人間くん 興味本位で昆虫食スナックを買ってみたけど無表情のまま完食した
「しかし禁じられたとか言うからてっきり死の呪いみたいなのが出て来るかと思ってました」
「死の呪いか。まああるにはあるが特に禁止とかされてないな。というか使われなさすぎて忘れられてる」
「フリー死の呪いだ」
「フリー死の呪い」
「まあ簡単に言ってしまうと相手を害する目的に使うには利点がないんだ」
「死の呪いなのに」
「うーん、そうだな。密閉されたガラス玉に入った水を想像してみてくれ」
「はい」
「水を取り出すにはどうす「割ります」」
「早い早い。食い気味に来たな」
「まあそれが肉体と魂の関係だ。死の呪いとはこのガラス玉を傷付けずにゆっくりと自分の魔力で穴を開けて水を抜き出すような物だ」
「そんなことをするより肉体をぶっ壊す方が楽なんだ」
「死の呪いは苦しみを産まずただ時間を掛けて死をもたらす。怨恨を晴らすのにも使えないし、安楽死のような用途も麻痺の魔法と空気を操る魔法の方が苦痛なく手早い。長時間魔力の繋がりを産むから使用者の証拠もしっかり残るので暗殺に使えるわけでもない」
「じゃあなんでそんなのが存在するんですか……」
「うん、だからこれは用途が違うんだ」
「その心は」
「これは信仰に基づく儀式魔法だ」
「異世界の国の一つに『死は死者の国への旅立ちであり貴き御方はいずれ生者の国へ戻られる。その時に困らないように身体を守っていく』という教えを守る者達がいる」
「なるほど。こっちでも同じような内容聞いたことあります」
「そうだな。死の呪いはその国で開発された。死期悟った為政者は自ら旅立ちの時を示し、巫女による儀式魔法によって身体を現世に保ったまま死者の国へと送られる」
「なんか、すごいですね。自分で自分の死を」
「そうだな。凄まじい、そして誇り高い者達の国だ」
「だからこの死の呪いは……死の祈りは尊敬すべき者への手向けであり、そしていずれ来るであろう再会への希望だ」
「死の祈り……なんかちょっといい話で感動しちゃいました。最強バトル魔法みたいなテンションで聞いたのに」
「まあいい事だ。その感性は大事にするといい」
「しかしエルフさんはなんでそんな魔法に詳しいんですか?誰も使わない魔法なのに」
「ああ、私は私で使いたくて古い文献からこの魔法を復元したのだ」
「図書館を調べ、遺跡を調べ、古き者達を訪ね、研究に研究を重ねた。なにせ成功したら死ぬからおいそれと実験に使えなかったからな」
「まあ蓋を開けてみれば実行に時間がかかるから普通に中断すれば殺さずに済むものだったのだが」
(そうか……エルフさんも誰かを……)
「綺麗な昆虫標本を作るのに使った。魔力の痕跡がしっかり残るから所有者を特定するのが楽で便利だったから同じ趣味のコミュニティにも広めたら大ウケだ」
「…………今日のおやつは無しで」
「!?」