〜執務室〜
赤城「……。」カキカキ
指揮官「………。」カキカキ
赤城「……。」ジッ
シリアス「……!」ジッ!
ゔっ!!気まずいっ!!!何だこの人!!
指揮官「……。」
赤城「…終わりました。」
指揮官「あっどうも…。」
赤城「……何故敬語なのです?私達に勝ったのだからもっと堂々として良いと思いますが。」
指揮官「……ノリ?」
赤城「……はぁ。」
ため息つくなよ!ため息つかれた側の気持ち考えた事あんのか!?
赤城「…失礼します。」スッ
指揮官「……あっはい。」
執務室のドアが閉じる。
シリアス「……お、お昼ご飯でも。」
指揮官「そうだな…。」
食堂には行きたくない。赤城さんと鉢合わせたら気まずいし。
シリアス「何かお作りしますね…。」
指揮官「うん…。」
〜数分後〜
シリアス「……申し訳ございません。」
指揮官「大丈夫だよ。」パクッ
シリアスが作った黒いホットサンドを齧る。……苦い。
指揮官「……。」パクパク
シリアス「……。」シュン
極端に甘い紅茶で中和すれば喰える。口の中がカオスだが。その時、執務室の扉が開いた。
指揮官「んぐ…っ。何か用スか?武蔵さん。」
武蔵「…汝、そのサンドイッチらしき物は…いや、最早何も言わないわ。赤城とはどう?」
指揮官「……話題が無さすぎて黙るしかないッスね。」
武蔵「やはり…。」
指揮官「数日前までバチバチにやり合ってたんで気まずいです。」
武蔵「ふむ…汝なら彼女の悲しみ、晴らしてくれると思ったのだが…。」
指揮官「買い被りすぎですよ。会話もできないんじゃ流石に…。」
限界はある。俺だって人間だもの。
武蔵「…きっかけがあれば良いか?」
指揮官「あっても彼女の性格的に踏み込ませてもらえないでしょ。一応最終手段はありますけど…ぶっちゃけ墓まで持っていった方が良い情報なんで。」
武蔵「その情報とは…?」
指揮官「バレたら母港全体が混乱しますね。」
武蔵「…流石にマズいわね。分かった。こちらも努力してみるわ。」
武蔵さんが退出する。……うーん。
シリアス「…どうにか、できないのでしょうか。」
指揮官「会話しなきゃな。そもそも初代の事、今どう思ってるのか。それがわからない。」
本当に分からない。いや、大切に思ってる事は加賀さんの話から分かる。だが俺が欲しいのはその先だ。
〜翌日 懇談室〜
赤城「……それで、何か用ですか。」
指揮官「…聞かないでも分かるでしょう。初代の事。」
赤城「……。」
武蔵さんめ…まさか対面とは…。現在、赤城さんと二人きりで部屋に居る。シリアスは居ない。
赤城「…貴方に話すことはありません。」
指揮官「…知りたいんです。」
赤城「…貴方が知ってどうするのです。」
指揮官「……意味は、ないです。でも…貴女はKANSENだ。そんな貴女が悩んでいるのなら、それを解決したい。それが指揮官の仕事だと思っています。」
赤城「っ!お前が…お前がソレを言うなっ!!」
指揮官「初代の事、悪く言ったのはごめんなさい。本当は思ってません。」
赤城「違う……違うんです…。」ポロ
赤城さんが涙を溢す。違う…?違うのか?怒ってるんじゃない…?
赤城「っ…貴方を、貴方を見るとどうにも初代の影がチラつくんです…。もう居ないのに…私達が守れなかったのに…!」ポロポロ
指揮官「……。」
さっきから必死に距離を取ろうとしていたのはそういう事か。俺が…そうか、まあ当然だ。だって初代は…。
指揮官「……すいません。」
赤城「謝らないで下さい…貴方の事は、もう実力は認めています。ですが…私は初代を忘れられない。姉様もそうです。初代は…私達にとってかけがえの無い人だった…。」ポロポロ
赤城さんの涙が止まらない。……言うべきか?いや、ダメだ。赤城さんが黙ってくれている保証が無い。今の精神状態で追い討ちをかけたら何かの拍子に漏れかねない。
指揮官「…赤城さん。俺は…ごめんなさい。正直貴女を救えない。たぶん、貴女を救えるのは初代だけだ。」
赤城「……はい。私の主は、指揮官は初代指揮官…望海様だけです。」
指揮官「だから。」
赤城「…だから?」
指揮官「俺は貴女を救えない。だから、貴女の未来をサポートしたい。過去を引きずったままでも良いです。それでも、私は貴女に進んでほしい。」
赤城「…できるわけがないでしょう。私はもう…歩けない。引いてくれる人ももう居ない。」
指揮官「俺がなります。」
赤城「っ!!お前にあの人の代わりが務まるわけが…!」
指揮官「代わりじゃない。俺は初代の代わりじゃない。新しい先導役です。初代とは全くの別だ。役割が一緒なだけ。」
赤城「同じだ!!」
指揮官「いいえ。指揮官という単語は初代の為だけにある訳ではないでしょう?それと同じです。貴女の手を引く先導役も…杖も、世代交代が必ずある。」
赤城「……。」
代わりじゃなく、全く新しい物を。新しい依存先を。俺にできるのはそれだけ。
