ですわ無双 〜超絶破天荒お嬢様(自称)がいずれ世界を轟かせるまで〜 作:ブナハブ
ギルドを出て徒歩数分、十人以上の大人が横に並んでも余裕で入れそうな大洞窟に、ローズマリーは訪れた。
この場所こそ世間を賑わすダンジョン、中でも初心者用ダンジョンと呼ばれる場所である。
「ダンジョンですわ!」
初めてダンジョンに足を踏み入れたローズマリーは、昂る感情を表現するかのように叫んだ。
「ひっ」
叫んだ瞬間、近くに居た彼女と同じ初心者冒険者が怯えて距離を取った。
「えっと、最初にやる事は……」
しかしそんな反応もなんのその。彼女はスマホ(金ピカに超デコられてる)を取り出すと、冒険者講習の時にメモしておいた初心者のやるべき事リストを開く。
【①ステータスの確認をする】
「そうそう、ステータスの確認をするんでしたわね」
メモの内容を見て講習での出来事を思い出した彼女は、早速自身のステータスを閲覧する。
「……【オープン】!」
手を前に出して、あるワードを発する。直後、彼女の目の前に半透明の板が現れた。
「おお……! 本当に出てきましたわ!」
「……っと、いけませんわ。早く内容を確認しなければ」
感動もほどほどに、彼女は表示されたステータスを確認した。
ーーーーーーー
レベル:1
【ユニークスキル】
ナビゲーターLv--
【スキル】
使役術Lv1、鷹の目Lv1
ーーーーーーー
「ふむふむ、なるほど……ってあら?」
ステータスを確認していくローズマリーだったが、ある一文に目が止まった。
「ユニークスキル?」
ステータスの中に、見知らぬ項目が存在するのだ。
ステータスには、レベルとスキルが記載されている。
レベルはダンジョンでモンスターと戦っている内に上昇し、高くなるほど素の能力が向上する。
そしてスキル、これは簡単に言えば『元々その人に備わっていなかった能力・才能』を行使できるようにする力だ。こちらにもレベルの概念があり、使い込むほど上昇し、その効力も増す。
彼女が講習で学んだのはその二つのみで、ユニークスキルという単語には聞き覚えがなかった。
「一体何なんでしょう? ユニークと謳うからには、何か特別なスキルかと思いますが……う〜ん」
ウンウンと頭を悩ませて数秒、
「……まあ、使えば分かりますわよね」
とりあえず使ってみる事にした。
(【ナビゲーター】)
講習で教わった通り、頭の中で念じるようにスキル名を唱える。
すると次の瞬間、目の前に小さな光が生まれた。
「───はーい! 呼ばれて飛んで来ました! 【ナビゲーター】ちゃんです!」
「わっ」
光はすぐにパッと弾けて、中から四枚の翅を生やした緑髪の小さな少女が現れた。
「だ、誰ですの貴女?」
「はい、先ほども仰った通り、私はあなたのユニークスキル【ナビゲーター】ちゃんその人です!」
「??? えーと、少々お待ち下さい……その、つまり貴女はスキルの擬人化、みたいな感じですの?」
「はい! そう思ってくれて構いません!」
「マ、マジですの……」
なんだかすごいものが出てきたぞと、彼女は動揺を隠せずにいた。スキルが人の姿を模り、しかも喋るだなんて聞いたことが無い。
「そんなスキルも存在するんですわねー」
「ふっふっふー! そうそう有るものじゃございませんよ。なにせ私、ユニークスキルですから」
ぺったんこな胸を張って、誇らしげな顔をするナビゲーターに、彼女は思わず疑問を投げ掛ける。
「……あの、そのユニークスキルとやらは一体何なんですの?」
「お、質問ですか? それではお答えしましょう!」
質問されたナビゲーターは、嬉しそうにしながら語り始める。
「ユニークスキルとは、この世にたった一つしか存在しない特別なスキルの事です」
「たった一つ?」
「はい、たった一つです。世界中でただ一人が持つ事を許されており、その人が死ぬまで同一のユニークスキルを別の人が手に入れる事は決してありません!」
「……なるほど」
ナビゲーターからの解説を聞いたローズマリーは、何か納得したのか深々と頷く。
「つまりお嬢様である
「え?」
「え?」
彼女の発言にナビゲーターは、「何言ってんだコイツ」と言わんばかりの目を向ける。それに対してローズマリーも「何言ってんだコイツ」と言わんばかりの目をナビゲーターに向けた。
「……い、いえ、ユニークスキルの取得者がどう選ばれるか私にも分かりませんが、恐らく完全ランダムかと」
「??? そんな事あり得るんですの?」
「お嬢様だからユニークスキルを手に入れたという理由よりかは、可能性があると思います」
「……まっ、解釈は人それぞれですわよね」
「えぇ……」
あくまでお嬢様だから説は否定しないのかと、ナビゲーターは戸惑った。
「ところで貴女は、どんな事が出来るんですの?」
「あ、はい! 私はダンジョンに関係する情報なら、大抵の事が頭にインプットされています! それを駆使してあなたのダンジョン活動をお手伝いする事が、私の役目です!」
「あら、それは頼もしいですわね。えーと……」
「ナビゲーターちゃんです!」
「それって名前なんですの?」
「いえ、特に名前が無いのでそう名乗っているだけです。ご不便だったら、名前を付けて下さっても構いませんよ?」
付けても構わない。とは言っているが、その目は名付けに対する期待でキラキラと輝いていた。
「そうですわねー……セバスチャン、なんてどうです?」
「へ? セ、セバスチャン?」
「ええ、お嬢様である
「え、えっと、出来れば別の名前にしていただけたらなー……なんて」
ナビゲーターは苦笑しながら、セバスチャンという名前をやんわりと断った。
「……じゃあナビ子で」
(す、すごいテキトーになった……!)
以降、ナビゲーターはナビ子と呼ばれるようになった。