住居、それすなわち自分の家、住まい。家は生きる上でかなり大切な部分である。この世の中には住居がなく困っている人も少なくはない。夏の暑さを住居で防ぎ。冬の寒さも住居で防ぐ。家族と食卓を囲み、自分だけの時間、空間で趣味を行える、神聖な場所とも言える。
まぁ、ここまで哲学?みたいなモノを述べたが、わたくし歩田が伝えたいことは『住居は大切』ということだ。つい先程みんなの住居の館を壊し、新たな『質素な家』で一週間を過ごすことになり、色々あってようやく当たり前のことに風呂に入りながら気づいたのだ。
確かに新しい家は家だろう。しかし、人間は欲がものすごい生物だ。こんな家では何かが足りない。いや、足りなさすぎるのかもしれない。
え?それはどんな家だって?ついさっきのことを皆さんにお見せしましょう。
エシュ「ここから少し歩いたら着くらしい。どうやらその家の家賃は無料らしいからな。」
歩田「無料かぁ。」
「無料」と言われると少々不安なところがある。もしかしたら犬小屋みたいな家が出てくるかもしれないからだ。まぁ、それはないか。
・・・あれ?これフラグ?
エシュ「あれ?ここら辺のはずなんだが犬小屋しかないな。おかしいなぁ。」
俺たちの視界に映った犬小屋みたいな建物は、団地の玄関とトイレを組み合わせた時と同じような広さである。木造建築で少しどころではないほど汚れており気味が悪い。・・・やっぱりさっきのフラグだった?いや、まさか・・・な?
歩田「や、野生動物とかも住めるようにしてるんじゃないですかねぇ〜」
エシュ「うーん、家が見当たらないなぁ。」
???「家ならそこじゃよ。」
エシュ「え?どこ?」
???「ほら、そこ」
急に現れた老人はさっき「犬小屋みたい」と言っていた場所を指差す。
フラグは回収された!!!!
エシュ「へ?」
歩田「まじか...」
老人「そこがあんたらの家だよ。中は狭いから説明する必要もないな!ハッハッハ!」
老人は悪役のように笑った。確かにこの広さならば家全体を一目で見渡せるだろう。
エシュは唖然としており、現実を受け止めきれていない様子だった。そりゃ、今まではでかい館でどこかの王様ように(実際に王様)生活していたのだ。それがこの犬も嫌がるような、小さくてボロくて汚くて気の味悪い場所になったのだ。
エシュ「・・・歩田みたい」
歩田「それ悪口じゃない!?」
この家に対して批評したタイミングで「歩田みたい」って言われたら、俺が自分自身に『小さくてボロくて汚くて気味が悪い』って言ったようなものじゃねぇか!
エシュ「イヤ?ゼンゼンソンナツモリハナイケド?」
歩田「おい、言葉がカタコトだぞ」
老人「フォッフォッフォッ、君たちは仲がよいな!もしかして・・・付き合ってあるのか?」
エシ歩「付き合ってないです(よ)!!!」
エシュとシンクロしつつ、慌てて老人に返す。俺がエシュと付き合う?そんなこと有り得るわけねぇんだよなぁ。こいつなんて心の底からお断りだ。
老人「おっと、言い忘れておったが、この辺りにはヌールスという、毒を持った虫がおるんじゃが、噛まれたら一発アウトだから気をつけろよぉ。見た目はでかい蛆虫だ。」
エシ歩「・・・」
噛まれたら一発アウト!?なに?そんなところに泊まるの?それに一週間だし。てか、でかい蛆虫とか結構気持ち悪い見た目してるな。もしかしたら死ぬじゃん。
老人「ほら、もう日が暮れておるから早く家に入った方が良いぞ。」
歩田「わかりました。」
エシュはまたもや唖然としている。よくよく考えたら、俺は多分毒を食らっても再生することができる。しかしエシュは再生ができないと言っていたから、普通に噛まれたら死ぬのだろう。
歩田「ほら、エシュ早く行くぞ。」
俺はエシュを急かす。
エシュ「・・・なんでお前はそんなに当たり前みたいな感じで行けるの!?おかしいでしょ絶対!噛まれたら一発で死ぬ虫なんて聞いたことないんだけど!?」
俺はエシュがそんなことを言っているのを気にせず家の中に入る。