指揮官「それに貴女が前に進まなければ初代の遺した物も風化するだけですよ。いつか忘れ去られる。記録の中だけのデータと化す。それだけは貴女も許せないはずだ。彼の遺したものが、ただの数字と単語の羅列になるのが。」
赤城「…はい。」
指揮官「なら、風化させない為に…忘れずに、引きずりながら。それでも前に進んでください。貴女が運ぶんです。未来に行けなかった初代の分まで、歩くんです。杖を使って。」
赤城「……分かりました。」
……納得はしてない。だが、歩かざるを得ない筈だ。彼女はそういう人だ。たぶん。
赤城「……今までのご無礼、失礼しました。これから…加賀共々、一航戦の力、存分にお使いください。」スッ
指揮官「……はい。よろしく、お願いします。」
…現時点ではこれが限界だ。
〜中庭〜
指揮官「……。」
武蔵「どうだった?」
指揮官「何とか着地はしましたよ。」
武蔵「完全ではないと。」
指揮官「初代が忘れられないみたいです。」
武蔵「…無理はないわ。」
初代のやった事がデカすぎるのだ。各陣営でバラバラになっていたKANSEN達を纏め上げ、アズールレーンを設立。太平洋の孤島に母港を作り、そこを拠点に世界中の海を奪還した。太平洋はもちろん、インド洋、大西洋…地中海や北極、南極圏までもが彼の手腕で奪還された。その連戦連勝による油断が祟ってあの悲劇が起こったらしいが。
武蔵「…本当に、彼は素敵な殿方だったわ。」
指揮官「貴女にそこまで言わせるんですもんね。」
武蔵「ふふ…汝はどちらかと言えば可愛らしい印象ね。」
指揮官「俺ペット扱い…?」
武蔵「まさか。自らに子どもが居たらこんな子が良いと言うだけよ。」
指揮官「うーん…。」
マシにはなったけど、結局可愛らしい印象なのは変わんないな。
武蔵「…でも。」
指揮官「…?」
武蔵さんがこちらを覗く。何だ…?
武蔵「私は…可愛らしい方が好みよ?」フフッ
指揮官「……からかうのはやめてくださいよ。」
武蔵「汝の努力次第…とでも言っておくわ。」
指揮官「…頑張ります。」
一生勝てない気がするのですがそれは。
〜自室〜
指揮官「……はぁ。」
自室に戻り、ソファーに座る。何か疲れたな。精神的に。今までの疲労が一気に襲ってきた。
ラフィーII「…お疲れ?」
指揮官「…ラフィーは何で当たり前のように居るんだ。」
ラフィーII「鍵かけない指揮官が悪い…。」ポスッ
だからと言って入るもんじゃないだろ。男の部屋だぞ?
ラフィーII「ん〜…。」グリグリ
指揮官「出撃だったっけ?」
ラフィーII「うん…近海警備…。」
ラフィーもお疲れらしい。
大鳳「指揮官様ぁ〜♡ってあら?指揮官様…私の居ない間に早くも女を…!」
指揮官「連れ込んだと言うか勝手に入ってきたと言うか…と言うか大鳳も人の事言えないだろ。」
ラフィーII「あ、不法侵入。」
指揮官「おいお前が言うな。」
お前もたった今しただろうが。まあ許すけどさ。
大鳳「流石指揮官様♡寛容ですわ…器の大きさが違います♡」
指揮官「それほどでもある。」
ラフィーII「指揮官の場合何も考えてないだけ…。」
指揮官「うっせぇ。」
大鳳は何度も侵入されてるから慣れた。合鍵持ってるなら締め出しても無駄だし。
大鳳「全く…指揮官様、相手は駆逐艦です。そういう事でしたらこの大鳳が致しますわ♡」
指揮官「しないよ流石に。ラフィーだからね。」
ラフィーII「…指揮官、言って良い事と悪い事がある…!」メラメラ
大鳳「嫉妬は見苦しいですわよ?」フフッ
ラフィーII「……ラフィーと同衾したくせに。」
大鳳「は?指揮官様?」
指揮官「いやコイツが酒14合も開けて泥酔状態でベッドに押し倒されただけだよ。俺悪く無い。」
大鳳「……14合。」
大鳳の顔が引きつる。やっぱりKANSEN基準でも飲みすぎらしい。
ラフィーII「ラフィーは酒カスじゃない…指揮官と一緒だと楽しいのが悪い…。」ギュッ
指揮官「嬉しいけど14合はやめてくれよ?」
ラフィーII「うん…。」
やっぱりお酒って美味しいのかしら。でも俺子供舌だからな…。
ラフィーII「指揮官…お腹すいた…。」グーッ
指揮官「レーションしかないよ。」
大鳳「また3食レーションですか?」
指揮官「昼はサンドイッチだったから違う。」
大鳳「朝は?」
指揮官「エナドリとレーション。」
大鳳「はぁ…。」
ため息つくのやめろよ(以下略)
ラフィーII「指揮官…そんな食事続けてると身体壊す…。ヴェスタルがカンカンになる…。」
指揮官「誰…?」
大鳳「この母港のナースですわ。できる事が多すぎてほぼ医者扱いですけど。」
そんなKANSENも居るのか。艦種も分からんけど、怒られるのは嫌だな。
大鳳「私が作りますわ♡大鳳の愛情たっぷりの献立、召し上がってください♡」
指揮官「やったぜ。」
ラフィーII「ラフィーのも…。」
大鳳「分かっていますわ。2人分も3人分も同じです。少々お時間いただきますね。」
大鳳が袋からエプロンを取り出してキッチンに立つ。意外と面倒見が良いんだよな。