青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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意識

 

〜執務室〜

 

指揮官「…あ、そろそろか。」

 

シリアス「はい。天城様が来ます。」

 

指揮官「やだなぁ〜。気まず。」

 

シリアス「気持ちは分かりますが…避けては通れない道です。」

 

指揮官「分かってるよ…。」

 

だって…うーん…。どうしよ。どうしたら良いんだ…。

 

天城「失礼します。」

 

指揮官「あ。よろしくお願いします。」

 

天城「こちらこそ、よろしくお願いします。指揮官。」ペコッ

 

天城さんが入ってくる。…うっわ顔良すぎ…っといかんいかん。

 

天城「この間は本当に申し訳ございませんでした。この艦隊を統べる御方に刃を向けた事、そして指揮官の同意も無しに強引に迫った事…改めてお詫び申し上げます。」スッ

 

指揮官「こちらこそ、初代の事を悪く言って申し訳ない。これから、貴女とも仲良くしたいと思っています。」

 

天城「…!は、はい…お願いします。」

 

天城さんが一瞬驚いたような顔をするが、直ぐに戻る。やっぱり謝るのは珍しいのだろうか。

 

指揮官「えーっと…じゃあそこの書類…。」

 

天城「分かりました。この天城、存分にお使いください。指揮官。」

 

……思ってたんと違うな。

 

 

〜昼前 執務室〜

 

天城「終わりですね…。今日は終わりですか?指揮官。」

 

指揮官「早っ。」

 

早っ…今日結構多かったんだぞ?流石というか何というか…。

 

指揮官「…え、今日はこれで終わりッス。」

 

天城「承知致しました。それでは…。」ガチャン

 

天城さんが出て行く。……なーんかアレだな。

 

指揮官「…距離を感じるなぁ。」

 

シリアス「赤城様のように冷淡なコミュニケーションでも無いのですが…何故か…。」

 

まあ、暫くは様子見だよなぁ…。

 

 

〜中庭〜

 

指揮官「……。」

 

青空を眺める。ちょっと暑くなってきたな。夏かな…。

 

ポートランド「しーきかん。」

 

指揮官「うわっ。」

 

ポートランド「うわって何ですかうわって…。」

 

出たなシスコン。こちらポートランド級の一番艦、ポートランド。通称ポネキだ。

 

指揮官「ポネキ…また薄い本?」

 

ポネキ「今日は違いますよ…インディちゃんが出撃で暇なんです。構ってください!」

 

初対面で妹の薄い本を渡してくるのコイツぐらいだろうな。一周回って尊敬するわ。

 

指揮官「ポネキぃ…俺だって暇じゃないんだよ。勘弁してくれ。」

 

ポネキ「昼寝してるのに?」

 

指揮官「なーに言ってるんだ。昼寝だって立派な仕事だ。ラフィーも言ってたぞ。」

 

ポネキ「ラフィーちゃんならそう言うでしょ。」

 

指揮官「それはそう。」

 

だってラフィーだし。お昼寝大好きラフィーさんですし。

 

ポネキ「もう…そんなに私と寝たくないんですか?指揮官?」

 

指揮官「ストッパーが居ないポネキは危険だから。」

 

ポネキ「私危険物扱い…?」

 

指揮官「インディちゃんで中和しないと扱えないな。」

 

ポネキ「インディちゃんならいっか♡」

 

たぶん第2類か第3類。何もない所でも突然妹愛に火がつくからな。インディちゃんで中和…あれ、でもインディちゃんは火に油を注ぐだけか。もう禁止したほうがいいな。

 

ポネキ「う〜…どうしてもダメですか?」ウルウル

 

指揮官「あざと…もう良いよ。突然布教はやめてほしいけど。」

 

ポネキ「努力しまーす♡」ゴロン

 

ポネキが隣に寝転ぶ。でっか。シスコンじゃなければいい女なんだけどなぁ…。

 

ポネキ「…あ〜♡指揮官、軽率に女の子のお胸見ちゃダメですよ?嫌われちゃいますよ♡」

 

指揮官「…ポネキならいっか。」

 

ポネキ「ひどーい!」

 

だってポネキですし。性格も頭脳も戦力的にも良いのに、ソレを全部シスコンでぶっ壊す女ですし。

 

ポネキ「私は指揮官も好きですよ!インディちゃんの次くらいに。」

 

指揮官「やっぱり2番目なのね。」

 

ポネキ「此処は譲れませんよ!」

 

