自分の身に起こったことがいまだに信じられない。
俺は塚本修二という男子大学生のはずだった。
ところが、いま鏡に映っているのはどう見ても女子。
それもせいぜい中学生くらいだろう。
百八十センチあった身長が百五十センチほどに縮んでいる。
……念のため、パジャマの中に手を入れてみた。
「胸がある。……あれがない」
生物学的に女子になってしまったのは確定した。
……冷静になればいまの自分は石垣友恵という名前が脳内に浮かぶ。
どうなってるんだ?
「友恵、お友達が来たわよ!」
ドアの向こうから聞こえてきたのは、友恵の母の声。
初めて聞くはずなのにすんなりと理解できたのもふしぎだ。
「はーい」
頭で考えるより先に自然と可愛らしい返事が出ていた。
条件反射ってやつだろう。
降りていくとたしかに見覚えのある女子三人が手をふっている。
みんな同い年で中学三年。
学校はバラバラだけどある共通事項があって親しくなった。
「トモちゃん、今日はどうする?」
訊いてきたのは攻撃手の女子。
通称みーちゃん。
「いつも通りでいいんじゃない? 地道な練習が上達の近道って師匠に言われてるし」
と答えておく。
「だよねー」
女子たちだけあってにぎやかだ。
かしましいという言葉の意味、TSしたあとでも理解できる。
中身は男のままだからかもしれないけど。
歩いていた結果見えてきたのは、界境防衛機関『ボーダー』の建物だ。
ここはワールドトリガーの世界だと言ったら、信じられる?
みんなと親しくなったのは、同じ『ボーダー』の女子隊員だからだ。
単行本を全巻買い揃えていた大好きな漫画だけど、こんなシリアスに世界にくるのはちょっと勘弁。
どうせなら命の心配がいらないだろう「アオのハコ」か「あかね噺」のほうがよかったなあ……。
「友恵、今日もがんばろうね!」
「目標は加古隊、那須隊だもんね!」
友達が意気込んでいる。
どちらも女子チームだし、とくに加古隊は精鋭であるA級だから憧れている子たちは多い。
「とりあえずはB級中位に上がるのが目標だね」
友恵として微笑みながら答える。
残念ながらB級下位の中でも強くないチームので、先は遠そうだけど。
この世界に来てよかったと思えることはひとつある。
この体は女子だし、みんな俺を女子だと思っているので、女子更衣室を普通に使えることだ。
「あ、熊谷先輩こんにちはー」
みーちゃんが熊谷友子に話しかける。
「おー」
熊谷友子の表情が明るくなった。
「くま先輩、こんにちはです」
俺も友恵としてふるまう。
女子たちだからすぐにきゃっきゃと盛り上がる。
那須の姿は見えないけど、あの人体弱いからな……。
日浦茜も合流してきたのでさらにやかましくなる。
とは言え、いまの俺は普通に会話に参加できた。
前世とは大違いだ。
女子ってすごい……。
「じゃあまたあとでねー」
訓練のために一度熊谷友子、日浦茜と別れる。
この世界で生きていくんだから、強くならないとっていう思いはきっとみんな同じだ。