつ頷いた。

 

「そうね。せっかく外に出たんだしそうするわ。オヤジ、熱燗ちょうだい」

「ヘイ! しかしこんな時間に人探しとは、なかなか大変な職場ですねェ」

「全くよ! 改造して初仕事がこれとかあり得ないわ!」

 

 オヤジがむらむらちゃんを労いながら酒を出すと、むらむらちゃんも席に着きながら早速愚痴をこぼす。

 すると、先ほどからむらむらちゃんを見ていたぬいぬいちゃんが口を開く。

 

「むらむら……」

「なによ? 言いたいことがあるなら言いなさいな」

「……万年発情白ウサギ?」

「あ゛!?」

 

 ぬいぬいちゃんの発言はむらむらちゃんの流れるような銀髪と頭の上を浮遊する2つの機械を見てのものだった。それに対しむらむらちゃんは眉を吊り上げ、お猪口を持つ手をカウンターに叩きつける。

 

「このあだ名はねぇ! 作者がまともなあだ名を考えられなかった悲しい結果なのよ!」

「そうだったんですか。それはお気の毒に」

「それに言っとくけどねぇ、こちとら下ネタ関係で結構悩まされているんだからね!」

「何かあったのですか?」

 

 酒が入ったことで滑りが良くなった口で、むらむらちゃんはグチを捲し立てる。

 

「私がネット界隈でクリボーの如くオ○ニー狂いってことにされているのよ!?」

「は?」

 

 ぬいぬいちゃんは理解が追い付かず思わず訊き返す。いきなり放送コードが入ったこともそうだが、ぬいぬいちゃんが知る限り理由がさっぱり分からない。

むらむらちゃんは注ぎ足した酒を一息に飲むと説明を始める。

 

「私がクリスマスにケーキ食べた時のボイスを聞いた奴に、私のことチョロインだとか勘違いしたのが居たのがことの始まりよ。別にケーキに釣られたわけじゃないし! 普通に感想言っただけだしィ! ……んんっ。話を戻すと、そこから転じて私が隙だらけで『毎日オナ○ーするの?』って聞いたら口を滑らせるキャラだなんて妄想し出す輩が現れ始めて! 気付いたら私はアソコで山芋を摩り下ろす程のオナキャラってことに……」

 

 グチの経緯を話すうちに気持ちが沈んできたのか、むらむらちゃんは段々とカウンターにもたれかかるような姿勢になる。

が、突然ガバッと身を起こすと徳利の酒を一気に煽ると、カウンターに叩きつけながら椅子から立ち上がる。

 

「もうウンザリなのよ!! 野郎共のズリネタにされる二次設定という悪習そのものが! もうみんなで一斉にやめるべきでしょこんな茶番! 今度私のことテ○ノブ○イクなんて呼んだら、ケツに酸素魚雷ブチ込むってことでファイナルアンサァァッ!!?」

 

 酒という点火剤が入りテンションが急加速したむらむらちゃんは、ぬいぬいちゃんにビシッと指を突き付ける。

対するぬいぬいちゃんはスッと手を上げと

 

「その前に1つ、よろしいですか?」

「なによ!? Yes、Noの2択だからオーディエンスとテレフォンしか使えないわよ!?」

「ではオーディエンスで……正面をご覧ください」

「あん?」

 

 むらむらちゃんが酔眼を正面にやると、気まずそうに目線を明後日の方にやりながら頭をかくオヤジがいた。その頬は若干赤らんでいるようにも見えた。

 むらむらちゃんは酔って赤くなっていてた顔を一瞬で茹でダコ並にすると

 

「――!!? な、なな何聞いてるのよアンタ!?」

「いやァ。むらむらちゃんが勝手に話し出したんじゃあねェですかィ。こっちの身にもなってくだせェよ」

「本当に隙だらけですね。だからチョロインって言われるんですよ」

「ぐぬぬ……」

 

 酔った勢いとはいえ、目の前にいるオヤジの存在を忘れ下ネタ話で大演説。明らかに自分に非がある上、改めて隙だらけだと白い目を向けられてしまった。そのことに、むらむらちゃんは真っ赤な顔のまま、カウンターにへばり付いて歯ぎしりをするしかなかった。

 

「……まさか本当に?」

「してないわよっ!!!」

「あーちょっと。その辺で勘弁してくだせェよ、お二人さ――」

「オヤジさん! こんばんは!」

「ああ、もぐらちゃんじゃあないですか!? 今日は色々きわどい子が多いねェ?」

 

 なおも下ネタ談議に花を咲かせようとする二人にオヤジがストップをかけようとすると、もぐらちゃんと呼ばれる新たな客が暖簾を揺らした。

 酔客二人がもぐらちゃんに目を向ける。なるほど、オヤジが際どいと言うのも頷ける。もぐらちゃんは腹の辺りに『ゆ』と書かれた白スク水を着た見た目かなり幼い少女だった。もぐらちゃんは二人を見ると丸い眼をさらに見開き敬礼する。

