青い海の小さなおはなし   作:一般通過社会人

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自信

 

 

シリアス「ロイヤルダイドー級防空巡洋艦第二グループ五番艦シリアスと申します。よろしくお願い致します。誇らしきご主人様。」ペコッ

 

指揮官「…よろしく。」

 

まーたとんでもない格好の娘が出てきたな。さっきからクイーンの隣に居る…デカい剣持ってる娘はスカート履いてないし、ロイヤルはみんなこうなのか?

 

ベル「…陛下、彼女に奉仕活動はまだ早いのでは。」

 

エリザベス「何言ってるのよベル!そんな事言ってるから何時までも良くならないんじゃない!いい加減座学だけじゃなくて実践もしてもらわないと!」

 

…しかも何か訳アリか?うーん…まあ何とかなるかな?

 

シリアス「…。」ジーッ

 

指揮官「あ〜…よろしくね?」

 

シリアス「はい。よろしくお願い致します。誇らしきご主人様。」

 

…うーん若干警戒されてるな。しょうがない。

 

 

〜執務室〜

 

指揮官「…。」

 

シリアス「紅茶でございます。」スッ

 

指揮官「ありがと…ん?」

 

ん〜…あっま。砂糖入れ過ぎだろ。

 

ベル「…シリアス、これは…砂糖を入れ過ぎていますよ。」

 

シリアス「えっ!?す、すみません!すぐに下げます!」

 

指揮官「いや別に気にしないけど…。」ズズッ

 

飲めない程ではない。

 

ベル「…ご主人様、無理はよろしく無いかと。」

 

指揮官「無理してないけど?」

 

ベル「…そうですか。」

 

ベルが怪訝そうな顔でこちらを見てくる。悪かったなバカ舌で。

 

シリアス「…?」

 

 

〜数時間後〜

 

シリアス「あっ!?」ガシャン!!

 

ベル「大丈夫ですか!?」

 

シリアス「は、はい…。」カチャカチャ

 

シリアスが転んでカップを落とした。高そうなカップなのに…。

 

〜数十分後〜

 

シリアス「キャッ!?」バシャッ!!

 

ベル「ご主人様!!」

 

指揮官「あ〜大丈夫大丈夫。」フキフキ

 

シリアスがコーヒーを溢してそれが手にかかった。熱い。

 

〜数分後〜

 

シリアス「わっ!?」バサッ!!

 

ベル「あぁ…。」

 

指揮官「あー大丈夫大丈夫。」スッスッ

 

シリアスが書類の山を倒して紙が散乱した。…。

 

 

〜数時間後〜

 

シリアス「も、申し訳ございません…。」グスッ

 

ベル「…シリアス、貴女が戦闘以外は苦手なのは分かっていますが…。」

 

シリアス「は、はい、すみません…。」グスッ

 

指揮官「…。」

 

ようやく今日の業務が終わった。あの後もシリアスは書類の上に飲み物をぶち撒けたり、棚の飾りを落としたりした。お陰で残業するハメになった。

 

ベル「申し訳ございませんでしたご主人様。今後はこのような事が無いように指導して参りますので…。」

 

シリアス「申し訳ございません…。」ブルブル

 

指揮官「…あ、ごめんごめん。怒ってる訳じゃないんだ。シリアス。」

 

シリアス「」ビクッ

 

…そんなにビビられると心にクる。

 

指揮官「シリアス、本当に俺…怒ってないから。シリアスが一生懸命やってくれたのは十分伝わったし、それに…シリアスは戦闘が得意なんでしょ?」

 

シリアス「は、はい…。」

 

指揮官「ならさ、秘書官としてじゃなくて俺の護衛として傍に居てよ。」

 

シリアス「わ、私なんかが…?」グスッ

 

指揮官「はいダメ。『なんか』は禁止。」

 

シリアス「ご主人様…?」

 

指揮官「なんか。つい出ちゃうのかもだけど、そこには何の意味も無い。その言葉を言っても気分が沈むだけで反省にもならないし今後にも活かせない。だからダメ。」

 

シリアス「…はい。」

 

指揮官「シリアス。君、他のメイドよりも自分が劣っているとか思ってない?」

 

シリアス「え…!?」

 