中は予想をはるかに超えた汚さだった。最近雨が降ったのが原因で中がすごく湿ってる。家の端っこの方にどうしたかわからないが、洋式のトイレがあり、中央ら辺に新聞紙が敷かれている。それだけでほぼ床が埋まるが、残りの床の部分を埋めているのは、たくさんの種類の虫だ。ゴキブリみたいなやつも混ざっている。環境は犬小屋以下だった。唯一の救いであり、家の1番の謎なのは、トイレが洋式というところだ。何故そこは使いやすくなっているのか、本当に謎だ。
質素ってもんじゃないレベルの家だ。こんなことなら野宿した方がマシまであるだろう。
エシュ「ぎゃああああ!!!!!」
突然隣の家からエシュの悲鳴が聞こえてきた。何事かと思って家を飛び出し、隣の家へ行くとエシュがドアを開けただけの状態で、膝から崩れ落ちていた。
エシュ「こんなところに・・・住めるかぁ!!!」
エシュの家の中は俺と同じ感じだった。女性の方々からしたらたまったもんじゃない家だろう。まぁ、これに関しては男も例外ではないだろう。
歩田「ちょっと、そんな叫ばれると近所迷惑ですよ?静かにしてください。」
エシュ「お前は、こんな感じで平気なのか?そうか!私の家だけがこんな感じで他は大丈夫なんだな!歩田!わたしと家かわれ!」
エシュは走って俺の家へと向かう。どちらにせよ家の中身はほぼ一緒。家を変えても変わりはない。
エシュ「ぎゃああああ!!!!!」
エシュは先ほどのように叫ぶ。家の中が変わらないのならば、反応も殆ど変わらない。それは当たり前のことだ。
エシュ「殆ど変わらないじゃねぇか!!!なおさら、なんでお前は平気なんだよ!?」
歩田「うーん、まぁ慣れってやつだよ。」
本当は全く慣れていないのだが、格好つけたかったからこんなふうに言った。
エシュ「どんな慣れだよ!」
エシュは興奮状態になっていた。今なら「こんなところ焼き払ってやる!」と言っても不思議ではない。
エシュ「こんなふざけたところ私は出て行くね!どうせヌールスなんて全然いないんだろ!?私は自分で家を作って泊まるね!じゃあ、私は行くから!」
と言ってエシュはここから逃げていった。
歩田「大丈夫かなぁ?あの感じで。」
エシュがさっき行った言葉はフラグそのものだった。本当に心配だ。
そういえば、来たのが俺たち二人だけなのだろう?いや、普通にワープ使ったからだな。結構この国は広いみたいだし、みんな来るのが遅いのだろう。
歩田「もう寝るか。」
もうすでに時間は8時くらいだろう。俺はすることもないし寝ることにした。
家の中に入り、申し訳程度に置かれている新聞紙に身を包む。
家の隙間から入ってくる風、湿っている空気、床を埋め尽くしている虫の死骸の臭い匂い、カサカサという足音とともに俺は寝た。
歩田「・・・カサカサという足音?」
おそるおそる、その足音がする方向に目を向けると、そこには誰しもが嫌うGがいた。
歩田「ぎゃああああ!!!!!」
俺は家から飛び出す。驚きすぎて思わず腰が抜けそうになった。俺はブルブルと恐怖に震えた。そして俺は外で寝ることに決めた。Gと寝るくらいなら、外で寝た方がまだマシだろう。
俺は新聞紙も被らずにそのまま寝た。しかし、あまりの寒さに俺はなかなか寝られなかった。もうこっちの方では10月だ。外は寒くて当然だろう。
本当に寝れないでいたら、首元に大きな痛みが走った。そこから広がるように体が痙攣していき、俺はあの老人が言っていたヌールスを思い出した。すぐに、激しい頭痛と吐き気が襲ってきて俺は気絶した。本当にこっちに来てから気絶しすぎだと思った。
歩田「うーん?」
俺は目が覚めた。多分ヌールスに噛み付かれたのだろうが、おそらく再生能力のおかげで俺は助かった。しかしおかしい。俺は外で気絶したはずだが、今俺がいるのは温かみのある立派な家だ。空間もしまっていないし、虫の死骸もない。館ほどの広さではないとしても立派な家だと思う。
俺は立ち上がり、襖を開ける。すると、驚いたことに台所らしき場所には、メリーさんがいたのだ。
メリー「やっと起きたんだね。ちょうど13時間気絶していたよ。私がくるのがあと少し遅れていたら、君はヌールスに体か食い尽くされて死んでいたよ。」
