始まりは一夏のこの一言だった。
「あー・・・風呂に入りたいな・・・」
そしてそれに結華は答えた。
「なら、銭湯に行きましょう」
* * * *
一夏、結華、箒、鈴音、セシリア、と一夏に誘われた(元々は一夏のみだった)弾、数馬は銭湯に来ていた。そこは鈴音と一夏がよく行っていた銭湯だ。名前は『御影湯(みかげのゆ)』、銭湯であっても様々な風呂があることから、入りに来る者から『スーパー銭湯』と呼ばれている。
そして今現在ここは鈴音の奢りで貸切状態だ。鈴音曰く『他の奴が居たら楽しめない』との事らしい。一夏は風呂に静かに入りたい派、結華は少し喧騒があったほうが良い派、鈴音は誰も居ないような広い所で遊びつつ温まりたい派だ。最後に箒は静かに入りたい派だ。
「貸切か」
「そうよ?凄いでしょ?」
「わざわざやらなくても良かったんじゃない?」
「良いじゃない」
「そういや、ここの奥って混浴なんだよな・・・」
最後に一夏の言った一言で弾と数馬の耳がピクッと動く。
「本当か!?」
「そう言えば俺も聞いた事あるな・・・」
一夏は少し自分の発言に後悔した。少しうな垂れる。
「言わなければ良かったか?」
「大丈夫よ、反応してるのは女子もだから」
結華にそう言われ一夏は女子組を見た。そこには気合十分の箒とセシリアが居た。
「あれ?鈴は?」
「なんで私まで頑張らないといけないのよ!!」
「それよりさっさと入りましょう?」
結華は女の更衣室の方に歩いて行き鈴音、箒、セシリアもそれに続く。
「一夏、ありがとうな誘ってくれて」
「ああ、我が友よ」
一夏は頭にはてなを浮かべつつ男の更衣室に入り、弾と数馬もそれに続く。
「楽しみだな」
そんな一夏の発言に弾が茶々を入れる。
「結華の水着姿がか?」
一夏はハァ・・・と溜め息を吐いて言った。
「久しぶりの風呂がだよ。IS学園にもあるにはあるが男1人のためだけに時間を作るのは無駄が多いって話で入れないんだよ」
「いっその事忍び込めば良いんじゃね?」
そんなことを言っている数馬に一夏はチョップをくれてやる。千冬から受けていたものをコピーしたものだ。凄い痛いのだ。
「いってー!」
「そんな事したら千冬姉の特別トレーニング一週間と懲罰部屋1週間を喰らうわ」
「ごめんなさい」
3人は話をしつつも服を脱ぎ、そして風呂場へと入った。
「久しぶりだな・・・」
風呂場に来た一夏はそんな事を言った。
「うおお!広いな!」
「家の風呂しか入んないから新鮮だな」
そこに弾と数馬も来る。
「たまには来れば良いのにな」
「いや・・・家の手伝いが」
「じゃ、俺はたまに来る事にしようかな」
ここは低温サウナやジェットバス、その他もろもろがある銭湯でもあるため風呂場はとても広くなっている。
一夏はすぐに体をお湯で流すと、ボディーソープで体を洗い、浸かってからまた洗って、そしてまた洗ってから入る。それが一夏のルールだ。
「ふー・・・」
「お前の入り方って特殊だな」
「んー・・・この方が気持ちよく入れる気がするんだよな。だからって真似しなくても良いけど。俺のルールだし」
「ふーん」
一夏は手足を伸ばして風呂を堪能する。
「それで?結華とはどこまで行ったんだ?」
数馬が唐突にそんなことを一夏に聞いた。
「どこまでって?」
「だから、どこまで進んだのかって聞いてるんだよ」
「?」
唐変木・オブ・唐変木ズの一夏には分からない。
そんなところに弾が追加で言う。
「だから、恋人みたいな事何してるんだ?って聞いてんだよ」
「んー・・・大した事は・・・ああ」
「なんだよ?」
「いや、着替えの時はこっち見ろとか一緒に同じベッドで寝たりはしてるぞ?あとデートしたり?」
「「・・・」」
弾と数馬が無言で一夏に近づく。そして頭を思いっきり撫でた。それはもう、髪がグシャグシャになる位に。
「しっかり、してんじゃねーか!」
「安心したな弾」
「ああ、ようやくだな」
「?何の事かは知らないが・・・ま、いいか」
一夏はまた湯船に肩までどっぷり浸かる。
そんな一夏を見て、弾が言った。
「おい、一夏。混浴に行くぞ」
「行ってこい。俺はここでゆっくりしてるから」
「いや、お前も行くんだよ!」
「何でだよ?」
一夏の融通の利かなさに弾が唸る。
「良いから行こうぜ?」
数馬が誘う。
「はぁ・・・行けば良いんだろ?行けば」
一夏は渋々湯船から上がり、混浴場へ歩いていく。途中で水着に着替え混浴場に入る。
「何で俺まで」
一夏はまた湯船にとっぷりと浸かる。
そこにザブザブと言う音とともに声が聞こえてくる。
「ようやく来ましたのね、一夏さん」
「遅かったな一夏」
それはセシリア&箒の声だった。
「俺は来なくても良いだろ?」
「何言ってんの」
結華も近くに来る。
「アンタが来ないと詰まらないじゃない」
これは鈴音の声だ。
「そーかそーか・・・ブクブクブクブクブク・・・」
一夏は沈んで行き、そこから離れる。
「ふう・・・」
「逃がさんぞ?」
「逃がしませんわよ?」
逃げた先には箒とセシリアが待ち伏せしていた。
2人は一夏の両腕を取ると体に押し付けた。一夏の両腕は幸せなサンドイッチ状態になる。
「これに何の意味があるんだ?」
「済まんな一夏」
「状況は一刻を争うのです。一夏さんがまたフラグを建てると奪い合う相手が多くなってしまいますから」
「結華以外は恋人として好きにならねえよ!」
一夏が必死に腕を振り解こうとしていたがどうしても外れない。そこに結華が近づく。
「結華、助けてくれ」
「嫌よ」
「理由は?」
「止める理由が無いもの」
「俺にはあるんだよ!」
「良いじゃない、それぐらいでは私は嫉妬なんてしないから安心しなさい」
「そうじゃなくて!」
「じゃあ何よ?そんな幸せなサンドイッチなんだからありがたく受け取っておきなさいよ」
「本当に嫉妬なんて感情が無いな!」
「そりゃそうよ。嫉妬なんてしてたら限が無いもの」
「そっちかよ!」