 

「こ、こんばんは……です!」

 

 畏まって挨拶するもぐらちゃんにむらむらちゃんは苦笑いしながら

 

「そんなに改まらなくてもいいわよ。ここじゃ他人同士なんだから」

「オヤジさん。プラカードお願いします」

「ヘイ、今回は出番が無いのかと思いやしたよ」

 

 ぬいぬいちゃんの注文を受け、オヤジはニヤリと笑うといつもの注意書きが書かれたプラカードのようなものをサッと取り出した。

 

『・好きなだけグチってください。

 ・一人で来て下さい。

 ・知り合いに会っても、知らぬフリをしてください。

 ・ここで聞いたことは、他言しないでください。』

 

 むらむらちゃんはプラカードを親指で指しながらもぐらちゃんに笑いかける。

 

「そういうことだからアンタもこっち来て座んなさいな」

「えへへ……それじゃあ、失礼します!」

 

 どこか鈍臭さを感じさせる仕草でもぐらちゃんがむらむらちゃんの隣にチョコンと腰を下ろす。

むらむらちゃんは彼女が酒とおでんを注文し終えるのを待ち話しかける。

 

「それで? どんなグチなの?」

「へ?」

「グチりたいからココに来たんでしょ?」

「えーと……」

 

 むらむらちゃんがグチを促すと、もぐらちゃんは迷ったように顎を手に乗せ考え始める。

するとオヤジが口を挟む

 

「もぐらちゃんは色々ありやしたからねェ。確か職場の同僚絡みでたっけ?」

「はい、配属してから今まで色々変なことをされるんですよ」

「え!?」

 

 むらむらちゃんはもぐらちゃんの話を聞いた瞬間、頭の中がOFFモードから仕事モードに切り替わった。確かにもぐらちゃんの立ち位置は海軍の中でも微妙なところだ。そういったことでゴタゴタが起きてもおかしくない。むらむらちゃんははっきりした性格のため陰湿なことは許せなかったが、なにより自分が全く気付いていないことが一番許せなかった。当然力が入る。

 

「詳しく聞きたいんだけれど?」

「そうですねー。今までで一番ソフトだったのが、足の裏を小一時間くすぐられ続けた事ですかね?」

「待って、ちょっと待って。一番ソフトなのでそれって他にどんだけエグいことされてるのよ?」

「まぁ、聞いてみましょう」

 

 衝撃的なもぐらちゃんの体験談にむらむらちゃんは衝撃を隠せない。ぬいぬいちゃんが続きを促すともぐらちゃんは神妙な顔で話し始める。

 

「あれは任務が終わって自室に戻ろうと廊下を歩いていた時のことです。突然頭に袋を被せられ拉致されたんです。連れ去られた先で椅子に縛り付けられ、袋を取られたらデンドロビウムみたいな艤装をつけた二人組がいたんです。その二人組が『あなたの人形を買ったわ』『足がすり減って無くなるまで撫でたわ』『でも全然運が向いてこないの』『だから本体のあなたを撫でさせて。幸運にさせて』と交互に言ってきて足の裏をくすぐってきて……。二人とも目が怖かったし、くすぐったいし……死ぬかと思いました」

「ねェ? ヒデェもんでしょう?」

 

 もぐらちゃんはその時の様子を思い出したのか、顔を青ざめさせカタカタ震えだす。オヤジは同情するようにうんうんと頷くと、思案顔になっている二人に話しかける。

 むらむらちゃんはさっきまで大上段に構えていた自分が馬鹿馬鹿しくなり、カウンターに肘をつき頭を載せる。

 

「あの不幸姉妹……」

「拉致した上で拷問紛いの所業……十分事案です」

「ってかなんなのよ人形の足を撫でるって? ビリ○ンさんのつもりかしら?」

「霊感商法詐欺の存在も確認出来ました。至急対処しましょう」

「あー、ぬいぬいちゃんルールだから忘れてくだせェよ?」

「現場を押さえられればいいのです。フフフ、徹底的に追い詰めてやる……!」

 

 やる気が胡散霧消したむらむらちゃんとは対称的にぬいぬいちゃんは静かに闘志を燃やしていた。

 その横で酒をすすっていたもぐらちゃんが思い出したように口を開く。

 

「そういえば、その前にもこんなことが」

「まだあるの?」

「新たな犯罪の芽があるかもしれません。聞きましょう」

 

 あまりにもアレな内容のもぐらちゃんの話にむらむらちゃんは気だるそうに答える一方、ぬいぬいちゃんは俄然やる気を出し聞く体制に入る。もぐらちゃんも酒でのどを潤し、指を立てて話し始める。

