〜演習場〜
指揮官『…。』
???????「まあまあ指揮官様、緊張していらっしゃいます?」
指揮官『…いやそれはそうですよ。』
???????「ご安心ください。私、装甲には自信がありますから。」
え〜現在は演習当日。俺は演習場の司令塔の中だ。で、今通信で話している旗艦なのだが…。
イラストリアス「ふふ…それにしても驚きました。まさか陛下から招集がかかるなんて。しかし、選ばれたからにはお務めを果たさせていただきます。装甲空母イラストリアス、存分にお使いくださいね。」
指揮官『というか何で俺まで…別に居なくても良いでしょ…。』
イラストリアス「とんでもない。指揮官様が居ると居ないでは士気に差が出ますよ。」
指揮官『言うほど皆と親しくないし…というか何なら後衛は全員初対面だし…。』
指揮官として恥ずかしい限りだが、未だに面識が無いKANSENが多い。というか俺自身コミュ障なのだ。
イラストリアス「少なくとも私は、指揮官と仲良くしたいです。この母港に笑顔をもたらして下さった方ですから…。」
指揮官『…さいですか。』
慣れねぇ〜…。たぶんこの人ベルと同じタイプだろ。グイグイ来るもん。
イラストリアス「…そろそろですね。」
指揮官『……ええ。』
演習開始のブザーが鳴る。そしてその数分後…。
イラストリアス「来ました!!」
指揮官『っ…!』
警報が鳴り響いた。
〜開始前 演習場 指揮官室〜
指揮官「と、言う事で変更します!」
ベル「………ぇ?」
シリアス「…承知いたしました。」
クイーン「本当にするのね…。」
開始三十分前だがしちゃう。編成の変更。
指揮官「と、言うわけでクイーンと話し合った結果のイカれたメンバーを紹介するぜ!!」
クイーン「殆ど下僕が決めたでしょ。」
ジャベリン改「えぇ…?」
綾波改「指揮官…。」
うっせえ。
指揮官「旗艦…イラストリアス!」
イラストリアス「失礼します。」ガチャ
旗艦はイラストリアス。今回の編成は装甲空母三隻を主力とした機動艦隊だ。
指揮官「左翼インプラカブル!」
インプラカブル「失礼するわ。」
指揮官「右翼インドミタブル!」
インドミダブル「失礼しますわ。」
長門「なるほど…装甲空母三隻。しかし…。」
エンタープライズ「前衛の水雷戦隊はどうする?幾ら重装甲と言えど空母だ。詰められたら…。」
指揮官「それに関してなんだけど。」
そもそも…。
指揮官「水雷戦隊出てこないっぽいなって。」
エンタープライズ「…は?」
三笠「…ん?」
長門「いや、それは楽観視しすぎであろう。あの神通が居るのだ。出てこない筈が…。」
指揮官「そこ。俺達そもそも『神通が居るから』で予想してたけど、急進派には実力派の重巡も居るじゃん?」
三笠「それは…そうだな。愛宕、高雄…摩耶も。」
指揮官「こっちが水雷戦隊が出てくる前提で話を進めさせておいて、敢えての重巡…そういうのもある。」
三笠「うーん…だが、こちらの変更後の編成は相手には伝わってないだろう?なら水雷戦隊が出てくるのでは…?」
指揮官「それに関してなんだけど。」
ベル「…!」ビクッ
思わず低い声が出る。…まだまだだな俺も。
全員「「「「!?!?!?」」」」
前から可能性の一つとしてはあった。天城は軍歴30年以上の大ベテラン。この程度仕掛けてこないとは考えづらい。とは言うものの…。
指揮官「大鳳からのタレコミ…まあスパイが誰かまでは分からなかったけど、その前からあり得そうな奴は前から警戒してたんだ。」
エンタープライズ「だ、誰だ?誰なんだ!」
指揮官「あり得そうな奴としては…初代のケッコン艦、もしくはその人と関係が近しい奴。」
ジャベリン改「へ…?」
綾波改「し、指揮官…?」
ベル「……。」
ジャベリンと綾波を呼んだのはこの為だ。
綾波改「し、指揮官…綾波は…綾波は…!」グスッ
指揮官「あ、綾波は違うよ。一応呼んだだけ。」
綾波改「…へ?」
指揮官「ごめん。綾波は完全に裏取れてるんだ。」
