ですわ無双 〜超絶破天荒お嬢様(自称)がいずれ世界を轟かせるまで〜 作:ブナハブ
ナビゲーター改めナビ子との対面を終えたローズマリーは、早速ダンジョンに潜り始めた。
「ひとまずの目標はランクDへの昇格、その為にもモンスターを狩ってレベル上げですわ!」
冒険者にはE〜Sまでのランクが付けられており、初めはランクEからスタートする。
ランクが上がるとギルドから様々な恩恵を受けられて、さらに高難度のダンジョンに挑戦することも出来る。
ランクをEからDに昇格する場合、前提としてレベルを10まで上げる必要があった。
「マスターマスター」
「お嬢様とお呼びなさい!」
「あ、はい……えっと、お嬢様?」
「なにかしらナビ子?」
「モンスターと戦う前に、改めてお嬢様のスキルを確認しておきませんか? スキルによって戦い方も大きく変わりますし」
「ああ、確かにそうですわね」
ユニークスキルの衝撃が強すぎたローズマリーは、ナビ子の言う通りその他のスキルにほとんど目を向けていなかった。
「言われてみれば
ーーーーーーー
レベル:1
【ユニークスキル】
ナビゲーターLv--
【スキル】
使役術Lv1、鷹の目Lv1
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「【使役術】と【鷹の目】……うーん、パッと見てもイメージし難いですわ」
「ふっふーん、ここは私に任せてください!」
「あら?」
「こういうスキルに関する情報も、私の頭の中にはパンッパンに詰まっているんです」
「まあすごい」
「えへへー」
褒められて喜んだナビ子は、気を取り直してローズマリーのスキルを確認する。
「ふむふむ、そうですね。まず【鷹の目】は、動体視力を向上させるスキルです」
「動体視力を?」
「はい、今のレベルだと効果は実感し難いですけど、極めれば向かってくる銃弾を見ながら避ける事だって出来ます」
「へー、それはすごいですわね」
「そしてもう一つのスキル【使役術】、これはすごいですよ。なんと屈服させたモンスターを服従して、自身の使い魔として行使できるんです!」
「使い魔?」
あまりピンと来ていないローズマリーに、ナビ子は続けて説明する。
「はい、簡単に言えばモンスターを操る事が出来ます。勿論、自分の代わりに使い魔に戦わせる事だって出来ちゃいます!」
「ななな、なんですって!?」
ローズマリーは今日一番の驚きを見せた。
「モ、モンスターを顎で使えるなんて、そんなお嬢様レベルの高いスキルが存在するんですの……!?」
「お嬢様レベル? ……まあとにかく、このスキルを活用しない手は無いと思いますよ!」
「ええ、ナビ子の言う通りですわ! それでこのスキルはどう使えばよろしいんですの?」
「それは……っと、丁度いいタイミングで出ましたね」
そう言ってナビ子は視線を横に向けた為、ローズマリーもその方角へと目を向けた。
「(プルプル)」
そこに居たのは、小型犬ほどのサイズをしたまんまるボディの粘体……スライムである。
「あら、モンスターですの」
「脅威度Eのスライムですね。今のマス……お嬢様でも問題なく倒せる雑魚モンスターです。折角ですし、このスライムに使役術を」
「
「え?」
スライムを視界に入れた瞬間、ローズマリーは駆け出した。
(【鷹の目】!)