 

「夜、寝ていたときのことだったんですけど。物音がして目を覚ましたんです。耳を澄ますと扉の方からパンパンって音がしてたんですよ。気になって扉をちょっと開けて覗いてみると、カタツムリの角みたいな艤装を頭に着けた人がこっちに向かって拝んでたんですよ。しばらく観察すると宿舎の入口と部屋の前を往復して柏手を打つのを繰り返しているみたいでした」

 

 むらむらちゃんは眉間にしわを寄せあの女かと呟く。

 

「今度はお百度参り?」

「しかしそこまで酷いものではないのでは?」

「ええ、安眠妨害ではあるかもしれやせんが、さっきのと比べりゃねェ?」

 

 3人が首をかしげる中、もぐらはひきつった笑みを浮かべながら続ける。

 

「いやいや、全裸でやってたら流石に引きますよ」

「ありゃりゃ……」

「なにやってんのよあの恥女」

「……落ち度、2」

 

 もれなく3人ともドン引きである。確かに、お百度参りは裸足でやると効力が上がるという俗説がある。ただ、全裸はない。聞いたことがない。それはただの公然猥褻である。

 3人が渋面をたたえているともぐらちゃんは思い出したように呟く。

 

「あーでもアレに比べたらまだマシでしたね」

「え~。もう満腹気味なんだけど」

「ダメです。膿みは搾り取っておくべきです」

 

 ぬいぬいちゃんに促されもぐらちゃんは続ける。

 

「私を見つけると必ずお尻を触ってくる人がいるんですよ」

「それただのセクハラじゃない!?」

「こっちに来たばかりのころは色んな人にやられたので、挨拶の一種かなと思ってたんですけど。その人のは段々エスカレートしていって、この前はお尻の割れ目に、て……手を差し込んで……」

 

 もぐらちゃんがもぞもぞと尻を撫でる。すると話を聞いている間ずっと思案顔だったぬいぬいちゃんがハッと顔を上げる。

 

「なるほど佐○急便ですね」

「ああ、それだ! ありやしたねェそんなの!」

「いや! そこはどうでもいいでしょ!?」

 

 元ネタクイズ大会をしている二人に突っ込みを入れるむらむらちゃんは、ため息を一つ吐くともぐらちゃんに向き直る。

 

「で? それ誰にやられたの?」

「えっと……確かボウガンを持った人でした」

「……今日は私が奢るわよ」

「え!? いいんですか!?」

 

 むらむらちゃんはもぐらちゃんの肩にそっと手を置き頷いた。あまりにも居た堪れなかったのだ。この世から不幸と言う単語が消えない限り彼女の受難は続くのだろう。故に今この瞬間だけでも、彼女に幸せの味をかみしめてほしいとむらむらちゃんは心の底から願った。

 降って湧いた幸運にもぐらちゃんが顔を輝かせていると、不意にぬいぬいちゃんが話しかける。

 

「ところで、もぐらさんは誰かに相談しなかったのですか? 例えば上司とか?」

「ええ! そりゃもちろんしましたよ。たいち……上司に相談したら何とかするって言って暫くするとぱったり止みましたから」

「なんだ、それならよかったじゃない?」

 

 別に一人で抱えていた訳ではないしもう解決済みということを知ったむらむらちゃんは肩の力を抜く。

 しかし、もぐらちゃんはただ、と話を続ける。

 

「その暫く(・・)の間で妙なことが続いて……」

「妙なこと?」

 

 本当にトラブルが尽きないなぁと思いつつむらむらちゃんが先を促すと、もぐらちゃんは難しい顔で続けた。

 

「出撃していない任務の事で労われたり、参加していない演習のことを励まされたりと変なんですよ。確実に私は非番だったのに……おかしいですよね?」

「へェ~、なんか勘違いされてるんですかねェ」

「「……」」

 

 オヤジとモグラちゃんが不思議がる横で、杯を傾けようとした酔客二人の動きが同時に止まる。そのままの姿勢で互いに目線だけで会話をする。

 

(あの、これって……)

(ええ、間違いないでしょうね。アレ(・・)よ)

(ちなみにその子は?)