指揮官「図星だね。顔に出てるよ。失敗続きで自信を無くしてる。良くわかる。凄く良くわかる。次に活かせと言われても、感情だけが先行して悲しい気持ちだけが強くなっちゃうんだろ?」

 

シリアス「はい…私、志願して、憧れてロイヤルメイドになったのに…。メイドとしてはダメダメで、紅茶も上手く淹れられないしお皿は割ってしまうし…。」グスッ

 

指揮官「はいストップ。また悲しくなってる。」

 

シリアス「あ…。」グスッ

 

シリアスが再び涙を溢す。

 

指揮官「良いかシリアス。俺達はあくまでも『艦隊』なんだ。」

 

シリアス「艦隊…?」

 

指揮官「そう。艦の隊と書いて艦隊だ。軍艦には色んな艦種がある。駆逐艦だの軽巡洋艦だの重巡だの戦艦だの…。」

 

シリアス「は、はい…。」

 

指揮官「そういった様々な特徴の艦が寄せ集まってできているのが、艦隊だ。で。シリアス、君…戦艦と空母、どっちが強いと思う?」

 

シリアス「え…そ、それは状況によるのでは…?」

 

指揮官「そう。状況による。砲の射程圏内に空母を捉えられるのなら戦艦が勝つし、空母が一方的に攻撃できる距離なら戦艦は負ける。他にも天候、時間帯、視界、装備…いろんな条件があるから、状況による。そして…それは君自身も同じ。」

 

シリアス「私も…?」

 

指揮官「そう。君は戦闘が得意なんだろ?なら今回はただ条件が悪かっただけなんじゃないか?」

 

シリアス「あ…。」

 

指揮官「良いかいシリアス。君は決して他より劣ってなど居ない。君は戦闘が得意で、ベルは家事も戦闘もこなせるけど特化したKANSENには負ける。それだけなんだよ。」

 

シリアス「は、はい…!」

 

指揮官「良し。良い顔になってきたな。自信もて。君はすごい。君は君自身の持ち味を活かすんだ。」

 

シリアス「はい…はい…!」グスッ

 

指揮官「よし…じゃあ明日から護衛として、頑張ってくれるかい?」

 

シリアス「はいっ!できます!やらせて下さい!」

 

指揮官「良し。なら、今日は休みなさい。明日頑張る為に。」

 

シリアス「はいっ!お疲れ様でした!」

 

…シリアスが退出する。…ふぅ。

 

指揮官「…良い子じゃん。」

 

ベル「…。」

 

指揮官「…ベル?」スッ

 

ベルが俯いている。気になるので顔を覗き込む……えっ!?

 

ベル「…っ。」ポロポロ

 

指揮官「えっちょ、ベルさん!?何で貴方まで泣いて…えっ!?」

 

ベル「す、すみませ…ふぇ。」ポロポロ

 

指揮官「あっちょ…ほらこれで涙拭いて…もう。」

 

ビビったぁ…何かしちゃったかなぁ…?

 

ベル「…失礼しました。」

 

指揮官「えーっと…何かあったので…?」

 

ベル「いえ…昔を思い出しただけです、お気になさらず。」

 

指揮官「…なら、良いけど。」

 

ベル「ご主人様。」

 

指揮官「…はい?」

 

ベル「ありがとうございます。最近あの娘…シリアスは失敗続きでして、前までは出撃で力を発揮してもらっていたのですが最近はセイレーン自体が落ち着いてその機会も少なくなり、結果…。」

 

指揮官「すっかり自信を無くしてしまっていたって事か…。」

 

ベル「はい。本来は私の役割なのですが…気づきませんでした。」

 

指揮官「もう違う。」

 

ベル「はい…?」

 

指揮官「ベルだけの役割じゃないよ。ベルと…俺の役割でもある。」

 

ベル「…!はい…!」ニコッ

 

指揮官「…。」

 

ベルの笑顔の眩しさに目を細める。…とりあえず。

 

指揮官「…俺も自室に戻るから。執務室閉めちゃうよ?」

 

ベル「はい…おやすみなさいませ。…誇らしき、ご主人様。」ニコッ

 

指揮官「…。」

 

ベルも言うのね…。自室に戻った。

 

 

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