ですわ無双 〜超絶破天荒お嬢様(自称)がいずれ世界を轟かせるまで〜   作:ブナハブ

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使い魔の使い方ですわ!

「使い魔にしたのは良いんですけど」

 

 ローズマリーは、使い魔にしたスライムを見ながら口を開く。

 

「この子、戦えるんですの?」

「(プルプル?)」

「スライムですからね。正直自分で戦った方が効率的だと思います」

「ですわよね、はぁ〜〜〜」クソデカため息

 

 どうしたものかと、ローズマリーはスライムの体をグニャグニャとこねくり回しながら思案する。

 

「ご安心下さい! 例え今は弱くても、今後どうなるかは分かりません」

「あら、と言うと?」

「実は使い魔となったモンスターは、進化する事が出来るんです!」

「進化?」

「お答えしましょう!」

 

 ナビ子はローズマリーの周囲をクルクルと回りながら話を始める。

 

「進化とは、モンスターが姿を変えて、強くなる現象の事です。冒険者のレベルアップと仕組みは似ていますね」

「へー」

「レベルアップと違う点は、戦って経験値を溜めるのではなく魔石を接種する必要がある点と、一回一回進化するのにかなりの労力を要するという点ですね」

「ほー」

「スライムの進化先でメジャーなのは、ブルースライムやレッドスライムなどの色付き……属性を持ったスライムですね。最終的な進化先で多いのは、やはりスライムキングでしょうか」

「スライムキング! おゴージャスですわ〜!」

 

 途中まで淡白な相槌しか打たなかったローズマリーだが、キングというワードを聞いてウッキウキである。

 

「決めましたわ! (わたくし)、この子を立派なスライムキングに進化させます!」

「それは良いですね、一緒に頑張りましょう!」(正直、スライムキングになる頃には他にもっと強いモンスターを使い魔にしてると思いますが……お嬢様がやる気になってくれていますし、今はそっとしておきましょうか)

 

 こうして、スライム育成物語が始まった。

 

 

 

「ところで、スライムの名前はどうしますか?」

「セバスにしますわ!」

(セバスチャンから取ったのかな?)

「(プルプル?)」

 

 

 

 あれから小一時間ほど経過し、ローズマリーの使い魔となったスライムのセバスは、進化を目指してかれこれ数体のスライムと戦い、なんとか勝利を収めた。

 使い魔自身の実戦経験を積む為にも、戦いはセバスに任せてローズマリーは離れて観戦していた。

 

「……ふーむ」

「どうしましたか?」

「なんか違いますわね」

「え?」

 

 しかし道中、彼女は急に不穏な事を言い始めた。

 

(わたくし)気付きましたの。こうして戦いを他人任せにするの、あんまり好きじゃありませんわ」

「え、えっと、つまり?」

(わたくし)も戦いたいですわ! お嬢様になるんですから、自由気ままに暴れてやりたいですわー!」

「えぇ……」

 

 お嬢様とは? そんな素朴な疑問がナビ子の脳裏に浮かんだが、言っても無駄なんだろうと数時間の短い付き合いでもなんとなく察しが付いた。

 

「あー、それじゃあ次からセバスと一緒に戦っていきましょうか? そういう戦闘スタイルも有りだと思います」

「ただ並んで戦うのもなんか違いますわ!」

「はあ」(我儘っぷりだけはお嬢様だなこの人)

 

 謎のこだわりに面倒くさがるナビ子を置いて、ローズマリーはどうしようかとセバスを持ち上げながら考えた。

 

「うーん……」

「───グギギギ」

「はっ! お嬢様危ないです!」

 

 ローズマリーが考えに耽ける中、新たなモンスターがダンジョンの奥から現れた。

 緑色の小鬼、ゴブリン。スライムと同じ雑魚モンスターに分類されるが、武器を持っていたり小細工を弄したりと、多少の知恵を持つため厄介さで言えばスライム以上のモンスターだ。

 

「……あ、そうですわ!」

「グギャー!」

 

 ゴブリンに襲われる直前、何かを閃いたローズマリーは、おもむろにセバスを自身の右拳に嵌めた(・・・)

 

「これですわー!」

「え?」

 

 ドグシャァ!!

