【完結】「全知」がこたつから出てきたんですが。 作:ただねこ
『”もしもし、ヒマリ!?”』
「……ふふ。お久しぶりです、先生」
ヒマリの目には、少し涙が滲んでいた。そのほんの少しを察知して、『”泣いてるの!?”』と電話越しに声を荒げる先生も、凄くいい人だということがわかる。
『”……それで、大丈夫なの?”』
「はい。現在は異なる次元の世界に来てしまったようで。とある男性の元で保護させてもらっています」
『”……そっか、よかった。その男性に変わってもらうことってできる?”』
「あ……はい。試してみます」
俺に小さく「流さん」と良い、スマホを差し出してくる。せっかくだから、スピーカーにしてしまおう。
「はい、お電話代わりました。はじめまして、先生。現在ヒマリさんの保護をさせてもらっています、夕月流と申します」
『”シャーレというところで先生をやっている者です。夕月さん、明星さんの保護をしてくれて、本当にありがとうございます”』
「いえ、構いませんよ。何故か炬燵からヒマリさんが出てきたことと、こちらではヒマリさんの外出が何かしらの影響を与える可能性も考慮して、半ば監禁のようなことになってしまっていますから」
『”……こたつ?”』
「はい、炬燵から出てきたんですよ。さながらゲームのボス戦みたく」
遠くから「ゲーム!?」と言う女の子の声が聞こえてくる。おそらくあっちもスピーカーにしているのだろうか?
「そこは置いておきましょう。……そちらではヒマリさんを元の世界……キヴォトスに戻す算段はついていますか?こちらからは殆どどうしようもなくて」
『それは私から説明するわ、先生』
すると、女性の声が聞こえてくる。
「リオですか」
「……リオ?」
『ええ。ヒマリの通っているミレニアムサイエンススクール。そのセミナー、所謂生徒会の会長をやっている、
「夕月流と申します、調月さん」
『……ええ。それで、ヒマリがそちらに行ってしまった原因だけれど……』
調月さんからは、最近あった”デカグラマトン”と呼ばれる超高性能AIとの戦いによる影響が出た可能性がある、と言われた。
キヴォトスを巡る戦い、らしかった。俺には、どうも想像がつかないが。
「ってことは、その次元間素行装置を起動する時に、そのマルクトって子が近くにいたからかもってこと?」
『その可能性はあるわ。ただ、その装置を起動したのはマルクトよ。ヒマリはその時部室にいなかった。最後に見たのは、ゲーム開発部の子達ね』
「……ヒマリからは”多次元研究中に操作を誤った”と聞かされていたが」
『次元間の移動によって、記憶が混濁した可能性もある。こちら側で起こったことが事実になるわ』
「なるほど。……じゃあ、なんで俺の家の炬燵から?」
『それは……ごめんなさい、わからないわ』
「いいよいいよ。わからないのが普通だろうし」
そのまま調月さんと話していると、ヒマリが横から口を挟む。
「恐らく、流さんの家の、丁度炬燵のあった場所が
「……確かに、この賃貸はかなり値段が安かったな。事故物件と思ったけど、霊的現象の1つすらなかったから妙に違和感があったんだ」
『……その可能性はかなり高いわ。トキ、その時起動した次元間遡行装置は?』
『こちらに』
「……もう、帰るんですね」
『戻ってこれるなら、すぐにでもこちらに戻って来る方が合理的よ』
「そうですがっ!!……今日一日だけ、流さんとお話をさせてもらえませんか?」
『……そうね。積もる話もあるでしょうし、今日はこのあたりで通話を切っておきましょう』
「あのリオが、気を遣う……?」
『今すぐ遡行装置を起動してあげるわ。その後は異次元に関する報告書を書いてもらうけれど』
「あーはいはい!わかりましたよ!!ありがとうございますねリオ!!それでは!!」
そう言って、ヒマリが通話を切った。