天城好きの人はごめんなさい。
〜翌日〜
指揮官「あー…。」ポキポキ
ベル「お疲れですね…何処に行かれていたので?」
指揮官「知り合いの所…。」
嘘は言ってない。調べ物をしていたのだ。
指揮官「お陰で徹夜だよ…まあ一徹ぐらい大丈夫でしょ。」
ベル「…なるべくお控え下さい。」
指揮官「分かってるよ。」
鏡を見て身なりを整える。いきなり砲撃とかされないと良いが…。
シリアス「誇らしきご主人様。準備が完了しました。」
指揮官「ん。じゃあ行こう。」
シリアス「はい。」
ベル「悪感情を避けるため、私は執務室にてお待ちしております。…お気をつけて。」
執務室の扉を開けて廊下に出た。
〜重桜寮〜
指揮官「…。」
シリアス「…。」
重桜寮に到着した。重桜寮は橋で繋がった出島にある。
指揮官「…お。桜だ。」
シリアス「綺麗ですね…。」
赤い橋を渡ると満開の桜が出迎えた。池や鳥居も見える。…寮というよりは神社では?
??「ようこそ重桜寮へ。」
うおっ。…青い髪に扇子…軍師っぽいな。
指揮官「…アオイ・ベネットです。」
神通改「川内型二番艦、二水戦旗艦・神通と申します。以後、お見知りおきを。」
水雷戦の華まで出てきちゃったよ…。
指揮官「今回は挨拶と言うことで…。」
神通改「存じております。どうぞこちらへ。」チラッ
値踏みするような視線を無視して進む。巨大な和風建築の建物の中に入り、奥の部屋に通された。
〜重桜寮 客室〜
??「ようこそ。」
指揮官「初めまして、アオイ・ベネットです。」
??「アオイ…?」
指揮官「何か…?」
天城「…失礼しました。航空母艦、天城でございます。以後お見知りおきを…。」
空母天城…雲龍型かな?
天城「ふふ…なるほど、貴方が新しい…綾波が言った通り、お優しそうな御方です。」ニコッ
指揮官「…光栄です。」
…何か企んでるなやっぱり。笑顔が綺麗すぎる。営業スマイルかな?
天城「ふふ…そう緊張なさらず。神通、赤城は…?」
神通改「赤城様でしたらもう少しで…。」
赤城「失礼致します。」ガチャン
ドアが開いて茶髪を降ろした女性が入ってくる。…赤城、一航戦か。
赤城「『それ』が、指揮官ですか。」
天城「こら赤城。失礼しました。こちら、私の妹の赤城です。」
妹。なるほど。つまりこの人は天城型巡洋戦艦を改造したほうだな。
指揮官「アオイ・ベネットです。よろしくお願いします。」ニコッ
赤城「…ふん。栄光なる一航戦、無敵艨艟と讃えられる艦隊の赤城と申します。…これで満足ですか?」
天城「…良いでしょう。下がりなさい。」
赤城「失礼します。」バタン
…渋々、って所か。
指揮官「…やはり、歓迎はされていないようで。」
天城「そうですね…我が重桜には先代、先々代の被害者が多く居ますから。初代様の時は……本当に、幸せでした。」
指揮官「申し訳ない。」
天城「貴方が謝られる事ではありません…謝罪よりも、これからを。」
指揮官「…はい。」
…空気が重い。胃がねじ曲がりそうだ。
天城「…さて、それでは本題に入りましょう。」
指揮官「…本題、と言うと。」
天城「指揮官様。」ギュッ
…天城が手を握ってくる。
天城「…私共重桜は、率直に言いますと…人類を護る事に疲れました。幾ら護っても護っても、感謝される事もなく…そればかりか軍の関係者からは自らの仕事を奪った商売敵と揶揄され、睨みつけられ…そんな存在達を護り続けても私達にも、この星にも未来は無い。本気でそう思っているのです。」
指揮官「…そう、ですか。」
シリアス「…。」
…この流れは。
天城「指揮官様。貴方にお願いする事は一つ…我々、『海洋軍事連邦アズールレーン』の指揮官兼大統領として、一緒に来ていただけませんか?KANSENが人間に取って代わる、その新しい国の指導者になっていただけませんか?」ギュッ
指揮官「…軍事連邦。」
シリアス「それは…!」
神通改「…。」ギロッ
シリアス「っ…。」ビクッ
…天城は俺を象徴として祀り上げる事で正統性を得て、急進派そのものを新たな国家として独立させるつもりだ。…逃げ、きれるか?幾らシリアスが居るとはいえ、相手の戦力の方が上。天城のKANSENとしての実力は未知数だが、此処には二水戦も居る。加えて天城に何かあればさっきの…一航戦の赤城の支援が速攻で飛んでくるだろう。