シスコンめ…。

 

ポネキ「…指揮官、最近お疲れですね。」

 

指揮官「あ?……まあ、うん。そうだな。」

 

否定はしない。立て続けに事が起こりすぎた。特にあの3人…何とかしないとなんだが。

 

指揮官「…。」

 

ポネキ「ほらまた。そんな顔、指揮官がしちゃダメですよ!」

 

指揮官「え?」

 

顔に出てたか。

 

ポネキ「もう…インディちゃんが見たら悲しみますよ!そしてその顔を見て私も…。」

 

指揮官「ごめんごめん。無意識だからさ。」

 

ポネキ「ちゃんと相談してください。私でも良いんです。」ズイッ

 

んな事言われても。

 

ポネキ「……。」ジーッ

 

指揮官「……近いッスポネキ。」

 

ポネキ「指揮官が話してくれるまでこのままです!」ジーッ

 

指揮官「えーっ…。」

 

ポネキぃ…。近いッスよマジで…。無駄に顔良いんだからやめて…。

 

ポネキ「……。」ジーッ

 

指揮官「…話しますよ。」

 

ポネキ「よろしいっ。」

 

ポネキはすげぇなぁ…。

 

指揮官「いやね?そんな大した話じゃないんですよ。今回の騒ぎ起こした3人、秘書官にしたんですけどね?」

 

ポネキ「ふむふむ。」

 

指揮官「その3人…いや2人?初代の事忘れられないみたいで。」

 

ポネキ「あ〜…。」

 

指揮官「とりあえずね、何とか前に進んでもらう事にしてもらったんですけども。」

 

ポネキ「うーん…。」

 

指揮官「何かこう…もっと良いやり方無かったもんかなぁって。」

 

ポネキ「……。」

 

ほーんと…もっと良いやり方無かったのかなぁ。初代だったらどうしたんだろうか。なんせ、初代と違って俺は18年しか生きてないガキだ。経験はどうしても劣る。

 

ポネキ「…でも、前に進んでもらう事にはしたんですよね?」

 

指揮官「まあ…はい。」

 

ポネキ「それだけでも大きな進歩だと思います。ユニオンにも未だにそういう娘、かなり居ますし…。」

 

指揮官「そんなもんなのかなぁ…。」

 

ポネキ「はい。指揮官。」ズイッ

 

指揮官「…なんすか?」

 

再び顔が近づく。

 

ポネキ「指揮官は、指揮官のだけの道を歩いてください。初代を意識しすぎないで。絶対に。」

 

指揮官「……はぁ。」

 

ポネキ「どう言い訳しようが、初代は負けました。戦死しました。私達のせいで。その失敗を私達は繰り返したくありません。だから…納得できないからって、初代の道をなぞって、なぞり過ぎて同じ末路になる事だけはやめてください。」

 

指揮官「…。」

 

……ちょっと意識しすぎてたかもしれない。

 

指揮官「……はい。」

 

ポネキ「…よろしいっ!よーやく良い顔になりましたね指揮官!イケメンです!」

 

指揮官「顔に出やすい所も直さないとなぁ…。」

 

ポネキ「ダメですよ。そこが指揮官の良い所なんですから。指揮官は、ずっと良い子でいてくださいね!」

 

やっぱりガキ扱いだ。しょうがないけど。

 

 

〜自室〜

 

指揮官「……。」

 

明日から頑張ろ。一先ず一度天城さんと、ちゃんと話そう。そしてそれから…。

 

指揮官「ふぁ…。」

 

大きな欠伸が出た。考え事をしながらベットに入ると直ぐ眠くなる。今日は大鳳もラフィーも居ない。普段より大きくなったようなベットで、眠りについた。

 

 

 

〜深夜〜

 

指揮官「……。」パチッ

 

…来る。誰か来るな。嫌な予感がする。反吐が出るような、ねっとりとした部屋の空気。思わず目が覚めてしまった。

 

指揮官「誰だ…?」

 

鍵は閉めた。ガラスは防弾と耐衝撃に優れた特殊ガラスだし、抜かりは無い…筈だ。

 

指揮官「……。」

 

寝たふり…するか。

 

指揮官「……。」

 

目をつぶって待つ。杞憂だと良いんだが…。

 

 

トッ…。

 

 

あ。玄関の方からだ。入ってきた。靴を脱いだのか?

