人間さん 龍角散ブルーベリーが好き
「こんにちは。暇なので来ました」
「うん。いいんだけどインターホン鳴らすくらいしなさいよ」
「まあまあいいじゃないですか。老人はこういう気安い扱い好きなんでしょ?」
「好き」
「いや違うよ。同じ事したら超怒るじゃないか君は」
「当たり前じゃないですか」
「人間め……」
「なんかタライに水流しっぱなしですけどなんか冷やしてるんですか?」
「ん?ああ、水飴を作っている」
「水飴を」
「なんか話が繋がらないんですけど見ていいですか?」
「うん、いいぞ」
「僕の知ってる水飴と違う……どう見ても固形ですよこれ」
「むしろビー玉みたいできれい」
「元はビー玉だからな」
「馬鹿にしてますか?」
「してる。その反応を待ってたんだ」
「説明するとこれは魔道具だ。収蔵の魔法陣を書き込んだビー玉に水を大量に注ぎ込む事で長旅のための水源として使う」
「おお、魔道具……なんでビー玉で水飴なんです?」
「こちらの水道水は綺麗だからな。飲料水として扱うために口に入れるのにちょうどいいサイズのビー玉に入れて放水量も調節してある」
「口に入れて舐めるとちょうどいい感じに喉を潤してくれる、水の出てくる飴玉っぽい魔道具だから水飴だ」
「こういうのを作って向こうで売って小遣い稼ぎをする事もある。この国は水が安くてすごくいいな」
「面白いですね……あ、本当だ、よく見たらタライから水が溢れてない。吸収してる」
「でもエルフさんはこの前お湯とか出してましたよね?向こうの人なら魔法できれいな水出せるんじゃないんですか?」
「ん?まあできるがやりたくない。魔力を直接物質にするのはそこそこ疲れるからな。すでにある物を取り出す方が楽なんだ」
「まあ私はすごいのでその辺も余裕なんだが」
「この前お風呂を入れたのは話の流れで面白いからであの後後悔した」
「余裕じゃないじゃないですか」
「ちょっと疲れた後に入るお風呂は気持ちいいから収支プラスだ」
「ちょっと分かるからまあいいですけど……」
「これって僕でも使えるんですか?魔法とか使えないですけど」
「使えるぞ。誰もが使えてこそ商品として価値がある。細かい処理は魔法陣がやってくれるからな」
「生きてれば普通に発してる程度の魔力で栓を開け閉めしてくれる。家電を使うのに自分が電気を纏ってる必要はないんだ」
「一個あげよう」
「ありがとうございます。……水が滲み出てくる」
「面白いだろう。軽く噛めば水量を調節できるから喉乾いてる時は多めに出せる。溺れない様に気をつけたまえ」
「使った後はよく拭き取るんだぞ。口に入れる物だからな」
「その辺がビー玉を使ってる理由でもあるな。汚れが目立ちやすく落ちやすい」
「ちゃんと考えてこの形にしてるんですね。仕事人って感じでかっこいい」
「そうだろうそうだろう」
「これって水以外でもいけるんですか?そっちの方が値段高くなりそうですけど」
「できるぞ。酒樽に入れておけば酒を吸収してどこでも飲める様になる」
「炭酸は駄目だな。あれは気泡だから魔法陣に吸収する時に分離の対象になるんだ」
「すごい、どこでもカルピス飲めるやつ欲しいです」
「材料買ってくれば作ってあげよう」
「で、値段だがまあ高くなる。それに問題もあるな」
「これは長旅の荷物を減らすための魔道具なので嗜好品を入れる事は少ない。私が作るとしたら受注があってからだな」
「この魔道具、使うのは簡単だが実は残量の判定が地味に難しい」
「あー」
「昔は面白がってこれで商売をしていた酒屋なんかもいたんだが酒だとどれくらい飲んだかの感覚がぐだぐだになるから売る側にクレームが来る事もある。それを見越して売る側も最初から中身を誤魔化してる事もあった」
「それは面倒ですね」
「で、水に限っては旅における死活問題になるから取引の際に水質と水量を鑑定して値段決める専門業者がいるんだ。私はそこに売りに出してる」
「向こうで作ると水をきれいにする工程が必要だがこちらの水はそのまま売れてとても楽ができる」
「異世界チートですね」
「まあ買い手が困らないように値段の上限もそれなりだからな」
「クリーンな仕事というわけだ。水だけに」
「は?」
「というわけで納得できたら冷蔵庫から私の分も取ってくれ」
「これ冷やす意味あるんだ…どれですかー?」
「なっちゃんのペットボトルに入っている。ジュースは吸収効率が悪いから昨日から入れておいたんだ」
「………パクッ」
「あっ!」