綾波改「…。」ジトッ
ごめんて。
ジャベリン改「え…指揮官、私も…!」
指揮官「ん〜…正直ジャベリンに関しては綾波ほど裏取れてないんだ。でも俺が真に疑ってるのは君じゃない。」
ジャベリン改「ホッ………へ?じゃあ、スパイって…。」
指揮官「で?さっきから…いや、天城達との会談からずっと口数少なくなってるベルファスト。何か言ってくれないと困るんだけど?」
ベルファスト「……!」ビクッ
クイーン「……。」
エンタープライズ「……は?」
三笠「……何?」
皆が三者三様の反応を示す。ま、そりゃそうだ。
エンタープライズ「ちょ、ちょっと待ってくれ指揮官。ベルファストが?確かにベルファストはケッコン艦だが…彼女が?あり得ない!」
指揮官「…そう言っていますがクイーン?」
クイーン「…事実よ。ベルファストは下僕が天城達との会談の前、穏健派との会談の後、そして先日の打ち合わせの後に重桜寮の天城達の部屋に入ったのが確認されているわ。」
エンタープライズ「……ベルファスト!何とか言え!!」
ベルファストが口を開く。
ベルファスト「……私が、スパイです。」
エンタープライズ「な…。」
指揮官「やっぱり。」
ジャベリン改「そんな…。」
綾波改「嘘…。」
…やっぱりか。
ジャベリン改「えっ…え?そんな…だって、ベルファストさんはロイヤルメイドのメイド長ですよ!?そんな人が…?」
クイーン「私も最初は信じられなかったわ。でも…。」
指揮官「ベルファストがやったってなれば全部説明がつくんだよな。会談の話を持ってきたのもベルファストだし、ベルファストなら秘書官の業務で他のKANSENとの会談にも違和感無く同行できるから何もしなくても情報が手に入る。」
ベルファスト「流石ですね…いつから?」
指揮官「いつから?会談の後からだよ。最初っからに決まってんじゃん。」
その時は確信はなかったけど。
ベルファスト「何故…?」
指揮官「ベルファスト、お前天城達との会談の話持ってきた時に言ったよな。『天城様は変わってしまった』と。おかしい話だ。いくらケッコン艦って言う共通点があるとは言え、穏健派の筆頭ですら詳しくは知らなかった天城の人となりの変化を把握してたんだから。」
ベルファスト「っ…。」
信濃さんは言っていた。『天城があそこまで思い詰めているなど知らなかった。』と。そして穏健派の三人も把握できていなかった。交流が無かった…とは考えにくいが、少なくとも穏健派の前ではまだ決行はしない…そんな感じだった筈だ。
指揮官「かつての仲間の前でも平然と猫かぶりできる奴が、部外者…ともすれば敵にすらなる可能性のあるロイヤルのKANSENの前で素を出す訳がない。出すとすれば…それは同じ目的を共有してる奴の前だ。」
天城程のベテランがそこでしくじるなんて考えられない。
指揮官「俺がまず最初に疑ったのはそれ。何でロイヤルであるベルファストが知っているんだ、ってね。」
ベルファスト「…次は?」
指揮官「大鳳からのタレコミ。」
ベルファスト「……。」
指揮官「大鳳から聞いた時点でのあちらが把握している編成が最初に立案した時のメンバーのままだったからだ。」
あの時、まだクイーンとの密談はしていなかったがあらかじめ手紙に本当の編成は書いておいたのだ。密談は元々クイーンの許可と協力を取り付ける為の物だったしな。
指揮官「よってクイーンとその側近…ウォースパイトさん、シリアスは除外。元々ノーマークだったけどな。あと演習メンバーも少なくとも白よりになった。」
ベルファスト「……。」
指揮官「あとはクイーンと話してベルファスト+演習メンバーの動向を追ってもらってたんだ。元々ベルファストはクイーンも可能性としては考えてたみたいだけど…。」
クイーン「…可能性だけよ。信じたくなかったわ。」
指揮官「…俺もだよ。」
信じたくなかったよ。マジで。俺にとっては初めて会ったKANSENだ。
ベルファスト「……ぁ。」ポロポロ
