〜執務室〜
指揮官「終わった…?」
シリアス「はい…終わりですが、何か…?」
指揮官「いや、こんなに早く終わるの久しぶりだったから凄い違和感が…。」
シリアス「……お疲れ様です。」
あれから2日。俺は相変わらず書類を捌いていた。サディアはまだのようだ。それにしても…ここ一、二ヶ月は残業までしてようやく終わるような書類の山だったから、午前中で終わった今日は物凄い違和感。あーヤダヤダ。順調にワーカーホリックになってる。
指揮官「……あれ、この後いつも何してたっけ。」
シリアス「ご主人様…そこまでお疲れに…。」
やべぇ思い出せない。あれ…?何か変な病気かな?
シリアス「主にお昼寝かと…。」
指揮官「……あ、そうだ。そうだね…昼寝だ。」
ようやく思い出せた…でも、昼寝の気分じゃないなぁ…。
シリアス「と、とりあえずご飯でも食べて来ては…?」
指揮官「そーする。」
ま、何ともないでしょ。食堂に向かった。
〜食堂〜
指揮官「モッキュモッキュ。」
ホットドッグ(フルトッピング)にかぶりつく。細かく切られたチーズだのトマトだのが味覚を滅茶苦茶に荒らした。もう何が何だか分からない味だ。と言うかこれはホットドッグなのか…?
???「ここ、良いかしら?」
指揮官「んぐ…どうぞ。」
???「ありがとう。」
……誰?ツインテールで…少し深めの青髪だ。あと何か全体的に…ムチムチだ。すげぇスタイル。
???「……案外子供っぽいのね、新任の指揮官って。」
指揮官「よく言われます。」
ところで誰…?もう子ども扱いには慣れたけど、それはそれとして誰…?
指揮官「モッキュモッキュ…。」
???「ここの食事も悪くないわね…。」モグモグ
お互いに食べ進める。……あ、サディアのKANSENだな。帽子からトリコローレが飛び出している。
指揮官「……ごちそうさまでした。」
???「……貴方。」
指揮官「……はい?」
え、何?何なの?気まずいからこのままフェードアウトしようと思ったのに。
???「この後談話室に来なさい。」
指揮官「………え、何故?」
???「良いから。美女からの誘いよ?嬉しいでしょ?」
指揮官「……はぁ。」
いや名前も知らん美女に話しかけられても怖いだけだが。ロマンス詐欺でもするんか?
???「逃げないでね?」
指揮官「はい。」
逃げても後が怖いし。談話室に向かった。
〜談話室〜
指揮官「……あ。」
???「逃げなかったわね。偉い偉い。」フッ
待つこと数十分。さっきの美女が来た。誰?
指揮官「……えーっと、誰なんです?」
ポーラ「あら。聞いてないの?ザラ級重巡の四番艦、ポーラよ。」
指揮官「あ〜…。」
例の…。え、でも何で?
ポーラ「何でって顔してるわね。貴方が信用できるか確かめに来たのよ。」
指揮官「へ〜。」
ポーラ「へ〜って…巫山戯てるの?」
指揮官「いいえ?」
巫山戯てるわけじゃないが。
ポーラ「なら興味無い…どうでも良いと思ってる?」
指揮官「ちょっと違いますけど…まあ、今はそうですね。」
ポーラ「は?」ギロッ
何だこの人。自分で聞いておいて急に機嫌悪くなったぞ。
ポーラ「……貴方ね。これから協力する仲間なのよ?もっと距離を縮めたいと思わないの?」
指揮官「ん〜…お言葉ですが初手から『信用できるか確かめに来ました』なんて言う人とわざわざ距離を縮めたいとは思わないですね。」
ポーラ「ふーん…。」
だって馬鹿正直に『信用できるか確かめに来ました』なんて言いに来るって、現時点では『貴方方を信用してません』って言ってるようなもんじゃない?したいかどうかは置いといて、そんな疑心暗鬼してまで距離を縮める必要は無いと思うね。
ポーラ「じゃ、海兵隊の件も無しになるわよ?良いの?」
指揮官「良くは無いけど、信用してない、されてない相手の軍隊なんて何しでかすか分かったもんじゃないですからね。それに…いや、あんまり言いたくないですけどサディアの参戦はこっちも想定外…あったら嬉しいな、程度ですし。」