 

指揮官「……!」

 

 

カラッ…。

 

 

リビングと玄関を繋ぐ引き戸が開けられる。誰か来た。確実に来た。

 

 

ヒタ…ヒタ…。

 

 

指揮官「…。」

 

近づいてくる。ベッドがある部屋とリビングは、引き戸で仕切られているものの俺は常に開けている。閉めときゃ良かった。

 

指揮官「…。」

 

いや、そもそもどうやって入ってきた?鍵閉めたぞ俺。開ける音は聞こえなかった。

 

 

ファサッ…。

 

 

指揮官「!?」

 

の、乗ってきた!?ベッドの、俺の上に!?誰だコイツ。刺すつもりか…?

 

指揮官「……。」

 

いや、違う。動いてない!むしろ密着して…。柔らかいのが全身に当たってる。KANSENだ。たぶん大型艦。

 

 

??「指揮官様…。」

 

 

…これバレてるな。

 

指揮官「……何ですかね。天城さん。」

 

天城「ふふ…やはり起きておられたのですね…。」スリスリ

 

指揮官「……とりあえず離れてもらえません?」

 

天城「嫌です…。」スリスリ

 

……何で此処に来た。全く読めない。何故…。

 

天城「指揮官様…今夜だけ、私と寝てくださいませんか?」

 

指揮官「……は?」

 

…なんて言った。え?まさか…?

 

天城「貴方を見ていると…どうしても本能がざわめくのです。貴方が欲しい…欲しいと。ですから…。」ファサ

 

指揮官「……。」

 

天城さんが浴衣を着崩す。…マジか。でも…まあ、本人が言う…な…ら…?

 

天城「指揮官様…!」ギュッ

 

指揮官「……天城さん。」

 

天城「指揮官様ぁ…!」グスッ

 

指揮官「…天城っ!!」

 

天城「っ!!」ビクッ

 

……この人。

 

指揮官「俺は…俺は、望海さんでは無いです。」

 

天城「……は、はい。それは分かって…。」

 

指揮官「なら何で…急に『様』を付けだしたんですか。」

 

天城「……っ。」

 

今日は『指揮官』呼びだった。始めて顔を合わせた時は指揮官様だったが…その時と今日では状況が違う。一度バチバチに喧嘩した後なのだ。幾ら自らを負かした相手だとはいえ、プライドが無い筈がない。そんな相手を様を付けて呼ぶ…おかしい。

 

指揮官「…あなた、代わりが欲しくなっただけでしょ。初代の代わりが。」

 

天城「……。」

 

図星だな。大方、赤城さんと似たような物だろう。俺に初代の面影を見た。見てしまった。違う所は、赤城さんは拒絶する方向に走ったが、天城さんは求める方向に走っただけ。

 

天城「…何、が…。」

 

指揮官「…?」

 

 

天城「何が…何が悪いんですか…!

 

 

……。

 

天城「貴方を見ると…どうしてもあの人の顔が脳裏を掠めるんです…!貴方に近づくと…あの人の隣に居るような気持ちになれるんです…!私は…私は!」

 

指揮官「…俺は。」

 

天城「…?」

 

指揮官「俺は…前に進むお手伝いはできます。過去を忘れず、引きずって、それでも前に進む人のお手伝いはできるんです。でも…。」

 

天城「でも…?」

 

指揮官「過去に戻ろうとする人達の手伝いはできません。」

 

天城「っ…!」グスッ

 

天城さんの端整な顔が歪む。涙が溢れてくる。

 

指揮官「少し、お茶でもどうです?」

 

天城「……はい。」ファサッ

 

天城さんが崩れた浴衣を直してベッドから降りる。リビングに向かった。

 

 

〜リビング〜

 

指揮官「どうぞ。」コトッ

 

天城「ありがとう御座います…。」

 

マグカップに淹れたココアを差し出す。

 

指揮官「…貴女の理想。」

 

天城「…はい。」

 

指揮官「貴女の理想である、KANSENが統べる世界。その夢を聞いて、そしてその手段として国を作る…それを聞いた時、一つだけ違和感がありました。」

 

天城「…。」

 

違和感。そう。それは…。

 

指揮官「人間である俺を飾りとはいえ、トップに据えようとした。」

 

天城「……はい。」

 

象徴とは言えどトップはトップ。人間に不信感を抱くKANSENが多い急進派の長が、普通人間をトップに置くのか。それが違和感の正体。

 

天城「…しかし、貴方の仰る通り、飾り…実権は無いですよ?」

 