 

「グギャアアア!!?」

「(プルプルプル!?)」

 

 セバスの体内に埋まった右拳を使って、ローズマリーはゴブリンの顔面目掛けてパンチを繰り出した。

 

「おほー! 素手とは違う重たい衝撃ですわー!」

「な、なにして……え、いや……え?」

 

 あまりにも衝撃的な光景に、ナビ子は未だにショックから抜け出せなかった。

 

「グギギギ……!」

「あら? ダメージはほどほどみたいですけれど、起き上がれませんのね」

 

 ローズマリーは拳にスライムを纏わせた事で、拳を痛める事なく全力パンチを繰り出せた。加えてスライムの柔らかな体がクッションの役割を果たし、衝撃を体の内部まで伝わらせている。

 結果、顔面を殴られたゴブリンは衝撃が脳まで届き、脳震盪を起こしていた。

 

「ボディがガラ空きですわ〜! オホホホ!」

 

 ドガガガガ!!

 

「グギャー!?」

 

 奇しくもローズマリーのスライムを使った打撃法は、ボクシングのグローブと同じ機能を有していたのだ。

 この瞬間、恐らく世界初となるスライムグローブが開発された。

 

「(プルプルピギャー!?)」

 

……なお、スライム(セバス)の負担は考慮しないものとする。

 

「グ、グベェ……」

「KO勝利! ですわ〜!」

「……なんかもう、お嬢様の行動に一々驚いてたらキリが無い気がしてきました」

 

 ローズマリーと出会って一日と経たない内に、ナビ子はもう既に心労でいっぱいだった。

 

「ふっふっふっ、我ながら妙案を思い付きましたわ」

「はあ」(奇策では?)

「倒したモンスターの魔石はセバスに食べさせて、この調子でどんどん戦いますわよー! ……あ、けどその前に」

 

 ローズマリーは素手の左拳をジッと見つめる。

 

「このままだと片手が寂しいですわね」

「……あ」(察し)

 

 

 

 ガンガンガンガン!!

 

▼▼▼

 

「───き、今日からダンジョン配信を始めました! Dライブ所属、刀剣(とうけん)サクラです!」

 

***:来ちゃ

***:新人さん来ちゃ

***:かわいい

***:うおー!

 

「わわ、すごいコメントの数……! え、えっと、事前に告知した通り、私はダンジョン配信も初めてですし、冒険者登録もさっき済ませたばかりの初心者さんです。不束者ですが、私の成長をこれから見届けて頂けたら幸いです!」

 

***:あら真面目

***:清楚系だうおー!

***:Dライブ所属とは思えない清らかさ

***:変に染まらず健やかに成長してね

***:かわいい

 

「ふふ、皆さんありがとうございます。それじゃあ早速、自己紹介もしつつダンジョン探索をしていきたいと思います。もうご存知の方もいらっしゃると思いますが、私が今居るのは、初心者ダンジョンと呼ばれる場所で」

「───グギャー!?」

「ひゃわ!?」

 

***:うわなに

***:!?

***:なんか後ろでゴブリン吹っ飛んでたな?

***:サクラちゃんの驚いた声かわいい

 

「な、なんですか?」

「───オーッホッホッホ!」

「!?」

 

***:!?

***:!?

***:!?

***:!?

***:かわ……ふぁ!?

 

「随分と派手にぶっ飛びましたわねー」

「グ、ギャァ……!」

「え? え? え?」

 

***:なんかすごいのきた

***:別の配信者の人?

***:金髪縦ロールにですわ口調とかいう典型的なまでのお嬢様キャラ

***:↑けどあの人の周り配信用ドローン飛んで無くね?

***:サクラちゃん「え?」しか言えてなくて草

***:ってかあの人が両手に着けてる装備何?グローブ?

 

「オラオラオラオラですわぁ!!!」

「グべべべべ!?」

 

***:うっはやべぇw

***:すんごい胴の入ったラッシュ

***:世界狙えそう

***:ちょっと待ってヤバい。少し前の映像止めてズームしてみたんだけど、あの人スライムをグローブ代わりにしてる

***:↑お前は何を言ってるんだ?

 

「グギィ……」

「あらもうおしまい? もっと歯応えのある奴を用意するですわー! オーッホッホッホ!」

 

***:あ、どっか行った

***:なんというか……うん、すごかったな

***:これもう放送事故だろw

***:サクラちゃん大丈夫?

***:大丈夫? 配信続けれそう?

 

「……はっ! え、えっと、心配していただきありがとうございます! 少し驚きましたが、これぐらいで驚いていたらダンジョン探索なんて出来ませんよね」

 

***:いやあれは驚くよ

***:驚くべき変人奇人

***:野生のお嬢様なんてそうそう居て堪るかw

***:いいパンチだった。きっと彼女はボクシング界のクイーンになれるぞ

***:↑おい、ダンジョン探索しろよ

 

───その後、このアーカイブはバズり、ネットでは謎のボクサーお嬢様について日夜語られるようになるのだが、当人がそれを知るのは随分先の事である。

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