青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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サディア

 

〜会議室〜

 

休日を挟みつつ一ヶ月。遂にペーターさんとティルピッツさんの居場所が分かったらしい。

 

ビスマルクZwei「ペーター、ティルピッツ両名の収容施設の位置が分かったわ。」

 

指揮官「遂に…で、何処なんです?」

 

ビスマルクZwei「少々厄介な所でね…ヴェルリンよ。」

 

首都じゃん。郊外なら良いけど…。

 

ビスマルクZwei「しかも市街地。周囲には商業施設が多いわ。」

 

加賀「マズいな…市街地なら迂闊に砲撃も爆撃もできないぞ。」

 

武蔵「そもそも艦装の展開ができるかどうか…。」

 

ま、そうだよな。態々首都まで連れて行くんだ。市民を盾にした人質だろう。胸糞悪い。

 

天城「……人間の兵を輸送しましょうか。」

 

赤城「そうですね…それしかありません。」

 

加賀「しかし、我々重桜は人間の…陸軍の兵士をもって居ない。」

 

ビスマルクZwei「私達もよ。」

 

武蔵「どうするか…。」

 

サディアみたいに海兵隊でも有ればな……あ。

 

指揮官「サディア…。」

 

天城「……うーん。」

 

加賀「確かに彼女達なら持っているがな。」

 

ビスマルクZwei「今回の件でもうスパイも出させてしまったわ。これ以上巻き込む理由には…。」

 

指揮官「だよなぁ…。」

 

ダメ元だったしいっか。別の方法を考えよう。

 

オイゲン「ちょーっと待って。」ガチャ

 

指揮官「オイゲンさん?何処行ってたんです?」

 

オイゲン「助っ人を連れてきたわ。入って。」

 

????「失礼します。」

 

?????「失礼する。」

 

…袖にトリコローレカラー。サディアのKANSENか。

 

ヴェネト「ごきげんよう指揮官さま。サディア帝国の総旗艦(アンミラーリオ)、ヴィットリオ・ヴェネトと言います。」

 

リットリオ「地中海最強の戦艦の一隻、ヴィットリオ・ヴェネト級の二番艦、リットリオはここだ。よろしく、指揮官。」キラッ

 

指揮官「アオイ・ベネットです。よろしく。」

 

ヴィットリオ・ヴェネト…マタパン岬沖の旗艦か。リットリオも名前だけだが知ってる。でも『イタリア』じゃないのね。

 

リットリオ「早速だが指揮官。鉄血本土に囚われた美しきシニョリーナたちを救出しに行くのだろう?私達サディアも戦列に加えてくれ。」

 

指揮官「ん〜…あんまり巻き込みたくないんですが。」

 

リットリオ「そう言わずに。」

 

ヴェネト「心配なさらずとも、何も要求しません。今回は同じアズールレーンとして足並みをそろえたいだけです。」

 

指揮官「……なら良いんですけど。」

 

信じたい所だが…いくら何でも急接近が過ぎる。何かあるだろ。いや、俺が警戒しすぎてるだけか?うーん…。

 

リットリオ「それでは指揮官の許可も降りたことだし、我々サディアからは海兵隊と…第一艦隊を出そう!」

 

天城「…第一艦隊?精鋭ではないですか。それに第一艦隊には…。」

 

加賀「あの二人が居る。彼女達は何と言っているんだ?」

 

彼女達?誰だ…?

 

オイゲン「指揮官…こっち。」グイッ

 

指揮官「おっ…。」

 

オイゲンさんに肩を引っ張られる。何だ?

 

オイゲン「サディアの第一艦隊にはね、先々代の指揮官の最大の被害者が居るのよ。」ヒソヒソ

 

指揮官「最大の被害者…?」ヒソヒソ

 

オイゲン「えぇ。サディアってほら、海軍の規模としてはアズールレーンの中でも小さい方じゃない?」ヒソヒソ

 

……まあそうだ。ユニオンと重桜、ロイヤルがデカすぎるんだが、それでもサディアの海軍規模は小さい。陸軍国家の北方連合と大差ない。

 

オイゲン「そこに目をつけた先々代が、アズールレーンからの海軍拡張の為の資金提供を条件にその二人に酷い事したのよ。娼婦紛いの事をね。」ヒソヒソ

 

指揮官「しょ…娼婦て。いくら迂闊に手は出させない条件とは言え、勇気あるなぁ…。」ヒソヒソ

 

