青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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依存

 

〜翌朝 自室〜

 

指揮官「んご…っぅ。」

 

……あ〜そうだった。ラフィー部屋に入れたんだったな。

 

指揮官「おーい起きろ〜。」ユサユサ

 

ラフィーII「んぅ…あれ?もう朝…?」

 

指揮官「そうだよ…ほらちゃんと服着ろ。」

 

ラフィーII「……!」バッ

 

ラフィーが顔を真っ赤にしてめくれ上がった服を直す。こういう所は恥ずかしいのか。

 

ラフィーII「……ヘンタイさん。」カオマッカ

 

指揮官「ラフィーが調子に乗って飲みすぎたせいでしょ。何で全部空けちゃうかな…。」

 

ラフィーII「うるさい…。」カオマッカ

 

艦装展開して一升瓶を取り出した時はびっくりした。それに加えてカップ酒四本も空けるのだから当然だ。

 

ラフィーII「……シャワー。」カオマッカ

 

指揮官「どうぞ?」

 

ラフィーII「ん。」スタスタ

 

ラフィーがシャワーを浴びに行く。朝飯は……面倒くさいから菓子パンでいっか。

 

シリアス「ご主人さ…ま!?」

 

あっ。

 

 

〜執務室〜

 

シリアス「誇らしきご主人様。勝利に浮かれる気持ちは分かりますが、羽目を外し過ぎるのもよろしくありません。」

 

指揮官「……いやどちらかといえば羽目を外し過ぎたのはラフィーでは。」

 

エンタープライズ「…流石に14合は飲みすぎだぞ。ラフィー。」

 

ラフィーII「ごめんなさい…。」シュン

 

俺、ジュースしか飲んでないんだけど。とばっちりなんだけど。

 

シリアス「そういう事はこの『シリアスが』喜んでお受けさせていただきますので…。」

 

指揮官「やけに自分の名前だけ強調したな。やけに。」

 

ラフィーII「エロメイド…。」ボソッ

 

この下り2回目なんだが。さてはエロいなオメー。

 

信濃「むぅ…妾も汝の部屋で呑みたかった…。」シュン

 

指揮官「貴女がやると洒落にならないのでやめて!?」

 

武蔵「そもそも貴女あまり酒強くないでしょう。確実に事故が起きるからやめなさい。」

 

スキャンダル待ったなしだ。俺殺されちゃう。

 

武蔵「……さて。今日からなのだけど。」

 

指揮官「…秘書官の話ですね。」

 

あの三人がねぇ…ぶっちゃけ手に余るけど。

 

武蔵「えぇ。今日はとりあえず加賀にするわ。はっきり言ってあの娘は姉二人に従っていただけなのだけど…一応、賛同と協力はしたとの事なの。」

 

指揮官「というか顔知らないんですけど…。」

 

武蔵「そうね…あちらも初対面だと言っていたわ。あの娘は弱肉強食を好む娘よ。上手く飼い慣らしなさい。」

 

指揮官「無茶言わないでくださいよ…一航戦の片割れですよ?」

 

武蔵「大和型二人を飼い慣らしておいて?」

 

指揮官「飼い慣らしたつもりは無いですけどね!」

 

なんて事を言うんだこの人は。絵面がヤバすぎるだろ。

 

シリアス「……誇らしきご主人様。そういうプレイでしたらシリアスを…。」

 

指揮官「なんて事を言うんだこのエロメイド!!」

 

シリアス「お褒めいただき感謝の極みです。」

 

指揮官「褒めてねぇよっ!!」

 

エンタープライズ「ふっ…あははははっ!」

 

ラフィーII「指揮官の漫才は面白い…。」ニコッ

 

好きでやっとる訳じゃないわ。遺憾の意を表する。

 

 

〜数分後〜

 

加賀「失礼する。」ガチャ

 

指揮官「……どうも。」

 

シリアス「今日はよろしくお願いします。」

 

……うーん気まずい。

 

加賀「……早速始める。」

 

指揮官「あ、はい…。」

 

シリアス「…。」

 

大丈夫かな…。

 

〜数時間後〜

 

加賀「……終わりだ。」

 

指揮官「昼前なんだけど…凄いッスね。」

 

加賀「当然だ……さて。」

 

さて?え、まだ何かある感じ?

 

シリアス「…!」

 

加賀「そんなに警戒するな。謝りたいだけだ。」

 

指揮官「……え?」

 

加賀「意外か?だが、謝らせてもらうぞ。……姉達、そして自らの此処までのご無礼、お許し願いたい。誠に申し訳ございませんでした。」スッ

 

指揮官「えっ…あっ、はい…?え…あ、頭を上げて…?」

 

加賀「………。」スッ

 

えぇ…何か、思ってたんと違う…。

 

加賀「…貴方には感謝している。内乱罪など本来は死刑となって同然の罪だ。」

 

指揮官「えーっと…いや、そうじゃなくて…えぇ?弱肉強食は…?」

 

加賀「……あぁ。それは簡単な事だ。貴方は天城様…天城さんを知略で打ち破った。最早認めざるを得まい。お前は強い。少なくとも頭脳ではな。」

 

指揮官「あ…なるほど。」

 

そういえばそうだった。うーんこの。こっちが警戒しすぎてただけじゃん。恥ずかし。

 

指揮官「…いや、あの…こっちも。初代の事色々貶してしまい、申し訳ない…。」

 

加賀「戦で挑発や罵声など付き物だ。気にするな。」

 

うーん…思ったよりも話せる。やっぱりこっちが警戒しすぎてただけだな。

 