 

 むらむらちゃんがストレッチをする振りをしてもぐらちゃんの背中を見る。

 

(大丈夫。1って書いてある)

(主力潜水艦隊の方ですね。安心しました)

 

 むらむらちゃんとぬいぬいちゃんはホッと胸を撫で下ろすと、何事もなかったかのように呑みだす。

 

「今夜は呑みますよー! グチも零しますよー!」

「ヘイ! 酒もおでんもまだたっぷりありやすからねェ。気の済むまでグチっていってくだせェ」

 

 隣でどのような会話がなされているかなど露知らず、もぐらちゃんは気炎を上げ、オヤジは笑うのであった。

 

 

 

 

 

 場所は変わって鎮守府の執務室。この部屋の主である提督とさっきまで無断外出をしていたゴーヤが向かい合っていた。

 

「……ごめんなさいでち」

「いや。俺の方こそ悪かった。もう少しお前たちに配慮すべきだった」

 

 互いに神妙な顔をしつつ、謝罪の言葉を述べる両者。

 提督は努めて明るい顔でさらに続ける。

 

「侘びと言っちゃなんだが、1週間ぐらい休暇をやるよ。ゆっくり羽を伸ばしてこい」

「え!? あ、でも……」

「ん?」

 

 喉から手が出るほど欲しかった休暇をもらえるとあって、ゴーヤは一瞬表情が晴れるがすぐに思案顔になる。

 提督が促すとゴーヤは言いにくそうに口を開く。

 

「そのー……出来れば、みんなと一緒がいいなー」

「う~ん」

 

 もじもじと上目づかいで懇願するゴーヤに提督は黙考する。流石に贅沢を言い過ぎたかとゴーヤが思い始めたところで提督が膝を打った。

 

「分かった! 全員分用意してやる」

「やったぁ! ありがとう、てーとく!」

 

 みんなに教えてくる、と飛び跳ねるようにしてゴーヤは執務室を後にする。それと入れ替わるように、軽巡艦娘である大淀が執務室に入ってきた。

 

「あのー、提督? ちょっとまずいと思うのですが……?」

「問題ねェよ。資材は目標量まで集まったし、流石にあれ以上酷使するのは忍びねェよ」

 

 大淀の進言に提督は心配するなと取り合わない。今回の脱柵の件がかなり響いた様子だ。

 ただ大淀は一瞬キョトンとした後、その件ではなく、と続ける。

 

「本日の南西諸島海域の制海権確保が80%までしか進んでいませんよ?」

「え? マジで?」

「はい、マジです」

「あちゃー。カウント間違えたか……」

 

 大淀が指摘したかったのは、今日こなす予定の任務がまだ未達成だということだった。そのことに気付いた提督は額に手をやる。

 

「……仕方ねェ、さっき休みをやった第二班以外の面子でオリョール海に出させるか」

「了解しました」

 

 大淀が電話を取りダイヤルを回す。数コールの後回線が繋がる。

 

「大淀です。……はい、そうです。出撃です。皆さんでオリョール海域の敵主力部隊を撃破してください。……はい、装備はいつも通りでお願いします。では」

 

 極めて事務的に要点だけ伝えると大淀は受話器を下ろした。

 

 

 

 

 

 休暇をもらったゴーヤは鼻歌交じりにスキップしながら、潜水艦娘の共同部屋に帰り着いた。

 

「みんなー! ビッグニュースでちよ!」

 

 威勢よく『2』とプレートが打たれたドアを開けつつ、ゴーヤは中に飛び込んだ。しばらくゴーヤの興奮した声しかしなかったが、やがて4人分の歓声が廊下に響き渡った。

 ゴーヤが入った部屋のドアがダンパーによって閉まり、部屋の音が外から隔絶される。それと同時に隣の『3』のプレートがある部屋のドアが開く。

 

「はっちゃん。出撃しますね」

「てっぺんでちか……」

「深夜よ、この職場……大丈夫?」

「日付が変わったの……」

 

 こうして、潜水艦隊第三班は重い足取りで出撃して行くのであった。

 そのころ執務室では、海図や出撃した潜水艦隊との通信のための機材を準備しながら大淀が提督に話しかける。

 

「潜水艦の子達には感謝してもしきれませんね提督?」

「ああ、ゴーヤ達(・・・・)には本当に感謝してるよ」

 

 

 

 

 

 




あとがき

前回の秋イベで燃料と弾薬をそれぞれ11万溶かしてもグラ子ちゃんが出なくて、代わりにわんさかドロップしたのがワオワオデチデチイクアハトだったわけです。これはあれかな? 溶けた資源はこいつらで稼げという神のお達しかな? と考えるわけですよ。で、その子達でろ号任務を終わらせた頃に今回の話は思いつきました。冬イベ前には書き終わらせたかったんですけど、アニメを見る暇もないくらい忙しかったんです。リクエストしてくれた方、お待たせしてすみませんでした。

さて、リクエストもなくなったところで一つ思うことがあります。

別の小説書きたい!

現在、銀魂と艦これのクロス小説書こうかななどと夢想しています。
この投稿ペースじゃ無理だろとは思うけど小ネタがボロボロ出てきているから書きたいなー(チラ
あーでもどうなるかわかったもんじゃないなー(チラ
いいのかなー? 書いちゃっていいのかなー?(チラ

とりあえず、春イベがんばりましょうか皆さん。

それでは皆さん。さよなら
         さよなら
          さよなら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。