ポーラ「…。」
俺が数日前の会議でサディアの参戦をなかなか容認しなかったのはそういう面もある。絶対必要でもない、何考えてるか分からない相手の軍隊なんて普通一緒に行動すべきじゃない。まあこの人の話を聞いてだいたい把握できたけど。
ポーラ「…お前達人間のせいよ。私達が傷ついたのは。」
指揮官「でしょうね。傷ついてもなおそっちから歩み寄って来てくれたのは理解してますし感謝してますよ。でもそれとこれとは話が別だ。情に流されてリスクヘッジをミスって、救える命を失うわけにはいかない。」
歩み寄ってくれるのは嬉しいけど、もうちょっとタイミングを考えてほしいね。こんな有事に急接近されても正直対応できないし疑わざるをえないや。
ポーラ「………なんでよ。」
指揮官「……何で…とは?」
主語述語…。
ポーラ「…何で貴方はそんなに優しいの。」
指揮官「……はぁ?」
何だこの人。急に褒め始めたぞ。意味分からん。
ポーラ「貴方は…良く分からないわ。突き放したと思ったら急に褒めてくるし、かと思ったら突き放すし…。」
指揮官「時と場合を考えてくださいって話ですよ。じゃあ、俺が今この場で貴女を褒めちぎったら貴女達の傷は癒せるんですか?」
ポーラ「……いいえ。」
指揮官「ですよね。だから、現状維持したいだけですよ。俺は貴女達を否定もしないし肯定もしない。信用してるし信用してない。貴女達の傷は一朝一夕で治せる物じゃないから、これから根気よくやって行きたい。」
ポーラ「…!」
流石に一回話しただけじゃ無理だろ。メンタルヘルス…いや、カウンセリングかな?とにかく心の問題は根気よくやって行かなきゃ治らない。今は忙しくて正直構ってられないってことだ。
ポーラ「……付き合ってくれるの?」
指揮官「治るまで付き合いますよ。」
ポーラ「…見捨てない?」
指揮官「そこまで非情にはなりきれません。」
ポーラ「そ…う…。」
顔が俯く。……?
ポーラ「……ふっ。」ポロッ
指揮官「……えっ。」
えぇ…?
ポーラ「ふっ…ぅっ…うぅっ…!」ポロポロ
指揮官「……。」スッ
ポーラ「あり…がと…!」ポロポロ
慰め方なんて知らないのでハンカチを貸すぐらいが限界だ。気まずいので泣かないで…。
〜数分後〜
ポーラ「ふぅ…もう、大丈夫よ。」
指揮官「良かった。」
ふー焦った焦った。誰も通りかからなくて良かった。
ポーラ「ごめんなさい…貴方の事、誤解してたかもしれない。最初は冷たい人だと思ってたけど…。貴方は、他人の問題にも本気で向き合いたいと思えるのね。」
指揮官「思えると言うか、無視できないって言ったほうが良いと思います。今回の作戦も、貴女達の問題も本当は同時進行したい所なんですけど、そこまで俺も器用じゃなくて…。できる事を精一杯、一つずつ全力で片付けてるだけですよ。」
ポーラ「ふふっ…。ありがと。嬉しいわ。」
マルチタスクって難しいよね。
指揮官「まあ、この作戦が終わったら…できる事があったら言ってください。可能な限りは協力しますよ。」
ポーラ「そうね…たぶん、貴方にはかなりお世話になるわ。私は貴方と話せるくらいには大丈夫なんだけど、ザラはね…。」
指揮官「話すのも厳しい…と。」
どうすればええんじゃい…話すのも厳しいなら迂闊に会う訳にも行かないな。
ポーラ「私も…ごめんなさい、直接触るのはまだ怖いわ。」
指揮官「成る程……まあ、出来るだけ考えてみますんで。」
ポーラ「お願いね。……あ、ハンカチ洗って返すわ。」
指揮官「そのままで良いっすよ?」
ポーラ「私の気持ちの問題なのよ。良いから任せて?」
指揮官「……なら。」
お願いします。
ポーラ「貴方と話せて良かったわ。今回の作戦、必ず成功させましょうね。」
指揮官「はい。必ず、成功させましょう。」
今は目の前の事を。全力で。