【完結】「全知」がこたつから出てきたんですが。   作:ただねこ

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全知さんの朝ごはん。

「……どんなアイマスクしてんだよ本当に」

 

「全知」と大きく書かれたアイマスクをして眠るヒマリは、俺の部屋の布団ですやすや寝ている。勿論一緒に寝たわけじゃないぞ。もしも一緒に寝たら俺の欲が出てしまう。それは避けたい。

 

「さて、仕事行くか」

 

現在、早朝……というよりも、殆ど夜の3時半。「夕方からは自分の好きなことをしたい」という理由で、高校を卒業してからはパン屋に就職した。ヒマリには申し訳ないが、1人でどうにか過ごしてもらう他ない。

 

「……行ってきます」

 

すやすやと眠るヒマリを心配しつつ、仕込みへと向かった。

 

 

・・・・・

 

 

「ん……ふあぁ……」

 

アイマスクを外し、軽く伸びをする。時計の針は、8時。流さんは、既に仕事に行っていることでしょう。

……一応、エイミやトキが居なくとも起きて活動することくらいは出来ますから。

少々ゆっくりではありますが、朝の身支度と行きましょう。

 

「んしょ……よい、しょ。ふう……車椅子が通れる幅でよかったです」

 

この家はそれなりに広い。一人暮らし、と言われたら少し手に余るくらい。

私と、この大きな車椅子があったとしても、広さは十分確保できていますから心配は要りませんでしたね。

 

「……わざわざ、歯ブラシを買ってきてくれたんですね」

 

歯ブラシや歯磨き粉、櫛や乳液などの、細々とした化粧品。流石にチークやフェイスパウダーなどはありませんでしたが、それでも十分、女の子としての身だしなみは整えられます。……インドアとは言っていましたが、こういった化粧品、揃えてくれたんですね。私が寝た後も起きていたので、その時でしょうか?

 

「ふふ」

 

思わず、笑みがこぼれてしまう。見ず知らずの女の子が、車椅子に乗って炬燵の下から出てくる……そんな意味不明な特異現象を前にして尚、寝床とご飯、さらには簡単な化粧品まで用意してくれていることに驚いたから。

 

「きっと、沢山化粧品について調べてくれたんでしょうね♪ありがとうございます、流さん」

 

声の届かない彼にささやかなお礼をして、トーストを焼く。

 

「バタートーストでいいでしょう。……にしても、パン屋勤務だからでしょうか?パンが沢山置いてありますね」

 

パンだけではない。薄力粉、強力粉。小麦粉にドライイースト。さらにはグルテンフリーものや米粉まである。なんならクミンやオレガノ、パプリカパウダーなどのスパイスも。

 

「料理が好きなんでしょうか?」

 

一人暮らし。更に彼はまだ19歳だ。ここまで揃えるのは至難だろうに、それでも集めている。

調理器具を見ても一通り揃えてあるし、買っただけじゃなく親からのおさがりもあるだろう。

 

「お、焼けましたね」

 

オーブントースターが役目を終えたので、トーストを取り出す。……綺麗な焦げ色だ。

コルクボードに「俺的に美味しいパンの焼き時間」というものがあり、そのとおりに焼いてみただけではあるが、見た目からしても相当美味しそうな食パンだ。

 

「いただきます」

 

ベターを乗せて、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出す。これだけで、立派な朝食。さくさくのパンにじわりと溶けたバターがマッチして、思わず顔が緩んでしまう。

 

「んふふ……」

 

喉を潤すために、コップに注いだお茶をぐいっと飲む。……これは。

 

「くぅ〜っ!はぁっ……はっ、つい先生のような反応を……」

 

程よい冷たさで、より笑顔が溢れていく。これが、先生の言っていた「爽快感」とは、こういうことでしたか。

 

「……」

 

その後は早かった。黙々ともぐもぐと食べ続け、気づいたときには2枚のトーストが消えていた。……最初に焼いたのは1枚なのに。

 

「……ふふっ、ごちそうさまでした」

 

まあ、いっか。




これって飯テロ?
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