歩田「助けてくださいありがとうございました。」
俺は自分の体がでかい蛆虫に食べられているのを想像し、背筋がゾワっとした。
メリー「いやぁ、でもやっぱり再生能力って偉大だね。毒も対処できるんだ。」
歩田「そうみたいですね。」
俺もこの能力に感謝した。しかし、俺に不安が募る。エシュは大丈夫なのだろうか?俺は外でね始めてすぐに噛まれた。ならばエシュも噛まれている可能性があるのだ。・・・まぁ、大丈夫か。あいつなら。
メリー「私も君たちが一週間住む場所を昨日初めてみたんだけど、かなり酷い場所だったね。あの大量の虫の死骸には思わず悲鳴をあげたよ。」
歩田「あんな場所で一週間なんて本当にふざけてますよね。」
メリー「本当に私もそう思うよ。そういえばだけど、エシュはどこに行ってたの?見当たらなかったけど。」
歩田「森の方に野宿しにいきましたよ。」
メリー「うわぁ、大丈夫かな?」
歩田「多分、ていうかメリーさんは工事行かなくて大丈夫なんですか?」
メリーさんは工事で忙しいはずだが。
メリー「大丈夫だよ。私が担当するのは4階だけだし、そして今は君がいるから様子みないとね。」
歩田「本当にありがとうございます」
俺ってまじで人に迷惑かけてばかりだなぁとつくづく思う。
メリー「だから、今日から6日間はうちに泊まることになるんだけど大丈夫?」
む?泊まり?・・・やったーーー!!!!あの時外で寝てよかった!!ヌールス、ありがとう!他のみんな、ごめん!俺、一人でこの家泊まるわ!しかもメリーさんと一緒!2人きり!こんな状況になって興奮しない男はいないよなぁ!?
歩田「はいっ!全然大丈夫です!むしろ嬉しいです!」
メリー「元気がいいんだね。」
歩田「あの、それって俺とメリーさんの2人きりですか?」
メリー「まぁ、そうだが、変なことしたら次の館のオブジェクトにするからね?」
歩田「しませんヨォ、そんなこと」
いやぁ、2人きりか。嬉しいなぁ。長いお泊まり会みたいな感じじゃないか。ずっと憧れてたから、めちゃくちゃ嬉しいな。
メリー「そういえば、最後にご飯食べたのっていつ?」
歩田「・・・昨日の朝ですね」
よくよく考えれば俺24時間何もだべていないじゃん。そのことを自覚した瞬間、猛烈に空腹の時の感覚が襲ってきた。
メリー「やっぱり、じゃあこれ朝ごはん。」
なんと!メリーさんが気を利かせて朝食を作ってくれたのだ。メニューは目玉焼き、ウインナー、白米、味噌汁だ。日本の朝食みたいな感じでとても嬉しい。
歩田「いっただきまーす!」
最初は味噌汁おすする。
歩田「うまぁ。」
メリー「それはよかった。」
久しぶりのご飯に胃が歓喜し、バクバクと食べ、すぐに完食した。本当に日本の料理って素晴らしい。
歩田「ご馳走様でした!」
メリー「食べるのが早いんだね。久しぶりに食べたからかな?」
歩田「それもありますけど、めちゃくちゃ美味しかったからです。」
メリー「君は褒めるのが上手なんだね。」
メリーさんが微笑む。かわいいなぁ。エシュとは大違いだな。
メリー「風呂に入ってなさそうだから入ってきて。」
歩田「はーい。」
メリー「風呂場はこっちね。」
めりーさんに誘導されて脱衣所に着く。館のように広いわけではないから、すぐに着いてとても便利だ。6日とは言わずにずっとここに泊まりたいなぁ。
メリー「私は外で用事を済ましてくるから、風呂から上がったら好きなことしててね。」
歩田「はーい」
メリーさんが脱衣所から出ていったので、俺はすぐに服を脱ぎ、風呂場の中へと入った。THE風呂みたいな感じな風呂だ。俺は体を流して湯に浸かった。
歩田「はぁー、気持ちいいぃ〜。風呂ってご飯と同じくらい最高だよなぁ。」
こうしてゆっくりできるのも、ちゃんとした家のおかげだ。
歩田「家って大切だなぁ。」
本当に俺はそう思う。今までは家が当たり前だったから気づくことができなかったが、あの経験をしたおかげでようやく気づくことができた。
そうして、今に至る。
歩田君は本当に気絶しすぎですね。