人間くん お土産には珍しいドレッシングとか買ってくる。当たり外れが大きい
「あれ?何食べてるんですか?」
「ああ、これはエルフの堅パンだ。年一くらいで保存食に実家から送られてくる」
「あ、テレビの異世界グルメ特集で見ました。本当に食べるんですね」
「ふふ……これに目を付けるとは人間もやるではないか」
「ゲテモノ扱いされてましたよ。釘打ってました」
「フンッ、無知な人間共め。これには正しい食べ方があるのだ」
「エルフっぽい発言が出てきた」
「これはな?スライムジャムを乗せて食べるんだ」
「未知の食べ物に好奇心が揺さぶられてきました……スライム?本物?」
「うん、バリバリモンスター」
「このスライムジャムを塗ると酸でパンが柔らかくなってジャムからもいい感じに酸味が抜けておいしいんだ」
「へー、なんか理にかなってるようなやっぱり変なような」
「ちょっと下さい」
「いいぞ。一欠片分が簡単に取れるように割り溝があるからこのハンマーで割るのだ」
「ハンマーで分割する食べ物……」
「ジャムを掬う時はスライムの核を取らないように気を付けるんだぞ。核を乗せてしまうとスライムの本体がそっちに移って酸を出し続けるし瓶に残ったジャムがすぐダメになってしまう」
「これ生きてるんですか!?」
「生きてる。まあ仮死状態なんだけど空気に触れさせ続けると動き出しちゃうから瓶はすぐ閉める」
「おお……なんか珍しく異世界に触れてる感じします」
「いつも色々話してるだろう」
「いやいつものやつは普通に話だけなんで嘘かもしれないじゃないですか」
「もっと言い方あるだろ君」
「あ、思ったより甘くて爽やかですね。おいしい」
「口に合ったようで良かった」
「パンは溶かしてるって言っても大分堅いですね。ガリガリする」
「そのまま行くと歯が折れるからな。エルフでも食べない」
「昔どの程度の生き物ならそのままの堅パンを食べるのか検証した同族がいたんだが」
「はい」
「シロアリに拒否られて終わった」
「ウケる」
「しかし保存用にかったくしたパンはこっちにもありますけどスライムの方は面白いですね」
「どっかで捕まえるんですか?」
「ん、ああ、それは養殖だ。野菜のスライムは色々食べてるから毒とか怖いからな」
「スライムの養殖」
「エルフ族の特産品の一つだ。単一の食べ物を与え続けるとだんだんその物質に近くなっていくのを利用して飼育する」
「ちなみにこのスライムは一番メジャーな#//"&×だな」
「なんて?」
「#//"&×だ。#//"&×……つぶらなカボスだ」
「翻訳諦めました?」
「諦めてない」
「いや絶対諦めましたって」
「つぶらなカボスって謎に郵便局で売ってるあれじゃないですか。普通にカボスでいいでしょ」
「いいや、つぶらなカボスだ。本当にあんな感じの果実なんだ」
「あんなって…顔が?」
「ついてる」
「こわ」
「この種のスライム…まあジャムスライムとするか。ジャムスライムは消化液となる酸を獲物からそのまま取り入れるからそこそこ酸味がないと単一の材料で育てるのは無理なのだ。生物を食べる時は胃酸なんかを取り入れてるわけだな」
「つぶらなカボスはそこそこの酸性かつ強い甘みがあるとても都合のいい果物なんだ」
「なるほどなあ」
「基本的に街ではこの2つはセット売りされてる」
「あ、じゃあ単体で紹介してる時点で違うんですね」
「そうだ。このパンとジャムには面白い逸話がある」
「なかなかハードル上げる語りするじゃないですか」
「大体200年ほど前に我々の世界で戦争があった時にエルフが味方をしてる方の陣営に救援物資としてパンとジャムを送ったんだ」
「ほう、戦争の方もちょっと気になりますね」
「それで重さの関係でパンの方がかなり先に到着してしまってな」
「遅れてジャムが到着した頃にはパンは建材だと勘違いされて全て城壁の補修に使われてた」
「………フフッ」
「呆然とする輸送隊にめちゃくちゃ謝られたらしい」
「全く食べ物扱いされないの面白過ぎるでしょ。ずるいですよ」
「結局ジャムどうしたんですか」
「ジャムはお湯に溶かしてレモネードみたいにして飲んだ」
「甘酸っぱくて普通にパンに乗せるよりおいしかった」
「パンいらないじゃないですか!」
「いやこれは伝統だから!歴史のある食品だから!」
「まあそういう文化が大事なのは分かりますけど」
「まあとりあえず飲んでみるといい」
「いただきます」
「次からジャムだけ送ってもらいましょうよ」
「なんて酷いことを……」