指揮官「……えっと、一緒にお昼ご飯でも…?」

 

加賀「お供しよう。」

 

 

〜食堂〜

 

指揮官「……うま。」モグモグ

 

加賀「…ユニオン住みだったと聞いているが、箸の持ち方が綺麗だな。」

 

指揮官「院の頃に練習しました。アッチにも少ないですけど和食を食べられるお店はありますから。」

 

まだセイレーンが現れる前、世界はそれなりに交流があったようだ。常にコンテナ船や客船が海を横断し、人の流れも活発だった。そしてユニオンにも重桜から移住してきた人達が居て、その人達が和食を広めたらしい。その頃の名残でユニオンでも米は少ないが食べられる。

 

加賀「鯖か。」

 

指揮官「加賀さんは…ホッケですか。」

 

加賀「気分だったのでな。お前はどうなのだ?」

 

指揮官「飯に合わせるなら塩鯖が一番だと思ってます。」

 

加賀「結構拘りが強いのだな。」

 

指揮官「よく言われますね。」

 

食は拘りたいタイプなのだ。

 

シリアス「……むぅ。」プクッ

 

指揮官「……鯖いる?」

 

シリアス「要りません。」

 

……可愛いなオイ。嫉妬かな?

 

加賀「…そんなに膨らませなくとも、お前の主人を取るようなマネはせんよ。」

 

シリアス「……分かってます。」プクッ

 

指揮官「分かってないな。絶対分かってないなお前。」

 

シリアス「…。」プクッ

 

最近シリアスもボケを分かってきたっぽいな。…いやこれはただの嫉妬か。メイドと言う立場がそうさせてるだけで、本当はシリアスもこういう事もしたいのかもしれない。

 

指揮官「…はぁ。」モグモグ

 

加賀「…お前も苦労するだろう。KANSENは個性的だからな。」

 

指揮官「昼寝してたら重桜の重鎮にハグされてた時は遂にやらかしたかと思いました。」

 

加賀「信濃様だな。間違いなく信濃様だ。あの人は恐ろしくマイペースだからな。」

 

あの人身内にもそう思われてるのか。

 

指揮官「加賀さんは?何か悩みとか…。」

 

加賀「……姉様だな。」

 

指揮官「……赤城さん?」

 

加賀「あぁ。初代指揮官が戦死してからずっと暗い。指揮官は天城さんに指輪を渡したが…。赤城姉様ともよくやっていた。姉様は妻帯者なのが残念と良く言っていたよ。」

 

あれ。割と初代って女性関係アレだな。ベルに天城に綾波…そして人間の奥さんまで居る。一夫多妻制か…。

 

加賀「今回の演習も…もちろん天城さんの夢に賛同したのもあるが、負けていっその事楽になりたかったと言うのもあるのだろう。」

 

指揮官「……気持ちは分かりますよ。」

 

加賀「…。」

 

遺された方がツラい物だ。長く引き摺る事になるからな。そしてKANSENは老化が存在しない。つまり…いや、これ以上は無粋だ。

 

加賀「…立ち直ってもらおうと色々したが…やはりダメだった。休みの日は部屋に引きこもり、写真を見て涙を流す日々だ。」

 

指揮官「…解決はできないでしょうね。」

 

加賀「…やはりか?」

 

指揮官「先延ばしにする事はできます。けど根本的な解決にはなりません。」

 

加賀「…その、方法とは。」

 

指揮官「新しい依存先を用意する。」

 

加賀「それは…!」

 

指揮官「人は信じる物がないと腐るだけです。信じて、裏切られて、また信じて…それを繰り返します。自らの終わりが来るまで。」

 

加賀「……。」

 

それしかない。人は信じる物がないと朽ちていくだけだ。

 

指揮官「そして自らの終わりが来た時に振り返って、ああ良い人生だったと思えるかどうか。それが全てです。」

 

加賀「……分かった。」

 

…この人もそうだろうな。姉を信じている。だが、その姉が不安定だからこの人までもが不安定になっているのだ。

 

 

 

〜ロイヤル寮〜

 

シリアス「……。」

 

ベル「…シリアス?」

 

私はあれから二人と別れ、メイド長に食事を届けに来た。現在メイド長は自室で謹慎中だ。しかし…。

 

シリアス「……。」

 

ベル「…シリアス?シリアス!」

 

シリアス「あ…、すみません。」

 

ベル「どうかしたのですか?」

 

シリアス「いえ…ご主人様の事で少し。」

 

ベル「ご主人様が…?何かあったのですか…?」

 

メイド長が不安そうな顔でこちらを覗く。

 

シリアス「はい…実は昼食の時、こんな事を言っていて…。」

 

〜説明中〜

 

ベル「そんな…。それは、あまりにも…。」

 

シリアス「はい…あまりにも…。」

 

あまりにも…達観しすぎている。元より違和感は感じていたのだ。ご主人様は…言葉の節々に重みを感じさせ、執務中は何処か遠い所を見ている。まるで良い過去を…過ぎ去ってしまった幸福を懐かしむような。

 

シリアス「怖くなってしまって…あの人をようやく理解できたと思ったのに、また離れてしまったようで…。」

 

ベル「…ご主人様の過去は、私達が思っているよりも深刻なのかもしれません。ですが…いえ、だからこそ、私達メイドがお支えしなければなりません。……自ら離れた私が言えたことではありませんが。」

 

シリアス「いえ…ご主人様も、何処か寂しそうです。謹慎が終わったら…執務室にお願いします。」

 

ベル「はい…そして、叶うのならばもう一度…。」

 

…私達にできる事は。

 

 

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