人間くん プールの授業の後はほぼ記憶がなくなるタイプ
「色々聞いてて思うんですけどエルフさんって教えるのお上手ですよね」
「む、そうか?」
「はい。本筋から適度に外れたり、外れすぎる部分は端折ったりこちらの言葉で分かりやすく例えてくれたり」
「ふむ、それはまあ私も昔魔法についての教鞭を取ったことがあるから」
「あー、なんか詳しいって話してましたね」
「しかし私はそんなに上手ではない方だった。教えるのが上手かったのは私の先生たちだな」
「エルフさんの先生ですか。なんかすごそう」
「ああ、尊敬すべき師だ」
「どんな方なんですか?先生たちって言いましたけど」
「ゴブリンだ」
「えっ」
「だからゴブリンだ。文明種族の一つにして短命なる小人だ」
「なんかこう……プライドとか大丈夫なんですかそれは」
「全然問題ない。というか教職に就くゴブリンはとても多い。特に初等教育だな」
「彼らは寿命が短くとても子供が多い。すごく増える」
「それはなんか知ってる通りですね」
「だから成長のサイクルも早い。教育に関する知識の蓄積もすごく早い」
「生きていくのに必要なことと不要なことを選別し幼い子に叩き込む。すぐに来る成人の時へ向けて他の文明種族と対等な関係を築けるように教育を行う」
「なるほど、種族間で対等だからこそ未熟ではいられないと」
「そういうことだ。そういう教育のノウハウが積み重なり他の種族に対する教育も任される事が増えた」
「さらに彼らの子と同じように情報を詰め込むには長命のものの成長はひどく遅い。そこで無理をさせずに種族に合わせた速度の教育方法を確立するのが短命なる賢者たちだ」
「エルフの義務教育は60年ほど掛かるという話は前にチラッとしたな」
「学割詐欺の時に聞きました」
「いや詐欺じゃないから」
「私の世代に教鞭を取ってくれた先生は3代に渡って面倒を見てくれた」
「そんな事あります!?」
「ある」
「我々に教育しつつ自らの持つ全てを次世代に叩き込み自分は自分でプライベートも楽しむ」
「めちゃくちゃ密度の濃い生涯送るんですねゴブリン」
「すごいぞ彼らは。最初の先生が亡くなった時は私たちはかなり取り乱したものだが翌日には次の先生が問題なく授業を始めていた」
「逆にエルフは初等教育にはあまり向かない」
「そうなんですか」
「そうなんだ。まず教えるべき情報を選び取るのが下手だ。魔力と寿命のせいでほっといても生き残ってその内身につくからまず最初に把握するべきみたいな事は考えない」
「えぇ……」
「そして教えた内容を生徒が理解できない時も放置する」
「それは本当に教師でいいんですか?」
「びっくりするであろう。本当にこんなもんなんだエルフの教師は」
「必要なら練習すれば身につくし練習しないならそれはきっと人生において特に必要のないものだから突き詰める必要はなしと判断してしまう」
「なんか……いや、わかるけど……それで済めば苦労はしないだろ、みたいな」
「いやでもエルフさんは先生やってたんですよね?」
「うん、魔法教えてた」
「実はエルフは何を教えるか選ぶのが下手くそなだけで聞かれたことに答えるのは得意な方なんだ」
「あ、そういう」
「だから君と話すみたいに一対一で相手から質問を受けて導いてやる家庭教師のような振る舞いは特に問題なくできる」
「そうですね。こうやって話すのは楽しいし勉強になります」
「やったぜ」
「やったぜ?」
「まあそんな感じで初等教育はゴブリン先生に任せて専門分野はエルフと師弟関係を結ぶのが多かったな」
「え、さっきのスルーなんですか」
「しかしそうなるとこっちの世界でのゴブリンの扱い考えると申し訳なくなりますね」
「いや、あんま気にしてないんじゃないか?」
「いやいや完全にモンスターですよ?そんなことあります?」
「彼らは生命のサイクルが早い分相応にドスケベだ」
「ちょっと前にゴブリンの出てる漫画を先生の子孫に送ったら自分が竿役のエッチな本だって喜んで読んでた」
「えぇ……」
「もうちょっと純愛系のがあったら嬉しいとも言っていたな」
「度量が大きすぎる」