青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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作戦

 

〜数週間後 ロイヤル寮〜

 

クイーン「調査が終わったわ。」

 

指揮官「ありがとうございます。で、結果は…。」

 

クイーン「……信じたくなかったけどね。」

 

……この反応は。

 

クイーン「結果だけ、単刀直入に言うわ。鉄血公国議会は…セイレーンに掌握されている。

 

指揮官「…ん〜。」

 

やーっぱり…。

 

クイーン「国内でもセイレーン信仰団体が幅を利かせているわ。世論も、セイレーンの保護に傾いてる。流石に国民の忌避感が大きくて完全には行っていないけどね。」

 

指揮官「セイレーンはどうやって議会を掌握したんです?」

 

クイーン「革命時に信仰団体の信者達を議員にしたようね。議席数はとっくに半分を超えているわ。」

 

指揮官「各国の反応は。」

 

クイーン「沈黙よ。不自然すぎるほどに。気づかない筈がないのに。人類側に何処まで入り込んでるか分からないわ。」

 

…全員敵の可能性がある。場合によってはアズールレーン上層部も怪しい。

 

指揮官「……参ったな。下手に動けない。」

 

クイーン「ええ。不自然な動きをすれば、潰されるかもしれない。」

 

指揮官「……。」

 

…見捨てるか?いや、ダメだ。それだけはできない。看過できない。絶対に。絶対に嫌だ。

 

クイーン「…どうする気?見捨てる?」

 

指揮官「嫌です。絶対に。それだけは。」

 

クイーン「助けに行くの?」

 

指揮官「えぇ。」

 

クイーン「死ぬわよ。」

 

指揮官「悔いは残したくない。」

 

クイーン「……これからじゃない。貴方は。まだ18よ。まだまだ生きられるのよ!」

 

指揮官「一人でも見捨てたら俺は指揮官で居られなくなる。もう二度と、KANSENの皆と笑い合うことは出来なくなる。」

 

クイーン「……そう。貴方もなのね。」

 

指揮官「はい。同じです。変われません。これだけは、変えたくありません。」

 

クイーン「……っ、ねぇ。貴方の…貴方の父親って…!

 

クイーンの声が震えはじめる。…二人きりの広間に、嫌に静かな広間にクイーンの嗚咽がやけに響いた。

 

指揮官「……ご想像の通りです。今まで黙っていて、すみません。」

 

クイーン「っ…そ…う…!いい…良いのよ…!」ポロポロ

 

…部屋を後にした。

 

 

〜廊下〜

 

ベル「…ご主人様。何をお話されていたので?」

 

指揮官「ん?秘密。」

 

ベル「そうですか…。」

 

ベルに話したら間違いなく泣かれる。これは本来俺が墓まで持っていくべき事だ。世の中知らん方が良いことが多い。

 

ベル「……ご主人様。鉄血のニーミ様から相談を受けていたようですが…。」

 

指揮官「まあね。」

 

ベル「……ご主人様のお言葉で言いますと、厄介事、でしょうか?」

 

指揮官「あぁ。かなり。」

 

ベル「私に…私にできる事は…。」

 

指揮官「無い。今まで通りにお願いするよ。」

 

ロイヤルは動かせない。ユニオンもだ。数十年前まで敵対関係にあった国の戦力を動かしたら間違いなくバレる。というか今でもお互いの腹の中を探り合ってるような国達の集まりなのだ、アズールレーンは。指揮官という絶対的な善人が居なければ空中分解寸前になる組織なのだ。

 

ベル「そう…ですか…。」シュン

 

指揮官「ごめんね。お願い。」

 

ベル「…はい。」

 

 

〜懇談室〜

 

指揮官「……という、訳です。」

 

ビスマルクZwei「……そう。」

 

Z23改「……そんな。」

 

調査結果を二人に話した。この情報は占有していても意味が無い…というかビスマルクさんも掴んでいるだろう。

 

Z23改「…指揮官、二人は…二人は助けられるんですか…?」

 

指揮官「厳しい。まさか上層部の許可なく鉄血に軍事侵攻するわけにもいかないし。所詮アズールレーンは軍事組織だから、政治的な権力は無い。」

 

Z23改「そん…な…。」ポロポロ

 

事実だ。所詮アズールレーンは軍事組織。文民統制が基本のこの時代では政治的な権力は無い。だが…。

 

指揮官「まあ手段が無くは無い。」

 

Z23改「!そ、それって…。」

 

指揮官「他の国の世論を動かす。」

 

ビスマルクZwei「……どうやって。」

 

指揮官「例えばユニオン。例えばロイヤル。例えば重桜…他の国の報道機関に情報を流す。ネットでも良い。とにかく鉄血公国議会へのヘイトスピーチをする。悪印象を植え付ける。」

 

ビスマルクZwei「……しかし、それだけじゃ軍事介入の理由にならないわ。」

 

指揮官「そうですね。それだけでは理由になりません。しかし、悪印象を植え付ければ鉄血の印象は悪くなります。それを数ヶ月ぐらい続けます。溜めるんです。疑心を。」

 

ビスマルクZwei「……その後は?」

 

指揮官「民達に、『鉄血公国にKANSENが捕まっている…らしい。』という情報を流します。」

 

ビスマルクZwei「根拠が無いわ。」

 

指揮官「根拠は必要無いですね。感情に訴えかけるんです。溜まりに溜まった疑心に火をつけるんです。」

 

Z23改「そ、それなら…!」パァッ

 

Z23の顔が明るくなる。しかし…。

 

ビスマルクZwei「……でも、問題はある。」

 

指揮官「……えぇ。」

 

Z23改「それは…?」

 

