青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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一難去ってまた一難

 

〜執務室〜

 

ベル「誠に!申し訳ございませんでした!!」ドゲザ

 

指揮官「…ん。謝罪は確かに受け取りましたよっと。これ以上はナシで。」

 

ベル「………へ?」ポカン

 

ベルが顔を上げてポカンとする。ま〜うん。気持ちは分かるが…。

 

指揮官「いや、これ以上求めるならとっくにクイーン経由でやってるからね。」

 

ベル「……あ。」

 

数日前に言ったがベルはロイヤルメイドのメイド長。そう簡単に代わりの人員を用意できるような人材ではない。今回数日間の自室謹慎で終わらせたのも、これまでの働きを評価した結果の恩赦…というかなり無理のある言い訳をしたのである。

 

ベル「……いえしかし、私は自分を許せません。ご主人さ…指揮官様、私に、このベルファストに…罰を…ご慈悲を…!この愚蒙なベルファストに、何卒…!」グスッ

 

指揮官「…。」

 

…これは相当頑固だな。うーん。

 

指揮官「…しょうがないな。じゃあ…。」

 

ベル「…はい。」グスッ

 

指揮官「これからも俺に奉仕する事。それだけ。」

 

ベル「……指揮官、様…それでは、その程度では…!」グスッ

 

真面目ちゃんめ。まあそういう所もベルの良い所だけどさ。

 

指揮官「あれ。伝わらなかった?」

 

ベル「…へ?」グスッ

 

少し声のトーンを落とす。

 

指揮官「罰受けてる暇があったら働きで返せって事だよ。いちいち言わせんな。」

 

ベル「……!は、はい…!」

 

ようやくベルファストが前を向く。……真面目で、ストイックで…周りの人の一歩先を行っているようにみえる。完璧なように見えても、でも完璧では無い。不思議な人だ、ベルも。

 

指揮官「ほら。立って。涙拭かなきゃ。」

 

ベル「あ…、はい…はい…!」グスッ

 

指揮官「拭こうとしてる時に泣かないでくれませんかね…。」

 

ベル「すみませ…ん…!」ポロポロ

 

こりゃ暫く泣き止みそうに無いな。

 

〜数十分後〜

 

指揮官「…大丈夫?」

 

ベル「はい…ご主人様。これからこのベルファスト、誠心誠意尽くさせていただきます。至らぬ所も多いと存じますが、どうぞよろしくお願い致します。」スッ

 

指揮官「ん。ようやく何時ものベルだ。」ニコッ

 

ベル「…はい!」

 

涙も拭き、顔も晴れた。何時ものベルファストだ。

 

ベル「…さてご主人様。気を取り直して今日の業務を始めましょう。」

 

赤城「失礼します。」ガチャ

 

指揮官「お…今日もよろしくお願いします。」

 

赤城「えぇ。今日もお願いします。」

 

赤城さんも入ってくる。1日が始まる。

 

 

〜昼時 食堂〜

 

今日は速めに書類仕事を切り上げて食堂に来た。偶然ラフィーと一緒に件のZ23が居たので、昼食を一緒に摂る。

 

指揮官「んぐ…。じゃあ、午後からで良い?」

 

Z23改「はい…お願いします。」シュン

 

おにぎりを飲み込んで改めて話す。…警戒されてるか?

 

ラフィーII「指揮官、ニーミはちょっと自信無くしてるだけ…指揮官の事信用してない訳じゃない。」

 

Z23改「すみません…少し色々な事がありすぎて…。」

 

疲れてるな。うーん深刻そう。

 

 

 

〜懇談室〜

 

Z23改「…お願いします。」ストン

 

ラフィーII「ラフィーも付き添う…。」ストン

 

ラフィーとZ23が座る。あまりいい話では無いだろう。

 

指揮官「……で。話ってのは。あんまり良い話じゃ無さそうだけど。」

 

Z23改「……はい。実は…今鉄血は…。」

 

ラフィーII「……。」

 

Z23がゆっくりと口を開く。

 

Z23改「今鉄血は…本国からの干渉を受けています。」

 

指揮官「…内容は。」

 

本国からの干渉。鉄血にもKANSEN達とは別に人間の国がある。確か…『数年前までは』貴族の末裔達が議会を開いて納める国だった筈。そこからの干渉を受けているという事だろう。

 

Z23改「鉄血公国は、このセイレーンとの戦いで少なくない被害を負った国です。国土は、沿岸部は全て失陥、内陸部も日々爆撃に晒され荒廃しました。初代の頃にそれは解消されたのですが…貴族達はともかく、犠牲になった国民はそれで納得しなかったんです。そして…。」

 

