〜重桜寮〜
加賀「お前も出てもらう。」
指揮官「はぁ…。」
武蔵「驚かないのね。」
指揮官「まあ、粗方覚悟は済ませてたんで。」
ローンさんとの出会いから一ヶ月…重桜寮に呼び出された。で、いきなりコレである。
ビスマルクZwei「本来はもっとかかる筈だったけど…。」
オイゲン「思ったよりも世論が傾くのが速かったのよね。未だに本部からの命令は出てないんでしょ?」
指揮官「そっすね。ダンマリです。でも、一回広めたら他の国には面白いぐらいに広まったんで…時間の問題でしょ。」
この世界、倫理が育つ前に文明が進んでしまったので、インターネットの影響がバカみたいに大きい。大陸間通信は手段が一つしかない為に不安定でリスクが高いものの、そこは電波。伝わるのは一瞬だ。
指揮官「あとは時間を見計らってKANSENが捕まっているという情報を流せば…出撃命令は下ると思います。」
ビスマルクZwei「正直眉唾物だったわ。民間人から私達KANSENが人気なんて。」
指揮官「人気すぎてもはや宗教ですけどね。」
というか実際にそういう団体がある。流石に3大宗教程ではないが。
オイゲン「あんまりそういうの好きじゃないけど、今回ばかりは悪い気はしないわ。」
天城「私達はとても狭い視野で人間を見ていたのかもしれませんね…。」
赤城「そうですね…。」
元急進派の天城達が自嘲気味に呟く。…まあ、考え直してくれたなら良かった。
加賀「…で、肝心の救出作戦なのだが。」
指揮官「どうするんです?」
ビスマルクさんが深刻そうに口を開く。
ビスマルクZwei「……あれから追加でもう二人連れて行かれたわ。明石の装置は持たせてあるけど、大量に薬を投与されたら保たない。早めに救出したい。」
加賀「そこなんだ…。エーギル及びザイドリッツの収容施設は特定済みなんだが、追加で連れて行かれた二人…ペーター・シュトラッサー、ティルピッツ両名の収容施設が分かっていない。」
指揮官「ん〜…、その二人の居場所が分からないなら決行はできませんね。」
武蔵「鉄血に対する軍事行動とはいっても、私達は長期戦はリスクが高すぎてできない。」
裏にセイレーンが居る以上、長期戦は禁物だ。既に各国政府に入り込んでいるなら、長引かせればそれを理由に強制終了させられかねないからだ。
天城「アプローチは1回限り、尚且つ迅速に決めなければ各国政府の介入を招きます。」
赤城「…というか、何故特定できないのです?エーギルとザイドリッツが特定できたのなら出来る筈でしょう。」
ビスマルクZwei「無茶言わないで。エーギルとザイドリッツの場所だって、何人もスパイを犠牲にして手に入れた情報よ。民間だから玉数はあるとは言え…あまり利用しすぎればこちらの情報が漏れかねないわ。」
クイーン率いるロイヤルは既に人間によるスパイ部隊を作って働かせているらしいが、鉄血の場合は今まで本国とは距離を置いてきた影響で人間のスパイ部隊は用意できなかったらしい。民間の諜報を専門に請け負う傭兵などに頼むしかないようだ。
オイゲン「私が行くわ。」
指揮官「ダメ。諜報にしても攻撃にしても、KANSENは目立ちすぎる。ましてや相手はセイレーンが幅を利かせてる国なんだから。」
天城「しかし…我々重桜では距離がありすぎて諜報員は送れません。」
セイレーンのせいで物流も人の流れも制限されている。物理的な距離も重要だ。
ビスマルクZwei「……サディア。」
指揮官「…あー。」
ビスマルクZwei「あの国なら、少なくともロイヤルの諜報員を動かすよりかは目立たない筈よ。彼女達は海兵隊も持っている。」
サディアか〜…。確かにあの国なら距離も鉄血に近いし、諜報員も潤沢だろう。しかし…。
指揮官「ん〜…でも、俺サディアのKANSENはさっぱりなんですよねぇ…。」
武蔵「そうね…彼女達は先々代の指揮官でかなり酷い目に遭っているわ。協力を得られるかどうか…。」
指揮官「俺が行っても突っ撥ねられて終わりな気がします。」
サディアに関してはマジで交流が無い。食堂でもサディアのメニューだけ無いし、廊下を歩いていてもKANSENに会わない。半ば鎖国状態。
ビスマルクZwei「……私から行くわ。」
オイゲン「そうね…元々は私達の問題よ。何とか協力を取り付けてくる。」
指揮官「お願いします。エーギルさんとザイドリッツさんの救出作戦は立案済みですか?」
加賀「ああ。と、行っても単純だがな。」
天城「地下施設なのが怖い所ですが、一度上陸してしまえば押し切れます。内部構造も把握済みですので…。」フフッ
指揮官「おー怖。天城さんの悪巧み顔怖いね…。」ニッ
ビスマルクZwei「そういう貴方も愉しそうじゃない。」
指揮官「まあね。」
やっぱり好きなのかもな。壊すの。
武蔵「……汝、あまりのめり込みすぎないようにね。」
指揮官「…努力しまーす。」
たぶん信濃さんから話行ってるんだろうなぁ…。
〜執務室〜
指揮官「あ〜…疲れた。何もしてないけど。」
ベル「そんな事はありませんよ。ご主人様は頑張っています。」
指揮官「そうかな…そうかも。」
主に前任者のせいで。二人が居なかったらたぶん俺はもっと楽できた筈。今回の件はもっと早くに対応できた筈だし、天城達の演習もそもそも起こらなかっただろう。
指揮官「いい加減アズールレーン再統合も考えないとな…鉄血みたいな事が起こったら笑えないし。」
ベル「しかし、今回の作戦を実行すれば他の陣営のKANSEN達も警戒を解くと思いますよ。既にご主人様の人となりは伝わっているので。」
指揮官「だと良いね…今度こそ平和な出会いをしたいもんだ。」
ベル「…そういえば鉄血も重桜も陣営としてはトラブルからでしたね…。」
実際に会ってみる事が重要だと思った。俺もこの母港に来るまではKANSEN達が良く分からない生き物扱いだったし。まあこんな厄介な会い方はしたくなかったけど。
指揮官「……初代だったらどうしたんだろ。」
ベル「……分かりません。」
指揮官「でも…絶対俺より上手くやったよなぁ…。」
ベル「…ご主人様。」
指揮官「時折分からなくなるよ。何で自分が…ってね。」
ベル「ご主人様!」
指揮官「分かってる。初代は初代だ。俺は自分のやり方でやるさ。」
ベル「……それなら、良いです。」
どうにも自信が持てない。だが、やるしか無い。やらなければ失うだけだ。