駆け出すと同時にスキル【鷹の目】を発動する。直後、彼女は見るもの全ての動きが少しだけ緩やかになるのを感じた。
(なるほど、これがスキルですのね)
今まで持ち得なかった常人ならざる感覚を体験した彼女は、自分が本当に冒険者になった事をようやく自覚する。
「(プルプルプル!)」
彼女が襲い掛かって来ている事を遅れて察知したスライムは、その身を縮こまらせて、ジェル状の肉体を一際大きく震わせる。
「あら?」
そして次の瞬間、彼女に向かって勢いよく飛び跳ねた。体当たりである。
「あらあらあら」
雑魚モンスターに相応しい火力しかないものの、当たれば打撲は免れない。
そう、当たればだ。
「スッッットロいですわ〜!」
【鷹の目】で動体視力が向上しているローズマリーは、スライムの体当たりを当たる寸前に避ける。加えて横からスライムをぶん殴るというカウンターも決めてみせた。
「(プルプル!?)」
殴られたスライムは大きく吹っ飛び、そのまま壁にぶつかってベシャリと体の破片を周囲に飛び散らせた。
「あら、もうおしまい?」
「スライムですからね。さっきも
「そうなんですのね。……あら、何か落ちていますわ」
ローズマリーは、スライムが四散した場所に独特の輝きを放つ石ころが転がっているのを見つけた。
「それは魔石ですね。ギルドに持っていけば換金できますよ」
「ああ、確か講習でもそんな話をしていましたわね」
話を聞いたローズマリーは、魔石を拾うと持ってきていたポーチに入れた。
「お金になるなら拾わない手はありませんわね」
「はい、積極的に集める事をオススメしますよ! それに実は、換金する以外にも使い道はあるんです」
「へー……あ、さっきの戦いでレベルアップしましたわー!」
「おめでとうございます!」
初めてのレベルアップにローズマリーはニコニコ顔で喜ぶ。それを見たナビ子は、使役術の件はあとにして、ひとまずレベルアップした彼女を素直に賞賛する事にした。
初のレベルアップで喜ぶのも程々に、ナビ子はローズマリーに改めて提案した。
「お嬢様、次にスライムと会ったら使役術を試してみましょう!」
「そうですわね。さきほどは急に接敵したのでつい殴りかかっちゃいましたが、使役術も試してみたいですわね」
「は、はい」(つい殴りかかっちゃったんだ)
血の気が多いなと思いつつ、ナビ子はスライムを見つけるまでの間に使役術の使い方を説明する。
「使い方は簡単です。屈服したモンスターに対して、自分に従えと命じるだけで良いんです」
「屈服したかどうかは、どう判断するんですの?」
「フィーリングですね。モンスターが屈服したら、相手が屈服したという勘が働くので、その勘を信じれば良いです」
「なるほど、では屈服する為には───」
ローズマリーが質問して、それをナビ子が答える。それを数度繰り返した後、彼女達はスライムと再びエンカウントした。
「出ましたわ!」
「はい、やっちゃって下さい!」
ローズマリーは再びスライムへと肉薄する。しかしそれは倒す事が目的ではない。
ガシッ!
「捕まえましたわ!」
「(プルルン!?)」
攻撃してくる前に接近できたローズマリーは、スライムの体を両手でガッシリと鷲掴む。
モンスターを屈服させる方法、それは至極単純で、相手に自分の方が格上だと思わせれば良い。
そして格上と認識させる一番の方法は、捕縛して無力化させる事だ。
「はい、そのまま」(拘束を維持できれば)
……ナビ子の考えでは、このままスライムを逃さず捕まえる事で、根負けしたスライムが屈服するという流れだった。が、
ガンガンガンガン!!
「……」
ガンガンガンガン!!
「……えっと、何してるんですか?」
「うん? スライムを地面に打ち付けていますわ」
ローズマリーは違った。血の気の多いお嬢様は、こう考えたのだ。
(なるほど! つまり動けなくなるまで徹底的に痛め付ければ良いんですのね!)
確かにそういうやり方もあるにはある。あるのだが……お嬢様にしては思考が野蛮である。
「……間違って倒さないようにして下さいね」
「勿論ですわ! ……あ、なんか今屈服した気がしますわ」
ナビ子の言う通り、屈服できた事をなんとなく察せられたローズマリーは、地面に打ち付けていたスライムをそっと置いた。
「さあスライム、
「(ブルブル)」
地面へと叩かれまくったスライムは、震えながら彼女の足元に擦り寄る。
スライムが彼女の足に触れた瞬間、スライムの体が一瞬強い輝きに包まれて、すぐにパッと消失した。
「あ、今ピカッと光りましたわ! これでこのスライムは
「はい、その通りです。なんだか想定と違いましたが、ひとまずおめでとうございます!」
「Fooo! やりぃですわ!」
ローズマリーは、使い魔になったスライムを持ち上げて、その場でブンブンと体を回した。
「(ガクガクブルブル)」
心なしか、スライムの震えが強くなった気がした。