クイーン「…ウォースパイト。」
ウォースパイト「…はい。」
クイーン「連れて行きなさい。」
ウォースパイト「……はい。」
〜演習場 前衛艦隊〜
綾波改「本当に綾波達が行く事になるなんて…。」
ジャベリン改「でも、相手は重巡が来るって思ってる筈だし…。」
ラフィーII「…。」
指揮官『悪いな。編成が伝わってる以上、危険だったからな。』
ラフィーには緊急で来てもらった。だってしょうがないじゃん。
綾波改「…指揮官、大丈夫です?」
指揮官『…何が?』
綾波改「ちょっと元気ないです。」
指揮官『…大丈夫だよ。』
当たり前だろ。少なからずショックはある。
指揮官『…そろそろだ。来るぞ。』
ラフィーII「……来る。」
ラフィーが事前に展開していたウサウサストライカーを戻す。暫くして空襲警報が鳴った。
指揮官『全員回避に集中しろ。対空は最低限。』
全員「「「了解。」」」
紫電改二に護衛された無数の天雷と流星が迫る。…やっぱりか。
ラフィーII「やっぱり、足の遅い重巡を狙う前提の航空機になってる。」
綾波改「雷撃機は汎用魚雷のやつも向こう側にある筈です。」
三笠さんに教えてもらったが、どうも攻撃機の魚雷は敵に向かって集束するように投下する重桜型と、川の字のように投下する汎用型があるらしい。KANSENの艦載機はその機によって決まっているらしく、後から変更はできないそうだ。相手が重桜型を選択したという事は、足の遅い艦を狙う前提で来たという事。
ジャベリン改「あれなら避けれます!」
ラフィーII「うん…がんばる。」
指揮官『頑張ってくれ。大統領なんて嫌だ。』
ラフィーII「指揮官は渡さない…!」
嬉しい事言ってくれるなぁ…。回避行動に入った。
〜後衛艦隊〜
イラストリアス「っく…。」ボロッ
指揮官『被害報告。』
イラストリアス「被害軽微、戦闘に支障なし。」
インプラカブル「同じく。」
インドミダブル「同上ですわ。」
指揮官『よし。流石装甲空母。』
イラストリアス「ありがとうございます。…ですが、迎撃機の方が想定よりも落とされてしまいました。」
指揮官『…やっぱり練度じゃ勝てないか。』
イラストリアス「そのようです…すみません。」
指揮官『いや、耐えてくれれば良い。綾波達を急かす。』
イラストリアス「お願いします。こちらは私が指揮するので、綾波ちゃん達をお願いします。」
指揮官『了解。頼んだ。』
〜前衛艦隊〜
指揮官『戻った。』
綾波改「指揮官、こちらは被害無しです。」
ラフィーII「やっぱり一航戦…強い。ギリギリだった。」
ジャベリン改「敵に回すと恐ろしいですね…。」
そう言って無傷じゃん…ヤバいなこいつら。
綾波改「指揮官、向こうはどうだったです?」
指揮官『被弾したけど戦闘に支障なしだ。流石だった。』
ラフィーII「やっぱり…装甲空母は伊達じゃない…。」
だがそろそろだ。
ラフィーII「接続完了、展開…。」
ウサウサストライカーが再度飛んでいく。あれどうやって動いてるんだ?
ラフィーII「敵を捕捉…重巡2、駆逐1…。」
指揮官『お…重巡か。』
ジャベリン改「凄いですね…指揮官の予想通りです!」
指揮官『誰かは分かる?』
ラフィーII「高雄と愛宕…夕立改…。」
指揮官『…攻撃全振りだな。』
綾波改「たぶんこっちが対空編成で来るのを読んでたです。」
指揮官『こっわ。』
打ち合わせの時の編成で行ってたら負けてたかな?やっぱりヤバいな。
ラフィーII「…ストライカー撃墜された。」
ジャベリン改「どうします指揮官?正直誰を狙っても…。」
指揮官『夕立だろ。放っておいたら魚雷が怖すぎる。魚雷強化するスキル持ってるんだろ?』
綾波改「ですね…夕立ちゃんは怖いです。」
指揮官『次点で高雄。愛宕は…砲撃にだけ気をつけて。』
事前に相手の出てきそうなKANSENのスキルとスペックのリストは三笠さんにもらってる。俺はこれで頭を捻るしかない。
綾波改「あ。居たです。」