ビスマルクZwei「二人の無事が保証できなくなるわ。」

 

そう。それだ。世論を動かすには根気よく情報を流し続けなければならない。時間が足りないのだ。相手はさっさと二人を退役させて口封じしてしまえば済む話なのだ。それでは意味が無い。

 

指揮官「今の所二人は?」

 

ビスマルクZwei「施設に入れられている。薬を打たれて、KANSENとしての力は無力化されているわ。」

 

指揮官「いつ、解体される?」

 

ビスマルクZwei「はっきりとは…でも、今すぐでは無い。」

 

指揮官「根拠は?」

 

ビスマルクZwei「議会は鉄血陣営の大型艦、他のKANSEN達の引き渡し、無力化も要求している。一網打尽にしたいのよ。私も…一番最後だと思うけど、連れて行かれるわ。」

 

指揮官「ふむ…なら、小出しですね。」

 

ビスマルクZwei「なっ…!」

 

指揮官「それ以外に無い。そうでしょう?ああでも、薬の方は対策します。明石なら…もう1週間稼げますか?」

 

ビスマルクZwei「…分かった。可能よ。」

 

指揮官「よろしく。最悪ダメそうだったら……貴女の判断で耐えれそうな人を。」

 

ビスマルクZwei「ええ…。」

 

ツラいだろうが頑張ってもらうしかない。

 

ビスマルクZwei「明石は…動いてくれるかしら?たった1週間よ?」

 

指揮官「俺から言えば大丈夫でしょう。ダメだったら金を積みますよ。俺のポケットマネーからなら。」

 

ビスマルクZwei「それでもダメなら…最悪、私が行って交換で…。」

 

指揮官「それはダメ。今此処で統制が取れなくなるのはマズい。要らない犠牲は出したくない。」

 

…この人の負担も大きいな。早期決着は難しいが、急がねば。

 

ビスマルクZwei「……最後に聴かせて。」

 

指揮官「何です?」

 

ビスマルクZwei「……貴方は、私達の味方になってくれるの?」

 

指揮官「えぇ。少なくとも、今回は。」

 

ビスマルクZwei「…そう。なら、良いわ。」

 

警戒はされている。だが、独力での解決が不可能な以上、ビスマルクさんは協力してくる。彼女は大丈夫だろう。まあ少し丸くなりすぎな気もするが。

 

ビスマルクZwei「……裏切るなよ。」ギロッ

 

指揮官「お互い様でしょ。」

 

とりあえずは、これで良い。

 

 

〜執務室〜

 

指揮官「……。」

 

とりあえず、鉄血のKANSEN達にも協力してもらう。情報を流し続ける。報道機関に、民間に、あらゆる団体に。戦力としてのKANSENは動かせずとも、それくらいはできる。後はそれの反応を見て決めるしかない。ビスマルクさんが動いてくれるようになった。

 

指揮官「明石によると薬の対策…分解装置は既にできている。後は…。」

 

既に捕まっている二人の救出する際の作戦。どうするか…。

 

指揮官「……。」ピッ

 

端末を取り出し、加賀さんにメッセージを送る。護らせてくれと言ったのはあっちだ。頼らせてもらおう。……お、速攻で返信が来た。「今行く。」か。

 

〜数分後〜

 

ノックが響く。

 

加賀「私だ。姉さまも連れてきた。」

 

指揮官「どうぞ。」

 

ドアが開く。一航戦の二人と天城さんまでもが入ってきた。

 

天城「加賀から聞きました。有事ですね?」

 

指揮官「まだですよ。まだ。」

 

天城「失礼しました。それで、内容は。」

 

指揮官「鉄血本土の収容施設に捕まっているKANSEN…エーギルさん、ザイドリッツさんを救出します。力を貸していただきたい。」

 

天城「承知しました。」

 

赤城「……何故です。」

 

……来たか。

 

指揮官「何故とは?」

 

赤城「とぼけないでください。分かっているでしょう?何故助けに行くのです。放っておけば良いではありませんか。理由を聞かせてください。」

 

天城「赤城。」

 

赤城「黙っていてください姉様。私は指揮官に聞いています。」

 

指揮官「…戦力目的です。」

 

赤城「嘘です。私達はセイレーンに勝っています。勝ち続けています。たかだか鉄血のKANSENを見捨てる程度で崩れる勝利ではありません。それぐらいは分かっている筈ですよ、貴方なら。」

 

指揮官「……頼まれたからです。」

 

赤城「嘘です。いえ、嘘では無いでしょうね。しかし、それだけでは無い筈。私達を動かすと言う意味の重さを知っている貴方なら、それだけでは動かさないでしょう?」

 

…言う通りだ。これは鉄血の問題だ。他陣営のKANSENを介入させたら、それを口実に国際問題に発展しかねない。貸し借りはあくまでも貸し借り。無料になることはない。

 

指揮官「………助け、たいからです。」

 

赤城「…………貴方。」ズイッ

 

赤城さんが詰めてくる。

 

赤城「……っ、そういう所が…そういう所が、初代様にそっくりなんですよ…!」ギュッ

 

指揮官「…。」

 

……美人に抱擁されて悲しくなったのは初めてだ。

 

加賀「……ともかく!隊の選抜は我々で決めていいか?」

 

指揮官「お願いします。KANSENの戦い方は貴女方の方がよく知っている。」

 

赤城「空母も出していいのですか?それとも砲艦だけ?」

 

指揮官「収容施設は海岸沿いです。部隊展開に特に制限は無いので…そこもお任せします。」

 

天城「了解しました。三笠様と話し合って決めます。」

 

部隊は良し。準備はできた。後は待つ。鉄血のKANSEN達がしびれを切らさぬように、諌めながら。

 

 

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