指揮官「革命が起こったんだっけ。」

 

Z23改「はい…。貴族達で構成されていた議会は強制解散、新たに国民で構成された議会が始まり、大統領制になりました。」

 

鉄血公国は現在も『公国』を名乗っているものの、実際は『連邦』と名乗ったほうが誤解がないような国だ。

 

Z23改「それで…我々もその議会の元で行動する事になったのですが…。」

 

指揮官「ですが?」

 

Z23改「その議会は今、軍の規模縮小を掲げていまして…。」

 

ラフィーII「……え。」

 

指揮官「……待て待て。軍の規模縮小?確かに戦況はこっちの優勢だけど、セイレーンとの戦い自体はまだ終わってないんだけど…。」

 

何を言っているんだ議会は?頭大丈夫か?ラフィーも思わず困惑気味だ。

 

Z23改「はい…意図は不明なのですが、その刃が私達KANSENに向いて居るんです。具体的には、アズールレーンから脱退して大型艦のKANSENを……。」グスッ

 

指揮官「大型艦のKANSENを?」

 

Z23改「ぅ…その、退役…解体すると…!」ポロポロ

 

指揮官「………は?」

 

退役、解体?マジか。

 

Z23改「今の所、ビスマルクさんが何とか食い止めては居るんですけど、正直もう限界で…エーギルさんとか、ザイドリッツさんとか数人もう引き渡されて…!」ポロポロ

 

指揮官「……うーんえっマズいぞこれは。非常にマズい。というか報告上がってないんだけど…。」

 

Z23改「ごめんなさい…鉄血では今でも指揮官を警戒してるので、弱みを握られないようにって隠してたんです…。」

 

……放置してた俺も悪い…か。

 

指揮官「……分かった。でもちょっと時間をくれ。こっちでも探ってみるから。」

 

Z23改「はい…お願いします…。」

 

とんでもない爆弾が飛んできた。

 

 

〜ロイヤル寮〜

 

指揮官「カクカクシカジカ。」

 

クイーン「マルマルウマウマ。なるほどねぇ…通りで最近大人しいと思ったら…。」

 

とりあえずクイーンの御力を借りるしかない。現状俺の一存で動かせる戦力は無い。

 

クイーン「それで?何してほしいのよ。私に。下僕のお願いなら聞いてあげるわよ。貸し無しで。」

 

指揮官「えっ。」

 

クイーン「当たり前じゃない。というか貴方、この艦隊の指揮官よ?本来はKANSEN達をこき使わなきゃいけない立場なの。私はあくまでもその役割を代わってあげてるだけ。それを忘れないでちょうだい。」

 

優しいなぁ…。

 

指揮官「…ありがとうございます。では…、鉄血公国の議会と国内の世論を探ってほしいんです。」

 

クイーン「へぇ…?鉄血のKANSEN達じゃなくて良いのね?」

 

指揮官「KANSEN達は一先ず放置。議会が最優先、世論はついでです。たぶんこれは…。」

 

たぶんこれ、議会は…。

 

 

〜自室〜

 

指揮官「…。」パタン

 

秘匿回線のパソコンを閉じる。KANSEN達が現れてから早数十年。技術の発達は恐ろしい程に進んでいる。電子機器は特にそうだ。わざわざ現地に足を運ばなくても、簡単に調べ物ができるようになった。

 

指揮官「…ッチ。」

 

あーイラつく。どーして人類はこんなに愚かなんだろうか。傲慢かもだが、日々KANSEN達に顔を合わせなきゃいけない身としては勘弁してほしい。恥ずかしくてどうにかなりそうだ。そして…俺自身も…。

 

指揮官「………はぁ。」

 

飯でも食うか。カップラーメンで良いだろ。

 

ラフィーII「……指揮官。」

 

指揮官「……ラフィー。何だ居たのか。」

 

ラフィーII「うん…調べ物?」

 

指揮官「まあね。」

 

ラフィーII「……イライラしてる?」

 

指揮官「うん。気分は最悪だね。」

 

ラフィーII「指揮官が怒ってるとこ始めてみた…怖い…。」

 

指揮官「ごめんね。俺も人間だから。」

 

ラフィーII「うん…。」ギュッ

 

怖がらせてしまったらしい。反省。

 

ラフィーII「…でも指揮官。」

 

指揮官「ん?」

 

ラフィーII「怒ってる…けど、なんか…自分に怒ってる?」

 

指揮官「………。」

 

…マジか。そこまで当ててくるかよ。

 

指揮官「……いや、そんな事はないよ。」

 

ラフィーII「……分かった。ラフィー信じる…。」

 

ラフィーの勘、恐るべしだな。気をつけよう。

 

 

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