学園生活ボッチ回避のために塾を開講したのに、生徒たちが俺を王にしようとしてくる。なんで? 作:黒芋炒め
7歳になった。
今日も今日とて家の周りを歩いている。
朝方の心地よい風と暖かい日差しの中ノビノビと歩くのは最高なのだ。
「……………?」
何か深い目的がある訳でもない。
ただ脳味噌を空っぽにしながら無心で歩き続けることが素晴らしいのである。
「……………シトラス様?」
ところで、今日の昼飯は何だろうか?
サンドウィッチなんかだったら素敵だなあ。
ああ、この世界はなんと素晴らしいことか。
「シトラス様?」
何か幻聴が聞こえる気がするが気にしない。
今日も今日とてゆったりと過ごすだけである。
「奥様ー!シトラスさまが何言っても反応しな」
「そんな事ないですめちゃくちゃ反応してます!」
ゆったりと過ごす日々、終了────。
なんでこんなことになってしまったのか。
その理由を説明するには今朝の母親の発言まで遡る必要がある。
「あんたにメイドつかせる事にしたから」
「お初にお目にかかります、メイドのディカと申します。これからよろしくお願いします」
「え?」
「ほらあんたも挨拶!」
「え?」
「うーん、今考えてもよく分からんな」
「どうされました?」
「あ、敬語はなくても良いよ」
ディカは驚いた顔をする。
「あら、本当?じゃあ普通に話させてもらうわ」
「いや変わり身はやいね」
「変に取り繕うのも嫌だったし」
「それもそうか」
僕達は揃って家の回りを歩く。
「で、さっきから何してるの?」
「何って…普通に散歩だけど」
「これって散歩なの?老後の運動とかじゃなくて?」
「失礼な奴だな。どっからどうみても散歩だろ」
随分と失礼な事を言うメイドだ。時代が時代なら今の発言でクビにされててもおかしくなかったぞ。
「じゃあ私達が今何してるか自分で言ってもらえる?」
「家の周りをぐるぐる回ってる」
「何周?」
「数えてないな…4周くらいか?」
「14周よ!!!!」
突然ディカが叫ぶ。
耳元で叫ばれたせいで左耳の鼓膜なくなったかと思った。
「14周も同じ所ぐるぐる回る人なんていないわよ!私てっきり何かの拷問かと思ったくらいよ!」
「さっきからうるさい奴だな…」
「うるさくもなるわよ!同じ所をくるくる回るから『さっきここ通りましたよ』って声かけてたのに返事もないし、これから使える主人が壊れたのかと思ったわ!」
「これくらい普通でしょ」
「大変、シトラス様は壊れてたわ…」
「おい」
勝手に壊れた人扱いしてくる。なんてひどい奴だ。あと20周くらい回ったろうかな。
「それよりディカちょっと聞きたいことあるんだけど良い?」
「全然良くないけどどうしたの?」
「君若くない?」
そう、この子とても小さいのである。
7歳の自分より5cmくらい背が低く、明らかに成熟していない体。メイドって普通もう少し大きい女の子をつけるんじゃないの?知らんけど。
「失礼な人ね。いきなり女性に年齢を尋ねるなんて」
「何で知ってんだその言葉」
「貴方の兄上から聞いたわよ」
「メイドに何を吹き込んでんだあの人は…」
思わず呆れてしまう。
そろそろ13歳になる人が一体何やってんだ。
「で、年はいくつなの?」
「7よ」
「同い年!?」
「奥様が『わざわざメイドを変えたりする必要がなくて楽』って言ってたわ」
「にしても7歳にやらせるか…?」
「そんなに気にしなくても良いじゃない」
「気にするわ!」
嗚呼、どうせメイドがつくのなら可愛いお姉さんメイドがついて欲しかった。
「何か今くだらないこと考えてそうね…」
「考えてねえよ」
何故バレたし。