今までは直接的な表現は避けてきたが、KANSEN達が先代、先々代にやられた事と言えば大抵は暴力や無茶な命令が殆どだ。で、中にはそういう事…身体目当ての事をさせられた人も居るには居る。…だが少ない。薬や対抗手段があるとは言え、自らよりも身体能力がある上位存在相手にそういう関係になる勇気は出なかったのだろう。

 

オイゲン「結局はリットリオにバレて暗殺されたけどね。でもそれでもされた事実は消えない。」ヒソヒソ

 

指揮官「暗殺て…初耳だけどまあ良いか。で、その二人の名前は…。」ヒソヒソ

 

オイゲン「ザラ級重巡洋艦の一番艦、ザラと、四番艦のポーラよ。」ヒソヒソ

 

……ザラ…ポーラ…聞いたことあるような無いような。

 

オイゲン「その後二人は暫く立ち直れなかったわ。そして先代が来てからも寮から出なかった。最近ようやく何時もの調子を取り戻したらしいけどね。」ヒソヒソ

 

指揮官「…俺そんな人達と仕事するんスか。いやそもそも艦隊行動できるんですか…?」ヒソヒソ

 

オイゲン「立ち直れなかったと言っても出撃自体はしていたから…たぶん大丈夫よ。今回の件でも同じ人間から酷い事をされたKANSENだから思う所があったみたいだしね…。」ヒソヒソ

 

指揮官「……なら、良いですけど。」ヒソヒソ

 

うーん…なるべく会わないようにしよう。艦隊行動中に喧嘩するのもマズいし、行ってくれるなら要らん事してそれを取り消しにされたくは無いし。

 

リットリオ「…と、まあ彼女達も今回の件で憤っている。寧ろやらせてくれと言っているから大丈夫さ。」

 

天城「なら良いですが、なるべく指揮官とは距離を取ってもらいます。『万が一』があれば致命的です。」

 

ヴェネト「同じKANSENの危機ですもの、そんな事起こす程彼女達も分からずやでは無いですよ。えっと…そう、重桜では『呉越同舟』と仰るのですかね?」

 

加賀「否定はしない。私達も陣営は違えど同族を助けに行くのだからな。今回の件を見過ごせば次は重桜でも同じ事が起こるかもしれない。これはKANSEN全体の危機だ。」

 

…うーん同意しかねるな。

 

指揮官「いや…呉越同舟なんて嘘っぱちですよ。」

 

ヴェネト「…はい?」

 

リットリオ「…ほう?」

 

天城「……指揮官?」

 

加賀「…いや、流石に私達も他人事では済ませないぞ今回の件は。それを前にすれば陣営の結束だって…。」

 

指揮官「無い。100%無い。呉越同舟なんて存在しません。真の意味では。」

 

ビスマルクZwei「…根拠を聞こうかしら。」

 

指揮官「人ってのは『してもらった事』は簡単に忘れる。でも『された事』は簡単には忘れない。」

 

人の感情ほど不安定と安定が両立するものは無い。

 

天城「してもらった事?それはどういう…。」

 

指揮官「してもらった事…つまり、他人にしてもらった良い事。これは人は簡単に忘れる。何故ならそれは『ああ助かった、良かった。』で終わるからだ。」

 

赤城「……はい。」

 

リットリオ「…。」

 

だが悪い事は…。

 

指揮官「でもされた事…つまり、他人にされた悪い事。それは人は深く心に刻まれる。傷として。そして次にこう思う。『よくもやったな。やり返してやる。』と。」

 

ヴェネト「……。」

 

天城「……そう、ですね。」

 

人なんてそんなもんだ。そうして争いは起こる。

 

指揮官「だから忘れない。された事はね。で、そんな奴らがいざ同じ危機に直面しても…まあ表面上は協力する事があるでしょ。それはね。でも、真に仲良しになる事は無い。何故なら心の何処かでやり返そうって思ってるから。」

 

オイゲン「…良く分かってるじゃない。」

 

指揮官「まあ、元孤児院暮らしですから。色んな人見てますからね。」

 

院暮らしだったからね。子供のコミュニティとは言え、性格なんて人それぞれだ。当然醜い所も見えてくる。

 

指揮官「で、それを放置したまま危機に直面して、負けそうになっちゃうと…それは爆発する。『話が違う』と。危険を回避できるって言うからこんな奴らと協力したのに、回避できなかったから。そして仲間割れして…結局全滅だ。だから…呉越同舟なんて存在しない。」

 

リットリオ「…指揮官は、私達を信用できないと?」

 