指揮官「問題は権力じゃない、支持です。」

 

天城「…。」

 

先述したとおり、急進派には人間に不信感を抱くKANSENが多い。そんなKANSEN達の前で、人間をトップにしたらどうなるか。不満が溜まる。

 

天城「それは、皆を説得して…。」

 

指揮官「ま、貴方の口から言えば一時は言う事聞くでしょうね。でも、ユニオンやロイヤル、これから仲間にしなくちゃいけない元レッドアクシズ勢にもそういうKANSEN達は居る。そんなKANSEN達が人間が象徴の国を信用しますかね?仮に信用して入ってもらったとしても、やって行けますかね?」

 

天城「それ、は…。」

 

天城さん程のベテランがそんな事想定できてない筈がない。そんな事も想定できていないなら此処まで来れて居ないだろう。

 

天城「……。」

 

指揮官「…天城さん。一つだけ答えが分からない物があるんですけど。」

 

天城「何でしょう…。」

 

指揮官「この計画…いつ立案しました?」

 

天城「……そこ、まで…。」

 

たぶんこの計画は…。

 

天城「……お察しの通りです。お察しの通り…これは、初代様の頃に立案した物です。」

 

指揮官「…やっぱり。」

 

元々初代の頃からそう言った人類に対しての不満はあったのだろう。海域を取り戻しても取り戻しても、軍の関係者からは睨まれるだけ。一度壊滅しているとは言え、母港には購買所の一つも無かった。初代がそこら辺を考えて居なかった筈は無いし、一度出来てしまえば上層部も承認せざるを得ない筈だ。にも関わらず、無かった。

 

指揮官「たぶん…本来象徴の席に座るのは、初代だった。」

 

天城「はい…初代様は、私達急進派だけでなく母港のKANSEN達全員に好かれていました。彼をトップに据えれば、KANSEN達は間違いなく付いてくる。」

 

だろうな。

 

指揮官「そして独立を宣言。あとは海域の守護を条件に各国に承認させる。」

 

天城「はい…しかし、初代様はそれを良しとしませんでした。」

 

指揮官「……ま、優しい…聖人の類ですもんね。」

 

天城「はい…。」

 

指揮官「そしてそのまま…。」

 

天城「っ…はいっ…。」グスッ

 

結局初代の同意を得られることの無いまま母港に襲撃を受け、初代は戦死。肝心の後任2人はそもそもKANSEN達を私欲のままに扱った。そんな指揮官はトップに据えられるものではなく、論外。で、俺が来た。

 

指揮官「…や〜。改めて客観的に見ると…都合の良い男だなぁ…。」

 

天城「っ…そ、そんな事は…。ごめんなさい…!」グスッ

 

指揮官「いや、これ自体は事故ですから…。」

 

先代と先々代のせいでKANSEN達の不満が溜まりに溜まった所に、ぽっと出たKANSENに優しい、軍歴数ヶ月のド素人。利用するのにこれほど都合の良い男はいないだろう。

 

天城「…貴方をトップにして、国を造れば…邪魔を取り除けば、全て取り戻せると思いました。私達が喪った時間も、笑顔も、全部。」

 

指揮官「想定外は…演習で負けてしまった事。たぶん演習自体は元からあの場面で俺がシリアスを見棄てられないと分かっての提案でしょ。」

 

天城「はい…。」

 

おっかねぇ。結構綱渡りだったんだな俺…。

 

天城「……指揮官、私は…。」

 

指揮官「分かってますよ。初代の事が忘れられないでしょ。」

 

天城「……はい。」

 

罪な男だな初代も。

 

指揮官「天城さん。今すぐじゃなくて良いんです。貴女が少し深呼吸をして、落ち着いて…何とか前に進む覚悟ができたら、またお話しましょう。約束です。」

 

天城「……はい。必ず。」

 

……とりあえず、これで着地だ。あとは…時間が必要だな。

 

 

〜??〜

 

??????「で?新任の『アレ』はどうなの?」

 

????「はっ。今の所はKANSEN達に馴染んでいるようです。」

 

??????「ふーん…。ま、そうでないと困るわ。15年も前から仕込んで来たんだもの。」

 

????「えぇ…流石に苦労しました。」

 

??????「初代は良い所まで行ったんだけどね…ちょっとやり過ぎちゃったから。」

 

????「これも人類の為です。」

 

??????「ええ。この『枝』は果たして超えられるのかしらね。『エックス』を。」

 

 

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