指揮官「…。」
シリアス「ご主人様!此処は私に構わず…!」
神通改「黙りなさい。これは指揮官と天城様の問題です。」ジャキン
シリアス「っ!?」ピトッ
シリアスの喉元に刀が突きつけられる。…シリアス。
指揮官「……。」
シリアス「っ…。」フルフル
神通改「……。」ギロッ
天城「……。」
シリアスが首を横に振る。絶対に承諾するなってことか。……此処は。
指揮官「…断る。」
天城「…理由をお聞きしても?」
指揮官「シリアスだ。お前ら彼女をどうする?俺が受け入れたとして、彼女をどうする?」
天城「それは…捕虜として…。」
指揮官「嘘だ。アンタらは捕虜は俺だけにしたい筈だ。正確に言えば…『KANSENの捕虜』は取れない筈だ。」
天城「…。」
指揮官「そうだよな?俺は象徴兼、人質だもんな。今のアンタらに足りないのは象徴。長門や三笠のような、それに足る実績や肩書きのある象徴だ。」
あらかじめ調べておいた。穏健派のメンバーについて。長門、三笠、信濃、武蔵…。象徴だと納得させる実績や実力のあるメンバーはあっちに固まっている。天城は実権こそ握っているが、正統性が不足している。このまま独立しても他の陣営のKANSENは付いて来ないだろう。特に…。
指揮官「ユニオンのKANSEN達。アンタらの目的はそれだ。俺と言う象徴を獲得して正統性を確保しつつ、ユニオンのKANSEN達への人質にする。そうだろ。」
天城「それ、は…。」
彼女達もかの大戦での記憶はある筈。その経験を踏まえて繰り返したくないのは…ユニオンとの敵対。結局、数はユニオンが圧倒的だ。特に重桜の全てのKANSENを味方にできていない今、時間稼ぎできるかも怪しい。そしてユニオンは自由と平等の国。倫理と正義を重んじるKANSENが多い。正統性は必要だ。そして。
指揮官「シリアスを人質にすると、ロイヤル経由でユニオンに話が行くリスクがある。相手は同志だと言っているKANSENを盾に交渉する、血も涙もない奴らだ、と。そしたらもうユニオンはアンタらについていかない。今ここでアンタらがしたいことは、事故としてシリアスを始末して俺だけ確保する事。疑われはするが、証拠が無いためにユニオンやロイヤルは文句が言えない。」
天城「…。」
正統性は大事だ。特に外交では。ユニオンやロイヤルとて、証拠も無しに抗議することなどできない。理由が必要なのだ。
神通改「…天城様。これは…。」
シリアス「っ!!」バッ
神通改「…っ。」スッ
シリアスが拘束から逃れる。問題は此処から。
天城「…こうなっては仕方ありません。神通。」
神通改「はっ…。」スッ
神通が刀を改めて構え直す。来る。やる気だ。今ここで。
シリアス「ご主人様。私の後ろに。」ジャキン
指揮官「頼むぞ。」
シリアスが大剣を構え、艦装を展開する。相手は軽巡と空母。此処まで接近して、尚且つ陸上なら逃げる事ぐらいはできる…が、此処は穏便に…。
指揮官「…俺に手を出したら、完全に交渉の道は断たれるぞ?」
天城「…なるほど。そう来ますか。」
指揮官「良いのか?」
天城「しかし、此処で貴方を見逃しても報告されて終わりです。」
指揮官「俺等を無傷で逃がしてくれれば、今回は報告だけにする。」
天城「なるほど…指揮官様の権限ならそれが…。」
取引だ。俺がお願いすればクイーンもエンタープライズも傍観に留めてくれるだろう。
天城「……分かりました。此処は納めます。納める代わりに、一ヶ月間はお互いに不干渉、更にこの事を理由に事を起こさない。」
指揮官「それで良い。」
猶予は一ヶ月か。
天城「…さらに。」
指揮官「さらに?」
天城「一ヶ月後、合同演習を開いてください。貴方の権限で。」
指揮官「…陣営対抗か。」
天城「はい。報酬は…。」
指揮官「俺自身。」
天城「ご存知のようで。」
シリアス「なっ…!?」
…うーん。此処で受け入れないと消されかねない。ここは…。
指揮官「…分かった。」
天城「ふふ…楽しみです。」
シリアス「ご主人…様…。」
しょうがない…か。