指揮官「そうですね。……いや、勘違いしないでくださいよ?別にだから一生いがみ合おうぜって言ってるわけじゃないです。元々今回の件の原因も、その二人の件も…俺含めた人間がバカやったからです。すみません。でも…こんなだからこそ、一旦距離を取るべきだと思うんです。お互いが嫌な思いをしない為に。繰り返さない為に。」

 

ヴェネト「…分かりました。少し…我々も焦りすぎて居たのかもしれません。一先ず、戦列には加えさせてもらっても?」

 

指揮官「それは歓迎です。でも、俺からの指示は必ずリットリオさんかヴェネトさんが仲介してください。俺はサディアのKANSENと面識が無い。他の娘だと不穏な憶測を呼びかねない。」

 

ヴェネト「その通りですね…分かりました。」

 

リットリオ「了解したよ。確かにその通りにしよう。」

 

加賀「ペーターとティルピッツ両名の救出作戦はサディアに任せる。元々そちらの戦力だからな。」

 

ヴェネト「そちらも分かりました。天城さんとビスマルクさんには報告だけはしておきますね。」

 

天城「お願いします。」

 

ビスマルクZwei「頼んだわ。」

 

指揮官「作戦準備にどれくらいかかります?」

 

リットリオ「そうだね…あと2週間は欲しい。それ以内に絶対終わらせる。」

 

指揮官「了解です。決行日は2週間後の早朝。航空戦力も使うので、夜間戦闘はなるべく避ける方向で。こちらは救出すれば終わりですから。」

 

天城「そうですね。」

 

赤城「了解しました。」

 

加賀「了解だ。指揮官が乗船する艦は…。」

 

指揮官「量産型の戦艦で良いでしょう。KANSEN中心の戦力なのに俺が居るから無茶できずに作戦失敗は避けたいですから。」

 

オイゲン「いやそれはダメよ。大事な総大将を防御力の劣る量産艦に乗らせるわけにはいかないわ。」

 

天城「そうです。貴方は無くてはならない存在なのですから、万が一は避けませんと。此処は私に…。」

 

赤城「……いいえ。此処は私が。」

 

ビスマルクZwei「ダメよ。彼は私に乗ってもらうわ。監視の意味を込めてね。」

 

指揮官「えぇ…こんな所で躓くのか…。」

 

リットリオ「ハハッ!美しきシニョリーナ達に迫られているんだ。良い事じゃないか!」

 

武蔵「……。」チラッ

 

やだよこんなしょーもない事で迫られるの。

 

天城「此処は公平に、指揮官自身に決めてもらいましょう。」

 

赤城「そうですね。やはり本人の口から。」

 

ビスマルクZwei「私としても手を組む相手の不祥事は少ない方が良い。まさか決めれないなんて事は無いでしょうね?」

 

武蔵「…!」チラッチラッ

 

……え〜。ぶっちゃけ趣味に走るならビスマルクさんだけど、あーでも一航戦も憧れるな…天城さんも捨てがたいし…。

 

指揮官「うーん………おっ!?」グイッ

 

リットリオ「おや…?」

 

悩んでいると後ろから引っ張られる。勢いのままに倒れ込むと、柔らかな感触が感じられた。

 

天城「あっ……。」

 

加賀「貴女も出るのか…。」

 

赤城「流石に勝ち目がありませんね…。」

 

ビスマルクZwei「……此処は引くわ。あくまでも監視だしね。」シュン

 

オイゲン「へー…w」フフッ

 

皆が諦めたように呟く。えっと…。

 

指揮官「…武蔵さん?何もそんなに抱きしめなくても…。」

 

武蔵「……。」ギュッ

 

指揮官「えっなになに。無言が一番怖いですって。」

 

リットリオ「指揮官の乗艦は武蔵で良いかな?」

 

天城「異論ありません。」

 

赤城「同じく。」

 

加賀「異論ない。」

 

オイゲン「さんせー。」

 

ビスマルクZwei「彼女なら安心ね。」

 

えっ武蔵さん?確かに安心だけどさ。でも武蔵さんの意見は…?

 

ヴェネト「…やはり、指揮官は女性経験は無いようで。」

 

リットリオ「そうだね…良いじゃないか。かわいいよ。」

 

武蔵「…汝は、私の指揮官よ。」ギュッ

 

指揮官「……えっ。」

 

あっれ〜?武蔵さんも嫉妬するんだ…そんなキャラだったっけ?

 

指揮官「……うす。」

 

武蔵「よろしい。」

 

うーん…。珍しい事もあるんだなぁ。

 

 





指揮官

武蔵さんに嫉妬させる時点で割と凄い指揮官。でも本人の女性経験が童貞の域を出ない為本人も周りも苦労する。
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