転生したら真っ暗でした 作:スレ民154
6話
赤と白の花々が所狭しと咲き誇っている。
だが、それは無規則ではない。
道を作るように、絡まり合い、生垣を作っている。
視線をずらせば、青と白の花々がそれぞれ渦を巻いている。時に幾何学的な形を取り、時に雑多に規則なく生え続いている。
昨日食べた花びらもあったのに、変わらぬ姿がそこにあった。
呆然と見つめるしかない。
まるで狐に摘まれた気分だ。
信じられないという気持ちを抑えつつ、ゆっくりと道に沿って移動する。
さらさらと風に揺られる花々。
何事もなかったかのように、そこに存在している。
とても綺麗なのに、とても不気味。
昨日来た道をなぞるように、移動する。
けれど少し急いで。
心が、なにかに駆られるように、どくどくと言っている。
そして、たどり着く。
青と白の花々が、円を描いているその中心に、一人の少女が横たわっていた。
白い肌、青い髪、まるで少女そのものが花々の化身にすら感じられる。
ゆっくりと近づいて、彼女を見つめる。
一見、なんの変哲もない少女だ。
ただ、よくよく見ればその肌は青白く、死んでしまっているのかと勘違いしてしまいそうになる。
何度見ても綺麗な顔立ち。
ゆっくりと頬に触れる。
とても冷たい。
けれど、生きている。
本能が、彼女を忌避している。それと同時に、“喰らえ”と囁いてくる。
矛盾している。
けれど、なぜかそれがとても心地よく感じる。
スッ、とした鼻。シミひとつない肌に見入ってしまう。
そのとき、視界の端に彼女が手に花を持っているのが見えた。
周りとは違い、赤かった。
血よりも、濃く、赤い、花だった。
たまらなかった。
今目の前には、絶好の食べ物があるのに、それを食べては行けないと禁じられている。
すべてが、愛おしかった。
そして、壊してしまいたかった。
この花も、この少女も、この庭を構成する全てを喰らい尽くしてしまいたかった。
今はできない、弱いから。
同じ魔界の転生者曰く、彼女が持つ力に、僕が全くと言っていいほど太刀打ちできていないからだそうだ。
けど、いつか
いつか、自由に、全てを食べてみたい。
そう思わずにはいられなかった。
ゆっくりと少女から、離れる。
安らかな、なんの苦しみも感じない表情。
花の中にいてもなお、違和感を感じさせない。
そこにいること、そこにあることが当たり前であるかのように、眠っている。
調和していると言ってもいい。
全てが、足りている。
背を向ける。
僕はまた、ここに来るだろう。
この花畑の素晴らしさを、無垢な少女の姿を見るために。
ガラスのように壊れやすそうでいて、変わることのない花畑。
その完璧を汚す、その日まで。